第2部 経済構造変化と中小企業の経営革新等 

(5)経営革新のアイデアの源泉

 次に経営革新行動のきっかけについてみていこう。経営革新のアイデアの源泉も個々の企業によって大きく異なる。第2-1-37図によると、「顧客・取引先の要望、提案」、「顧客の行動から察知」といった顧客重視型の経営革新が46.4%、「一般的な市場の動向」、「競合他社の動き」といった市場動向型が36.2%、「代表者の個人的なアイデア」、「研究機関、大学などの研究成果」といったアイデア型の経営革新が13.8%となっており、顧客志向の企業の割合が高い。

 
第2-1-37図 経営革新のアイデアの源泉
〜経営革新のアイデア・発想は、様々なところから出てくる〜

第2-1-37図 経営革新のアイデアの源泉〜経営革新のアイデア・発想は、様々なところから出てくる〜
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 では、これらの違いにより、経営革新のパフォーマンスは異なるのであろうか。それぞれの経営革新のアイデアの源泉毎に、目的達成率(経営革新の目的を達成した企業の割合)を比較すると、「顧客・取引先の要望、提案」、「顧客の行動から察知」といった顧客重視型の経営革新は、他の経営革新よりも目的達成率が高い(第2-1-38図棒グラフ)。一方で経営革新の成果として企業成長率を取り、成長率のばらつきをみるために標準偏差31で比較すると「代表者の個人的なアイデア」の標準偏差が高い(第2-1-38図折れ線グラフ)。
 つまり、顧客重視型の経営革新は、元々顧客に受け入れられることを目的としていることから、比較的経営革新の効果は現れやすく、目的を達成する可能性は高いが、その成果は顧客の要求水準に留まる範囲にしか達し得ない。一方で、経営者の独創的なアイデアで、顧客の要求水準を超えた経営革新を行う企業は、顧客重視型に比べて目的を達成する可能性は低い代わりに、成功したときの成果は非常に大きい。


31 ばらつきをみる指標。この数値が大きいと伸び率が高い企業と低い企業の差が大きいことを示す。


 
第2-1-38図 経営革新のアイデアの源泉とその成果
〜顧客重視の経営革新は、成功率が高いのに対し、アイデア重視の経営革新は成功した時の成果が大きい〜

第2-1-38図 経営革新のアイデアの源泉とその成果〜顧客重視の経営革新は、成功率が高いのに対し、アイデア重視の経営革新は成功した時の成果が大きい〜
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事例2-1-3 『販売の工夫』による経営革新

 B社(沖縄県、従業員120名)は、菓子・雑貨等の観光用の土産物を扱う小売店で、現在10店舗を経営している。
 沖縄は観光産業が盛んな地域で、他社の小売店舗もほとんどか観光客を意識した造りとなっている。従来は、当社のような店は無かったが、ここ数年は当社を真似たせいか、極めてよく似た価格、品揃えを行うライバル店が増えている。こうしたライバル店との差別化として、「サービス面での差別化」と「品揃えでの差別化」の2軸を基本とした取組を行い、創業12年余で業容は漸次拡大、収支も黒字基調で順調に推移している。

【品揃えでの差別化】
 狭い地域に同業者が犇いている中、品揃えでの差別化は重要と考え、クリスマス・卒業等のイベント時期の他、流行・ブームも取り入れて品揃えを頻繁に変えている。しかしながら、品揃えによる差別化だけでは真似されることが多い。これに対して、当社は自社のオリジナル・ブランド商品を開発し、他社が真似できない商品を導入している。こうした品揃えや商品開発のアイデアはスタッフ(各店舗の店長等)からも求めているが、特別な会議を設置するわけではなく、昼食時等スタッフと接する機会に自然な形での意見交換でアイデアを吸収している。

【販売での差別化】
 周辺の土産屋では、観光地域にありがちな客引き活動が行われているが、当社では逆にそのようなことは行わない。それよりも極めて単純だが、店周りの掃除といった清潔感、従業員の挨拶といった接客対応の向上を図っている。また、販売面での工夫としては、歩き疲れた観光客が座れるように、「店内に椅子を設ける」といった一種の付加サービスも行っている。通常の発想からすれば、商品スペースを犠牲にし販売効率を下げてしまうことになるが、こうした些細な付加サービスであっても、接客を充実させることで「お客様に喜ばれる店」を目指している。

 第2節 経営革新と経営者の役割

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