第6節 価格の動向と問題点

1 卸売物価

(1) 卸売物価の動向

 1) 最近の中小工業製品卸売物価の動向は,中小企業庁試算「中小企業卸売物価指数」によってみると,第2-81図のとおりである。
 金融引締措置がとられた38年末から39年初めにかけて,中小企業製品価格,大企業製品価格とも低下を示した。しかし,中小企業製品価格は,38年12月から39年9月までの低下率が0.6%にとどまったのに対し,大企業製品価格の低下は,同じ期間に2.2%と比較的大幅であった。
 さらに,39年末から40年初めにかけての金融緩和後においては,中小企業製品価格が,39年12月から40年3月までに1.3%と比較的大幅な上昇を示したのに対し,大企業製品価格は,同じ期間になお0.2%の低下を示した。
 以上のような最近の動向からも明らかなように,両者の間には,かなり異なった動きがみられる。39年の金融引締下の動向をみても,中小企業製品価格は,39年なかばから上昇に転じ,金融緩和後も,不況下にありながら上昇傾向を続けている。この間の動向については,中小企業製品価格がすう勢的な上昇向を示していることとともに,金融引締下における低下幅が次第に小さくなっていることが認められる。一方,大企業製品価格は,39年の引締下においては,中小企業製品価格に比べてかなり大幅な低下を示し,引締緩和後も低下傾向にあって,中小企業製品価格とは対照的な動きを示している。
 なお,以上の卸売物価の動向には,これまで漸減傾向を続け,とくに39年末以降の低下が著しい下請受注単価の動向が,ほとんど反映されていない。中小企業製品全体の価格動向については,この点を十分考慮する必要があろう。
 2) 以上のような,価格動向を財別にみると,第2-82図のとおりであって,中小企業製品価格の上昇基調は,中小企業製品の卸売物価に大きなウェイトを占めている非耐久消費財によるところが大きい。
 中小企業製品のなかでも,非耐久消費財においては,労働集約的製品が多く,その価格動向も,金融引締めに際しての一時的な低下を除き,38年末から39年初めにかけて,一貫した上昇を示している。
 つぎに,大企業製品価格についてみると,その低下基調は,大企業製品の卸売物価になかば以上のウェイトを占めている生産財の低下傾向によるところが大きいと考えられる。
 その他の財別の価格動向をみると,資本財では,39年末以後,中小企業製品,大企業製品価格ともになだらかな低下傾向を示している。建設材では,中小企業製品価格はなだらかな低下傾向を示し,大企業製品価格は,39年末に大幅に落ち込んだのち,ほぼ横ばいに推移している。また,耐久消費財については,中小企業製品価格が横ばいに推移しているのに比べ,大企業製品価格は,39年なかばに大幅な低下を示したのち,そのままの水準で推移している。
 3) 業種別に価格動向をみると,第2-83図のとおりである。中小企業製品価格についてみると,まず,中小企業製品の卸売物価において,かなりのウェイトを占めている食料品の上昇傾向が認められるが,そのほか,木材製品,窯業・土石製品も同様な傾向を示しており,中小企業製品のなかで卸売物価が低下傾向にあるものとしては,化学,機械があげられる。また,大企業製品価格についてみると,ウェイトの大きい機械,鉄鋼,化学でとくに低下傾向を示しており,その他の業種もおおむね同様の傾向にあるが,非鉄金属,雑品目等には一時的な上昇を示すものもみられる。
 このような価格動向において,食料品,繊維,窯業・土石製品,木材製品などでは,大企業製品の低下傾向に対して中小企業製品価格が上昇を続けていることにより,その間のかい離が著しくなっている。
 この点について,中小企業製品のうち,比較的に労働集約的な製品(1人当たり有形固定資産残高60万円未満)と比較的に資本集約的な製品(同じく60万円以上)とを大別してその価格動向をみると,第2-84図のとおりで,労働集約的製品価格が35年初めから上昇傾向を示し,とくにその傾向は,不況が深刻化した40年にはいってからも強いこと,および中小企業製品のうち,労働集約的製品が大半のウェイトを占めていることが認められる。
 このような労働集約的製品の価格は,36年後半の金融引締後37年前半にかけてほぼ同程度の水準で推移したのち,37年後半には急激な上昇を示しているが,39年の金融引締下においても横ばいに推移したのち,39年6月にはすでに反騰に転じ,根強い上昇を示している。一方,資本集約的製品は,すでに業種別動向においても,化学,鉄鋼などが低下を示していることにもみられるように,36年後半以降の金融引締下において急激な低下を示した。その後38年には,ほぼ35年の水準まで回復し,さらに,39年には35年を若干上まわる水準にまで上昇したが,40年3月以降ふたたび低下傾向にある。以上から,中小企業製品の卸売物価の上昇は,もっぱらこのような労働集約的製品の比重が8割強ときわめて大きいことによっているものと考えられる。
4) 以上,日銀「卸売物価指数」により,卸売物価の推移をみてきた。つぎに,日銀「卸売物価指数」にはほとんど反映されていない下請企業の部品価格や加工単価について,中小企業庁「主要都市景況調査」によってみよう。37年3月以後,対前年同月に比較して上昇したとする企業の割合から低下したとする企業の割合を引いた差の動向は,総合でみると,第2-85図のとおりで,低下したとする企業の割合の増加がとくに最近において著しく,下請受注単価の低下は,37年の引締期よりもきわめて著しいものと考えられる。
 とくに,下請的性格の強い機械関係の業種をみると,自動車部品およびラジオ・同部品では,37年以来低下したとする企業の割合が,上昇したとする企業の割合を,つねに20%以上上まわっており,40年にはいってからは,親企業の不振,下請企業間の受注競争を反映して,50%以上も上まわることとなっている。機械用鋳物,繊維機械部品では,38〜39年にかけて上昇したとする企業の割合が著しく増加したが,40年にはいり,低下したとする企業の割合が,上昇したとする企業の割合を40%も上まわるまでに下請単価が落ち込んでいる。一方,繊維製品は,景気変動に敏感に応じた動きを示しており,40年3月にかなり落ち込んだものの,6〜9月にかけて,若干反騰のきざしがうかがえる。しかし,このことは,上昇したとする企業の割合が増加したというよりは,むしろ低下したとする企業の割合が減少した結果であり,価格の上昇とは必ずしも結びつかないように思われる。
 以上のように,「主要都市景況調査」による下請受注単価の動向は,すでに述べた「中小企業卸売物価指数」の上昇基調とは対照的である。
 5) つぎに,不況下における卸売物価の動向を前回景気変動期の動向と対比してみることにしよう。
 中小企業製品価格,大企業製品価格ともに,第2-49表のとおり,景気変動局面における変動幅が,次第に小さくなってきていることが特徴的である。とくに,中小企業製品価格の場合,コストの上昇に伴い,不況期においても低下の度合が小さいことが傾向的に認められる。
 このように,中小企業製品価格が,35,36年以後金融引締下の低下が小幅になり,一方,金融緩和後の上昇がこれを上まわるようになっていることについては,高度成長期以降における労働力需給のひっ迫による人件費の上昇を生産性の向上によって吸収しえないため,これが物価の基調的な上昇をもたらしているものと考えられ,とくに,最近の不況の浸透にもかかわらず,上昇を続けていることか特徴的である。
 一方,大企業製品価格は,金融引締下の低下幅が緩和下の上昇幅を上まわる動向を示し,中小企業製品価格が上昇基調にあるのとは異なった動向を示している。とくに,今回の引締期においても低下幅が大きく,その後の緩和期にはいっても上昇していない点が注目される。

(2) 物価変動の諸要因

 以上みてきたように,価格の動向は,規模,業種により,異なった動きを示している。とくに,前述のとおり,中小企業製品価格は,長期的にみると上昇傾向にあるのに対し,大企業製品価格は,逆に低下傾向にある。これら価格変動の要因を需給とコストの両面からみていくことにしよう。
 1) まず,需給面からみよう。中小企業庁試算の「工業製品在庫率指数」の動向を価格動向と対比したのが第2-86図である。
 在庫率指数は,35年以降すう勢的な上昇を続けているが,このような中小企業製品需給の緩和傾向にもかかわらず中小企業製品価格指数が上昇していることから,中小企業製品価格は,需給関係によっては,ほとんど規定されないものと推定される。
 一方,大企業製品価格は,39年の引締下における時期を除けば,35年以来在庫率の上昇すなわち需要の減退期において低下し,逆の場合に上昇するというように,需給関係の動向がかなり強く反映していると考えられよう。
 2) つぎに,コストの面からみよう。
 まず,製造業全体について,大企業,中小企業別に主要費用の出荷額に対する割合をみると,第2-50表のとおりである。
 a) 中小企業と大企業のコスト要素を比較すると,第1に,いずれにおいても原材料の比重がコストのなかば以上を占めているものの,かなり急速に低下してきていることが認められよう。この場合において,中小企業における原材料の比重の方が大企業よりも小さく,また,その比重の低下の速度も大きいという特色がみられる。これは,コスト要素の構成のなかで,原材料以外のものの比重の増加が,とくに中小企業において,著しいことを示すものと考えられる。
 b) つぎに,中小企業と大企業との間における大きな特色は,大企業では,中小企業と比べて資本費の比重が大きく,一方,人件費の比重は次第に低下してきているのに対し,中小企業では,人件費の比重が39年12.6%と大きく,しかも次第に増加してきており,資本費の比重は,かなり急速に上昇しているものの,39年においてもまだ5.2%にとどまっていることであろう。
 c) 中小企業製品価格と大企業製品価格とのかい離をもたらしているものは,主として以上のような人件費の比重の大きさとその増減の動向と考えられるが,さらに賃金と労働生産性との関連も,十分注意されなければならない。
 中小企業について賃金コストと価格との関係をみると,第2-87図のとおりである。
 32〜33年では,生産性は17%,賃金は31%の上昇を示し,したがって賃金コストは11%の上昇にとどまったのに対し,35〜39年では,生産性は37%上昇したが,賃金は労働力需給のひっ迫を反映して58%と大幅な上昇を示し,賃金コストは15%の上昇となっており,近年の賃金コストの価格に及ぼす影響は,比較的強いとみられる。
 つぎに,大企業についてみると,32〜35年では,生産性は28%,賃金は19%の上昇を示し,したがって賃金コストは7%の減少となったのに対し,35〜39年では,生産性は38%,賃金は35%上昇し,したがって賃金コストは0.7%の低下となり,32〜35年に比べて,賃金の上昇が大企業においてもみられるものの,生産性の上昇により吸収することにより価格の低下を可能にする一因がみられる。
 以上のように,中小企業に関しては,大企業に比べて生産性が低いことおよび諸費用が割高なこと等による諸問題がとくに労働集約的業種に顕著であるとみられ,これら業種において,その多種少量生産の特殊性を生かしたコスト節約的投資等の合理化投資が必要と考えられる。

2 消費者物価

(1) 最近の消費者物価動向

 1) 消費者物価の動向は,卸売物価がすでに述べたように,かなり景気の変動に応じた動向をたどっているのに対し,最近の不況にもかかわらず,一貫した上昇を示しているのが注目される。このようなすう勢は,39,40年の景気沈滞期においても第2-88図のとおり変わっていない。39年は,後半その上昇が強まったものの,前年比3.8%と従来に比べてかなりの鈍化を示したが,40年にはいってからは39年後半の上昇傾向が持続され,対前年比7.6%の上昇を示した。このように40年にはいってからの上昇は,消費者米価や生鮮食料品価格の上昇などが中心で,そのほか低生産性部門のサービス等の根強い上昇傾向がみられる。一方,日銀「卸売物価指数」と総理府統計局「消費者物価指数」との重複工業品目について,中小企業製品の消費者物価の動向をみると,39年は前年比4.7%の上昇率を示し,これまでとあまり大きな変化はなかったが,39年12月〜40年9月では,対前年同期比5.2%の上昇でやや増加を示している。
 2) この時期における上昇の内容は,第2-89図のとおりである。
 まず,39年における動向をみると,農水畜産物は,36年から38年までそれぞれ対前年比6.4%,8.7%,11.3と上昇傾向にあったが,39年には0.5%と鈍化し,消費者物価に対する上昇寄与率も37年以降の3分の1強から39年には4%に低下している。39年を中心とする消費者物価の動向と考えあわせると,消費者物価の動向は,生鮮食料品を中心とする農水畜産物価格の動向に左右されるところが大きいといえよう。
 また,中小企業に関連するサービス,加工食品についてみると,前者は,38年の対前年比8.6%の上昇から39年には7.7%とやや低下し,後者は,38年に対前年比6.7%の上昇を示したが,39年には5.6%と低下している。
 また,ほとんどが中小企業製品とみられる繊維製品の価格動向は,38年は対前年比5.5%と上昇を示したが,39年は3.1%と上昇率が低下している。
 3) つぎに,40年にはいってからの動向をみると,農水畜産物が前年の後半から引き続き上昇し,39年12月〜40年9月の対前年同期比14%前後の上昇率を示しており,その上昇寄与率は48%前後の高水準で推移している。そのほか,中小企業性製品および対個人サービスにおいては,若干価格上昇がみられるが,耐久消費財等大企業性製品の動きには,それほど大きな変化はみられず,農水畜産物を除いた総合では,39年12月〜40年9月の対前年同期比は5.0%の上昇率にとどまっている。

(2) 中小企業製品と流通コスト

 さきにみたように,中小企業製品においても卸売物価と消費者物価とのかい離がみられるが,この点に関しては流通コストの問題が考えられ,また,消費者物価における中小企業の問題として,対個人サービス価格の上昇は,重要な問題の一つであるので,以下これらについて検討することとしよう。
 1) 中小企業製品の消費者物価は,一般に,大企業製品価格に比べ高い上昇率で推移している。
 これを前掲の労働省試算「特殊分類別消費者物価指数」でみると,第2-51表のとおりである。
 これによると,加工食品のうちでも大企業性製品は上昇率が低下しているのに対し,中小企業性製品はかなり高水準の上昇を示している。また,繊維製品は比較的中小企業性製品が多く,反面,耐久消費財は大企業性製品がほとんどであることから,前者は4%弱の上昇率を示しているのに対し,後者は低下を示している。
 以上のように,中小企業製品価格がより高い上昇率を示しているのは,すでに述べたように,中小工業において生産性の向上が十分に行なわれていなこと,さらに,その製品が消費者に至るまでの流通機構の複雑性等によるものであろう。以下このような流通コストに関連する動向を概観しよう。
 2) 一般に流通コストは,商品単位あたりの商業マージンと考えられる。厳密には,さらに流通段階の輸送費および製造業における販売費も流通コストに含まれる性質のものであるが,この流通コストを総合的に把握することは容易ではない。したがって,本項では,流通コストの動きを知るために日銀「卸売物価指数」と総理府統計局「消費者物価指数」とから両指数に重複する工業品目を抜き出して修正再集計したものにより,消費者物価と卸売物価とのかい離について検討を加えることとする。
 3) まず,重複品目について,消費者物価と卸売物価の各指数は第2-92図のとおりである。これによると,工業製品の消費者物価,卸売物価ともに一貫して上昇を続けているが,とくに消費者物価における上昇が著しく,両者のかい離は次第に大きくなってきている。
 これは,また,両者の差に対応して変動するとみられる流通コストも同様に,増大してきていることを示している。
 4) つぎに,重複工業品目を中小企業製品と大企業製品に分けてみると,第2-93図のとおりである。中小企業製品の消費者物価は,39年12月〜40年9月の対前年同期比で5.2%の増加を示し,大企業製品のそれが0.3%の増加であるのに比べかなり高い伸びを示している。また,中小企業製品の卸売物価は,39年12月〜40年9月の対前年同期比で2.6%の増加を示し,大企業製品価格の上昇率0.1%をかなり大きく上わまっている。
 以上のように,両者における中小企業製品価格の差,すなわち,流通コストは増大傾向にあるのに対し,大企業製品の流通コストについてはおおむね増大することなく安定しており,対照的な動きを示している。
 このように,流通コストが増大傾向にある要因を把握することは困難であるが,ここにおいては,卸小売業における売上高から仕入原価をさし引いた売上高総利益(マージン)の売上高に対する比率,すなわち,マージン率の動きをみることとしよう。第2-52表にみられるように,マージン率は35年以降漸増傾向にあるが,これは,人件費,資本費の増加に負うところが大きいとみられる。またこれを規模別にみると,中小企業の方が大企業に比べマージン率が高い上に,その上昇が著しい。これは,中小企業の方が人件費の売上総利益に占めるウェイトが大きい上に,ここ数年来における若年労働者を中心とした労働力需給のひっ迫により,その上昇率が高くなっていることが一因となっているとみられる。
 つぎに,卸売,小売業に分けてみると,卸売業では中小企業のマージン率が大企業の約2倍に達しており,その構成要素の比重,上昇の影響等は,さきに述べたところとまったく同様である。また,小売業では,中小企業,大企業ともにマージン率が卸売業に比べかなり高い。売上高総利益に占める人件費の割合も小売業では卸売業より高く上昇傾向にあり,とくに,中小企業の場合には45%強に達している。この点に関しては,小売業における企業規模の零細性と技術的な制約により,製造業におけるような生産性の向上があまり期待できないことが反映されているものとみられる。
 このように,流通コストが増大傾向にある要因は,一応次のように考えられよう。第1に,流通部門においては,小零細企業が多いこと,また,流通機構が複雑なこととあいまって生産性が低く,したがって人件費の上昇を吸収できず,マージン率が次第に高くなってきていることがあげられる。とくに,消費者に直結する小売業においてマージン率が20%強に達しているが,小売業においては,人件費の上昇等に対応して生産性を上げることがより困難である面もみられ,これが流通コストを増大させている大きな要因の一つとみられよう。
 つぎに,中小企業製品は,多種少量生産のものが多いため,流通段階においても流通の大規模化等による生産性の向上を図り難く,一方,大企業製品は,最終小売価格あるいは各段階における卸売価格が指示されている例もみられ,これらによって,中小企業製品の方が大企業製品に比べ流通コストが増大しているとみられよう。
 5) 以上,流通コストの増大する要因についてみてきた。これらの要因を改善して行くためには,流通機構の合理化を図り,また,協業化等による生産性の向上を図ることが今後の課題となっているが,その際には,大企業の参加を得,その円滑な推進を図ることも考えられよう。

(3) サービス価格と中小企業

 1) サービス価格の動向は,第2-94図のとおり,最近の不況下においても依然として根強い上昇傾向を示し,対前年比でみると,36年から38年まで7.4%,8.5%,8.6%と高水準に推移したが,39年は7.7%と伸び率がやや鈍化を示し,39年12月〜40年9月平均の対前年同期比で7.7%増のままで推移している。また,消費者物価上昇に対する寄与率をみても,39年には生鮮食料品価格の大幅な低下により50%台に達したが,40年にはいりふたたび20%台に低下している。
 これを家賃地代,公共料金,対個人サービス,その他サービスに大別してみると,つぎのとおりである。@家賃地代は,若干上昇率が鈍化したものの,依然対前年比10%台の増加を示している。A公共料金は,39年末までの1年間据置き措置の影響をうけておちついた動きを示していたが,40年にはいり漸増傾向にある。B対個人サービス料金は,39年末から40年初めにかけて上昇率が鈍化したが,最近はやや上昇を強めている。Cその他サービス,すなわち生産性を上昇させることの困難な教育費,月謝等は,対前年比10%台の上昇率を示している。その他サービスの上昇寄与率は,これまでサービス価格全体の寄与率のなかば以上を占めており,今回の不況下においても,家賃地代とともに,10%台の上昇率で推移している。
 2) つぎに,中小企業に関連をもつ問題として,対個人サービスの価格上昇の内容をみると,第2-95図のとおり,対前年同月比では,39年末から40年初めにかけて上昇傾向が弱まりかけたが,その後対個人サービス価格にかなりのウェイトをもつ理髪料,パーマネント代では10%台,入浴料,クリーニング代では9%台の上昇率を示していることによって,最近やや上昇傾向がめだってきている。
 以上のように対個人サービス業では,従来から根強い上昇傾向を示しているが,これは,その大半は中小企業,とくに労働集約性の強い産業であるため,生産性を上昇させることが困難な面もあり,コストにおける従業者所得の比重が上昇するにしたがって,価格の上昇がもたらされているものと思われる。このような状況を賃金コストと価格との関係でみると(注),生産性の上昇は,37年に比ベ38年,39年ともわずかにとどまり,一方,賃金の上昇は年々10%台に達しているため,賃金コストは,37年を100として38年103.0,39年107.3と上昇している。これを中小企業の製造業と比較してみると,製造業の場合の方が生産性の上昇が大きく,賃金の上昇を吸収する度合も大きいため,賃金コストは,37年を100として39年には102.4にとどまっており,対個人サービス業においては,労働集約性がかなり強く,したがって生産性の上昇により,賃金上昇がカバーされていないことが示されている。
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