第3節 流通の動向

 39年の後半から個人消費が伸び悩み,産業活動も停滞したこと等から,卸売業および小売業の販売額の伸びは,一貫して鈍化を示した。
 中小企業の場合,とくに卸売業の販売額の減退が著しく,40年5月には,前年の94.2%まで落ち込んでいる。
 また,小売業でも,39年から40年にかけて,一貫した販売額の伸びの鈍化がみられた。
 これに対し,商品の手持在庫は,卸売業の中小企業で若干の上昇傾向を示したほかとくに増加はみられず,百貨店を除く小売業では,傾向的に在庫水準が低下している。

1 卸売業の動向

 (1) 卸売業における商品販売額の動向をみると,中小企業の販売額は,39年後半から次第に減退傾向を示し,39年末から40年6月まで前年水準を下まわることとなった。その後,40年後半に至って,やや回復のきざしがみられるが,40年第3四半期においても,まだ第1四半期の8.5%増にとどまっている(第1-34図,第1-35図)。
 この結果,40年(1〜9月)の中小企業の販売額は,前年同期比0.5%増と,ほとんど増加を示さず,引締期である39年の対前年比10.4%増および前回の景気回復期38年の対前年比16.1%増に比べ,著しい低調を示している。
 一方,商品手持額をみると,中小企業の在庫率は,売上げが停滞をみせた39年後半からやや上昇傾向を示し,38年平均65.3%から,39年平均74.4%,さらに40年には平均74.6%へと上昇した(第1-36図)。中小企業の在庫率は,大企業よりも高い水準で上昇しており,流通段階での在庫増は,中小企業において,とくに著しい。
 (2) このような中小企業の卸売業における停滞は,とくに化学製品,鉱物・金属材料に顕著であり,これに比べると,その他(家具・建具・什器,紙等),医薬品・化粧品,機械器具の売上げの停滞は比較的小さかった。
 商品手持額も,一般的に増加傾向のなかで,鉱物・金属材料,繊維品,医薬品・化粧品の商品手持増がめだっている。
 主要な業種の動向は,つぎのとおりである(第1-10表,第1-11表参照)。

1) 繊維品

 不況が深刻化した39年7月から40年6月までの間に,中小企業の売上げはわずかながら減少を示した。
 しかし,前回不況期の36年7月から37年6月における売上げの減退が著しかったのに比べ,今回の停滞は,それほど大きくなかったといえよう。
 このような売上げの停滞に伴って,商品手持額も36〜37年における水準の約2倍に増加したが,在庫率は,わずかながら前回の水準を下まわっている。

 2) 衣服・身のまわり品

 39年7月から40年6月までの間に,中小企業の販売額は,ほとんど横ばいで推移し,前回の不況期(36年7月〜37年6月)の売上げが約7%伸びを示したのに比べ,著しい伸びの鈍化を示している。このため,商品手持額も増加ぎみに推移し,在庫率は,売上げの停滞から,前回の不況期よりも高い水準を示している。

 3) 食料・飲料

 39年7月から40年6月までの売上げは,微増で推移したが,前回の不況期(36年7月〜37年6月)に比べ,若干停滞の度合が強くなっている。
 一方,商品手持額は,前回不況期に比べて29%増を示し,在庫率もやや高くなっている。

4) 医薬品・化粧品

 一般消費需要が停滞しているなかで,医薬品・化粧品の需要は,比較的堅調を示し,中小企業の販売額も,39年7月から40年6月までの間増加傾向で推移しており,若干ながら前回不況期(36年7月〜37年6月)を上まわる伸びを示した。
 しかし,商品在庫指数は,この期間の平均191.5%と,きわめて高くなっており,このため,在庫率も前回不況期の116%に比べ,140%と上昇している。

5) 化学製品

 中小企業における化学製品販売額の減退は著しく,39年7月から40年6月までに8.4%の減少を示し,前回の不況期(36年7月〜37年6月)の減少に比べても,きわめて大きな落込みをみせている。
 しかし,商品手持額の水準もそれほど高くなく,在庫率は,前回不況期よりも低下している。

6) 鉱物・金属材料

 生産部門の停滞に伴い,中小企業の売上げは,39年7月から40年6月まで減少傾向で推移したが,前回の不況期(36年7月〜37年6月)よりは,減退の程度が小さくなってる。
 しかし,在庫増が著しく,36〜37年の水準の2.3倍に達しており,在庫率も上昇している。

7) 機械器具

 耐久消費財の需要の減退および設備投資の停滞等を反映して,中小企業の売上げも伸び悩みを示したが,39年7月から40年6月の間では,増加傾向を保っており,前回不況期(36年7月〜37年6月)よりも若干ながら高い伸びを示した。
 一方,商品手持額は,前回の不況期よりも増加し,在庫率も高くなっている。

8) その他

 その他の商品の売上げは,一般的な消費需要の停滞のなかで,雑貨類(家具・建具・什器,紙等)の需要が比較的堅調であったこと,また,輸出もかなりの増加を示したこと等により,比較的順調な伸びをみせた。39年7月から40年6月までに,売上げは17.8%の増加を示し,前回の不況期(36年7月〜37年6月)には,6.5%の減少となったのに比べ,高い伸びを続けている。このため,商品手持額も,前回不況期に比べてわずかながら減少をみせ,在庫率も低下している。

2 小売業の動向

 (1) 小売業における販売動向は,第1-37図のとおりである。
 百貨店を除く小売業の販売活動は,38年11月をピークに伸びの鈍化を示し,引締解除後の40年にはいってからは,39年の水準をわずかに上まわる程度にとどまっている。この結果,40年第1四半期から第3四半期までの伸びも5.1%増と小さく,40年(1〜9月)の対前年同期比も8.9%増にとどまり,景気調整期であった39年の対前年比14.7%増(38年の対前年比伸び率は,20.8%増)に比べて大きな鈍化を示している(第1-38図)。
 一方,百貨店の販売額にも伸びの鈍化がみられ,とくに40年にはいってから著しく,第1四半期から第3四半期までの伸びは,2.6%増にとどまっている。また,40年(1〜9月)の対前年同期比は,10.4%増であり,38年の対前年比17.1%増をかなり下まわっている。
 百貨店を除く小売業の在庫率は,38年の131.4%から39年には129.1%となり,40年6月には,127.6%と傾向的に低下している。一方,百貨店の在庫率は,38年を底として上昇に転じ,39年92.1%,40年には94.2%と上昇傾向を示している(第1-39図)。
 (2) 主要な業種の動向は,第1-40図および第1-12表のとおりである。

1) 織物・衣服・身のまわり品

 対前年同期比でみると,38年上期をピークとして,販売額の伸びは次第に鈍化し,40年下期(7〜9月)には,対前年同期比3.7%増とこれまでにない低下を示した。
 一方,商品手持額は,33年以降増加傾向を続けているが,在庫率は,大きな変動はなく,200%程度で推移している。

2) 飲食料品

 39年下期以降販売額の伸びが鈍化しているが,40年にはいって顕著になり,40年下期(7〜9月)の販売額は,対前年同期比8.8%の伸びにとどまった。一方,商品手持額も,33年以降増加傾向を示しているが,在庫率には,大きな変化はなく,50%前後で推移している。

3) 家具・建具・什器

 第1-40図に示すとおり,家具・建具・什器小売業の販売動向は,変動が激しいが,36年以降伸びが低下する傾向にあった。しかし,39年下期以降の販売動向は,比較的高水準を続けているといえよう。
 一方,商品手持額は,33年以降増加傾向を示してきたが,40年にはいって,35年の2倍強に達した。このため,在庫率も,これまでの低下傾向から上昇に転じ,40年には161.0%の高水準を示している。

4) その他(雑貨類)

 販売額の変動がきわめて著しく,38年下期,39年の上期と著しい伸びをみせたが,その反動もあって,39年下期および40年上期には大きく伸びが低下し,ともに前年同期の水準を下まわっている。
 一方,商品手持額は,34年以降増加傾向で推移しており,40年には売上げの停滞がもたらされたことによって,在庫率は,155.0%の高水準を示している。

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