第2節 中小企業製品の輸出動向

1 中小企業製品の輸出動向

 すでにみたとおり,39年から40年にかけて,生産等の事業活動は著しい沈滞を示した。しかし,わが国の輸出活動は,世界経済が好況に推移したこと,わが国産業の国際競争力強化と市場開拓への努力が次第に成果をあげてきたこと等のほか,内需が停滞していることもあってこれまでになく順調な伸びを示し,39年は,通関実績で輸出総額6,673百万ドル(対前年比22.4%増),40年においても1〜11月に7,607百万ドル(対前年同期比29.2%増)と増大してきている。
 このようなわが国全体の輸出の好調に対応して,中小企業の輸出も伸びを示している品目が多いが,なかには,内需が拡大しているため,輸出が減少したもの,発展途上国の進出により,海外市場におけるわが国中小企業のシェアーが縮小したものなどもみられる。
 以下,中小企業性の高い工業製品輸出について,最近の動向を概観することとしよう。

(1) 繊維品

 繊維品の輸出は,さきに述べたようなわが国輸出の大幅な伸長に対応して,39年には前年比14.4%増,40年(1〜11月)にも対前年同期比10.7%増とかなりの増加を示している。とくに,繊維品輸出市場の中心となっている米国向け輸出は,40年1〜11月の対前年同期比29.6%増と著しい増加を示しその他の市場についても,総じて前年を上まわることとなっている。
 また,このような繊維品の輸出は,中小企業製品輸出における比重が最も高く,わが国の輸出総額においても,39年で21.4%とかなりの比重を占めている。
 主要な品目の動向は,つぎのとおりである。

1) 織物用繊維の糸,織物および繊維製品

 中小企業製品として輸出されている割合の高い主要な品目の動向は,第1-1表のとおりである。
 メリヤス編物およびクロセ編物の輸出額は,40年1〜11月で前年同期の3倍強となっているが,これは,香港,タイ,フィリピン等の輸出先国における編物生地の製品化が進展し,これに伴ってその原材料となるわが国の編物生地の輸出が急速に増加したものである。
 また,合繊織物についても,一般的な合繊需要の増大に加えて,次第に発展してきた合繊織物産業の供給増加に対応する市場確保努力が進んだためと考えられる。
 そのほか,毛織物の輸出も,輸出市場の中心である米国向けの輸出が40年1〜11月の前年同期比で44%増加し,全体としても3割近い伸びを示すこととなっている。
 一方,じゅうたんについては,米国向け輸出の減少により,また,生糸および絹織物については,国内需要がおう盛で品不足となったための輸出の後退などにより,前年水準を下まわることとなっている。

2) 衣類

 衣類の品目別輸出動向は,第1-2表のとおりである。
 ポロシャツ,スポーツシャツの輸出額が40年1〜11月で前年同期の2倍以上に達し,とくに顕著な増加を示している。これは,好況により需要が増大している米国向け輸出が大きく伸びたことによって,もたらされているものである。セーター類の伸びについても同様であり,その他の製品においても,米国向け輸出の増加が40年における輸出の好調に大きく貢献している。一方,主要品目のうち,前年水準を下まわったものとしては,ソ連向け輸出が激減したナイロン短靴下があげられるにとどまっている。

(2) 雑貨

 雑貨類の輸出も重要な中小企業製品の輸出分野であるが,米国およびEEC諸国等への輸出増加を中心として増加を示したものと,発展途上国等との競合により,輸出の伸び悩みを示しているものとが分かれている。

1) その他の雑製品

 その他の雑製品の動向は,第1-3表のとおりである。
 輸出増加がみられたものとしては,マーキングペンの大幅輸出増大を中心として,万年筆,鉛筆等の輸出額が40年1〜11月で前同期の7割増に達しており,洋がさおよび洋がさ骨の輸出も,米国,EEC諸国向けの輸出が増加したことによってかなりの増加を示している。このほか,スキー用具類,野球用グローブおよびミット,クリスマス,カーニバル用品,釣具などの輸出の増加は,米国向け輸出が増加したことからもたらされているところが大きい。
 また,ハンドバッグ,バスケット等の組細工物類,ライターなどにおいては,新製品,高級品の開発が進められ,輸出がかなりの増加を示している。
 一方,玩具類(金属製のものを除く。),バドミントン用具類,人形および部分品等では,新製品の開発が進展しないため,また,ボタン,首飾り,時計用バンド等では,発展途上国の進出により輸出が伸び悩み,前年水準を下まわるものも多い。

2) その他の非金属鉱物製品

 第1-4表のとおり,その他の非金属鉱物製品の輸出は,それほど大幅な増加はみせていないが,前年水準を下まわるほどの減少をみせるものも少なく,堅実な動きを示していると考えられる。
 陶器類,磁器類などの輸出増加については,先進諸国向けの輸出増がみられ,発展途上国向け輸出の減少を補って,全体としては堅実な伸びを示すこととなっている。

3) その他

 中小企業製品として輸出されている雑貨類で,1)および2)以外の品目については,第1-5表のとおりである。
 家具,旅行用具,ハンドバッグ類の輸出増は,新製品,高級品の進出によるものである。また,ぞうりおよびサンダルは,競合する香港製品の後退によってもたらされたものであるが,合板は,台湾,フィリッピン,韓国等の進出により,わが国の輸出が後退している。

(3) その他の金属製品および機械類

 機械,金属製品等の輸出については,中小企業製品として輸出される割合があまり大きくないが,そのなかで,中小企業による製品輸出の比重が高いものの動向をみると,堅調な推移を示しているものが多い。

1) その他の金属製品

 その他の金属製品の輸出動向は,第1-6表のとおりである。
 ボルト・ナット,ねじ,リベット類,くぎ・かすがい・画びょう類は,米国における公共事業の推進および建設事業の一般的な拡大によって増加しており,また卑金属製の雑製品,手針類,ピン類,留金類,手道具および手工具,錠,かぎおよび取付具などにおいても,米国向け輸出の増加によって輸出額が増加を示すこととなっている。
 レンチおよびスパナーも同様であるが,西独向け輸出の増加が著しかった。

2) 機械類

 機械類においては,中小企業製品としての輸出割合が以上に述べてきた品目よりもとくに低くなっているものと考えられるが,比較的中小企業性の高い主要製品の動向は,第1-7表に示すとおりである。
 このうち,合成樹脂加工機械などについては,わが国プラントヘの認識が高まり,スペイン,香港との大口契約が成立したものである。また,金属加工機械などは,国際競争力強化が進んだほか,内需が停滞したことによっており,めがねおよびめがねわくについては,アメリカ,香港の需要が増加したことによるものである。
 他方,パルプ・紙製造機械の輸出が,40年1〜11月には前年同期の20.8%にしか達していないが,これは,39年にはソ連から約87億円の大口買付けがあったという特殊事情によるものであり,むしろ40年の実績が平年の水準と考えられる。

2 わが国の輸出における中小企業製品の輸出

 (1) 以上に述べてきたような中小企業製品の輸出の動向を総合的に把握することは,資料の制約から困難が多いが,その大体の傾向は,第1-33図のとおりと推定される。
 これによると,中小工業製品の輸出額は,軽工業製品を中心に前年比で37年13.0%,38年3.7%と増加してきたが,39年には16.6%と高い伸びを示している。しかし,大企業製品の輸出は,重化学工業製品を中心に37年19.2%,38年18.9%,39年には28.3%とより一層高い伸びを続けているため,最終輸出製品の輸出額に占める中小企業の比重は,37年の53.8%から38年50.4%,39年には48.0%と年々低下し,39年には,大企業の比重が中小企業のそれを上まわることとなっている。業種別には,第1-8表のとおり,食料品製造業,ゴム製造業,非鉄金属製造業,輸送用機器製造業,その他の製造業(雑貨)では,中小企業製品輸出の比重が一貫して低下しており,繊維工業,化学工業,窯業・土石製品製造業,金属製品製造業,精密機器製造業においても,中小企業の比重の低下が認められる。
 つぎに,中小企業の輸出品生産額の業種別構成をみると,重化学工業部門の比重が,37年の31.6%から39年には42.6%へと次第に増加してきている。39年において,繊維部門の比重は,31.4%と最も高いが,37年の37.7%からかなり低下しており,また,その他の製造業も39年において10.8%を占めているが,37年の比重11.0%からは若干低下している。これに対し,機械部門の比重は,37年の15.9%から39年には19.4%へと増加しており,鉄鋼等の金属部門でも37年の11.9%から39年の14.5%へと増加している。
 このように,中小企業のなかでも,次第に重化学工業の輸出品生産額の比重が増加してきており,輸出構造が高度化してきていることが認められよう。
 (2) 中小企業製品は,完成品として直接輸出されるばかりでなく,大企業の補完分野として生産した部品,半製品等が大企業製品輸出の一部を構成して,間接的に輸出される場合もあり,上に述べたような輸出構造の高度化に伴って,その割合が次第に増加しているものと考えられる。
 このような中小企業製品の間接輸出は,第1-9表に示すとおり,39年において工業製品輸出の約7%程度を占めるものと推定される。
 業種別には,電気機器,輸送用機器,一般機械,精密機器などの機械部門において間接輸出の比重が高く,その他の業種においては,ゴム製品を除き,一般にあまり高くないといえよう。

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