第4節 協同組合による協業化の進展の現状と問題点


1 概況

 事業協同組合は,昭和24年に施行された中小企業等協同組合法に基づく最も代表的な組合であるが,機能的には2つの種類に大別される。その第1は同業組合的性格の強い組織で,調査,研究および指導の事業を中心とし,主として,業界の改善発達を図ることを目的とするものであり,第2は,個々の中小企業者では実現できないような事業を,組合の共同事業として行なうことにより,その合理化を実現することを目的とするものである。
 前者のタイプの事業協同組合は,昭和37年に中小企業団体の組織に関する法律が改正され,それまでの商工組合が常設的な同業組合的組織に変わったことに伴って,逐次,事業協同組合から商工組合に移行しつつあり,政府においても,これを強く指導しているものである。
 また,後者は,相互扶助の精神に基づく,共同事業体として,事業協同組合制度の中心的な存在となっており,業種別あるいは産地別に,目的を同じくする中小企業者が自主的に組合を設立している。政府もまた,積極的にその設立を勧奨してきており,これら組合の自主的指導団体である中小企業団体中央会に国庫補助金を交付し,指導員を設置させて,その設立運営の指導にあたらせている。金融面については,系統金融機関としての商工組合中央金庫,長期資金については中小企業金融公庫を通じ,助成のみちを講じている。
 また,中小企業近代化資金助成法に基づく共同施設貸付金制度により,無利子,長期の資金を貸し付け,組合事業の活発化を図っている。
 ここにおいて,注目すべきことは,この種の事業協同組合について,最近の4〜5年間に,その協同化の程度の高いものが,全国にわたって,かなりみられるようになってきていることである。
 これまでの事業協同組合においては,事業が共同化されたとはいえ,組合の行なう共同事業は,組合員の事業の補完的な役割を果たす程度のものであり,さらにその発展がみられるものではなかったし,また,その当然の帰結として組合員における組合の共同事業に対する依存度は,そう高いものではなかった。したがって,組合の共同事業の利用は,組合員の判断だけにまかされるもので,組合がその利用を組合員に要求できるものではなく,これがまた,組合の経営をしはしば困難なものとしてきている。
 ところが,最近における新しい型の事業協同組合は,わが国の産業構造の変化に対応し,中小企業が事業協同組合のかたちをかりて,規模の利益を求めるもので,組合員は,組合の共同事業に移行した事業については,自己の事業を廃止して,全面的に組合に依存することとしている。また,場合によっては,将来,完全に組合において企業合同を行なうことも意図している例があり,実際にそのような動向もみられる。
 これらの動きは,最近,その設立が顕著となってきている企業組合とともに,協同組合による中小企業者の協業化への努力のあらわれであり,前述の中小企業をとりまく経済的条件の変化に対応する,中小企業者の近代化のための多くの適応努力のなかでも,とくに重要な地位を占めているものの一つである。
 政府としても,これらの協業化形態の積極的な促進を図るため,前述の共同施設貸付金の運用上,とくにこれに重点をおくとともに,通商産業局,都道府県および中小企業団体中央会に対し,きめの細かい協業化指導を行なわせる等の措置を講じている。
 そこで,以下においては,これら協業化を目的とする組合における協業化の進展の実態,協業化による効果およびその問題点を分析することとし,協業化促進のための施策の一層の推進と拡充に資することとしたい。

2 協業化の実態

(1) 業種別分布状況

 協業化の本質は,大規模経営による利益を追求することにあるといってよいが,現実には,業種,業態に応じて,協業化の進めやすい業種や協業化の困難な業種がある。実際の事例をみても,協業化の初期の段階として,まず,物的施設の共同化が始まり,次第に,共同仕入れや共同販売等の取引関係の共同化に及んで行くものが多く,したがって,共同化しやすい物的施設をもつ業種が協業化になじみやすく,そのような施設のない業種にあっては,協業化が必ずしも容易ではないこととなっている。具体的には,協業化が進められているのは機械化が急務となっているような製造業部門に最も多く,次いで,機械化の可能なサービス産業部門,さらに店舗の共同化をめざす小売商業部門での事例が多く,そのような物的施設を比較的必要としない卸売商業部門においては,協業化の事例は少ない。
 中小企業庁の「協業化の進んだ組合に関する実態調査(40年12月)」(注)によって,協業化の業種別分布状況をみたのが第28表であるが,これによっても,製造業が全体の66%,サービス業が18%,小売商業が14%となっており,卸売商業は2%にとどまっている。さらに,その内容をみると,製造業では,穀物加工を中心とする食料品が最も多く,かわら,砕石を中心とする窯業土石,家具,製材等の木製品,織物等の繊維工業等がこれに続き,サービス業では,クリーニングが圧倒的に多く,小売業では,食品を中心とする市場形式のものが多い。

(2) 協業化の内容

 協業化の内容となる事業が,どのような事業から始められ,どのように拡大されていくかについては,(1)でのべたように,業種,業態により差異があるほか,協業化を図ろうとする中小企業者がおかれている環境ないしその意欲によっても左右される。一般的にいえることは,協業化の意欲が強く,しかも中小企業者をとりまく経済環境がきびしい場合には,その中小企業者がこれまでに行なってきた事業のなかでの重要な部分を共同事業とする。しかも,その程度が非常に高いものにあっては,事業協同組合の形をとらず,最初から企業組合の形で,企業合同するものもある。
 しかしながら,協業化の意欲がそれほどまでには高まっていない場合においては,その中小企業者の本来的事業すなわち重要な部分ではなく,その他の比較的附帯的な事業の部分から協業していくのが通例である。製造業に例をとると,たとえば,製材業では,目立て設備,人工乾そう施設,倉庫のようなものから協業化し,いわば本来的事業部分である製材設備をもつようになるのは,協業化の程度がかなり進んでからのことである。さらに,原木の仕入れ,製材製品の販売等を協業化することは,なお,かなり時日を要するのが一般である。また,商業の協業化では,店舗,倉庫,運搬施設等からはいるのが通例であり,仕入れ,販売の協業化は,製造業の場合と同様,かなりの時日を要することが多い。

3 協業化の効果

 協業化による効果は,個々の企業では達成できない大規模経営の利益を享受できるということにあるが,より具体的には(イ)生産性の向上を通ずるコストダウン,(ロ)品質の高度化,均一化,(ハ)資金調達力の増大,(ニ)福利厚生施設の充実等を通ずる労働力確保の容易化,(ホ)需要構造の変化に伴う品種転換の円滑化,(へ)経営の多角化を通ずる経営の安定化等があげられる。
 最近の協業化の進んだ組合の実例においても,中小企業をめぐる諸困難が累増しているなかにあって,上記のような,さまざまな効果があらわれ始めている。
 たとえば,これまで典型的な手工業型態をとっていた製あん業者6人が,協業化により,近代的な製あん設備を共同施設として導入した結果,生産性は2倍になり,他方,品質の均一化と向上が図られたことによって,販売価格を従来よりむしろ上昇させることができ,これとともに信用力の増大に応じて販路も拡大し,新規の若年労働力の採用も比較的円滑に行なえるようになるとともに,さらには,廃液による公害に対しても,生産規模が拡大しているので,回収装置を設けても十分採算にのるようになった等の事例がみられる。また,家具の製造業者が集まり,従業員,販路,技術等のすべてを組合に投入し,完全な一貫生産体制をとった結果,生産性は2倍以上となり,大規模な受注を確保できるようになり,さらに,和風家具から洋風家具への品種転換も,規模の利益を確保しつつ円滑に行なうことができた事例,あるいは自動車部品の2次下請メーカーが,受注の減少傾向を解決するため,共同作業場を建設し,各組合員が一連の生産工程中の特定部分をうけ持つという,流れ作業方式を採用したため,コストが低下し,品質,性能も大幅に改善された結果,受注が急激に増大し,さらに,従来困難であった労働力の調達も共同求人方式の採用の結果,ほとんど100%
の調達ができるに至った事例等多くの好結果が得られている。
 前掲の調査により,協業化の効果をとりまとめたものが第29表である。調査対象組合は,いずれも共同施設の設置を終ってからまだ日が浅いものだけに,その効果の本格的な発揮は,むしろこれからであるが,現在における効果としては,まず,コストダウン,能率向上の効果が顕著であり,そのほかにも共同販売,共同仕入れによる価値実現力の向上がみられる。また,資金調達面の向上も大きく,労働力確保の面でも共同化の効果があがっている。

4 協業化途上の問題点

 協同組合による協業化は,以上のように発展し,その効果も多くのものをあげているのであるが,他面,いくつかの問題点もあげられる。組合の問題点としての第1は,組合員の協業化に対する意識が十分に確立されていないことである。これは,組合員の協調姿勢をくずすもとになるものであって,資本の調達や経営管理の近代化,技術水準の向上など,協業化途上にある組合における後述の他の問題点にも関連してくるものである。この点は,協業化の指導にあたっては十分留意すべきであり,協業化をいそぎ,とかく協業化意識を高めるための努力をおこたりがちな当事者に対し,十分これを周知徹底し,努力させるよう,その指導態勢を反省することが必要である。
 問題点の第2は,資本の不足である。協業化にあたっては,創業資金として,一般的にぼう大な設備資金と運転資金が必要である。しかし,協業化に参加する中小企業は,総じて資力が弱く,創業資金の調達に困難をきたし,これが,創業後の組合経営に多くの負担になっている。これを解決するためには,政府関係三金融機関の資金を確保することが必要であると考えられるが,同時に中小企業近代化資金助成法による共同施設貸付金の貸付対象の拡大その他の条件を緩和するほか,税制上の考慮も必要であると考えられる。
 問題点の第3は,組合執行部の経営能力の低さであり,また,組合従業員の技術水準の低さも問題点である。協業化を目的とする組合は,いずれも近代的な経営管理が要求され,また,高度の技術と技能とが要求されるものである。
 しかし,実際問題としては,組合執行部においては,近代的経営能力が不十分であり,また,従業員も高度の技術,技能を修得していないまま,協業化に進み,協業化に失敗した例も少なくない。
 政府としても,通商産業局,都道府県および中小企業団体中央会に,その指導にあたらせているが,今後これらの機関等においてさらに緊密に連絡を保ち,指導の充実を図る必要がある。
 問題の第4は,組合制度上の問題として,組合運営に関する各種の基準原則が,組合による協業化を十分に行われないものとし,あるいは,違法と認められるような事態をもたらしている場合も少なくない。事業協同組合,企業組合ともに,中小企業等協同組合法に基づく協同組合の1種であり,両組合ともに加入脱退の自由,議決権の平等,出資の持口数の制限等の組合のいわゆる基準原則が適用されるが,協業化を進展させようとする組合にあっては,逆にこれらの基準原則によって組合を運営することが,組合の資本調達能力を弱め,または資本の維持を困難にし,組合の信用度を低下させる要因となる場合も生じている。また,事業協同組合には,組合員外のものの組合事業の利用についての制限があり,これが協業化を促進させようとする組合の事業活動の拡大の制約となっており,また,企業組合についても,組合員に対して,いわゆる従事比率,組合員比率の適用があって,組合の事業の発展だけをとりあげた場合,少なからずマイナスの影響を及ぼしている。
 しかしながら,これらの協同組合の基準原則は,協同組合の民主的な運営にかくことのできないものである。この,協業化の進展と民主的な組合運営との両面からの要請を調和させ,協業化の進展を図るために必要となる施策の適確な実施は,現在における緊要な問題であって,中小企業政策審議会に設置されている組織小委員会においても,現在調査審議が重ねられており,政府としても,その答申をまって,さらに,協業化の推進に必要な諸措置を講じて行く必要がある。

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