第3節 倒産の原因と問題点

 最近における倒産の増加は著しい。倒産の直接的原因はさまざまであるが,その背景には,経済の高度成長期以降における需給構造や市場条件の変化,労働力需給のひっ迫等が中小企業経営に作用し,今回の不況のもとにおける需要の停滞がその作用を強めている。
 さらに,経営管理の近代化の遅れ,資金調達力の弱さなど,中小企業に従来からあった特性が,その環境変化への十分な適応を困難としている面も見のがすことができない。

1 倒産原因の推移

(1) 原因別状況

 企業倒産原因の推移を東京商工興信所の調査によってみると,第7表のとおりである。もちろん,倒産の原因は単一のものではなく,いくつかの要因が複雑にからみあっているものであるから,このように,はっきりと1つの要因によるものとして分類することは困難であるが,しかし,この表の内容からもそのときどきの景況の反映が認められる。
 すなわち,金融がひっ迫していた39年には,売掛金回収難等,いわば金融要因によるものの比重が高かったの比べて,販売不振という,いわば需要要因によるものは39,40年と次第に増加し,とくに,40年において高い比重を占めていること,金融要因とみなされる売掛金回収難の割合が40年にはあまり大きくないこと等は,40年にはいっての金融緩和,需要の停滞を反映しているものといえよう。
 東京商工興信所の調査は,負債総額1,000万円以上の企業倒産に関するものであるが,一方,小零細企業をもっぱら対象とする国民金融公庫の原因調査によると,40年11月において,設備投資過大,融手繰作の失敗,高利資金の利用および需要の停滞,代金回収難などによるものが多い。これは,40年にはいっても,小零細企業には,需要停滞のほか,金融要因も依然としてかなり大きく影響しているためと考えられる。また,小零細企業の倒産原因には,過度の競争によるものも多いこと,受取手形不渡事故の発生など,連鎖倒産をもたらす要因も少なくないことが認められる。
 これらの原因について,小零細企業と中企業をあわせて対象とし,原因分析を行なった中小企業庁の「倒産事情調査(40年度)」によってみると,企業倒産には,さきにみたような原因が複雑にからみあっているが,外部からの影響としては,需給構造,市場条件の変化および労働力需給のひっ迫が外部要因の70%強に及んでおり,これに対して,最近の不況現象がこれを促進する形で作用してきていることが認められる。
 これらの外部要因は,経営管理能力,資金調達力の弱さなど,企業の内的要因とあいまって,企業経営を大きく窮迫させ,不況期における在庫増,資金難等を契機として,倒産をもたらすこととなっている。

(2) 連鎖倒産の問題

 上にみたように,倒産原因の推移においても,需要の減退等の影響が強くあらわれているが,なかでも,連鎖倒産が依然として高水準で推移していることが,大きな問題となっている。
 東京商工興信所の調査によっても,取引先等の倒産の波及を受けて倒産に至ったものは,38年には267件であったが,39年には810件,40年には805件と増加し,高水準で推移している。
 もちろん,これらの企業のなかにも,窮迫した資金ぐり状況から無謀な融手操作を行なって,その不渡事故により,倒産したものも含まれているが,やはり,健全な経営を続けていた企業が,取引先の倒産等によって倒産にいたる場合が多いと考えられる。さきにみた国民金融公庫の調査においても,内部要因によらずに倒産した企業のうち,約3割がこのような連鎖倒産企業であることは大きな問題である。これらの,もっぱら他企業の倒産等の影響で倒産した企業に対しては,その経営の安定を早急に図る必要が大きい。

2 倒産事例における原因の内容

 (1) これまでにみてきた倒産原因は,さまざまな形で複雑にからみあい,企業倒産をもたらしているものであり,また,その要因は,直接的には循環的なものによっている場合でも,その背景にある,より長期的,構造的要因が強く影響していることが多いと考えられる。
 このような問題意識から,中小企業庁「倒産事情調査」によって,いくつかの倒産事例をみると,企業倒産に至る過程においては,労働力需給のひっ迫,需給構造の変化等の進展が中小企業経営に大きな影響を及ぼしており,しかも,経営能力の不十分さ,資金調達力の弱さなど,中小企業に従来からあった特性がその環境変化に対する十分な適応を困難にしているため,企業の経営が極度に悪化していたものが多い。そして,このような窮状を打開するため無理な経営を行ない,あるいは,このように体質が弱化している中小企業に対し,不況による需要の減退,在庫の増加,さらには一層の資金調達難等がもたらされ,融通手形操作の失敗等を契機として,倒産するものと考えられる。
 たとえば,機械・金属,建設等,これまで成長産業とみられた業種に多い事例として,景気の回復期に需要動向を上まわる設備投資を行ない,その結果,不況による需要の減退,人件費,資本費の増加等によって,資金の著しい固定化を招いた事例がみられるが,そのなかには,予想外の需要急減,親企業からの投資要請等が要因となっている場合など,必ずしも経営者の責めに帰することが適当でないものが少なくない。また,食料品,建設などの分野では,大量生産技術の確立あるいは過度競争の激化等から,中小企業分野への大企業進出もみられるが,これが倒産をもたらしている場合等も同様と考えられる。
 しかし,反面では,慎重な事業計画を確立せずに,いたずらに規模の拡大にはしる例もみられ,全般的には,企業経営ことに企業規模の拡大に対応する経営管理の知識,経験に乏しいことが業績悪化を促進している例は,かなり多いように思われる。
 (2) 倒産の原因が,主としてさきにみたような諸点にあるかぎり,累増する倒産を防止するためには,需要の拡大,中小企業向け資金の拡充等近代化,高度化を行ないやすい環境を整備するとともに,その経営管理の近代化を通じて,経営力を強化することが緊要である。

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