第1部 平成28年度(2016年度)の小規模企業の動向 

第2章 中小企業・小規模事業者のライフサイクルと生産性

前章で確認したとおり、中小企業を取り巻く状況は改善傾向にあるものの、地域、業種によって改善の度合いにはばらつきがあり、売上高の伸び悩み、設備の老朽化といった課題も抱えている。

今後、更なる人口減少が見込まれる中、我が国経済の成長のためには、中小企業が生産性を高め、稼ぐ力を強化していくことが重要である。

しかし、我が国の中小企業の現状を見ると、開業率が伸び悩み、中小企業の経営者が高齢化し、廃業が増加傾向にあるなど、生産性を高める上での課題もある。開業による新しい企業の誕生、既存企業の成長(市場シェアの拡大や新事業展開)、倒産・廃業による企業の撤退といった、企業のライフサイクルの変化が活発に行われているかどうかは、我が国中小企業全体の生産性にも大きな影響を与えていると考えられる。したがって、本章では、開業、成長、倒産・廃業といった中小企業のライフサイクルの構成要素の動向を確認した上で、これらが我が国の中小企業全体の生産性に与える影響を定量的に分析する。

第1節 開廃業の現状

本節では、企業の開業と廃業が我が国の企業数・従業者数の推移にどの程度影響を与えているのか確認し、開廃業率の推移を確認した上で、廃業企業の現状について、(株)東京商工リサーチのデータベースを用いて分析を行う。

1 開廃業による企業数や従業者数の変化

まず、我が国の企業数の推移を確認すると、1999年以降、一貫して減少傾向にあり、2009年から2014年の5年間で39万者の減少となった(第1-2-1図)。これを企業規模別に見ると、小規模企業が41万者減少し、中規模企業1が2万者増加し、大企業が約800者減少した。

1 ここでいう「中規模企業」とは、中小企業基本法上の中小企業のうち、同法上の小規模企業には当てはまらない企業をいう。

第1-2-1図 企業規模別企業数の推移
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この企業数の推移について、企業の開廃業の観点から確認すると、2009年から2014年の期間で開業した企業は66万者、廃業した企業は113万者であった(第1-2-2図)。このうち、2009年から2012年では開業が30万者、廃業が62万者であったのに対し、2012年から2014年にかけては、開業が36万者、廃業が51万者と、開業が6万者増加し、廃業が11万者減少している。

2014年時点で、5年以内に開業した企業は全体の約17%を占めており、企業数が減少傾向にある中でも、一定程度企業が新たに誕生していることが分かる。

第1-2-2図 企業数の変化の内訳(2009年〜2014年)
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2009年から2014年の企業数の変化の内訳のうち、開業、廃業した企業について、開業時、廃業時の企業規模別に確認すると、小規模企業については、開業が54.6万者、廃業が102.7万者と、廃業数が開業数を大きく上回っているものの、中規模企業については、開業が11.1万者、廃業が9.9万者と、開業数が廃業数を上回っている(第1-2-3図)。

第1-2-3図 企業規模別開廃業企業の内訳(2009年〜2014年)
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続いて、2009年から2014年にかけて存続していた企業の規模の変化について確認すると、存続企業304万者のうち、約95%に当たる287万者の企業は、企業規模の変化がなかった2(第1-2-4図)。規模を拡大させた企業が7.2万者、規模を縮小させた企業が9.3万者で、ほとんどが小規模企業から中規模企業への拡大、中規模企業から小規模企業への縮小で占められており、中規模企業から大企業への拡大は0.1万者、大企業から中小企業への縮小は0.2万者であった。

2 ここでいう規模の変化とは、中小企業基本法に基づく資本金及び従業員数の要件に照らし、小規模企業、中規模企業及び大企業の規模間の移動を伴う変化を指す。このため、従業者数が大幅に増加しても、資本金が変化しないために中小企業にとどまる企業も存在する。

第1-2-4図 存続企業の規模間移動の状況(2009年〜2014年)
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次に、企業の開廃業が雇用に与える影響を確認していく。

はじめに、2009年から2014年の間で従業者数全体の変化を、企業規模別に確認すると、中規模企業では201万人増加している一方、大企業では56万人の減少、小規模企業では155万人の減少となっており、全体では4,803万人から4,794万人へと微減している(第1-2-5図)。

第1-2-5図 企業規模別従業者数の変化(2009年〜2014年)
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次に、従業者数を変化させている企業の特徴を確認するため、2009年から2014年まで存続していた企業を存続企業、2009年以降に開業した企業を開業企業、2009年から2014年の間に廃業した企業を廃業企業とし、それぞれの従業者数の増減を見ていく。

第1-2-6図によると、2009年から2014年の間に、存続企業では、従業者を増加させた企業の増加分が1,318万人、従業者を減少させた企業の減少分が1,223万人であり、全体として95万人増加させている一方、開業企業は551万人の従業者を増加させ、廃業企業は656万人の従業者を減少させている。全体の従業者数の変動に、開業企業・廃業企業が一定程度影響していることが分かる。

これを規模別に確認すると、開業企業の中で従業者数を最も増加させているのは中規模企業であり、開業企業の生み出した従業者数の約57%を占めている。また、廃業企業の中で従業者数を最も減少させているのは小規模企業であり、廃業企業が減少させた従業者数の約45%を占めている。存続企業では、大企業及び小規模企業が従業者数を減少させている一方、中規模企業は従業者数を増加させている。

第1-2-6図 開廃業・存続企業別従業者数の変化(2009年〜2014年)
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ここまで、企業数と従業者数の変化を開業企業・廃業企業・存続企業別に確認したが、この変化の結果、2009年から2014年にかけて企業1者当たりの従業者数がどのように変化したのか確認する(第1-2-7図)。

はじめに、大企業については、企業数、従業者数共に減少したものの、企業数の減少幅が従業者数の減少幅よりも大きかったため、1者当たりの従業者数は3.3%の増加となった。中規模企業については、企業数、従業者数共に増加しており、従業者数の増加幅が企業数の増加幅よりも大きかったため、1者当たりの従業者数は5.8%の増加となった。小規模企業については、企業数、従業者数共に減少しており、従業者数の減少幅が企業数の減少幅よりも若干大きかったため、1者当たりの従業者数は0.9%の減少となった。

小規模企業の企業数、従業者数が減少する中で、中規模企業の企業数、従業者数は増加しており、大企業と中規模企業については、1者当たりの従業者数が増加していることから、企業数が減少する中で、規模が比較的大きな企業が従業者を増加させており、従業者数全体はあまり減少していないことが分かる。

第1-2-7図 企業規模別1者当たり従業者数の変化(2009年〜2014年)
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