第1部 平成28年度(2016年度)の小規模企業の動向

3 小規模企業の課題

以降では、小規模企業の抱える様々な課題の中で、特に〔1〕設備投資の動向、〔2〕海外展開の状況及び〔3〕取引の状況の3点について述べる。

〔1〕設備投資の動向

はじめに、大企業と中小企業の設備投資の動向を見ていく。設備投資額の推移を見ると、リーマン・ショックの影響もあり、2008年から2009年にかけて大きく落ち込み、以降は横ばい傾向にあったが、足下では大企業、中小企業共に増加傾向にある(第1-1-14図)。他方で、水準としては、依然リーマン・ショック前の2007年の水準を下回っている。

第1-1-14図 企業規模別設備投資の推移
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また、「法人企業統計調査年報」を用いて比較的小規模の企業の設備投資について確認すると、資本金1千万円未満の法人の設備投資額は、2011年度から2014年度にかけて上昇しており、2015年度には減少したものの、水準としてはリーマン・ショック前を上回っている(第1-1-15図)。資本金1千万円以上1億円未満の規模の企業についても、5年連続で増加しており、同じく水準はリーマン・ショック前を上回っている。

第1-1-15図 企業規模別設備投資額の推移(中規模・小規模)
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次に、設備を新設してからの経過年数を示す、設備年齢の上昇度合いを確認する。足下では中小企業の設備投資がやや増加傾向にあるため、老朽化の度合いが緩やかになっているものの、中小企業と大企業の設備年齢が同水準であった1990年と比較すると、大企業で約1.5倍、中小企業で約2.0倍と、特に中小企業で設備の老朽化が進んでいることが分かる(第1-1-16図)。

第1-1-16図 企業規模別設備年齢の推移
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さらに、設備の過不足感について見ると、近年、中小企業の設備の過剰感は解消されつつあり、特に小規模企業において、設備が「不足」と回答した企業の割合が、「過剰」と回答した企業の割合を上回っており、不足感がある(第1-1-17図)。

第1-1-17図 中規模企業・小規模企業の生産設備DIの推移(製造業)
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〔2〕中小企業・小規模企業の海外展開の状況

中小企業のうち、直接輸出を行っている製造業の企業数は増加傾向にあり、2014年では6,553社となっている。中小製造業全体に占める割合については、2009年から6年連続で増加しているものの、2014年で3.7%の水準にとどまっている。このうち、小規模製造業について見ると、直接輸出を行っている企業数は、1,852社であり、中小企業全体と同じく輸出企業割合は増加傾向にあるものの、2014年で1.5%にとどまっている(第1-1-18図)。

第1-1-18図 企業規模別直接輸出製造業企業数の推移
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〔3〕中小企業・小規模事業者の取引の状況

次に、中小企業・小規模事業者の取引の状況、特に価格転嫁を巡る状況を概観するため、売上単価DIから仕入価格DIを引いた値を交易条件指数とし、推移を確認する。第1-1-19図を見ると、2013年頃までは、中規模企業と小規模企業の間に大きな差はなく推移していたが、以降はどちらの規模でも改善傾向にあり、特に中規模企業で改善が進んだ。小規模企業でも改善傾向にはあるものの、上昇幅は中規模企業に比べて低く、結果的に中規模企業との間の水準の差は、2016年第1四半期に過去最大となった。仕入価格の上昇時に指数がマイナスである場合、仕入価格を販売価格に転嫁できていない可能性が高いことを示しているため、小規模企業の方がより厳しい取引環境に置かれていることが分かる(第1-1-19図)。

第1-1-19図 交易条件指数の推移(中規模企業・小規模企業)
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さらに、実際の下請企業の状況について、下請企業の売上単価を確認すると、下請企業の売上単価はほぼ全ての四半期で企業全体を下回って推移しており、下請企業の売上単価が上昇しにくいことが分かる(第1-1-20図)。

第1-1-20図 下請企業の売上単価DIの推移(製造業)
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