第1部 小規模事業者の構造分析

第2節 地域における小規模事業者の役割

1 地域における地域住民の役割

地域に根ざした事業活動を行う小規模事業者は、その地域に住む人々と密接な関係がある。小規模事業者が地域経済の担い手として、地域住民に商品・サービス等を提供しているのと同時に、地域住民はそれらの商品・サービスを購入することによって、地域の小規模事業者は持続的な事業展開を実現しているといえる。本節では、このような地域における地域住民と小規模事業者の役割について論じていく。まずは、地域における地域住民の役割について論じていく。

第1-4-15図は地域の活性化や地域課題の解決に係る、地域住民が果たす役割の重要性の認識について見たものである。「重要だと思う」(31.8%)、「どちらかと言えば重要と思う」(45.5%)と回答した者が、全体の7割以上を占め、多くの地域住民が地域活性化への地域住民の果たす役割について重要であるとの認識を持っていることが分かる。

第1-4-15図 地域住民の果たす役割の重要性の認識
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次に、地域住民の地域活性化や地域課題解決の取組への参加状況について、第1-4-16図から見ていく。60歳以上では30.8%、50歳代では23.0%となっている一方で、30歳代では15.0%、20歳代では16.2%と、年齢が高くなるにしたがって、より地域活性化や地域課題解決の取組に参加している傾向が見て取れる。これは、60歳代という年齢が、定年退職等によりある程度時間的な余裕が出てくる年齢であることも背景にあると考えられる。

第1-4-16図 地域活性化や地域課題解決の取組への参加状況
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次に、地域住民がどのような理由で地域活性化や地域課題解決への取組に参加しているのかについて、第1-4-17図から見ていく。どの年代においても「自分が住んでいる地域をより良くするため」、「活動を通じて社会に参加するため」と回答する者が多いことが分かるが、年齢が高くなるにしたがってのその傾向は強くなり、逆に若年層においては「知人・友人が参加しているため」、「親や知り合いから引き継いだため」などと回答する者も多く見られる。どの年代においても、地域貢献や社会とのつながりを求めて活動を行うというある意味自然な動機があると同時に、若年層においては、知人・友人などといった自身のつながりを契機として地域活性化や地域課題解決への取組に参加するという傾向が見て取れる。

第1-4-17図 域活性化や地域課題解決の取組への参加理由
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それでは、実際に地域活性化や地域課題解決の取組を行う者が、取組を継続する上でどのような課題を抱えているか、第1-4-18図から見ていく。年代により大きな違いがあり、どの年代においても「活動時間、メンバーの不足」を最も大きな課題として認識している一方で、20歳代においては、「活動資金の不足」、60歳代においては「取組を牽引するリーダー的人材の不足」が上位の課題として挙げられている。このことから、若年層においては活動に取りかかるまでのこと、あるいは活動そのものについて課題を感じている一方で、高齢層では、活動の質的な部分について課題を感じていることが分かる。

第1-4-18図 地域活性化や地域課題解決の取組を継続する上での課題
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地域住民が地域活性化や地域課題解決への取組を持続的に行っていくためには、一定の資金(収入)も必要である。第1-4-19図から、地域活性化や地域課題への取組で収入を得ることの重要性についての認識を見ていく。約9割の地域住民が、地域活性化や地域課題解決への取組で収入を得ることについて重要であるとの認識を持っていることが分かった。また、収入を得るだけではなく工夫次第では雇用も創出できると認識している者も24.4%もおり、地域住民の取組が地域雇用の一端を担うことも可能であることが示唆される。

第1-4-19図 地域活性化や地域課題解決への取組で収入を得る重要性
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ここまで見てきたように、地域住民が地域活性化や地域課題の解決に向けて、様々な課題を抱えながらも、収入を得ることの重要性を認識しており、取組の工夫次第では雇用を生み出すことも可能であると認識していることを確認した。

このような中、地域住民が自ら立ち上がり、小さな会社を起こすことで、地域課題を解決し、地域の活性化を図ろうとする事例も見られるようになった。そのような、地域が直面する課題に対し、地域住民が協力して小さな会社を運営している例として下記の事例を紹介する。

事例1-4-2:株式会社大宮産業(高知県四万十市)

(小売業)

〈従業員2名、資本金700万円〉

「農協撤退後の地域生活を守る地域住民108戸で作った
まるごと地域おこし会社9

高知県と愛媛県の県境に位置する高知県旧西土佐村(現四万十市)の大宮地区は、四万十川支流の山合いにある集落である。昭和50年には528人(148世帯)だった人口が、平成26年時点では286人(130世帯)にまで減少し、高齢化率は49.7%にまで上昇した。集落内の商店は酒屋のみで、住民は日用品等の買い物のために、32km離れた隣接県の愛媛県宇和島市の中心部か、50km離れた四万十市の中心部に行く必要があった。「高知はた農協」大宮出張所以外の最寄りの給油所までも15km離れており、自家用車等の移動手段を持たない高齢者は買い物にも病院にも行けない状況にあった。

株式会社大宮産業設立のきっかけは、平成16年に農協の統廃合により「高知はた農協」大宮出張所の廃止案が浮上したことにある。商店等がない集落にとっては唯一の生活品・食料品等の販売場所であり、農作業や生活に欠かすことのできない給油所でもあった。農協が閉鎖されれば集落維持にも関わるため、住民らが農協事業継承委員会を設立し運営方法等について検討を行った。

これまで農協が担ってきた購買と給油の事業を継続するため、住民の約8割に当たる108戸が合計700万円を出資し、平成18年5月に「株式会社大宮産業」を設立した。住民の生活を守ることを目的に、店舗では食料品(生鮮食品除く)から生活雑貨、農業用品までを販売し、農協売店の頃と同等の品揃えを実現している。隣接する給油所では車のガソリンと農作業機械に不可欠な軽油の販売を行っている。営業は唯一の正社員である30代の男性が担い、集落内の女性数名がパートとして店舗運営を担っているなど地域内での雇用も生んでいる。他にも店舗に来られない高齢者宅への宅配サービスも行っている。

当初、採算性が懸念されたが、初年度の平成18年度は3,500万円を売り上げ、平成23年度には1日平均90人が利用して、6,200万円を売り上げ、6期連続の黒字経営を達成している。

同社によって買い物という地域のライフラインの一つは守られたが、交通や医療などは依然として厳しい状態にあることは変わりない。そのような認識の下、同社は、「地域を支える会社」として、今後はデマンドバスの運行や見守り・デイサービス等の分野への進出も視野に入れている。

9 「まるごと地域おこし会社」とは、地域おこしを行う、地域住民組織の会社を意味する、地域での通称である。

大宮産業の店舗内
大宮産業の店舗外観

【事例からの示唆】

■成功要因

地域の生活サービスの確保が地域の維持存続のために必要不可欠なものとして認識し、住民の8割が出資することで、住民の地域存続に対する主体性と責任を生み出している点が成功要因として挙げられる。

住民の主体性と責任は、このまるごと地域おこし会社の運営に表れており、地域住民と大宮産業との間で、店舗の商品構成から販売方法、販促と地域コミュニティの交流を目的としたイベントの開催などについて話し合う意見交換の場を定期的に開催しているという特徴がある。また、大宮産業からも年間売上や来客数等の実績を報告し、集落の人達の暮らしや要望に応えたサービス提供方法に改善を行っている。このような住民とともに行う経営改善の工夫が、6期連続の黒字経営という事業採算性の確保につながっていると考えられる。

■地域課題解決への取組
 −住民主導による株式会社の運営−

大宮産業設立以前は、地域内で提供されていた生活サービスの継承が取組の目的であったことから、経営の初期投資に関しては、従来のサービス提供の施設を活用して、費用を抑える工夫を行うとともに、国や県の補助金を活用して整備を行うなど、資本金が少ない中で既存設備や補助金を有効に活用している。

また、地域に利用される企業を目指すために、商品販売のみならず、地域コミュニティの維持においても重要な役割を果たしている。店舗の一角にソファーが置かれ、談話スペースとして住民の日常的な交流の場になるなど、一人暮らしの高齢住民が大宮産業で語り合う光景が見られる。他にも、店舗前広場を利用して、夏の「土曜夜市」や「住民への感謝祭」などのイベントを定期的に開催し、商店としての販売のみならず、地域で暮らす住民のためのサービスを提供することで、住民に愛され、利用される企業となっている。

厳しい状況に置かれながらも、地域の皆で作った株式会社を活用して、地域住民が主体となって、地域で豊かに生きる姿を示しているといえる。

■今後の課題

地域住民の高齢化による人口の自然減は確実に進行しており、今後の利用者減は確実な状況である。そうした課題に対処するために、地域のものを外に売って「外貨」を得る「地産外商」にも力を入れている。地域で栽培した米を「大宮米」と名付けて外部に販売し、四万十市の小学校の給食、市立病院の病院食、高知市内の私立学校給食、近隣地区の福祉施設等で使われるなど着実に販路を広げている。米の販売は平成23年には1,200万円となり、収益の大きな柱の一つになりつつある。他にも集落内で栽培された路地野菜の直販や、他地域への販路開拓などを行うなど「外貨獲得」の努力を続けている。

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