第1部 小規模事業者の構造分析

第4章 地域の中の小規模事業者

中小企業白書(2014年版)においては、小規模事業者を「今後目指す市場(販売先、取引先)」、「今後の組織形態の意向」によって類型化を行った(第1-4-1図1)。これによると、今後目指す市場による類型化では、小規模事業者の約8割が「地域需要志向型2」であることが分かった。また、今後の組織形態の意向による類型化では、小規模事業者の約8割が「維持・充実型3」であることが分かった。このことから、小規模事業者の多くは地域に根ざした持続的な事業活動を行っているといえる。

小規模事業者が地域経済の担い手である一方で、地域において小規模事業者が力強く存続していくためには、地域に一定の需要が維持される必要がある。しかし、地域における人口減少は、経営者の高齢化に伴い廃業が増えるなど、地域の需要のみならず小規模事業者の事業活動にも影響を与えている。これはまさに、地域と小規模事業者が表裏一体の関係であることを示している。

本章では、上記のような認識に基づき、人口減少の影響を大きく受ける地域の消費の現状を概観するとともに、地域における小規模事業者の役割を明らかにしていく。また、小規模事業者の事業活動にとどまらない地域活動により、小規模事業者が多様な形で地域に貢献していることについても論じていく。

1 全国商工会連合会が2013年10月に商工会会員企業18,078社に対して実施した訪問アンケート調査により、小規模事業者の類型化を行った。

2 「地域需要志向型」とは、今後目指す市場を「同一市区町村」、「隣接市区町村」、「同一都道府県」としている企業をいう。

3 「維持・充実型」とは、組織形態を維持しながらも「事業の持続的発展」を志向する企業をいう。

第1-4-1図 小規模事業者の類型化
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第1節 地域における消費の現状

1 地域における小売業の現状

まず、地域の需要に影響を与える、我が国の人口変化について見ていく。第1-4-2図は、1980年から2010年までの人口の増減を市町村4別に見たものである。これを見ると、日本全体としてはこの30年間で人口は約1,100万人増加したが、その多くは各都道府県の県庁所在地を中心とした都市部の市町村での人口増加によるものであり、地方、とりわけ中山間地域においては、人口減少に直面している市町村が多く見られる。我が国の人口は、2011年に本格的な人口減少局面に入り、今後、人口は減少していくものと予想されている5。人口減少は地域の需要の衰退要因となることから、今後、地域の小規模事業者は、これまで行ってきた地域に根ざした事業活動を継続していくだけでなく、今後の地域の需要減少に対応するために、地域の潜在的な需要を掘り起こしていくような取組も求められるといえる。

4 本章においては、特に断りがある場合を除いて、「市町村」とは「特別区を含む全国の市町村」を指す。

5 中小企業白書(2014年版)、第2-1-7図を参照。

第1-4-2図 市町村別でみた我が国の人口変化(1980-2010年)
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それでは、このような地域における人口減少に伴い、地域の消費はどのように変化していったかについて、ここでは小売業の変化について見ていく6。全国の小売業事業所数の変化について市町村別に見てみると、ほとんど全ての市町村において事業所数は減少しており、また、半数以上の市町村では事業所数が半減していることが分かる(第1-4-3図)。

6 事業所数等については、1988年は「商業統計」、2012年は「平成24年経済センサス-活動調査」を使用している。また、「平成24年経済センサス-活動調査」の名簿は、「平成21年経済センサス-基礎調査」の結果を中心に作成されており、「商業統計」とは名簿、調査方法等が異なっていることに注意が必要である。

第1-4-3図 小売業における事業所数の変化(1988-2012年)
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次に、全国の小売業従業者数の変化について市町村別に見てみると、約8割の市町村で従業者数は減少しているが、東京圏を中心とした都市部においては、従業者数が増加している市町村も多いことが分かる(第1-4-4図)。

第1-4-4図 小売業における従業者数の変化(1988-2012年)
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次に、小売業の年間商品販売額の推移について見ると、我が国の経済成長、人口増加を背景に、小売業の年間商品販売額は顕著な増加傾向が見られたが、1997年以降は、そうした傾向は確認されない(第1-4-5図)。

第1-4-5図 小売業における年間商品販売額の推移
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最後に、売場面積別の小売業事業所数の変化について見ていく(第1-4-6図)。2002年から2007年にかけては小規模店舗が減少する一方で、中規模・大規模店舗が増加していることが分かる。この背景には、商店街に立地するような小規模店舗が、人口減少による需要の減少や後継者問題等の理由で閉店する一方で、消費者ニーズの多様化に伴い、ディスカウントショップや郊外型の大型店舗の出店が増加していることが考えられる。

第1-4-6図 売場面積別みた事業所数の変化(小売業)
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2007年から2012年にかけては、小規模店舗の減少傾向に加え、中規模・大規模店舗の増加も鈍化していることが見て取れる。

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