第1部 小規模事業者の構造分析

第4節 まとめ

第1章から第3章まで見てきたが、全国334万者の小規模事業者が参考になるよう、経営者の働き方や考え方、事業を営む上での課題やその解決のきっかけとなる内容についての抽出を行い、分析し、解説したものである。とりわけ、第3章では、小規模事業者にとって事業の持続化、引いては向上のために重要と考えている、〔1〕販路開拓・利益確保、〔2〕多様・柔軟な働き方として着目されているフリーランス、〔3〕若年経営者への事業承継への取組、の三つに焦点を当て分析を行った。いずれも小規模事業を営む上で、重要な観点を取り上げたものである。

〔1〕販路開拓については、小規模事業者が得意領域としてきた対面的な営業・販売活動について、取組方法を磨き直すことにより、景気が下り坂の時にでも、売上の維持が期待できるということを再認識することが出発点である。また、これまでの在庫管理の在り方を経営者がしっかりと見つめ直すだけで、利益を生み出せる「伸びしろ」が、多くの小規模事業者の事業の営みの中に眠っているということである。

〔2〕常用雇用者を持たず、自分の技能を提供することで対価を得ている事業を営むフリーランスは、「仕事をする時間や場所の自由度がある」、「自分の好きな仕事をできる」ことを利点と考えており、組織に縛られない、柔軟な働き方として着目されている。また、多様な業界や職種で事業を行っていることも特徴の一つである。ただし、企業において数年から10年前後の業務経験がなければ、独立して事業を営むことは難しく、顧客の確保や低収入に直面している。しかしながら、今後、フリーランスという事業全般や自分のフリーランスとしての事業について、総じて、現状維持または拡大すると感じている者が多いことが分かっている。

〔3〕先代経営者の高齢化とともに、若手年経営者への事業承継は重要である。繰り返される言い回しではあるが、それを行動に移すことが実際になかなかできていない。事業承継は、親から子へのように親族間のケースが多いが、事業についての会話と理解が十分にできていないことが考えられるからである。通常の家族以上に、会話を濃密にし、お互い理解し合えていなければ、事業用資産を引き継ぐ以前の問題として、事業で培ってきたノウハウ等が引き継がれず、経営が軌道に乗りにくい。このため、本章で取り上げたように、まずは「親子間のM&A」を強く意識する必要がある。実際に、年齢がより若い経営者に事業承継ができた小規模事業者や、事業承継後に経営革新への取組を行った小規模事業者については、業績が上向いたと考える経営者が多いことが明らかになっている。

このように、小規模事業者にとって、いくつかの取り組み余地が残されていることが今回の分析で明らかとなったことは、小規模事業者が今後の事業を営む上で、足元の事業を省み、経営を維持・向上させていくための方向が見えてきたということでもある。一人一人の小規模事業者が事業改善への取組に向け、今回の分析を参考にされることを切に願う。

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