第2節 新しい働き方
広い意味での小規模事業者の中で、近年、ソフトウェアの設計・開発(SE)、ウェブデザイン、ライティング、翻訳・通訳など、自らの持つ技術や技能、スキルを拠り所に、組織に属さず個人で活動する、いわゆる「フリーランス」と呼ばれる事業形態が、注目されるようになってきている。「フリーランス」については、必ずしも明確な定義がある訳ではなく、自らが持つ専門的な技能を提供する事業者が、業種・職種の壁を越えて、横断的に形成されていることが想像されつつも、その実像を把握することは困難であった。
本節では、こうした「フリーランス」の事業形態について、把握を試みる。「小規模事業者の事業活動の実態把握調査〜フリーランス事業者調査編3」に基づき、小規模事業者の中でも、特に、常時雇用する従業員がおらず、事業者本人が技能を提供することで成り立つ事業を営み、自分で営んでいる事業が「フリーランス」であると認識している事業者を対象に、分析を行った。以後、本文において「フリーランス」の用語を特に断りなく用いた場合は、上記の定義を念頭に置くこととする。
3 中小企業庁の委託により、(株)クロス・マーケティングが、2015年2月に、同社に登録しているウェブモニターのうち、「SOHO」という属性の者(母集団約1万7千者)を対象に実施したWebアンケート調査。有効回答数800者。なお、有効回答数の抽出にあたり、次の条件を全て満たす回答者を「フリーランス」と設定した。〔1〕本調査の事前問において職業を「SOHO(Small Office Home Office)」と回答した者、または本調査の問において「個人事業者として何らかの事業を行っている」と回答した者、〔2〕本調査の問において「常時雇用している従業員はいない」と回答した者、〔3〕本調査の問において「自分が営んでいる事業がフリーランスに該当すると認識している」と回答した者である。
1 フリーランスが事業を営む業界・業種
はじめに、本調査における回答者の属性を見ることにする。彼等はどのような業界や職種に就いているのであろうか。本節の分析はアンケート調査によるものであるため、フリーランスの全体像を直接把握することはできないが、フリーランスが事業を営む業界や職種4の傾向をうかがうことにしたい。
第1-3-16図は、フリーランスが事業を営んでいる主な業界について聞いたものである。これによると、「専門・技術サービス業」とする回答者が3割を超え、次いで情報通信業とする回答者が1割超となっている。なお、フリーランス形態により営まれる事業には、業種横断的に多種多様な働き方があることが推測される。
なお、業界を聞くにあたり、回答者が設問の選択肢から業界を選ばず、自由回答欄に記載した業界を見ると、デザイン業、出版業、翻訳業などとなっている。
4 本アンケート調査における業界・職種は、中小企業庁が調査を委託した(株)日本アプライドリサーチ研究所が、設問の選択肢として任意に設定したものである。