第1部 小規模事業者の構造分析

4 自社の利益を確保するための取組

(1) 自社の利益を確保するための取組

ここまで、いかに売上を伸ばすかという「販路開拓」の取組について分析してきたが、ここからは、売上を企業の「利益」に結び付けるための取組について、見ていくこととしたい。

小規模事業者は、ともすれば、「利益」よりも事業の内容や売上を増やすことに、関心が傾きがちである。自社で扱う商品やサービスが消費者に受け入れられ、売上の拡大につながっていくことは、経営の醍醐味でもある。しかしながら、小規模事業者が持続的に事業を営んでいくためには、毎年の一定の利益をどのように確保していくかという点も、おろそかにできない。一定の利益の確保という後ろ盾があってはじめて、販路開拓にも心置きなく乗り出せるという意味において、両者は車の両輪の関係にあるともいえる。

第1-3-11図は、自社の利益を確保するために実際に取り組んでいる取組について聞いたものである。実際に取り組んでいるとする取組のうち、回答数が多かったものは「売上金額・量を踏まえた適切な仕入、過剰在庫の整理」、「原材料・商品の仕入価格の見直し、価格の低い代替品の検討」、「金銭の出納管理(記帳)」、「在庫の量・金額の把握」であった。

第1-3-11図 自社の利益を確保するために実際に取り組んでいる取組(複数回答)
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他方、回答数が少なかったものとしては、「建物・設備の賃料の削減」、「人件費の削減」、「ITの活用」などである。

これらのことから、経営者は、利益を確保するための取組として、在庫管理や出納管理などの取組を重視していることが分かる。

(2) 自社の利益を確保するための取組にあたっての協力機関等の必要性

第1-3-12図は、自社の利益を確保するための取組を実施するにあたって、自社のみで対応できるか、それとも外部組織との協力が必要かを聞いたものである。「自社のみで対応可能」とする回答率が高い取組がほとんどであり、具体的には「在庫の量・金額の把握」、「人件費の削減」、「売上金額・量を踏まえた適切な仕入、過剰在庫の整理」などとなっている。利益を直接生み出す上で経営者自らが着手可能である取組については、自社のみで対応可能とする回答が多い。

第1-3-12図 自社の利益を確保するための取組についての協力先
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他方、小規模事業者が「公的、民間の支援機関等の支援が必要」としたものは、「ITの活用(経理や在庫管理の効率化)」とする回答が際立っている。これは、第1-3-8図(販路開拓に向けた取組についての協力先)で見たものと同様、ITは専門性が求められる領域であり、外部組織との協力を必要とする経営者が多いためと考えられる。

このように、経理や在庫管理を効率化して利益を確保するためのITの活用については、販路開拓のためのIT活用とも併せ、公的支援機関による政策的支援が重要な分野であるといえる。

(3) 事業用資産の把握状況と実際の在庫管理の頻度

ここからは、小規模事業者が利益を確保する上で、必須の取組である、在庫管理について見ていきたい。はじめに、第1-3-13図(再掲)で、「棚卸資産」の把握状況を見てみる。すると、把握しているとする回答が約9割を占めていた。なお、本図では把握の程度までは触れていないことに留意されたい。

第1-3-13図 事業用資産の把握状況(再掲)
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第1-3-13図(事業用資産の把握状況)を念頭におきながら、次の第1-3-14図を見ることにする。本図は、経営者が保有する在庫について、どの程度のサイクルで実際に在庫管理を行っているかを聞いたものである。結果は、毎月若しくは1年毎のいずれかに集中する傾向が見られた。毎月と回答した者の中には、日々きめ細かに棚卸しする経営者がいる一方、1年毎と回答した者の中には、年次決算書を作成する必要に迫られて形式的な在庫管理に留まる経営者がいることが考えられる。在庫の把握については、経営者によって把握実態に大きな隔たりがあることが想定される。

第1-3-14図 実際の在庫管理の頻度
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実際の在庫管理の頻度を業種別に見てみると(第1-3-15図)、いずれの業種についても、「毎月」若しくは「1年毎」という回答に極端に分かれる結果となった。業種ごとに見てみると、在庫管理の頻度を毎月とする回答は卸売業で高く、建設業で低い傾向が見られた。この点は、各業種における商習慣とも関連するため、それら商習慣も含めた見直しが重要と考えられる。

第1-3-15図 実際の在庫管理の頻度(業種別)
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