第1部 小規模事業者の構造分析

第2章 小規模事業者の動向

本章では、小規模事業者の長期的な動向を俯瞰し、小規模事業者数の増減の推移を確認するとともに、その背景を考察する1

1 小規模事業者の業況判断の推移(短期、長期)や資金繰り業況の推移については、中小企業白書第1部第2章に詳細を掲載しているので御参照願いたい。

第1節 小規模事業者数及び事業所数の推移等

足元(2012年時点)の我が国の小規模事業者数は約334万者であるが、過去から現在に至るまでの小規模事業者数の経年変化を見てみることとする。

第1-2-1図は、我が国の企業数の長期的な推移を企業規模別に見たものである。うち、小規模事業者数(法人数+個人事業者数)で見ると、小規模事業者数は1986年の約477万者をピークに減少に転じ、2012年に約334万者となっており、26年間で約143万者が減少(▲30%)したことになる。これは、平均して年間5.5万者のペースで減少していることになる。近年は、2009年から2012年にかけ、3年間で約33万者が減少(▲9%)し、平均して年間11万者のペースで減少していることになる。

第1-2-1図 我が国の事業者数の推移
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次に事業所数の推移を見てみる。

第1-2-2図は我が国の事業所数の経年推移を規模別に見たものである。

これを見ると、小規模事業所数は1989年までは増加しており、ピーク時の1989年では約509万事業所となっている。それ以降は減少に転じ、2012年に400万事業所となっている。23年間で約109万事業所が減少(▲21%)したことになる。これは、平均して年間4.7万事業所のペースで減少していることになる。近年は、2009年から2012年にかけ、3年間で約33万事業所が減少(▲8%)し、平均して年間11万事業所のペースで減少していることになる2

2 第1-2-1図と比べ、事業者数の減少ペースが事業所数の減少ペースを上回る場合があるのは、事業所数を増加させている事業者もあるためである。

第1-2-2図 我が国の事業所数の推移
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第1-2-3図は、小規模事業者の事業所数の長期的な推移を業種別に見たものである。

第1-2-3図 小規模事業者の事業所数の推移(業種別)
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これを見ると「小売業」はピーク時の1981年から2012年までの31年間で50%減、「製造業」はピーク時の1981年から2012年までの31年間で46%減とほぼ半減している。また、「サービス業」、「不動産業」は微増傾向を示し、それ以外の業種は、ほぼ横ばいとなっている。

この各年毎の小規模事業者の事業所数の推移を業種別構成比で見たものが第1-2-4図である。これを見ると、「小売業」と「製造業」がシェアを落とし、「サービス業」と「建設業」、「不動産業,金融保険業」のシェアが年々高まってきていることが分かる。

第1-2-4図 小規模事業者の事業所数の推移(業種別構成比)
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第1-2-3図で見た、小規模事業者の事業所数の長期的な推移の中で、最も事業所数の多い「小売業(含む飲食店)」の内訳を示したものが第1-2-5図である。

第1-2-5図 小規模事業者の小売業(含む飲食店)における事業所数の推移(産業中分類)
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これを見ると1986年以降、「飲食店等」を始め「飲食料品小売業」など、全ての業種において事業所数が減少していることが分かる。

第1-2-6図は、2014年版中小企業白書で取り上げた、年齢別の自営業主数の推移を示したものである。

第1-2-6図 年齢階級別自営業主数の推移
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これを見ると1982年時点では、30~40歳台に経営者が分厚く存在していたことが分かる。しかしながら、1992年、2002年、2012年と時の経過とともにボリュームゾーンが移行し、経営者の高齢化が進行していることが分かる。これに対し、次世代を担う20~40歳台が少なく、このまま行くと自営業主の数はますます減少することが予想される。

第1-2-7図は、現在事業を営んでいる小規模事業者の設立年を年代別に示したものである。これを見ると1984年以前に設立された者が5割弱を占め、小規模事業者には、業歴の長い事業者が多いことが分かる。

第1-2-7図 設立年別の小規模事業者数の分布
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この1984年以前に設立された小規模事業者については、1984年当時で30~40歳台の経営者が中心であると第1-2-6図(年齢階級別自営業主数の推移)から推定できる。1984年当時から約30年が経過し、1984年以前に設立された小規模事業者の経営者は現在では60~70歳台と推測される。

このため、過半近くを占める1984年以前に設立された小規模事業者については、1度目の世代交代、あるいは、戦後直後に創業された事業者にあっては、2度目の世代交代のタイミングが来ていると大きく捉えることができる。

また、1985年~1994年に設立された小規模事業者については、2014年版中小企業白書で取り上げた、起業家の年齢別構成の推移(第1-2-8図)から、約半数が創業時に30歳台までの若手経営者であったことが推定できる。当時から20年~30年が経過し、現在は40~60歳台の経営者が中心であると推測できる。

第1-2-8図 起業家の年齢別構成の推移
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したがって1985年~1994年に設立された小規模事業者については、50~60歳台の経営者から1度目の世代交代のタイミングにさしかかりつつあると捉えることができよう。

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