第1部 小規模事業者の構造分析

3 小規模事業者の資金

次に、小規模事業者の資金面について「運転資金」、「設備資金」、「新商品開発/新事業展開に関する資金」の観点から見ていく。

第1-1-67図は資金調達の方法について示したものである。

第1-1-67図 資金調達の方法(複数回答)
Excel形式のファイルはこちら

これを見ると「運転資金」、「設備資金」ともに「銀行借り入れ」が最も多かったが、「新商品開発/新事業展開に関する資金調達」では、「資金調達は不要」と回答している者が約5割を占めている。

その要因については明確ではないが、日頃、本業の事業活動にはしっかり取り組んではいるものの、日々の本業に軸足を置くあまり、そもそも「新商品開発や新事業展開」にまで取り組む事ができていないことが可能性の一つとして考えられる。

借入先の金融機関については(第1-1-68図)、「運転資金」、「設備資金」、「新商品開発/新事展開に関する資金調達」のいずれも、「地方銀行」、「信用金庫・信用組合」、「政府系金融機関(マル経融資)」が多く、資金調達先の大宗を占めている。

第1-1-68図 借り入れ先の金融機関(複数回答)
Excel形式のファイルはこちら

また、マル経融資(小規模事業者経営改善資金融資)とマル経融資以外を合わせて過半数が政府系金融機関を利用している。これは、今回のアンケート調査が商工会と商工会議所の会員企業を対象に実施している点を考慮しても、小規模事業者の資金調達面において国の融資制度が一定程度の機能を担っているといえる。

第1-1-69図は資金調達について資金目的別に調達難易度を示したものである。いずれの資金種類においても著しい調達の困難性は見られなかったが、事業活動のために必要な「運転資金」や「設備資金」よりも、「新商品開発・新事展開に関する資金」を調達することの方が、わずかな差ながら難しいとする回答が多い。

第1-1-69図 資金調達の難易度
Excel形式のファイルはこちら

以上見てきたように、小規模事業者における資金調達は、金融機関からの借り入れが大半を占めているが、昨今では、不特定多数の人々から出資を募り、事業資金を調達するいわゆる「クラウドファンディング」がマスコミなどで取り上げられることが多くなってきている。以下に、クラウドファンディングを活用した資金調達に成功した小規模事業者の取組について1事例を紹介する。

事例1-1-1:武田食品冷凍 株式会社(兵庫県洲本市)

(水産加工・販売)

〈従業員8名、資本金1,000万円〉

「資金集めだけが目的ではない」
「クラウドファンディングで認知度を上げ、ファンを作る」

代表取締役 武田康平氏

◆事業の背景

アイデアはあるが、先立つものがない。そんな時、不特定多数の人々から出資を募り、ビジネスを具現化する手法として注目される『クラウドファンディング』。群衆をあらわす“crowd”と資金調達をあらわす“funding”を合わせた造語で、日本でも新しい資金調達方法として浸透しつつある。当初は、これまでに無かったユニークなアイデアを実現する場として注目されたが、最近では、旧来からある産業分野で利用されることも少なくない。

日本有数の漁場、瀬戸内海に浮かぶ淡路島。島の東岸に位置する由良漁港で水産加工業を営んできた武田食品冷凍 株式会社も昨年、この新しい資金調達法にチャレンジした会社の一つだ。さかのぼること4年前。平成23年、東日本大震災の衝撃に日本中が揺れている頃、同社の武田康平社長のもとに、1本の電話が入った。相手はかねてからの取引先で「天然わかめを供給できないか」という相談だった。日本有数のわかめの産地、三陸の養殖が壊滅状態となり、流通量が激減。なんとか、ワカメを確保したいという、必死の要請だった。

◆事業の転機・展開

「確かに由良漁港沖には天然わかめが豊富に自生していました。ただ当時、誰も収穫していなかったものを、あのタイミングで扱うということは、三陸の復興を阻害するのでは……、と二の足を踏みました。」悩んだ末に、武田氏はわかめ漁と加工に乗り出す。国産わかめが品薄になり、わかめが食卓から消えてしまっては元も子もない。三陸わかめが戻ってくるまでのワンポイントとして少しでも手伝おう、という思いだった。「ところが、始めてみると、由良のわかめが日本におけるわかめ流通量の1%しか存在しない“天然もの”だったこと、素潜り漁で丁寧に収穫することもあって、高い評価を受けることになりました。」

三陸わかめとの競合についても、養殖わかめとは棲み分けができることがはっきりしたため、武田氏はこの事業に本格的に取り組むことを決意。昨年、水揚げは100トンに達し、参加する素潜り漁師は20人にまで増えた。

品質保持のため、素潜り漁でわかめを収穫
水揚げした新鮮な天然わかめを湯通し

◆クラウドファンディングの活用と展望

協力する人々が増え、水揚げ量が順調に増加してくると、必要なのは資金だ。通常は銀行からの融資に頼るが、武田社長が選んだのはクラウドファンディング。クラウドファンディングの手数料が助成される、兵庫県の『キラリひょうごプロジェクト』に選定され、現在は1,470万円を目標に資金を集めている真っ最中だ。

しかし、なぜクラウドファンディングなのだろう?

「大きな夢が生まれたからです。この『淡路島産天然わかめ』を由良のためだけでなく、淡路島全域の水産業のために大きなブランドとして育てるという夢です。そこで、なかなか口にする機会がない天然わかめを特典として出資者の方々にお送りし、まずファンになっていただく。そうすれば『淡路島産天然わかめ』という商品名も記憶に残り、指名買いも増えていく……。この資金調達方法なら、それができると期待しているんです。」

出資者を“ファン”に育てることで、全国に商品名や事業内容をじわりと浸透させることができる。資金集めはもちろん、こんなPR効果もクラウドファンディングの大きな可能性の一つ。多額の宣伝費を計上できない事業者にとって、二兎を追える有効な資金調達法といえる。

加熱しても歯ごたえを失わない塩蔵わかめ
前の項目に戻る     次の項目に進む