第3節 小規模事業者の事業基盤
ここまで第1節と第2節において、小規模事業者の定義と多様性について見てきた。本節では、「小規模事業者の事業活動の実態把握調査」2から得られたアンケート調査結果をもとに、小規模事業者がどのような事業基盤に基づいて経営を行っているのか、「人材」、「事業用資産」、「資金」の経営の3要素と「支援体制」の4つの観点から分析する。
第1部 小規模事業者の構造分析 |
第3節 小規模事業者の事業基盤
ここまで第1節と第2節において、小規模事業者の定義と多様性について見てきた。本節では、「小規模事業者の事業活動の実態把握調査」2から得られたアンケート調査結果をもとに、小規模事業者がどのような事業基盤に基づいて経営を行っているのか、「人材」、「事業用資産」、「資金」の経営の3要素と「支援体制」の4つの観点から分析する。
2 中小企業庁の委託により、(株)日本アプライドリサーチ研究所が、2015年1月に、全国商工会連合会、日本商工会議所の会員のうち、小規模事業者を対象に実施したWebアンケート調査。有効回答件数5,874者。
1 小規模事業者を支える人材
(1) 小規模事業者の従業者構成
小規模事業者の事業基盤について、まずは人材面から見ていく。
第1-1-25図で見た小規模事業者の約6割を占める個人事業者について、従業者数の構成を見たものが第1-1-34図である。これを見ると、約7割が経営者本人やその親族の従業員となっている。その内訳は、個人事業者本人(29.6%)、無給の親族従業者(7.7%)、親族の常用雇用者(30.1%)などとなっている。
また、第1-1-25図で見た小規模事業者の約4割を占める法人について、従業者数の構成を見たものが第1-1-35図である。これを見ると、約4割が経営者本人やその親族の従業員となっている。親族が占める割合は個人事業者と比べて低いが、その内訳は、経営者本人を含む親族の有給役員(30.3%)、親族の常用雇用者(10.3%)などとなっている。
このように、法人及び個人事業者の間において程度の差はあれ、小規模事業者は、経営者本人とその親族によって経営が支えられていることが分かる。
さらに、個人事業者における経営者本人とその親族の従業者が経営を支える比率を、業種別に見てみたい(第1-1-36図)。
個人事業者では、卸売業・小売業・サービス業の3業種が比較的高い傾向を示し、7割程度に達する。製造業においても高い割合を占めるが、6割程度に下がる。
また、法人についても同様に業種別に見ると(第1-1-37図)、卸売業、小売業の2業種が比較的高い傾向を示し、6割近くに達するが、サービス業においては5割弱に下がる。製造業においては、3割程度にとどまる。
このことから、法人よりも個人事業者の方が、経営者本人とその親族によって経営されている姿が色濃いことが分かる。なお、個人事業者よりも法人の方が、業種別の親族従業者の比率の差が際立っている。
このように、親族従業者の割合が高いことと密接に関係しているのが、経営者の年収である。経営者の手取り年収について見ると(第1-1-38図)、個人事業者では、300万円未満までの層で約6割を占めている。法人においては、手取り年収はもう少し高いが、それでも、400万円未満までの層で5割を占めている。
このことは、経営者本人の手取り年収のみでは家計を支えるのに必ずしも十分ではないが、家族・親族も従業者として事業に従事し、それぞれの収入を合わせて、全体として家計を支えている姿がうかがえる。
なお、所得税法においては、例えば、現金主義による所得計算の特例の適用を受けることができる「小規模事業者」は、事業所得と不動産所得の合計額が300万円以下の者とされている点に留意が必要である。
また、小規模事業者の経営者自身の生計の立て方を見てみると、事業収入のみで生計を立てているとする者が約6割を占めているものの、残りの約4割は事業収入以外の収入も併せて生計を立てている(第1-1-39図)。
事業収入以外に収入を得る手段については、「年金」が最も高く、次いで、「家族が他の会社で働いて得た給与等の勤労収入」、3番目は「不動産賃料収入」などとなっている(第1-1-40図)。
このような収入、生計状況の経営者は、どの程度の満足度を感じながら経営に取り組んでいるであろうか。
第1-1-41図は、経営者の満足度について見たものである。「仕事のやりがい」や「生活との両立」において、「とても満足している」、「満足している」とする回答が合わせて過半を大きく超えている。
「収入」においては物足りなさを感じるとする回答が目立つが、総じて、自身の仕事に誇りを持ち、取り組んでいる姿勢がうかがえよう。
(2) 従業者の人材像
次に小規模事業者の人材像について見てみる。
第1-1-42図は、小規模事業者の従業者の出身地の構成を示したものである(従業者には、経営者本人も含んでいる)。従業者の出身地は、本社所在地と同じ市区町村出身者が際立って多い。さらに、個人事業者と法人の別に見ると、本社所在地と同じ市区町村出身者について、個人事業者が約75%で、法人の約65%より10%ほど高くなっている。法人の方が個人事業者よりも、より広範囲のエリアから人材を集めている傾向がやや強いと思われる。
また、第1-1-43図は小規模事業者の従業者の最終学歴の構成を示したものであるが、従業者の最終学歴は、高等学校卒が際立って多い。個人事業者と法人の別に見てみても、両者ともに6割近くが高等学校卒となっている。
こうした小規模事業者の従業員は、経営者の目から見てどのように映っているのであろうか。これを聞いたものが第1-1-44図である。経営者から見た時に、従業員が会社や事業に、「とても貢献している」、「貢献している」とする回答が合わせて9割を超えているのに対し、「あまり貢献していない」、「殆ど貢献していない」とする回答は合わせて1%に満たない。
以上から、地元出身で高等学校を卒業したというような人材が、小規模事業者の従業者として大きな戦力になっていることがわかる。言い方をかえれば、小規模事業者は、こうした地元出身の人材の働く場として、大きな受け皿となっているといえる。
それでは、小規模事業者は、こうした人材をどのように採用しているのであろうか。第1-1-45図は、人材の採用方法について尋ねたものであるが、これによれば、「知人からの個人的紹介」と「個人的な勧誘」という個人的なネットワークを通じた採用方法を回答した者が際だって多く、これに「ハローワークでの募集」が次いでいる。親族従業者の割合が高いことも影響している可能性もあるものの、経営者と従業者が密接な関係にある小規模事業者においては、採用後の人間関係を重視した採用方法を選択しているものと思われる。
第1-1-45図(人材の採用方法)で見たように、個人的なつながりを利用した採用方法や、ハローワークによる採用方法を重視する傾向が見られる小規模事業者であるが、これを業種別に見てみる(第1-1-46図)。個人的なつながりを生かした採用方法は業種横断的に重視されているが、ハローワークを通じた採用方法は、「小売業」で少なく、「製造業」、「建設業」で多い傾向にあることが分かる。これは、小規模企業振興基本法における小規模事業者の定義として常時雇用する従業員数が20人以下となっているところ、小売業等のそれについては5人以下と定義されており、こうした業種では従業員の採用人数も比較的少数になることから、より個人的なつながりを重視した採用方法が取りやすいことが関係しているとも考えられる。
(3) 経営者の実像
ここまで人材面のうち、従業者構成と従業者の人材像について見てきた。ここでは小規模事業者の経営者の実像について見てみたい。
小規模事業者の創業時期を聞いたものが第1-1-47図である。これを見ると、創業した小規模事業者数が最も多い時期は、直近では1970年代であった。なお、創業した時期が1940年代以前、業歴にして60年を超える老舗の小規模事業者も数多く存在する。
なお、近年創業した小規模事業者の特徴として、現経営者に占める女性の比率が高まっていることが分かる(第1-1-48図)。
次に、経営者の年齢層を見てみる(第1-1-49図)。60歳台が最も多く、次いで50歳台、40歳台となっている。また、企業等に勤務する従業員であれば、定年退職の時期を迎えている70歳台以上の高齢者層の経営者が2割弱を占めている。
経営者の1日の実労働時間を見ると(第1-1-50図)、実労働時間は8時間とする回答が最も多く、次いで10時間、9時間となっている。これらを、規模が比較的小さい事業所に勤務する労働者の平均実労働時間(7時間42分3)と比べると、やや長い実労働時間となっている。
3 厚生労働省「毎月勤労統計調査」から常用労働者5人以上29人以下の事業所規模において、2013年の1か月当たり総実労働時間(145.5時間)を、出勤日数(18.9日)で除した値である。
次に、経営者本人について定休日を業種別に見たものが第1-1-51図である。土日、祝日のカレンダー通りとする業種は、ものづくり系の業種である「製造業」、「建設業」が多く、それぞれ約6割を占め、対照的に、接客が中心の業種である「小売業」、「サービス業」では、平日の特定曜日、不定休とする回答が7割前後を占めている。
なお、不定休と回答した者の中には、ほとんど休みを取得していない者も含まれることが考えられるが、本アンケート調査では調査を実施していない。
(4) 事業承継について
第1-1-52図は、経営者の近年の経常利益の傾向を、年齢別に見たものである。経営者の高齢化とともに、利益が減少(減益)傾向にあると回答する者が多くなっており、特に70歳以上になると、約7割が利益は減少傾向と回答している。
第1-1-53図は、年齢別の人口動態の推移(1990年、2000年、2010年)と経営者の平均引退年齢を示したものである。これを見ると、小規模事業者の経営者の平均引退年齢は1990年に68.1歳だったものが、2000年には69.8歳、2010年には70.5歳と、高齢化の進展に伴い、経営者の平均引退年齢も上昇傾向であることが分かる。また、第1-1-52図(経営者年齢別の経常利益の状況)で見たように、経常利益が減少傾向にあるとの回答が増加する年齢(70歳以上)に引退する様子が浮かび上がる。
第1-1-54図は、経営者に対し、事業承継の経験の有無、及び誰から事業承継を受けたかを聞いたものである。
これを見ると、「親から事業承継をした」とする経営者が約半数(49.1%)となっており、「親以外の親族から事業承継をした」(4.0%)と回答した者を含めると、過半数(53.1%)が親族から事業承継をしている。親族以外の経営者から事業承継をしたと回答した者はわずか2.3%にとどまる。また、自らが「創業者であり事業承継の経験は無い」と回答した者は4割超(44.6%)であった。
このように、個人事業者が多い小規模事業者において、創業者を除けば、親からの事業承継が非常に多いことが分かる。
第1-1-55図は、経営者に対し、事業承継をしたきっかけを聞いたものである。これを見ると、先代経営者が引退後も経営・事業に関与しているかどうかはさておき、「先代経営者の経営・事業からの引退」とする回答が最も多く、全体の約6割を占める。このうち、「先代経営者の経営引退後も役員・従業員として事業に関与している」とする回答は約半数である。この他、「先代経営者の死去」や「先代経営者の体調悪化」をきっかけとする回答が合わせて全体の約4割を占めている。
第1-1-56図は、現経営者が後継者に事業承継を行うことを躊躇する個人的な要因について聞いたものである。特に多い回答は、「厳しい経営環境下で事業を引き継ぐことへの躊躇(後継者候補の人生への配慮)」、「事業を引き継いだ後の、収入・生活面での不安」となっている。事業を経営していく中で、後継者へ引き継ぐことへの気遣いとともに、現役引退後の経営者自身の生活や経済的な安定が大きな関心事になっていることが分かる。
したがって、後継者候補としては、先代経営者と円滑にコミュニケーションを図り、引き継いだ後の経営について心配いらないこと、及び先代経営者の引退後の生活を支えることを明確に、かつ、できる限り具体的に伝えることが、円滑な事業承継にとって極めて重要な要素となっていることが分かる。
こうした先代経営者の心情を念頭に置きながら、事業承継後における現経営者から先代経営者への扶養状況を見てみると(第1-1-57図)、「現経営者は、先代経営者の生活費は全く支払っていない」とする回答が54%を占めており、半数超は先代経営者を扶養していない。
他方で、事業承継後における先代経営者から現経営者への資金援助の状況を見ると(第1-1-58図)、「先代経営者から、資金援助を受けている」とする回答が約2割を占めている。
これらのことから、現在の事業承継においては、第1-1-56図(現経営者が後継者に事業承継を行うことを躊躇する個人的な要因)で見た、先代経営者の「事業を引き継いだ後の、収入・生活面での不安」を後継者が払拭していないばかりか、先代経営者に頼り続けてしまっている実態がうかがえる。
第1-1-59図は、現経営者による後継者の確保状況について聞いたものである。
これを見ると、後継者候補がいるかどうかはさておき、「事業を承継することを考えている」とする経営者は全体の約5割いることが分かった。このうち、「後継者候補がいる」と回答した者は8割近くを占めている。
一方、「事業承継についてはまだ考えておらず、後継者候補もいない」と回答した者は全体の約3割を、「自分の代で廃業するつもりである」と回答した者は全体の2割弱を占めている。
続いて、現経営者が先代経営者から事業承継をする際に、どのような引継項目が重要と考えているかを見ることにする(第1-1-60図)。すると、「事業に必要な専門知識・技術の習得」、「経営知識一般(財務・会計を含む)」、「販売先・仕入先・支援機関等との人脈」とする回答が多い。事業を行う上で必須となる、知識や人脈についての回答が際立っていることが分かる。なお、引き継ぎ前に実際に引継を受けてよかった項目については、「事業に必要な専門知識・技術の習得」、「販売先・仕入先・支援機関等との人脈」とする回答が多かった。
対照的に、「資金調達のノウハウ」、「事業の実態(会社の売上・利益の金額や推移、事業の好不調等)」、「会社の借入金や資産の金額」、「先代経営者の個人資産・借り入れの内訳・金額」のように財務に関する回答は総じて低いことが分かる。
この他、事業の引き継ぎ前に引継を受けておきたかった項目を見ると、重要と考える項目は「特にない」とする回答が目立った。
それでは、事業承継をする際に、現経営者は先代経営者からどのような形で引継を受けていたのだろうか(第1-1-61図)。すると、「先代経営者と同じ会社で働きながら、事業の引継や指導を受けていた」とする回答は8割を超えており、多くの事業の引継が、同じ職場環境に身を置き、顔を合わせながら、日常的な仕事や業務を通して行われている実像が明らかとなった。
事業承継をする前に行われる引継は、実際の経営にどのような影響をもたらしているであろうか。第1-1-62図は、先代経営者から現経営者への事業の引継方法と経営への影響との関係を示したものである。
これを見ると、「先代経営者と同じ会社で働きながら、事業の引継や指導を受けていた」場合、経営に「非常にプラスに働いている」、「どちらかと言えばプラスに働いている」とする回答が合わせて約8割を占めている。
対照的に、「先代経営者と同じ会社で働いた経験はなく、経営や事業に関する会話も殆どしたことはない」場合、それらの回答は2割弱に落ち込むことが分かった。
このことから、事業の引継に際し、先代経営者と現経営者との間で、常日頃からの密接なコミュニケーションを取っておくことが、経営に好影響を与えるものといえよう。
先代経営者から現経営者への事業承継について、いくつかの側面を見出してきたが、このようにして引継を受けた現経営者の先代経営者に対する感情はどのようなものだろうか。これを聞いたものが第1-1-63図である。「特段の感情は抱いていない」とする回答も3割弱もあるが、「先代経営者としての経験・手腕に敬意を持っている」、「人間として尊敬している」とする回答が4割超と際立って高くなっている。
コラム1-1-6
「小規模企業共済制度の見直し」について
第1-1-56図で見たように、現経営者にとって、現役引退後の経営者自身の生活や経済的な安定が大きな関心事になっている。
このような経営者の心配を取り除くための制度として、昭和40年に創設されたのが「小規模企業共済制度」である。
本共済制度は、小規模事業者の廃業、退職、転業等に備え、廃業後の生活の安定や事業の再建の資金を準備するための制度であり、半世紀もの間、経営者のセーフティ機能を担ってきた。在籍者数は、平成26年3月末で、122.6万人、全小規模事業者の約4割を占める。
その共済制度が、創設50周年となる本年、事業承継の円滑化の観点から制度の見直しを予定している。ここでは、中小企業政策審議会 中小企業経営支援分科会 共済小委員会において、平成26年3月3日(火)に取りまとめられた報告書の中身を簡単に紹介する。(平成27年3月に「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律等の一部を改正する法律案」として、第189回通常国会に提出。)
●小規模事業者の経営者の退職金制度
小規模企業共済制度は「経営者の退職金制度」とも呼ばれており、小規模事業者の経営者を対象に、廃業や引退時に備えて、毎月資金の積立を行う共済制度である4。
事業活動を止めた後の小規模事業者の生活の安定を容易にすることを目的としており、個人事業の廃止、会社等の解散など、廃業に至る場合について、A共済事由として最も手厚い共済金を支給している。また、65歳以上かつ180ヶ月以上掛金を納付した場合(老齢給付)については、B共済事由として、廃業に次いで高い共済金を支給している。
他方、個人事業者については、親族(配偶者又は子)に事業を譲渡した場合、会社の役員については、死亡、疾病や負傷などの理由以外で退任をした場合は、準共済事由として、掛金相当額が支給されることとなっている。
4 小規模企業共済制度の加入メリットとして、〔1〕税制措置、〔2〕貸付制度の2点が存在。
〔1〕税制措置:掛金は全額所得税控除の対象。共済金は退職所得扱い(一括支給の場合)又は公的年金等の雑所得扱い(分割支給の場合)の対象。
〔2〕貸付制度:積み立てた掛金総額の7〜9割の範囲で、1000万円を上限に、低利、かつ、無担保・無保証の融資を受けることが可能。
●事業承継の円滑化に向けた共済事由の見直し
近年、在籍者のうち60歳以上の契約者の割合が5割近くを占めるなど、契約者の高齢化が進んでおり、事業の承継が重要な経営課題となってきている。
このため、「事業の承継」を事業の廃止と同列に明確に位置付け、事業承継に関する共済事由を引き上げることで、事業承継の円滑化を図ることを検討している。
1つ目の見直しが、個人事業者の親族内承継の共済事由の引き上げである。
現行制度では、個人事業者が子・配偶者以外の者へ事業を承継した場合はA共済事由となっている。一方、子・配偶者へ事業を承継した場合は、引退後、新たに経営者となった子・配偶者に扶養してもらえるとの観点から、準共済事由としており、支給される共済金が低くなっている。
しかしながら、事業の承継後、新経営者の半数超は、先代へ資金援助をしていないというアンケート結果が出ており、必ずしも元経営者は、子・配偶者からの扶養を受けていない実態が推察される。
こうした点を踏まえ、事業承継を、より一層円滑に進めて行くため、子・配偶者への事業承継に係る共済事由を引き上げる。これにより、個人事業者が事業を承継した場合については、承継先に関わらずA共済事由となるため、廃業時と同様の共済金を支給することとなる。
2つ目の見直しが、65歳以上の会社の役員の退任の共済事由の引き上げである。
現行制度では、65歳以上かつ180ヶ月以上掛金を納付した場合は、B共済事由となる。一方、会社等の役員が任意で退任した場合には、様々な生活資金のニーズが生じることが想定されるが、65歳以上であっても、180ヶ月以上掛金を納付していなければ、準共済事由となってしまう。このため、180ヶ月の条件を満たすまで、会社等役員の地位にとどまり続けることを促すことになっている面がある。
一定の年齢をもって、役員等を退任し、後進に道を譲ることは、事業経営を継続し、企業活力を増大させるという点で、事業承継と同様の意義を有している。こうした点を踏まえ、65歳以上の役員が任意に退任した場合については、B共済事由とすることとしている。
●廃業の円滑化支援のための貸付制度の拡充
事業承継を円滑化する措置に加えて、廃業を決断した事業者向けの措置も検討している。それが「廃業準備貸付け(仮称)」である。
従来より、小規模企業共済制度には、積み立てた掛金総額の一定の範囲で、低利・無担保・無保証の貸付制度が設けられている。
今般、廃業を決断した事業者の円滑な廃業を支援するため、共済貸付制度を拡充し、事前準備の段階での資金の手当てを支援する措置を法改正と併せて創設することを検討している。
前の項目に戻る | 次の項目に進む |