編集後記 

編集後記

51年の中小企業白書の歴史上、最も分厚い白書…。

縦に置くと立つため、「立つ白書」とも言われている。


なぜこんなに分厚い白書になってしまったか。それは、51年ぶりの基本法たる「小規模企業振興基本法」の提出という、中小企業政策史における大きなパラダイムシフトの中で、「小規模事業者のために、あれも書こう、これも書こう」とどんどん追加しているうちに、気がついたら、800ページ近くになっていた…。


昨年8月から構想を練り、昨年10月からは、全国、とりわけ過疎の地の小規模事業者の経営者、約100名の方々から直接お話を伺い、現状や課題、目指すべき方向性などを伺ってきた。さらに、約2万社の中小企業・小規模事業者の方々にアンケートを実施させていただいた。


この小規模事業者ヒアリングやアンケートから浮かび上がってきたのは、人口減少・少子高齢化で国内市場が縮小する中でも、懸命に努力して、地域の需要やニーズに対応し販路開拓に取り組んでおられる姿であった。それは、例えて言うならば、「下りのエスカレーターで、いつも同じ位置にいて、こちらに手を振っている人」とも言えよう。すなわち、国内需要が縮小する中で、会社の規模や組織体は現状のまま維持するだけでも、常に努力し続けなければならないという厳しい現実に、人知れず立ち向かう姿であった。


一方で、ある中山間地域の小規模事業者の方の言葉が忘れられない…「我が町は、人口減少・少子高齢化で、もはや未来はありません…」。本当にそうだろうか?もう、打つ手はないのだろうか?


「あきらめるのは、まだ早い!」というのが、今回の白書で、我々が最も伝えたかったメッセージである。白書の中でも、小規模事業者の一つの「生きる道」として、少子高齢化や過疎化といった地域特有の社会的課題の解決を自らの事業として取り組むことで、「社会価値の創造」と「企業価値の創造」の好循環を生んでいる力強い小規模事業者を紹介している。


中小企業・小規模事業者を支援する側も、まだまだやれること、やるべきことはたくさんある。その一つが、白書でも書かせていただいた「国・都道府県・市区町村の連携」であり、それを促進するためのアイデアが「施策マップ」である。新しいアイデアを提案するのは誰でもできる、しかしながら、国・都道府県・市区町村が、この「施策マップ」という取組をしっかりと続けていけるかどうか、我々行政の本気度が試されていると言っても過言ではない。


また、地域活性化の切り札として、「コネクターハブ企業(地域中核企業)」という概念、及び、「地域産業構造分析システム」を白書の最終章(第4部第3章)で紹介した。この「コネクターハブ企業」という概念が、国や地方自治体が地域産業政策や地域活性化政策を立案する際に、普通に議論されるようになれば、これまでの政策立案の在り方が変わるのではないか。また、「地域産業構造分析システム」に基づいて、企業間取引ネットワークや産業構造を可視化したときに、地方自治体同士の政策連携の在り方が変わるのではないか、そんな可能性と期待を秘めている。


現在開発中の「地域産業構造分析システム」については、白書執筆時(本年1月〜3月)から、さらに進化を遂げている。民間調査会社が有する企業間取引に係るビッグデータに加えて、ヒトの移動がわかる携帯位置情報やカーナビ情報まで加える方向で現在検討を進めている。このシステムがどんなものになるか、楽しみに待っていていただきたい。


今回の白書は、「小規模事業者への応援歌」という副題にあるように、中小企業・小規模事業者の方々の笑顔の顔写真、約6,600枚を活用し、コラージュという手法で、全国津々浦々の小規模事業者の方々を応援する表紙を作らせていただいた。この「顔写真」プロジェクトにご協力いただいた全ての方々に、この場を借りて御礼を申し上げたい。


最後に、今回の歴史上最も分厚い白書の執筆に、昼夜を分かたず、懸命に取り組んでくれた調査室のメンバーに心より感謝を申し上げて、編集後記としたい。


2014年6月18日
中小企業庁事業環境部
調査室長 早田 豪

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