付注 
付注1-1-1 規模別販売価格上昇率、仕入価格上昇率及び価格転嫁力指標上昇率の推計

ここでは、日銀短観の販売価格DI及び仕入価格DIの回答企業割合(「上昇」、「持ち合い」及び「下落」)を用いて、企業規模別の販売価格上昇率及び仕入価格上昇率を推計する方法について説明する1

1 本推計は、主に鎌田・吉村(2010)に基づいている。

1. 前提

〔1〕 企業が実感している価格上昇率の母集団は正規分布に従う。

〔2〕 実感している価格上昇率がある閾値(±c%)を超えた場合、企業は「上昇」又は「下落」と答える。

〔3〕 閾値cは企業規模に依存しない。

〔4〕 企業が実感している価格上昇率と、実際の回答(上昇、持ち合い、下落)の間にはバイアス(販売価格には下方バイアス、仕入価格には上方バイアス)が存在する。

〔5〕 企業が実感する価格上昇率の期間平均は、実際の価格上昇率の期間平均と一致する。

〔6〕 企業が実感する価格上昇率の標準偏差の期間平均は、全期間を通じた実際の価格上昇率の標準偏差と一致する。

2. 販売価格上昇率の推計

企業規模ii=1,2,3)に属する企業のうちt期に販売価格が「上昇」と回答した企業の割合をr1it、「下落」と回答した企業の割合をr3it、上昇していると感じ、かつ、実際に「上昇」と回答した企業の割合(不偏回答率)をρit、企業物価指数(工業製品)の上昇率をπt、その標準偏差をσπ、観測期間(ここでは、1975年第1四半期から2013年第4四半期までの156四半期)をT、標準正規分布の累積密度関数をΦ(・)とすれば、企業規模iに属する企業の販売価格上昇率の母集団平均μitとその標準偏差σitは以下のようにして算出できる。

前提〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕より、

付注1-1-1 規模別販売価格上昇率、仕入価格上昇率及び価格転嫁力指標上昇率の推計

ここで、α'it、βitを以下のように定義する。

付注1-1-1 規模別販売価格上昇率、仕入価格上昇率及び価格転嫁力指標上昇率の推計

(1)〜(4)式をμitとσitについて解くと、

付注1-1-1 規模別販売価格上昇率、仕入価格上昇率及び価格転嫁力指標上昇率の推計

前提〔5〕及び〔6〕より、

付注1-1-1 規模別販売価格上昇率、仕入価格上昇率及び価格転嫁力指標上昇率の推計

ここで、企業規模iに属する企業の売上シェアをsiとし、中小企業(i=1)の売上シェアをsx、中堅企業(i=2)の売上シェアをsy、大企業(i=3)の売上シェアをsz、これらの企業が実感する販売価格上昇率の共分散をそれぞれσ2xt,yt,σ2yt,zt,σ2xt,ztとすれば、全企業規模合計の販売価格上昇率の母集団平均μt及びその標準偏差σtは、次のように定義される。なお、各企業規模の売上シェアには、日銀短観の企業規模別売上高(2010年度、実額)を用いた。

付注1-1-1 規模別販売価格上昇率、仕入価格上昇率及び価格転嫁力指標上昇率の推計

したがって、

付注1-1-1 規模別販売価格上昇率、仕入価格上昇率及び価格転嫁力指標上昇率の推計

(11)式、(12)式からcを消去すると、

付注1-1-1 規模別販売価格上昇率、仕入価格上昇率及び価格転嫁力指標上昇率の推計

ただし、ψxyは中小企業が実感する販売価格上昇率と中堅企業が実感する販売価格上昇率の相関係数、ψyzは中堅企業が実感する販売価格上昇率と大企業が実感する販売価格上昇率の相関係数、ψxzは中小企業が実感する販売価格上昇率と大企業が実感する販売価格上昇率の相関係数で、それぞれ以下の条件を満たす。

付注1-1-1 規模別販売価格上昇率、仕入価格上昇率及び価格転嫁力指標上昇率の推計

特に、ψxy=1かつψyz=1かつψxz=1の場合、(13)式は次式のように簡略化される。

付注1-1-1 規模別販売価格上昇率、仕入価格上昇率及び価格転嫁力指標上昇率の推計

ここで、ρitを以下のように定義する。

付注1-1-1 規模別販売価格上昇率、仕入価格上昇率及び価格転嫁力指標上昇率の推計

ただし、

付注1-1-1 規模別販売価格上昇率、仕入価格上昇率及び価格転嫁力指標上昇率の推計

ここで、(3)式、(4)式、(16)式を(15)式に代入すれば、θが得られる。


さらに、(11)式を変形すると、

付注1-1-1 規模別販売価格上昇率、仕入価格上昇率及び価格転嫁力指標上昇率の推計

(3)式、(4)式、(16)式を(18)式に代入すれば、cが得られる。

最後に、(18)式を(5)式と(6)式に代入すれば、μitとσitが得られる。

3. 仕入価格上昇率の推計

企業規模ii=1,2,3)に属する企業のうちt期に仕入価格が「上昇」と回答した企業の割合をr1it、「下落」と回答した企業の割合をr3it、下落していると感じ、かつ、実際に「下落」と回答した企業の割合(不偏回答率)をρit、企業物価指数(素原材料+中間財)の上昇率をπt、その標準偏差をσπ、観測期間(ここでは、1975年第1四半期から2013年第4四半期までの156四半期)をT、標準正規分布の累積密度関数をΦ(・)とすれば、企業規模iに属する企業の仕入価格上昇率の母集団平均μitとその標準偏差σitは以下のようにして算出できる。

前提〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕より、

付注1-1-1 規模別販売価格上昇率、仕入価格上昇率及び価格転嫁力指標上昇率の推計

ここで、αit、β'itを以下の様に定義する。

付注1-1-1 規模別販売価格上昇率、仕入価格上昇率及び価格転嫁力指標上昇率の推計

(1)〜(4)式をμitとσitについて解くと、

付注1-1-1 規模別販売価格上昇率、仕入価格上昇率及び価格転嫁力指標上昇率の推計

前提〔5〕及び〔6〕より、

付注1-1-1 規模別販売価格上昇率、仕入価格上昇率及び価格転嫁力指標上昇率の推計

ここで、企業規模iに属する企業の売上シェアをsiとし、中小企業(i=1)の売上シェアをsx、中堅企業(i=2)の売上シェアをsy、大企業(i=3)の売上シェアをsz、これらの企業が実感する仕入価格上昇率の共分散をそれぞれσ2xt,yt、σ2yt,zt、σ2xt,ztとすれば、全企業規模合計の仕入価格上昇率の母集団平均μt及びその標準偏差σtは、次のように定義される。なお、各企業規模の売上シェアには、日銀短観の企業規模別売上高(2010年度、実額)を用いた。

付注1-1-1 規模別販売価格上昇率、仕入価格上昇率及び価格転嫁力指標上昇率の推計

したがって、

付注1-1-1 規模別販売価格上昇率、仕入価格上昇率及び価格転嫁力指標上昇率の推計

(11)式、(12)式からcを消去すると、

付注1-1-1 規模別販売価格上昇率、仕入価格上昇率及び価格転嫁力指標上昇率の推計

ただし、ψxyは中小企業が実感する仕入価格上昇率と中堅企業が実感する仕入価格上昇率の相関係数、ψyzは中堅企業が実感する仕入価格上昇率と大企業が実感する仕入価格上昇率の相関係数、ψxzは中小企業が実感する仕入価格上昇率と大企業が実感する仕入価格上昇率の相関係数で、以下の条件を満たす。

付注1-1-1 規模別販売価格上昇率、仕入価格上昇率及び価格転嫁力指標上昇率の推計

特に、ψxy=1かつψyz=1かつψxz=1の場合、(13)式は次式のように簡略化される。

付注1-1-1 規模別販売価格上昇率、仕入価格上昇率及び価格転嫁力指標上昇率の推計

ここで、ρitを以下のように定義する。

付注1-1-1 規模別販売価格上昇率、仕入価格上昇率及び価格転嫁力指標上昇率の推計

ただし、

付注1-1-1 規模別販売価格上昇率、仕入価格上昇率及び価格転嫁力指標上昇率の推計

ここで、(3)式、(4)式、(16)式を(15)式に代入すれば、θが得られる。


さらに、(11)式を変形すると、

付注1-1-1 規模別販売価格上昇率、仕入価格上昇率及び価格転嫁力指標上昇率の推計

(3)式、(4)式、(16)式を(18)式に代入すれば、cが得られる。

最後に、(18)式を(5)式と(6)式に代入すれば、μitとσitが得られる。

4. 推計結果

以下に、全規模製造業の推計結果(前期比上昇率とその標準偏差)と対応する企業物価指数の実績値を示す。

付注1-1-1(1) 販売価格上昇率(全規模製造業)

Excel形式のファイルはこちら

付注1-1-1(2) 仕入価格上昇率(全規模製造業)

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5. 規模別価格転嫁力指標上昇率の導出

企業規模iに属する企業のt期の価格転嫁力指標上昇率をΔPit、売上高をSit、材料費をVit、販売価格上昇率をΔPsit、仕入価格上昇率をΔPvitとすれば、

付注1-1-1 規模別販売価格上昇率、仕入価格上昇率及び価格転嫁力指標上昇率の推計

両辺をSitで割って、

付注1-1-1 規模別販売価格上昇率、仕入価格上昇率及び価格転嫁力指標上昇率の推計
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