第4部 中小企業・小規模事業者の支援の在り方 

4. ワンストップでの支援を可能とする連携(「プラットフォーム型の連携」)

以下では、中小企業支援機関同士又は自治体と中小企業支援機関が効果的に連携している事例を紹介する。具体的には、ワンストップでの支援を可能としている「プラットフォーム型の連携」と、支援チーム等を編成してチームで支援する「プロジェクト型の連携」である。

まずは、「プラットフォーム型の連携」について、実際の連携事例を交えながら説明していく。県の中小企業支援センターが中心となって、県下の中小企業支援機関を連携させた事例である。

事例4-1-10. 中小企業支援ネットひょうご

県の財団を中心にワンストップの支援を行える体制を整備

瀬戸内海から日本海にまたがる兵庫県は、県内各地の地勢や産業特性等が様々であり、中小企業支援を行う際に、県内各支援機関の連携が欠かせないとの認識の下、2003年に県の中小企業支援センターである、公益財団法人ひょうご産業活性化センターに、県下の中小企業支援機関を連携させる仕組みとして、「中小企業支援ネットひょうご」を設立した。

「中小企業支援ネットひょうご」は、同センターがリーダーシップをとりながら、技術や経営、金融、雇用等に関する支援を行っている県下18機関26や金融機関等の連携団体をネットワーク化することで、県内企業に対するワンストップでの支援体制が構築されている。

県内企業に対する支援施策等の情報提供については、同センターのウェブサイトに開設された「中小企業支援ネットひょうご」のページを通じて、県下の構成機関の施策をワンストップで閲覧できるようになっている。県内企業は、このサイトを見れば、最寄りの支援機関で提供されていないサービスであっても、自社にとって必要な支援が県内のどの機関で提供されているのかがすぐに分かるため、必要に応じて県内の他の支援機関のサービスを受けることが容易になった。

また、「中小企業支援ネットひょうご」が構成機関を挙げて取り組んでいるのが、個別企業を支援する「成長期待企業発掘・育成支援」事業である。これは、各支援機関に寄せられる年間約10万件の相談等の中から、成長が期待される企業を発掘・育成し、集中的な支援を行うものである。「中小企業支援ネットひょうご」に配置された総括コーディネーターとマネージャーが中心となって開催している月1回の「成長企業発掘・育成委員会」で、成長期待企業の選定を行っている。これまでの取組の中で、300社以上が選定され、現在は約100社を対象に支援を行っている。県内の各支援機関にとっては、自らが支援している企業が成長期待企業に選定されれば、幅広い支援が受けられるようになり、地域の企業の成長を加速させることができるメリットがある。

以上のように、各機関が連携することによるメリットを見いだしながら、県内の中小企業をワンストップで支援するプラットフォームを構築している。

26 〔1〕公益財団法人ひょうご産業活性化センター、〔2〕兵庫県立工業技術センター、〔3〕公益財団法人新産業創造研究機構(NIRO)、〔4〕公益財団法人ひょうご科学技術協会、〔5〕公益財団法人神戸市産業振興財団、〔6〕一般財団法人近畿高エネルギー加工技術研究所(AMPI)、〔7〕公益財団法人先端医療振興財団、〔8〕一般社団法人兵庫県発明協会、〔9〕公益社団法人兵庫工業会、〔10〕兵庫県信用保証協会、兵庫県商工会議所連合会、〔11〕兵庫県商工会議所連合会、〔12〕兵庫県中小企業団体中央会、〔13〕兵庫県商工会連合会、〔14〕一般財団法人兵庫県雇用開発協会、〔15〕独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 兵庫職業訓練支援センター、〔16〕兵庫県職業能力開発協会、〔17〕一般財団法人明石市産業振興財団、〔18〕公益財団法人尼崎地域産業活性化機構

中小企業支援ネットひょうごの支援体制

次に、自治体と信用金庫が連携して、地域の中小企業・小規模事業者にワンストップで対応できる拠点を構築している事例を紹介する。

事例4-1-11. としまビジネスサポートセンター

自治体と地元の信用金庫が協力してワンストップの中小企業支援センターを設置

東京都豊島区は、東京23区の西北部に位置する人口約27万人の都市である。長引く不況に加え、リーマン・ショックに端を発した世界同時不況の影響で、相談業務が複雑・多様化し、より専門的な相談体制の必要性を感じていた。

一方、巣鴨信用金庫では、一般的な金融機関が行う決算書をみて助言を行う融資を中心とした中小企業支援から、より踏み込んだサポート活動を行うことが必要と考え、2009年に地域の事業者の販路拡大に関する相談を中心とした部署「すがも事業創造センター(S-biz)」を立ち上げていた。また同時に、この部署を活用して、取引先に限定されていた相談の対象を地域の事業者の方にも拡大し、地域産業の底上げを図りたいとも考えていた。

互いに課題を抱えていた中で、巣鴨信用金庫から豊島区に「協働で地域の中小企業を支援する仕組みを作らないか」とのアプローチがあり、2010年に「としまビジネスサポートセンター(以下、「ビジサポ」という。)」を設立した。ビジサポは、融資、起業・創業、販路拡大、労務・経営などの多種多様な相談に、専門相談員がワンストップで対応する全国でも類を見ない官民協働の中小企業支援センターである。

特に力を入れているのが「販路拡大」への相談対応であり、相談対応を行っている巣鴨信用金庫の専門相談員は「f-biz27」でOJT研修を受けており、従来の決算書等書類上の「指摘型の支援」ではなく、事業者目線に立った「提案型の支援」を行うことで、中小企業の販路拡大の相談に対応しており、相談件数、認知度ともに年々高まっている。

また、後任についても、「f-biz」で3か月程度OJT研修を受けてから経営相談に当たることにしており、誰が相談に対応しても変わらない体制を構築している。

27 「f-biz」とは、「富士市産業支援センター」のことで、静岡県富士市において、中小企業・小規模事業者からの様々な経営相談にワンストップで支援する体制を構築している公的な支援機関。

としまビジネスサポートセンターの概要

以上のように、中小企業支援機関同士や自治体と中小企業支援機関が連携して、中小企業・小規模事業者をワンストップで支援するプラットフォームを形成している事例は存在している。

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