第4部 中小企業・小規模事業者の支援の在り方 

第2節 中小企業支援機関9

商工会・商工会議所など、従来から中小企業・小規模事業者の支援を担ってきた支援機関は、幅広い経営相談に対応することができる一方で、専門的な分野の指導は必ずしも得意ではないというのが現状である10。また、商工会・商工会議所の経営指導員のレベルもまちまちで、全体的なレベルアップが課題とされている。他方、2012年度から認定支援機関制度がスタートし、専門性の高い税理士や地域金融機関などが中小企業・小規模事業者支援に加わる体制が構築された。本節では、「中小企業支援機関の連携状況と施策認知度に関する調査11」に基づき、商工会・商工会議所を含めた中小企業支援機関全体の現状と課題について、分析を行っていく。

9 「中小企業支援機関」とは、商工会、商工会議所、中小企業団体中央会、都道府県等中小企業支援センター等の既存の中小企業支援機関に加えて、税理士・税理士法人や地域金融機関、NPO法人等の認定支援機関等を含む。

10 商工会・商工会議所の強みと課題については、第4-1-21図、第4-1-22図を参照。

11 中小企業庁の委託により、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)が、2013年11月に中小企業支援機関10,306(商工会・商工会議所・中小企業団体中央会2,306、認定支援機関8,000)を対象に実施したアンケート調査。回収率34.8%。

1. 商工会・商工会議所の現状

第4-1-17図は、商工会の会員数の推移を示したものである。これを見ると、会員数が減少傾向にあることが分かる。

第4-1-17図 商工会の会員数の推移
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第4-1-18図は、商工会議所の会員数の推移を示したものである。これを見ると、商工会と同様に、商工会議所についても、会員数が減少傾向にあることが分かる。

第4-1-18図 商工会議所の会員数の推移
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以上見てきたように、商工会・商工会議所の会員数は、企業数の減少もあり、減少傾向にある。

第4-1-19図は、商工会の収入内訳と経営指導に従事する職員数の推移を示したものである。第4-1-17図で見てきたように、会員数が減少していることもあり、会費収入は減少傾向にあることが分かる。また、都道府県補助金や市町村補助金が年々減少しているため、補助対象の職員である経営指導員・記帳専任職員・記帳指導職員・補助員数も減少していることが分かる。

第4-1-19図 商工会の収入内訳と経営指導に従事する職員数の推移
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また、第4-1-20図は、商工会議所の補助金収入と経営指導に従事する職員数の推移を示したものである。これを見ると、都道府県補助金が年々減少しているため、経営指導に従事している職員数も減少しているのが分かる。

第4-1-20図 商工会議所の補助金収入と経営指導に従事する職員数の推移
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以上より、商工会・商工会議所では、中小企業・小規模事業者の経営課題が多様化する中で、自治体からの補助金額の減少に伴って、経営相談に当たるべき経営指導員が年々減少しており、経営相談に十分に対応できる体制でなくなってきたという現状にある。例えば、人口5万人未満の都市の商工会議所の経営指導員は一人当たり約430者の小規模事業者を抱えている12。加えて、地域振興の活動も経営指導員が行っているケースもあり、仮に経営指導員が巡回指導で1日2者の会員企業を訪問したとしても、1年間で1回しかその企業を訪問できないことになる。

以上のように、都道府県補助金等の減少で、現状では十分な経営指導の体制が整っているとはいいがたい商工会・商工会議所ではあるが、以下のように、経営指導員の育成を行うことで、指導体制を充実させ、会員数及び組織率を伸ばしている事例もある。

12 日本商工会議所調べの資料に基づく。人口100万人以上の都市では平均1,514.5者、人口20万人以上100万人未満の都市では933.9者、人口10万人以上20万人未満の都市では平均704.2者、人口5万人以上10万人未満の都市では563.7者、人口5万人未満の都市では平均426.7者の小規模事業者を一人当たりの経営指導員が抱えている。

事例4-1-5. 沖縄県商工会連合会

経営指導員の育成を通じて、会員数増加及び組織率向上に成功した商工会連合会

沖縄県商工会連合会は、県内34の商工会を管轄しており、県内の経営指導員数は67名、同連合会には16名在籍している。

沖縄県の各商工会では、急速に経営指導員の世代交代が進行し、ベテランの経営指導員のノウハウが充分に移転しないまま経験の浅い若手の経営指導員の割合が増加してしまった。

そのような中、同連合会では、2010年度から経営指導員の支援機能強化への取組として、「経営力向上支援事業」を行うこととした。

経営力向上支援事業とは、県内の経営指導員の中から選ばれた専門経営指導員(スーパーバイザー)が、OJT13を通じて各商工会の経営指導員を育成する事業である。スーパーバイザーには、小規模事業者への経営支援に関する高い知識と経験を有するなどの一定の条件を満たした経験豊富な現役中堅の経営指導員から選抜し任命している。また、任期は最大でも5年間とし、在任中に後任となる人材の育成を促し、人材が固定化しないような工夫も行っている。

スーパーバイザーの業務は会員企業への直接支援ではなく、必要に応じ外部専門家の協力を得て、商工会の経営指導員による主体的な取組をサポートする役割を担っている。具体的には、若手の経営指導員には1年以内に経営革新計画の承認を目標とする「計画型OJT」を行い、ベテラン経営指導員には個別案件に応じてスーパーバイザーがサポートする「課題型OJT」を行っている。

事業の構想段階では、スーパーバイザーが会員企業へ直接支援を行わないのは効率的ではないとの議論もあったが、実際に事業が稼働してからは、経験年数1年未満の経営指導員が単独で2件の経営革新計画の作成支援を行うなどの成果が現れている。また、各商工会が、難易度の高い案件や非会員からの創業の相談にも積極的に応じるようになり、会員非会員を問わず、商工会へ相談しやすい雰囲気づくりにもつながった。こうした取組が地域の事業者に広く受け入れられ、2013年11月現在、沖縄県内全商工会の会員数が、1999年以来14年ぶりに2万人を突破し、組織率も62.9%(対前年比2.3%増)に達するなど、県内の小規模事業者数が減少する中で、会員数の増加、組織率の向上を果たしている。

13 「OJT」とは、「On-the-Job Training」の略で、職場内で管理監督者の下、具体的な業務を通じて、業務に必要な知識・技術・技能・態度などを計画的、継続的に身に付ける活動のことをいう。

平成25年度沖縄県商工会連合会「経営力向上支援事業」実施体制

次に、商工会・商工会議所の強みと課題について概観していく。第4-1-21図は、商工会・商工会議所に聞いた、商工会・商工会議所の強みを示したものである。これを見ると、商工会・商工会議所共に、「地域に密着した「顔の見える」支援」、「幅広い相談に対応可能」、「小規模企業支援のノウハウを持っていること」との回答が多いことが分かる14。商工会・商工会議所は、古くから全国津々浦々の市町村で、地元に根ざした中小企業・小規模事業者支援を行っており、まさに事業者からは顔が見え、幅広い相談に応じてくれる「かかりつけ医」のような存在として位置付けられている。今回、2014年3月7日に閣議決定された、小規模企業振興基本法案は、「事業の持続的な発展」を目指す小規模事業者の支援を目的としているが、市町村など支援の現場における中核機能は、まさに商工会・商工会議所が果たしていくべき役割といえる。

14 1位から3位を回答してもらった中で、1位に回答されたものを集計した結果についても、「地域に密着した「顔の見える」支援」、「幅広い相談に対応可能」、「小規模起業支援のノウハウを持っていること」が多く回答されている。詳細については、付注4-1-1を参照。

第4-1-21図 商工会・商工会議所の強み(複数回答)
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以下では、「地域に密着した「顔の見える」支援」を行っている商工会議所を紹介する。

事例4-1-6. 久留米商工会議所

経営革新計画の策定支援を通じた信頼関係の構築により、伴走型の企業支援に取り組む商工会議所

久留米商工会議所(会員数4,950人、組織率約50%)は、2005年「中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律(新事業活動促進法)」施行等を契機に、「支援機関も競争と淘汰の時代である」との危機感を強め、経営指導員による地域密着の顔の見える伴走型支援の機能強化を通じて、地域の中小企業・小規模事業者の満足度の向上を図ってきた。

具体的には、商品開発、経営革新の取得から商談会でのマッチングまで、中小企業・小規模事業者の成長段階に応じた支援を行っている。

初めに、中小企業・小規模事業者の経営者や後継者等を対象とした「新久留米商人塾」を開催した。「新久留米商人塾」は、中小企業・小規模事業者が抱える経営課題や外部環境を把握することから始め、最終的に経営革新計画の策定に結び付けることを狙いとした講座である。開始当初は他地域に先駆けた講座であったため、周辺市町村の意欲ある事業者も受け入れてきた。2013年度末には32回を重ね、受講生は約500名に上り、経営革新計画の策定事業者は約150者を数えている。

その後、経営革新計画を策定できた事業者を支援する講座として「くるめ経営道場」を開催した。「新久留米商人塾」に参加し、経営革新計画を承認済みの農業事業者や中小企業・小規模事業者や農業事業者らの連携を創出、農商工連携等支援事業の承認等に結び付けた。

更に、経営革新計画の承認を得た事業者の販路開拓を支援するため、福岡県南地域の7商工会議所・4金融機関との連携の下、「ちくごビジネス交流会」を主催した。参加企業は、経営革新計画の承認を受けた事業者のうち、計画に基づく商品を提供可能な者に限定した。福岡県全域や九州地方、全国レベルといった、より広域の展示商談会に持ち込む前段階の場を提供した。また、商品に対する評価を受ける場としての機能を強化させた「ちくごバイヤー求評会(バイヤー15社が一堂に会し、1社15分程度で商品に対する評価を受ける会)」や、個別商談会形式で行う「毎月が商談会(バイヤー1社に対し中小企業1社が30分程度のプレゼンを行う商談会)」を開催するなど、現在では、より個別企業に密着した支援を行っている。

同商工会議所は、このような一貫した支援体系を構築することで、商工会議所への相談が1回限りの経営相談、政府系金融機関の紹介、記帳業務のような単発支援で終わるケースが多い中、経営革新計画の策定を足掛かりに、経営指導員が当該事業者もまだ認識していない経営課題の本質をともに理解し、一歩踏み込んだ助言を行うとともに、経営状況にかかわらず、常に頼れる存在として認知してもらえる関係性の構築に成功している。

ちくごバイヤー求評会

コラム4-1-2.

商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律の一部を改正する法律案(小規模企業支援法)について

小規模事業者は、全国的に、少子高齢化や製造業の海外移転による需要低下、海外の安価な製品との競争激化等の厳しい経営環境に置かれている。そのような中で、小規模事業者が経営を続けていくためには、顧客ニーズをしっかりと把握した上で、独自の付加価値を提供できるように創意工夫を講じていく必要がある。今回の「商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律(小規模企業支援法)」の改正は、意欲を持ってそのような取組を行おうとする小規模事業者を支援する体制を商工会・商工会議所を通じて全国に整備することを目的としている。

全国の市町村にある商工会・商工会議所は、50年以上にわたり、日常的に小規模事業者の経営相談に応じ、指導を行ってきている。その内容は、記帳から融資のあっせん、経営革新の支援まで多岐にわたる。今回の改正では、中でも上記のような小規模事業者による意欲的な取組を支援するため、〔1〕マーケティング調査、〔2〕事業者の経営診断(強みの分析)、〔3〕ビジネスプランの作成・実行支援、さらには、〔4〕事業者を集団として支援するための販路開拓イベントの開催等を、商工会・商工会議所の役割として位置付け、そのような支援を行う能力・体制を備えた商工会・商工会議所が策定した「経営発達支援計画」を認定することとしている。コラム4-1-2〔1〕図は、商工会・商工会議所が行うマーケティング調査や経営診断のイメージ図である。

また、商工会・商工会議所が支援を行うにあたっては、単独で行うのみならず、地域にある他の経営支援機関(都道府県等中小企業支援センター、中小企業診断士協会等)や、地域の振興団体(観光協会、公設試験研究所等)、都道府県・市区町村、地方銀行・信用金庫・信用組合、NPO法人、さらには民間企業や大学、農協等とも連携・提携して、地域の産業構造に合った、実効性のある経営支援体制を整えることが期待される。

今後、多くの商工会・商工会議所が認定の取得に向けて体制の整備を進め、全国的に小規模事業者の意欲的な取組を支援する環境が整っていくことが望まれる。

なお、コラム4-1-2〔2〕図は、今後の商工会・商工会議所を中核とした支援のイメージ図であり、コラム4-1-2〔3〕図は、小規模事業者を地域ぐるみで支援する体制図である。

コラム4-1-2〔1〕図 マーケティング調査、経営診断イメージ
コラム4-1-2〔2〕図 商工会・商工会議所を中核とした連携体による支援イメージ
コラム4-1-2〔3〕図 地域ぐるみで小規模事業者を支援する体制

第4-1-22図は、商工会・商工会議所に聞いた、商工会・商工会議所の課題を示したものである。これを見ると、「財源の不足」、「指導人員の不足」、「経営指導員の能力の差異」、「専門的知識の不足」が多く回答されており、財源や人員などの経営資源が不足しているのが分かる。また、経営指導員の能力に差があることや、専門的な知識が不足していることも回答されており、経営指導員の能力向上のための研修制度の充実や、地域金融機関や税理士等の専門的な支援機関との連携が必要といえよう。

第4-1-22図 商工会・商工会議所の課題
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以上、商工会・商工会議所の現状、強み、課題について見てきた。既に言及したように、市町村など支援の現場における中核機能は、まさに商工会・商工会議所が果たしていくべき役割であるとともに、経営指導能力の向上や専門的な相談に対する中小企業支援機関との連携などを強化することにより、中小企業・小規模事業者が相談に訪れたくなるような「場」になっていくことが求められているといえよう。

以下では、独自の専門的な指導に取り組み、中小企業・小規模事業者の満足度を向上させた商工会の事例を紹介する。

事例4-1-7. 滋賀県商工会連合会

経営指導員の育成に取り組んでいる商工会連合会

滋賀県商工会連合会は、県内22の商工会を管轄している。滋賀県からの補助金が県連に一括交付化され、それに伴う補助金対象職員の人事一元化を契機に、2009年度から県内22商工会の職員に関する「人事制度改革」を本格的に実施、経営指導を行うスタッフの能力向上に向けて各商工会に任せていた人材育成に関し、県連が取り組むこととなった。

県内の中小企業・小規模事業者にとっては、地域を巡回する経営指導員等の社外のスタッフが経営のよりどころとなる重要な存在である。つまり、そのスタッフがレベルアップすることが、中小企業・小規模事業者の維持発展につながり、ひいては地域振興につながるということを目指している。

滋賀県商工会連合会では、職員全員が経営指導を行えるようにすること、そして、どの分野の経営相談にも対応できるようにすることを人材育成の目標として、従来の役職にかかわらず、商工会所属の事務を担当する職員を含めて、職員全員が経営指導のスタッフとなれるようにすることを考えた。そこで、独自にT級からY級までの階級を整備し、それぞれの階級において目標や評価基準を明示した。そして、それらに基づいて人事評価を行い、処遇や次年度に取り組む業務に反映していった。これらによって、職員の意識改革が進み、現在は当時の職員の大半が、経営指導のスタッフとして活躍している。

また、どの分野の経営相談にも対応できる「かかりつけ医」のような存在になるためには、幅広い分野で高度な専門的経営支援ができるようになる必要があるとの認識の下、経営支援に必要な専門分野を八つ設定し、それらを年間に2分野ずつ、研修等による「知識」の習得と現場での実践を組み合わせながらマスターしていき、また別の専門分野の能力を高めていくということを繰り返し、「かかりつけ医」を目指す仕組みを構築していく。

一連の人材育成の体系が確立され、数年が経過したことで、県内各地の商工会の現場では、女性の事務職員から経営指導スタッフに登用されるケースも数多く出てきている。また、商工会の職員全員が経営指導スタッフということになり、地域の企業からは、商工会のサービスが向上したという評価が得られている。

経営支援事例発表会の様子
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