第4部 中小企業・小規模事業者の支援の在り方 

3. 広域連携の状況

ここからは、都道府県同士の連携(広域連携)について見ていく。今回は、便宜上、広域連携の範囲を「隣接都道府県」ということでアンケート調査を行ったが、実際の連携は、必ずしも「隣接都道府県」だけに限られないことに留意が必要である。

第4-1-12図は、隣接都道府県との連携状況を示したものである。これを見ると、「多くの支援分野で連携している」又は「一部の支援分野で連携している」と回答した都道府県は6割を超えており、隣接都道府県との連携は、比較的活発に行われていることが分かる。

第4-1-12図 隣接都道府県との連携状況
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第4-1-13図は、第4-1-12図で「多くの支援分野で連携している」又は「一部の支援分野で連携している」と回答した都道府県が、隣接都道府県と連携したことのある支援分野を示したものである。これを見ると、「ものづくり・技術の高度化支援」、「下請中小企業の振興」、「海外展開支援」と回答した都道府県の割合が多いことが分かる。最も回答割合の高かった「ものづくり・技術の高度化支援」でいえば、公設の工業試験場の共同利用(富山県、石川県、福井県で機器の相互利用を実施)が例として挙げられる。また、「下請中小企業の振興」でいえば、下請中小事業者の新たな販路開拓を広域で連携して行うこと(特定下請認定事業計画の認定)(愛知県、岐阜県の事業者が共同で認定)などが例として挙げられる。また、「海外展開支援」の分野では、海外での共同事務所の設置(韓国のソウルに北海道、青森県、岩手県、秋田県で共同事務所を設置)等が例として挙げられる。

第4-1-13図 実際に隣接都道府県と連携したことのある分野(複数回答)
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第4-1-14図は、第4-1-12図で「多くの支援分野で連携している」又は「一部の支援分野で連携している」と回答した都道府県が、隣接都道府県と連携したことで得られた効果を示したものである。「より効果的な施策を実施できた」、「他の自治体の施策を学ぶことができた」、「資金面の負担が軽減された」と回答した都道府県が多い。また、「特に効果はなかった」と回答した都道府県はなく、連携することで何らかの効果があることが分かる。このことから、今後、様々な分野で、隣接都道府県同士の連携は増えていくことが期待される。

第4-1-14図 隣接都道府県と連携したことで得られた効果(複数回答)
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第4-1-15図は、第4-1-12図で「どちらとも言えない」又は「連携する必要性は感じているが、連携はしていない」と回答した都道府県が、隣接都道府県との連携を推進する際の課題を示したものである。「連携するための財源が不足している」、「連携するためのインセンティブが不足している」、「隣接都道府県の施策をあまり理解していない」と回答した都道府県が多い。興味深いのは、連携するために財源やインセンティブを前提としている都道府県が多いことである。隣接都道府県の施策をあまり理解していないという都道府県も一定程度いるが、まずは、お互いの施策をよく知ることから始めるべきではないだろうか。よく知ることにより、必ずしも財源がなくても連携できる分野やインセンティブを見いだせる可能性もある。また、「連携するためのコーディネーターが不足している」と回答した都道府県もあり、地域を管轄している経済産業局などがコーディネーター役となって、連携を促進することが求められるといえよう。

第4-1-15図 隣接都道府県との連携を推進する際の課題
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さらには、2014年度から全国47の都道府県に設置する「よろず支援拠点」のコーディネーターが、都道府県の行政区域を超えて、様々な分野で連携を推進する「媒体」としての役割を担っていくことを期待したい。

第4-1-16図は、第4-1-12図で「どちらとも言えない」又は「連携する必要性は感じているが、連携はしていない」と回答した都道府県が、今後、隣接都道府県と連携することにより、効果があると考えている支援分野を示したものである。連携すると効果があると考えられる支援分野としては、「海外展開支援」と回答した都道府県が最も多い。具体的な内容を聞いてみると、「共同での展示会の出展(石川県、奈良県、愛媛県、島根県、山口県)」、「バイヤーの招へい(愛媛県)」、「他県が持つネットワークの活用(島根県)」、「海外事務所の共同利用(石川県、山口県)」などに効果があるという意見があった。

第4-1-16図 隣接都道府県と連携することによる効果があると考えられる支援分野(複数回答)
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以下では、経済産業局が主導して、地域の自治体を連携させることで、対日投資・対外投資支援を促進している事例を紹介する。

事例4-1-4. グレーター・ナゴヤ・イニシアティブ

広域連携による対日投資・対外投資の推進

グレーター・ナゴヤ・イニシアティブ(以下、「GNI」という。)は、2006年に、中部経済産業局の主導により開始された、対日投資促進を目的とする活動のことである。GNI活動を推進するために、中部経済産業局、愛知県、三重県、岐阜県、名古屋市を中心に、大企業や大学など様々な機関が参加して、GNI協議会を設立。現在は、運営を担当しているGNI協議会と中部経済産業局が連携して各種事業を展開している。とりわけ海外とのやり取りが必要な場合、国の機関としての「経済産業省」のネームバリューを活用できることが大きなメリットとなる。

2006年のGNI設立当時の事業は、対内直接投資が中心だったが、2010年度より、時代の潮流を踏まえ、地元企業の海外展開にも取り組むようになっている。連携機関は、愛知県、三重県、岐阜県、名古屋市の3県1市の他、岐阜市、津市、豊橋市など、外資系企業の誘致に取り組む自治体が賛同市として参加している。また、産業界からは、中部経済連合会や名古屋商工会議所のほか、津商工会議所、豊田商工会議所も参加している。

GNIでは、海外の経済団体や産業クラスターと連携し、双方の会員企業を引き合わせる「国際マッチング」を国内外で実施し、複数の自治体にまたがる広域連携のもとで、海外企業と地元企業との橋渡しに取り組んでいる。2013年6月には、フランスのパリでヴァルドワーズ県経済振興委員会8会員と名古屋商工会議所会員との合同マッチングを実施した。また、アジア展開支援に取り組む六つの信用金庫と連携し、2013年9月のタイでのミッションにて、同国投資委員会の産業連携促進ユニットとGNI会員企業のマッチングを行った。

こうした海外企業とのマッチング活動や海外へのミッション派遣等の活動により、2006年の開始以来、105社の誘致に成功している。

また、海外展開については、食品関連産業の展示会や我が国の伝統工芸品を集めた海外向け通販サイト「NIHON ICHIBAN(ニホンイチバン)」を企画運営するゾェルゲル・ニコラ氏とのマッチングを行い、海外への販売実績が増えた企業が9社出るなど、徐々に成果も出始めている。

8 フランスのヴァルドワーズ県にある経済振興委員会のこと。

フランス企業とのマッチングの様子
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