第3部 中小企業・小規模事業者が担う我が国の未来 

3. ITを活用した資金調達の現状

次に、ITを活用した資金調達の現状について、国内の現状と海外の現状について見ていこう。

●国内の現状

国内には多数の資金調達サイトが存在しており、その全ての状況を把握することは困難である。主な資金調達サイトの実績については、第3-5-44図のとおりである。国内では立ち上がり始めた市場であるため、企業の資金調達規模としては決して大きなものとはなっていないが、今後拡大していくことが予想される。

第3-5-44図 主な資金調達サイトの出資総額

資金調達サイト数について、「寄付型」、「商品・サービス購入型」については、資金調達サイト運営事業者に対する金融商品取引法の規制がないため、新しい資金調達サイトも次々と登場しているが、「事業投資型」、「貸付型」については、資金調達サイト運営事業者に対する金融商品取引法の規制があるため、現状、資金調達サイト運営事業者数自体は数社程度となっている。第186回通常国会(平成26年通常国会)において金融商品取引法の改正が予定されており、そのタイミングで、「事業投資型」の資金調達サイト運営事業者数が増加する可能性がある(コラム3-5-6参照)。

コラム3-5-6.

金融商品取引法改正

第186回通常国会(平成26年通常国会)において金融商品取引法の改正が予定されている。金融商品取引法の改正の方向性について、『金融審議会「新規・成長企業へのリスクマネーの供給の在り方等に関するワーキング・グループ」報告書(平成25年12月25日)』に、以下のとおり記載されている(一部抜粋)。

(1) 仲介者参入要件の緩和

第一種金融商品取引業のうち、非上場株式の募集又は私募の取扱いであってインターネットを通じて行われる少額37のもののみを行う者を「特例第一種金融商品取引業者」と、また、第二種金融商品取引業のうち、ファンド持分の募集又は私募の取扱いであってインターネットを通じて行われる少額のもののみを行う者を「特例第二種金融商品取引業者」とそれぞれ位置付け、財産規制等を緩和することが考えられる。

なお、こうした措置を講じる際には、併せて、非上場株式の募集又は私募の取扱いを原則禁止している日本証券業協会の現行の自主規制を緩和し、非上場株式の募集又は私募の取扱いのうち、インターネットを通じて行われる少額のものについては、既存の第一種金融商品取引業者又は特例第一種金融商品取引業者が行えるように禁止措置を解除することが適当である。

(2) 投資家保護のための必要な措置

インターネットを通じて非上場株式又はファンド持分の募集又は私募の取扱いを行う仲介者(既存の金融商品取引業者及び前記(1)で述べた特例業者)に対して、発行者38に対するデューデリジェンス39及びインターネットを通じた適切な情報提供等のための体制整備並びにインターネットを通じた発行者や仲介者自身に関する情報の提供を義務づけるとともに、当該情報の提供を怠った場合等における罰則を整備することが適当である。

37 「少額」の範囲とは、「発行総額1億円未満かつ一人当たり投資額50万円以下」とすることが考えられる。

38 ここでの「発行者」とは、非上場株式の募集又は私募の取扱いであってインターネットを通じて行われる少額の資金調達をしようとする企業をいう。

39 「デューデリジェンス」とは、投資などの取引に際して行われる、対象企業への調査活動をいう。

ここで、日本国内のITを活用した資金調達サイト運営事業者を2社紹介したい。株式会社サイバーエージェント・クラウドファンディングは、商品・サービス購入型の資金調達サイトを運営しており、ミュージックセキュリティーズ株式会社は、事業投資型の資金調達サイトを運営している。

事例3-5-11. 株式会社サイバーエージェント・クラウドファンディング

ITを活用した資金調達サイト運営で急成長を遂げる企業

東京都渋谷区の株式会社サイバーエージェント・クラウドファンディングは、プロジェクト実行の資金を、インターネットを通じて集めるウェブサイト「Makuake(マクアケ)」(http://www.makuake.com)の運営企業である。2013年5月の事業開始後、急成長を続けており、支援総額は月次ごとに倍々に増加している。

プロジェクトを開始したい人は、同ウェブサイトからプロジェクトの内容・目標金額等を記入して申請を行う。同社は、諮問委員会を開催し、プロジェクトの魅力、実行体制、過去の実績等を審査する。審査を通過したプロジェクトはウェブサイトに掲載され、魅力を感じた支援者(サポーター)が指定した金額を支払う仕組みとなっている。サポーターは、支払った金額に応じて、あらかじめ決められたリターンを受け取る。リターンには、プロジェクトオリジナルの物品の他、映画のエンドロールに支援者の名前が表示されるなど様々な形式がある。

プロジェクトは、「達成後支援型」と「即時支援型」の2タイプがある。前者は、目標期間中に目標金額が達成できた場合のみプロジェクトが実行され、達成できなかった場合はプロジェクト不成立となり資金調達は実行されない。一方、後者は、目標に達しなかった場合でも資金調達が行われ、リターンも実行される。同社では、5割が「達成後支援型」である。

同社の特徴は、資金調達を成功に導くために、ターゲット選定やウェブサイト上での見せ方、リターン内容等についてきめ細やかな対応を行っていることである。プロジェクト申請者に対して、同社が持つノウハウをもとにコンサルテーションを行うとともに、親会社であるサイバーエージェントが運営する日本最大級のブログサイト「Ameba(アメーバ)」からのサポーター誘導等、様々な支援を行っている。

同社の中山亮太郎(なかやまりょうたろう)社長は「お金が理由でチャレンジできないという状況を全滅させたい。」と語る。そのためにも、「当社のような資金調達方法の認知度を向上させる必要があり、企業向けの広報活動、特に対面での営業に注力していきたい。」と成長に意欲を見せる。

事例3-5-12. ミュージックセキュリティーズ株式会社

融資、株式出資に加え、第三の資金調達方法を提供する事業者

東京都千代田区のミュージックセキュリティーズ株式会社は、マイクロ投資プラットフォーム「セキュリテ」(http://www.securite.jp)を運営する企業である。同ウェブサイトは、資金を調達したい事業者と出資したい人(出資者)をマッチングする機能を提供しており、利用企業数は既に130を超える。

資金調達を希望する事業者は、まずは開示可能な範囲で同社に事業計画書を提出する。同社は、「事業性(収益性、将来性)」と「共感性(事業の魅力)」の観点から審査を行う。審査を通過した場合は、秘密保持契約書を締結の上、ヒアリングや詳細な事業評価を経て、出資の受け皿となるファンド組成が行われる。

出資者は、ウェブサイトに掲載されたファンドの情報を見て、好きな事業を選んで資金を振り込む。同社は、出資者からの取り扱い手数料のほか、ファンド組成の支援を行い、事業者から組成手数料を受け取る。

同社の特徴は、物品の購入や寄付ではなく、出資という形態を取ることで、資金調達という目的を明確にしていることである。この仕組みを構築するため、同社は第二種金融商品取引業者として登録している。

同社の仕組みを活用することで、事業者側は透明性の高い資金活用と情報開示が求められる一方、より多くの資金を調達することが可能になる。一方、出資者側も、出資に応じた分配金のほか、事業者が開催する交流会・ツアーへの参加や出資者限定商品を受け取るなどのメリットを享受することができる。また、同社は事業者からのスムーズな情報開示に力を入れており、ウェブサイト上に「マイページ」を設置し、出資者は事業の進捗状況を随時把握することができる。

同社の小松真実(こまつまさみ)社長は「当社が提供する資金調達の方法は、中小企業にとって、金融機関からの融資、ベンチャーキャピタル等からの株式出資に加え、第三の資金調達の道となる。」とその意義を語る。また、今後の目指す姿として「日本人が持つ個人金融資産を国内の様々な企業に届けていくため、様々なチャネルを通じてファンドへの出資の道を開いていきたい。」と述べる。

●海外の現状

世界のクラウドファンディング308社を調査したMassolution(マスソリューション)社によると、2012年の市場規模は2011年に比べて81%増加の27億ドル(約2,342億円)に拡大し40、100万人以上が資金提供を行っている。また、2013年には51億ドル(約5,370億円)の市場規模になると予測されており41、一段の市場規模の拡大が予想されている42。日本国内の市場規模と単純比較することはできないが、海外、とりわけ米国では、日本国内よりもITを活用した資金調達が積極的に行われていることが分かる(第3-5-45図)43

40 当時の為替レートは、1ドル=86.74円(2012年12月31日終値)。

41 当時の為替レートは、1ドル=105.30円(2013年12年31日終値)。

42 http://www.crowdsourcing.org/editorial/2013cf-the-crowdfunding-industry-report/25107

43 2012年時点では、北米で約1,388億円、欧州で約820億円となっている(為替レートは、2012年12月31日終値)。

第3-5-45図 ITを活用した資金調達の世界市場規模
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海外の資金調達サイトの例として、米国の「kickstarter(キックスターター)」が挙げられる。「商品・サービス購入型」の資金調達サイトとして運営されており、資金調達規模も大きい。有名な資金調達事例としては、スマートフォンと連動する腕時計「PEBBLE(ペブル)」を開発し、それを量産するための資金調達を行ったという事例が挙げられる。当初は10万ドル程度の資金調達目標であったが、資金募集開始わずか2時間で目標の10万ドルの資金が集まり、最終的には1,000万ドル以上の資金調達がなされた。人々の目を引く魅力的な商品を開発することにより、目標を大きく上回る資金調達を実現した事例であるといえる。日本のあるゲーム開発会社が、この資金調達サイトを利用して、約400万ドル(約3億9千万円)44の資金調達を実現したという事例もある。

44 資金調達を達成した時の為替レートは、1ドル=97.33円(2013年10月2日終値)。

●ITを活用した資金調達拡大の背景

こうしたITを活用した資金調達が拡大する背景には、個人による小口投資が可能になったということが挙げられる。これまでの投資といえば、株式の購入や投信信託の購入等、数万円単位からの投資が一般的であった。ITと金融技術の発達により、この部分のハードルが下がり、今日では1円単位からの投資が可能となったことにより、ITを活用した資金調達が拡大してきた。

また、ITを活用した資金調達では、その資金調達手段にもよるが、資金調達希望者と出資者が直接的なつながりを持つことが可能であり、それが一つの魅力といえよう。個人が、「その企業や商品を応援したい」という気持ちを「出資」という形に変えることにより、企業が資金調達を行うことができるということも、ITを活用した資金調達が拡大してきた背景にあると考えられる。

一方で、日本における投資に対する一般的な態度を欧米と比較してみよう。第3-5-46図を見てみると、日本において、投資という行為は欧米ほど一般的ではないといえる。

第3-5-46図 家計の資産構成
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これによれば、とりわけ米国が投資に対して積極的であるのに対し、日本国内では現金・預金の家計の資産構成に占める割合が5割以上を占めており、投資には消極的であることが推察される。逆にいえば、今後日本国内において投資が拡大する余地が残っているともいえる。今後、ITを活用した資金調達に関する周辺環境が整い、業界も健全かつ順調に発展していけば、日本国内における投資に対する意識も変化していく可能性がある。そして、そのことが、中小企業・小規模事業者の重大な経営課題の一つである資金調達問題を克服する一つの処方箋になっていくことを期待したい。

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