第3部 中小企業・小規模事業者が担う我が国の未来 

3. 海外展開支援の在り方

それでは、公的な海外展開支援の利用を促進し、利用企業の満足度を高め、より有用なものとするためには、どうすれば良いのであろうか。第3-4-52図、第3-4-53図は、企業が公的な支援機関に最も求めている支援を見たものである。第3-4-52図は、輸出や直接投資を実施している企業が求めている支援であり、第3-4-53図は輸出や直接投資を実施してない企業が求めている支援である。

第3-4-52図 輸出や直接投資を実施している企業が公的な支援機関に最も求めている支援
Excel形式のファイルはこちら
第3-4-53図 海外展開未実施企業が公的な支援機関に最も求めている支援
Excel形式のファイルはこちら

これを見ると、ジェトロでは、海外展開実施企業で、「販売先の紹介」、「法制度・商習慣に関する情報提供・相談」、「市場調査・マーケティングの支援・情報提供」を求めている企業が多いことが分かる。また、海外展開未実施企業では、それに加えて、「信頼できる提携先・アドバイザーの紹介」と回答する企業も多い。

また、中小企業基盤整備機構では、海外展開実施企業で、「公的な融資制度の拡充」、「市場調査・マーケティングの支援・情報提供」、「法制度・商習慣に関する情報提供・相談」を求めている企業が多い。一方で、海外展開未実施企業では、「公的な融資制度の拡充」、「市場調査・マーケティングの支援・情報提供」、「信頼できる提携先・アドバイザーの紹介」と回答する企業が多くなっている。

その他、地方自治体では、「公的な融資制度の拡充」、商工会・商工会議所では、海外展開実施企業で「販売先の紹介」、海外展開未実施企業で「市場調査・マーケティングの支援・情報提供」、政府系金融機関では、「公的な融資制度の拡充」が、それぞれ割合が最も高くなっている。

海外展開を実施するに際して、企業は自社の商品の販売先や、自社の現実的かつ具体的な課題について解決を与えてくれる相手を企業は求めている。現状では、公的な支援機関が企業の要望に十分に対応しきれていないことが、利用者の満足度の低さにつながっている可能性がある。

より企業の要望に対応するため、本節では、公的な海外展開支援機関相互の連携、現地における支援の拡充、民間支援機関との連携について、最後に提言したい。

(1) 公的な海外展開支援機関相互の連携

政府でも、ジェトロや中小企業基盤整備機構等、公的な海外展開支援機関の相互の連携を図るため、関係者会議等を行い、また現場のレベルでも情報共有を図る取り組みを進めている。公的な海外展開支援機関が連携し、互いの強みを生かした支援を行うことで、企業の要望に応えていくことが可能となるであろう。

それでは、企業側からの評価はどのようなものであろうか。第3-4-54図は、公的な海外展開支援機関の互いの連携に関する評価を見たものである。これを見ると、「あまり連携していない」、「全く連携していない」といった回答が多く、また、「分からない」と回答している企業が最も多くなっており、現状では連携の取組自体があまり知られていないことが分かる。より一層の連携の促進とその政策の広報が必要とされよう。

第3-4-54図 公的な海外展開支援機関の互いの連携に関する評価
Excel形式のファイルはこちら

(2) 現地における支援

海外展開は、まさに海外で事業を行うことであり、その支援の在り方を検討するためには、現地での支援も併せて考えていかなければならない。特に、経営資源の限られた中小企業にとって、海外に割くことができる人材等の経営資源は少なく、公的な支援が求められる分野といえる。

第3-4-55図は、公的な海外展開支援機関の海外拠点を見たものである。これを見ると、ジェトロの事務所は全世界にあり、地方自治体の拠点は、上海を中心に中国に多く所在していることが分かる。

第3-4-55図 公的な海外展開支援機関の海外拠点
Excel形式のファイルはこちら

第3-4-56図は、現地の国・地域における公的な海外展開支援機関の支援への評価について見たものである。これを見ると、現地における公的な海外展開支援が十分に行われていると考える企業は少なく、約6割の中小企業が拡充を求めていることが分かる。

第3-4-56図 現地の国・地域における公的な海外展開支援機関の支援への評価
Excel形式のファイルはこちら

それでは、具体的にどのような支援を求めているのであろうか。第3-4-57図は、現地の国・地域で必要としている支援の内容を見たものである。これを見ると、「法制度・商習慣に関する情報提供・相談」、「市場調査・マーケティングの支援・情報提供」、「販売先の紹介」と回答している企業が多い。

第3-4-57図 現地の国・地域で必要としている支援の内容(複数回答)
Excel形式のファイルはこちら

現在、政府では、現地における中小企業のサポート体制の強化のため、「中小企業海外展開現地支援プラットフォーム」の整備を進めている(第3-4-58図)。このプラットフォームでは、海外現地で官民の支援機関がネットワークを構築して、法務・会計・労務、資金調達、人材確保、パートナー発掘、拠点設立や移転・撤退の諸手続等にも対応しており、また、現地でコーディネーターを配置することで、個別の相談の一元的な対応を実施している。今後、設置数の増加はもとより、さらに特定産業に関連する課題解決に特化したプラットフォームを設置するなど、現地における一層の支援の取組が求められるであろう。

第3-4-58図 中小企業海外展開現地支援プラットフォーム

(3) 海外展開支援における民間企業との連携

ジェトロには、輸出・輸入や直接投資に関する相談が、年間5万5千件以上寄せられている。また、前掲第3-4-35図で見たように、中小企業の輸出未実施企業の3割以上が輸出に関心を示しており、今後、海外展開を実施する潜在的な企業層は少なくないことが分かる23。また、関心があっても、課題が乗り越えられず、海外展開を行えない企業も多く存在する。

このように多くの中小企業の海外展開に関する相談・要望に対して、全て公的な支援機関が対応していくのは、現実的とはいえない。そのため、海外展開を支援する民間企業とも連携し、ますますニーズが高まる中小企業の海外展開をオールジャパンで支援していくことが必要となる。

一方で、海外展開に関心を持つ企業数の増加から、海外展開を支援する民間の事業者も増加している。後述事例3-4-11の海外展開支援の情報サイト「Digima」の運営等を事業としている株式会社Resorzの兒嶋(こじま)社長は、「弁護士事務所、会計事務所、翻訳会社等も含めて、海外展開支援を行っている民間企業は少なくとも10,000社以上、総合的なサポートをしている企業に限っても2,000社はある。」と言う。

まずは、民間支援企業の実態を知っていくが必要であろうが、将来的には、それらの民間事業者や公的な支援機関の連携を深め、互いの強みを活かすことで、中小企業の具体的なニーズに対応できる可能性がある。例えば、信頼できる民間の支援機関については、政府としての何らかの「お墨付き」を与え、海外展開を希望する中小企業のニーズに迅速かつ的確に応えられるようにするなど、政府は民間の支援機関と効果的な連携を模索することも考えられる。

23 例えば、中小企業は約385万社であることから、その3割が海外展開に関心があるとすると全体では、100万社以上事業者が海外展開に関心があることになる。ただし、アンケートの回答企業群が海外展開に関心の高い傾向があることも考えられる。業種によっても海外展開の難易も異なるため、海外展開しやすいと考えられる製造業(約43万社)のみに限定し、その3割程度が海外展開に関心があるとすると、おおよそ10万社程度の潜在的な海外展開実施企業が存在すると推測される。

事例3-4-11. 株式会社Resorz

海外展開に関するあらゆるサポートを行う、海外進出支援プラットフォームを運営する民間事業者

東京都目黒区の株式会社Resorz(従業員8名、資本金999万円)は、中小企業の海外展開をサポートするサービスを提供している2009年に設立した企業である。

同社の兒嶋裕貴(こじまゆうき)社長自身が学生時代に世界中を旅した経験が、同社の事業につながっている。兒嶋社長は、海外に出ることで、日本の魅力を再確認し、自身の経験を日本に還元したいと強く思ったという。そこから、日本企業の海外展開をサポートするという同社の事業を立ち上げたのであった。

「既存の公的な支援機関では、相談に乗り、一定の助言やサポートをすることはできても、実際に事業投資のリスクは取れず、また、法律等の専門的な判断が必要な領域でも支援することは難しいのではないか。」と兒嶋社長は感じ、公的な支援機関が扱いにくい部分にも踏み込んで、実践的に企業の海外展開を支援する民間企業が必要と考え、現在の事業を行っている。

同社の主たる事業は、海外展開を支援する日本最大級の海外ビジネスWEBプラットフォーム「Digima〜出島〜(http://www.digima-japan.com)」の運営である。このプラットフォームを通じて、海外展開を目指す企業と、海外展開をサポートする企業がマッチングされる。同社では、過去のべ4,500件の企業からの相談を受け、現在では、毎月200件程度の問い合わせに対し、現地を含む600社ある提携先の海外展開サポート企業を紹介している。

企業にとって信頼できる現地のパートナーを見つけることは簡単ではない。同社では、現地のサポート企業等を開拓し提携している。他にも海外ニュースや海外進出の専門家コラムなどの配信や、海外ビジネスセミナーの開催、アレンジ視察サービス、各国企業データの販売等も行っている。

「ジェトロのように海外展開支援において信頼されている民間企業として、企業の海外展開に関するあらゆるサポートができる組織にしていきたい。」と同社の兒嶋社長は語る。

同社の兒嶋裕貴社長・Digima〜出島〜の海外進出支援サービス登録ジャンル

事例3-4-12. 鹿児島相互信用金庫

20年以上継続して、取引先企業の海外展開の支援に取り組んでいる地域の信用金庫

鹿児島県鹿児島市の鹿児島相互信用金庫は、鹿児島の地域に密着した信用金庫である。県内の取引先企業の直接輸出・輸入を支援するため、貿易ミッション「TOBO会」を毎年開催するなど、海外ビジネスマッチングに20年以上に渡り、継続して取り組んでいる。

貿易ミッション「TOBO会」とは、現地で市場視察や商談会を行うビジネスツアーであり、毎年1回30社程度が参加している。「TOBO会」では、中国、東南アジア、ロシア等へ訪問をしており、1990年の開始以来、計28回開催され、延べ900名以上が参加している。

鹿児島では、立地の特性上、他の地域よりも輸送コストが掛かってしまう。特に、商社を通じて原材料を輸入すると、横浜等の港から県内に輸送するため、余計にコストがかさむ。同様に、消費地に出荷する際にも、輸送コストがかさみ、同金庫の取引先企業では、売上減少とコスト増大に苦しんでいる企業が多かったという。そのため、当時の大蔵省から外国為替業務の許可が下りたことを契機に、こうした流通構造を変え、鹿児島の企業を支援するため、同金庫では、直接輸出・輸入を促進する貿易ミッションを開始したのであった。

現在では、韓国、台湾、中国等の食品展示会に同金庫がブースを設け、複数企業の食品を出展する海外展示会共同出展事業や、海外のバイヤーを招へいした国内での商談会の開催も行っている。商談会への参加企業は、案内をすると瞬く間に集まるなど、取引先企業の海外市場への関心は非常に高いという。

2010年に大連で行われたTOBO会の様子

コラム3-4-4.

中小企業基盤整備機構との民間企業との連携の試み

中小企業基盤整備機構では、中小企業の海外展開を支援するため、海外展開をしたい中小企業と海外展開を支援する企業・団体とのビジネスマッチングの場の創出を進めている。

支援組織の相互の連携を促進するため、2014年1月に、「SMEワールドビジネスサポート懇親会」のキックオフカンファレンスを開催した。130名以上の参加があり、前掲事例の株式会社Resorz他、コンサルティング会社、商社、金融機関、人材紹介会社、NPO、各国政府機関等、多種多様な40近くの支援企業・団体が、自らの取組をプレゼンテーションし、相互の交流を深めた。

今後、全国各地で、国・地方自治体、中小企業支援機関、民間企業等と連携を進め、海外展開に意欲を持つ中小企業と支援企業・団体のビジネスマッチングの場を創出していく。

第4章では、中小企業の海外展開を見てきた。第2部でも分析したように、人口の減少等により、国内市場での需要減少に危機感を感じている企業は多い。このため今後、成長している海外需要を取り込むため、海外展開を実施する企業はますます増加していくことが予想される。

海外展開は、企業にとって大きな成長機会となり得る可能性がある一方で、そこには様々な課題やリスクも存在しており、言語や文化も異なる海外市場で成功することはたやすいことではないであろう。「いかに販売先を確保していくのか」という基本に立ち返って、海外市場を攻略していくことこそ、成功の秘訣ではないだろうか。

今後、中小企業の海外展開支援に際しては、政府や公的な支援機関による支援体制だけではなく、民間の支援事業者を含めた「総力戦」まさにオールジャパンでの海外展開支援が求められる。

前の項目に戻る     次の項目に進む