第3部 中小企業・小規模事業者が担う我が国の未来 

3. 輸出や直接投資の準備

輸出や直接投資を開始し、成功するためには、事前にしっかりとした準備を行うことが必要である。では、具体的にどのような準備が必要なのだろうか。第3-4-44図は、輸出を実施している企業が、最も重要と考える準備の内容を見たものである。これを見ると、「現地の市場動向やニーズの調査」や「提携先・アドバイザーの選定」と回答する企業が多く、これから輸出を開始する企業はこれらの準備にしっかりと取り組むことが求められる。

第3-4-44図 輸出企業が最も重要であると考える準備の内容
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また、第3-4-45図は、直接投資を実施している企業が、最も重要であると考える準備の内容を見たものである。これを見ると、生産機能を持つ直接投資先を有する企業では「現地人材の確保・育成」、販売機能を持つ直接投資先を有する企業では「販売先の確保」と回答する企業の割合が、それぞれ最も高い。直接投資をするに当たっては、現地の事業を担う現地の人材の確保・育成の準備に取り組むことや事前に販売先の確保を行うことが必要と考えている企業が多いことが分かる。

第3-4-45図 直接投資企業が最も重要であると考える準備の内容
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コラム3-4-2.

輸出や直接投資の開始前の海外との関わり

輸出や直接投資を開始する企業は、何らかの形で海外との関わりを持っている企業が多い。コラム3-4-2〔1〕図は、輸出企業が、輸出開始前にあった相手国との関わりを見たものである。これを見ると、輸出開始前に相手国と何らかの関わりがあった企業が6割以上であり、特に、「既に海外展開を行っている企業との取引」があったと回答する企業が多い。

コラム3-4-2〔1〕図 輸出企業の輸出開始前の相手国との関わり
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また、コラム3-4-2〔2〕図は、現在直接投資に取り組んでいる企業の直接投資前の相手国との関わりを見たものである。これを見ると、現在直接投資に取り組んでいる企業では、7割以上が相手国と何らかの関わりがあったことが分かる。特に「既に海外展開を行っている企業との取引」の割合が多く、「輸出取引」、「輸入取引」と続いている。

コラム3-4-2〔2〕図 直接投資企業の直接投資前の相手国との関わり
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また、前掲第3-4-44図及び第3-4-45図のように、輸出や直接投資を実施している企業では、最も重要であると考える準備の内容として、「販売先の確保」、「現地の市場動向やニーズの調査」、「提携先・アドバイザーの選定」といった項目を回答する企業が多かった。そのような準備に対して、「地の利」を持つ外国企業と業務提携することで、海外展開を有利に運ぶことができる可能性がある。

一方で、外国企業との業務提携に心理的な障害を感じる企業も多いことも事実であろう。コラム3-4-2〔3〕図は、外国企業との販売提携・技術提携・資本提携に対する中小企業の考えを尋ねたものである。これを見ると、何かしら抵抗があると回答している企業は半数に上る。また、その具体的な抵抗のある理由としては、「実態が分からず、漠然とした不安がある」を挙げる企業が最も多いが、次いで、「言葉・文化の違いによる不安」、「技術・ノウハウの流出」、「企業風土の変化」を挙げる企業が多くなっている。このように抵抗感を感じる企業が多いのは、外国企業との提携が、言語及び文化が異なる相手との提携であり、課題やリスクもある経営判断であるためと考えられる。

コラム3-4-2〔3〕図 外国企業との販売提携・技術提携・資本提携に対する考え
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事例3-4-9では、外国企業との業務提携によって国内外の販路の獲得に成功した企業を紹介する。海外展開を行う前に、国内で外国企業との資本提携をすることが、同社にとって重要な海外展開の事前準備となった。乗り越えるべき課題やリスクはあるものの、外国企業との提携も、企業の海外展開を進める一つの選択肢といえよう。

事例3-4-9. 株式会社アドバネット

外国企業との資本提携により、国内外の販路の拡大を実現する企業

岡山県岡山市の株式会社アドバネット(従業員150名、資本金7,200万円)は、産業用電子制御機器と計測器の設計・製造や、マイクロコンピュータ応用システム向けのハードウェア・ソフトウェア開発等を行っている。高付加価値製品の開発に成功し、国内市場で確実に成長を遂げてきた。同社では、販路拡大を模索するために、2007年にイタリアの企業であるユーロテックから出資を受けた。

同社では、国内市場の飽和を感じ、海外への販売拡大に挑戦していた。しかし、自社単独での販売先の開拓を行うのは容易ではなく、実現には至っていなかった。そのような中、ユーロテックからの資本提携の打診があり、外国企業との資本提携の検討を始めることとなった。ユーロテックとの関わりは、同社が参加していたドイツでの展示会で知り合ったことがきっかけであった。

「ホーム(国内)に居ながら、ユーロテックの持つポテンシャルを活用して、アウェイ(海外)の販路開拓や部品・材料調達コストの低減が実現できると考えた。」と同社の佐々木裕史(ささきひろふみ)社長は、ユーロテックとの資本提携のメリットを語る。資本提携によって、ユーロテックの海外にあるグループ企業を活用して、同社の製品を販売する機会が生まれ、また、逆にユーロテックの製品を、同社を経由して日本国内で販売することとなり、両社での販路の拡大が実現している。

同社では、資本提携において想定される課題にも対応している。まず、資本提携による経営方針等の急激な変化によって取引先の信頼を失わないように、3年間は経営の方法を変えないことをユーロテックと合意し、資本提携も段階的に進めた。さらに、言葉や文化の違いについては、経営レベルでは佐々木社長がユーロテックと同社の調整役になることや、実務のレベルでもユーロテックと同社で一目で意味が伝わる記号を決めるなど、意思疎通のやり方を工夫することで円滑に進めているという。

同社の佐々木社長(左)とユーロテックのテイア上級副社長(右)
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