第3部 中小企業・小規模事業者が担う我が国の未来 

2. 海外市場に挑戦する中小企業

第3-4-1図は、我が国の輸出額と対外直接投資額の推移を見たものである。我が国の輸出額は、近年ではリーマン・ショック後の2009年の時に、大きく落ち込んでいるものの、長期的にはおおむね増加傾向である。一方で、対外直接投資額は、バブル崩壊後、2000年代の前半までは低迷していたが、その後大幅に増加していることが分かる。これは、2000年代後半から円高方向に推移したこと7によりコスト削減を目的とした生産拠点の直接投資や、拡大するアジア等の需要の獲得を目的とした販売拠点の直接投資が増加したものと考えられる。

7 前掲第1-1-11図を参照。

第3-4-1図 我が国の輸出額と対外直接投資額の推移
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それでは、中小企業の海外展開について、輸出及び直接投資の動向を見ていく。まず、中小企業(製造業)の輸出の現状を見ていこう。第3-4-2図は、直接輸出を実施している企業の推移を見たものであるが、2002年以降、中小企業の製造業で直接輸出を行っている企業の数及び中小製造業全体に占める割合は増加基調にあることが分かる。また、小規模事業者について見ても、同様に増加基調にあることが見て取れる。

第3-4-2図 直接輸出企業の数と割合の推移(中小・小規模製造業)
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第3-4-3図は、輸出企業の業種構成を見たものであるが、機械工具、加工機械等の生産用機械器具製造業の割合が最も高い。さらに、化学工業、電気機械器具製造業、金属製品製造業といった業種が続き、中小企業の製造業ではこれらの業種が輸出の中心を担っていることが分かる。また、第3-4-4図は、業種別の輸出企業数の推移を見ているが、生産用機械器具製造業の企業が一貫して最も多いことが分かる。これらのことから、我が国の中小企業が供給する機械工具、加工機械等、生産現場で要となる製品が、海外市場でも評価が高く、輸出の主力となっているといえる。

第3-4-3図 直接輸出企業の業種構成(中小製造業)
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第3-4-4図 業種別の直接輸出企業の数の推移(中小製造業)
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次に、直接投資を実施している企業の動向を見ていく。やや過去のものになるが、我が国に所在する全ての事業所を対象としている「平成21年経済センサス―基礎調査」によると、2009年時点で直接投資を実施している中小企業の数は5,630社8であった。では、近年の中小企業の直接投資の状況はどうなっているのであろうか。

第3-4-5図は、「企業活動基本調査」により、海外子会社を保有する企業の割合の推移を見たものである。中小企業の製造業で18.9%、中小企業全体でも13.4%の企業が海外子会社を保有しており、その推移を見ても増加傾向にあることが分かる。

8 2012年版中小企業白書P76参照。

第3-4-5図 海外子会社を保有する企業の割合
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ただし、「企業活動基本調査」は、従業者50人以上かつ、資本金又は出資金3,000万円以上の会社を対象としており、中小企業でも比較的規模の大きな企業を対象とした調査であることに留意が必要である。

また、海外子会社を保有している企業の業種構成を見ると、中小企業では、製造業が大半を占めており、続いて、卸売業が多くなっている(第3-4-6図)。ただし、第3-4-7図では、2003年度の企業数を100とした時の業種別の企業数の推移を見たものであるが、近年では、中小企業でもサービス業や情報通信業の増加も著しいことが分かる。具体的には、ラーメン店や美容店、情報システム開発会社等といった企業も海外に進出している9

9 事例3-4-5で飲食店が海外に進出した事例、事例3-4-6で美容店が海外に進出した事例、事例3-4-10で情報システム開発会社が海外に進出した事例を掲載している。

第3-4-6図 海外子会社を保有する企業の業種構成(2011年度)
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第3-4-7図 海外子会社を保有する中小企業数の業種別推移
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一方、中小企業はどのような国・地域に直接投資を実施しているのであろうか。第3-4-8図は、海外子会社の地域構成を見たものであるが、中小企業の海外子会社は、中国やアジアに大半が所在していることが分かる。これは、アジアの安価な人件費を求めての進出や取引先のアジア展開への随伴に加えて、近年は成長著しいアジアの需要の獲得を目的としたものが多いと推察される。また、日本の中小企業の多くがアジアに集中しているという現状は、将来、不可抗力のリスク(政治的な混乱や経済危機、自然災害等)がアジアで発生した場合、より被害を受けやすい状態にあるということもできる。

第3-4-8図 海外子会社の地域構成(2011年度)
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ただし、近年では、中国への直接投資を行う企業の割合は減少傾向にある。第3-4-9図は、「海外事業活動基本調査」により、投資時期別に中小企業の海外現地法人の国・地域を見たものである。これを見ると、2003年度をピークに中国へ直接投資をする企業の割合は低下しており、ASEANを中心に、中国以外のアジアの国・地域に重心が移っていることが分かる。この背景としては、これまでは安価な人件費等を見込んで中国に進出する企業が多かったものの、近年では人件費の高騰や法制度・商習慣の不透明性10等を理由に、直接投資先としての魅力が薄れてきていることが考えられる。

10 付注3-4-1を参照。

第3-4-9図 投資時期別の中小企業の海外現地法人の国・地域
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それでは、中小企業はどのような目的で直接投資を実施しているのであろうか。第3-4-10図は、直接投資を決定した際のポイントの推移を見たものである。これを見ると、2004年度では、「良質で安価な労働力が確保できる」と回答する企業の割合が最も高かったが、近年では、「現地の製品需要が旺盛又は今後の需要が見込まれる」と回答する企業が増加しており、最も割合が高くなっている。このことから、直接投資の目的が、コスト削減から需要獲得に移っていることが分かる。

第3-4-10図 中小企業が直接投資を決定した際のポイントの推移(複数回答)
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これまで見てきたように、海外展開を実施している中小企業は着実に増加している。その進出先の国・地域は、多くが中国であったが、近年では、ASEANを中心とした中国以外のアジアへ広がっている。直接投資を実施している業種は、多くは製造業であるものの、近年では、サービス業や情報通信業といった非製造業の進出も増加している。また、人件費等コストの削減ではなく、海外の旺盛な需要を獲得する目的で直接投資を実施している企業が増えている。

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