第3部 中小企業・小規模事業者が担う我が国の未来 

第2節 事業承継

第2節では、まず、我が国の経営者の事業承継に対する意識や具体的な準備状況、形態別の事業承継の推移を見ていく。その上で、近年増加している第三者承継5に対する経営者の意識や、事業承継後の取組の企業経営への影響について確認する。最後に、今後経営者の高齢化や少子化が進むことを踏まえ、第三者承継に光を当てた分析を行ないながら、あるべき支援の在り方について検討する。

5 ここでいう「第三者承継」とは、内部昇格(経営者の親族以外の社内の役員や従業員に事業承継するもの)、外部招へい(社外から後継者を招いて経営者とするもの)を合わせた親族外の第三者への事業承継をいう。

1. 事業承継の現状

●事業承継の準備状況

第3-3-7図は、経営者の年齢別の事業承継の予定時期を示したものである。これを見ると、50歳代を過ぎると、事業承継を10年以内の経営課題として捉える者が急増しているが、その一方で、事業承継を3年より先のことと考えている者が60歳代で約8割、70歳代で約6割、80歳代でも5割超存在していることが分かる。また、第3-3-8図を見てみると、事業承継の準備を「あまりしていない」、「全くしていない」、「準備の必要を感じない」と回答した者が、60歳代では約6割、70歳代で約5割、80歳代でも約4割存在している。

第3-3-7図 経営者の年齢別事業承継の予定時期
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第3-3-8図 経営者の年齢別事業承継の準備状況
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このように、我が国の経営者の多くを占めており、かつ、遠からず引退していくと予想される高齢経営者には、事業承継をまだまだ先のことと考えている者が多く、また、そのための準備も十分に行っていない者が相当な割合で存在していることが分かる。

では、事業承継で最も重要な後継者の育成には、どれくらいの期間が掛かるのであろうか。企業に、後継者の育成に要するであろう期間の見込みを聞いたのが、第3-3-9図である。これによると、中規模企業では9割以上、小規模事業者では8割以上の者が後継者の育成には3年以上掛かるとしている。つまり、今すぐに後継者の育成に着手しても、後継者が育つには最低でも3年は掛かるということであり、いかに早い時期から事業承継の準備をすべきかが分かる。

第3-3-9図 後継者の育成期間
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●事業承継の形態の推移

次に、我が国の事業承継の形態の推移(経年的な変化)を確認する。第3-3-10図は、形態別の事業承継の推移を示したものである。これを見ると、我が国の事業承継の形態としては、依然として親族への承継(親族内承継)が一番多いが、長期的には全体に占める割合は低下している。その反面、内部昇格や外部招へい等の、親族外の第三者への承継(第三者承継)や買収(事業売却)が占める割合が上昇してきている。2007年以降、内部昇格と外部招へいを合わせた第三者承継、さらに買収を加えた割合は、親族内承継を上回っている。

第3-3-10図 形態別の事業承継の推移
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第3-3-11図及び第3-3-12図で、内部昇格、外部招へいによる事業承継について、企業規模(従業員規模)ごとの内訳の推移を見てみると、内部昇格については構成比に大きな変化はないものの、外部招へいについては、従業員規模10人未満の規模の小さな企業が占める割合が、近年上昇してきている。この背景には、少子化が進む中で、従業員数が少ない規模の小さな企業が、自社の中で後継者を確保することができずに、社外にまで後継者を求めている動きがあるものと推察される。

第3-3-11図 内部昇格による事業承継の企業規模(従業員規模)別の内訳の推移
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第3-3-12図 外部招へいによる事業承継の企業規模(従業員規模)別の内訳の推移
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中小企業白書(2013年版)によれば、中規模企業では約4割、小規模事業者では6割超が親族内で事業承継を行っており、規模の小さな企業ほど親族への承継を検討する者が多いという結果となっている6。しかしながら、長期的なトレンドを見ると、親族外の第三者承継が存在感を増してきていることが分かる。この背景には、少子化や職業選択の多様化により、事業を引き継ぐ意欲を持った後継者を、親族内で確保することが難しくなってきていることがあると考えられる。

6 中小企業白書(2013年版)p143を参照。
http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H25/PDF/0DHakusyo_part2_chap1_web.pdf

事例3-3-1. 渡辺製畳株式会社

先代の意思を引き継ぐ(内部昇格)

宮城県遠田郡美里町にある渡辺製畳株式会社(従業員10名、資本金2,800万円)は、創業から50年の古参の畳製造業者である。昔ながらの体質が根強い畳業界の中でも、畳床製造工場としては全国で初となるJIS認可取得を果たし、さらに品質マネジメントシステムに関するISO9001認証も取得するなど、自社改革に積極的に取り組んでいる。

この会社の社長であった渡辺軍二(わたなべぐんじ)氏(現渡辺製畳株式会社会長)は、高齢を理由に、同社社員で自分とは血縁関係のない小高浩幸(おだかひろゆき)氏(現社長)に、社長の座を引き継いだ。新入社員として入社し、渡辺会長の下で技術を習得した小高社長が、誰よりも仕事に熱心で丁寧であったためである。小高社長も「畳業界が保守的といわれる中で、渡辺会長がJISやISO9001認証取得を推進し、他社に先駆けようとする姿に感銘を受けた。」と語っており、意気に感じての社長就任であった。

事業承継後も、渡辺会長は小高社長のサポートに努めている。例えば、渡辺会長が小高社長と一緒に同業者との会合や勉強会に参加することで、長年かけて築いてきた人脈を、小高社長に引き継いでいくことに努めた。

小高社長は、会社にとっては顧客からの信頼向上が何より重要であると考えており、そのため、新入社員からの教育に力を入れている。新入社員から技能士や施工技士等、必要な資格を取得させ、技術者の集団としてお客様からの様々な質問や要望に対して答えられるよう努めている。技術だけでなく、人とのつながりを大切にし、一件一件の顧客や取引先である住宅メーカーを大切にするような従業員教育を行うことで、業績の拡大を目指している。

こうした取組もあり、渡辺製畳株式会社は、小高社長への事業承継が行われた2011年以降、2年連続の増収増益となっている。

同社を支える従業員
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