第3部 中小企業・小規模事業者が担う我が国の未来 

3. 起業に伴うコストや手続きの低減

最後に、起業の促進に向けた取組として、起業に伴うコストや手続きに焦点を当てる。これまでの調査・分析においても見てきたが、起業の準備段階で、起業に伴う費用や手続きの問題には多くの者が直面し、中にはこれらの課題が原因で起業を断念しそうになる者も存在する(第3-2-29図)。こうしたコストや手続きの負担を少しでも低減することで、起業しやすい環境を作っていく必要がある。

(1) 誰もが起業家応援社会の構築

開業率の倍増に向けて、起業希望者から起業家を実際に増やしていくためには、起業時及び起業後数か月〜数年間の最も厳しい時期において、可能な限り費用負担を軽減することが必要である。具体的には、新しいオフィスの賃貸料、机やいす等のオフィス用品からPC、ソフトの購入費用等立ちあげ時の費用負担に加えて、通信費やサーバ代等、月々の固定費負担が、起業後の一定期間、収入が期待できない起業家には、重くのしかかることになる。この負担を少しでも解消するには、既存の企業の協力を得て、少しでもこの費用を軽減することが必要である。また、起業家を支援する取組は、既存の企業にもメリットがあり、単なるCSR20を超えて、「将来の顧客獲得」という将来利益を得るチャンスともなり得る。このように既存の企業が起業家を支援することで、起業時やその後のスタートアップの時期における起業家の負担を可能な限り低減するような相互扶助の仕組みを「誰もが起業家応援社会21」という。

この誰もが起業家応援社会の構築に向けた取組は、2011年に設立された一般社団法人ベンチャーサポートネットワークが行っている。現在、日本マイクロソフト株式会社、株式会社サイボウズを筆頭に16社の、上場企業、業界トップリーダーが「サポート会員」となり、起業・経営に必要なリソースを無償、もしくは割引で提供している。具体的には、表計算ソフト、無料グループウェアソフト、レンタルサーバー、データ通信端末、オフィス用品、レンタルオフィスの使用等のサポートが受けられる。

こうした一般社団法人ベンチャーサポートネットワークの取組は、ある程度広がりを見せているものの22、このような既存企業群が起業家を育てる取組を日本全体で作り上げていくことが、今後の課題といえよう。

20 「CSR」とは「企業の社会的責任」と解釈され、企業が利益を追求するだけではなく、企業活動が社会に与える影響にも責任を持ち、あらゆる利害関係者からの要求に対して適切な意思決定を行うことをいう。

21 「誰もが起業家応援社会」は株式会社あきない総合研究所の吉田雅紀代表が提唱した考え方である。

22 「2014年2月末において、約15,000名のユーザーが登録しているが、現在ユーザー数が伸び悩んでいる。」と吉田代表は語っている。

(2) 起業することでメリットのある仕組み

起業を促進するためには、起業という行為そのものに対する、何らかのインセンティブを与えることも必要である。例えば、フランスの個人事業者制度では、付加価値税(TVA)の徴収が免除され、一定の条件を満たせば所得税・社会保障費は免除される(コラム3-2-1)。開業率を増加させるためには、このような思い切ったインセンティブの付与を検討していくべきである。

コラム3-2-1.

フランスの個人事業者制度

2007年5月の大統領選挙に勝利したサルコジ大統領は、「経済近代化法」を2008年8月に成立させた。そして、この経済近代化法の目玉として導入されたのが「個人事業者制度(auto-entrepreneur)」である(2009年1月施行)。これは従前にはなかった企業形態で、個人の起業を促すことで経済の活性化と雇用創出を狙ったものである23

23 パリ産業情報センター「フランスにおける新しい起業のかたち「個人事業主制度(auto-entrepreneur)」について」

  1. 対象
     18歳以上の自然人が対象であり、被雇用者も対象に含まれる(但し、売上が給与を上回らないこと)。2009年12月には、公務員も対象に追加。  失業者については、起業後も失業手当給付の受け取りが可能。
  2. 基準
     他の法人形態と区別するため、年間売上額の上限が設定されており、これを超える場合には、別法形態への移行が必要。(例)小売業:81,500€、サービス業:32,600€
  3. 設立手続き
     資本金、登記が不要で、簡易な申請で登録が可能。
     →自宅のインターネットを使って、短時間(10分程度)で手続きを済ませることもできるため、起業者の約4分の3程度がインターネットでの登録によって申請手続きを行っている。
  4. 税制優遇
     一種の地方税である地域経済拠出金の支払いが3年間免除されるほか、付加価値税(TVA)の徴収も免除。
     所得税・社会保障費は、〔1〕売上がない期間は免除、〔2〕売上があれば、業種に設定された売上に対する税率(13〜23.5%)で両者を一括支払い。

コラム3-2-1図を見ると、個人事業者制度の導入に伴い、2009年、2010年は起業数が倍増し、その増加分の全てが個人事業者であり、制度の導入は一定の成功を収めたといえる。ただし、制度導入から3年が明けた後には、税制優遇の免除が終了するため、起業者は事業継続の可否判断を迫られることになるといった課題等も存在する。そのため、本制度に対して政策的な評価を下すには、もう少し時間を要するが、日本もこうした取組から学ぶべき点はあるといえよう。

コラム3-2-1図 フランスの起業数の推移
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(3) 起業に関する相談体制の拡充

これまでは、起業の「コスト」について見てきたが、次に「手続き」に焦点を当てる。特に、起業の手続き等、起業家が直面する様々な課題に対しての相談体制について考察したい。

●相談しやすい環境・体制の構築

まず、起業に関して相談する際に抵抗感を感じるかについて、アンケートを行った(第3-2-43図)。すると、約3割の者が抵抗を感じると回答し、特に、若者や女性において、その割合が高くなっている。

第3-2-43図 起業に関する相談をすることについて抵抗感を感じるか
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次に、第3-2-44図にあるように、相談しにくい理由について聞いたところ、全体的に、「起業家、経営者としての能力や素養を否定されることへの不安」、「相談しても、満足いく答えを得られないと思っているから」を選択する割合が高いことが分かった。

第3-2-44図 起業に関して周囲に相談しにくい理由
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こうした結果を踏まえて、起業に関する相談体制に関して、二つ提言したい。一つ目は、起業家、特に女性や若者が相談しやすい環境や雰囲気をつくることに行政や支援機関はもっと配慮すべきということである。例えば、女性起業家のために、相談窓口に女性職員を配置するだけでも、女性起業家にとっては相談しやすくなるのではないだろうか。

二つ目は、行政や支援機関は、起業に関してどのような相談に乗ってもらえるかをあらかじめ具体的に示しておくことである。起業に関する相談として、「満足をいく答えを得られない」という理由で相談に訪れない者が約2割存在する(第3-2-44図)。こうした者に対しては、相談に訪れた場合に、どのようなことなら相談に乗れるのかをあらかじめ周知しておくことが必要と思われる。

コラム3-2-2.

地域における創業支援スキーム

政府は、新たな地域経済の担い手を創出すべく、地域において創業を促していくこととしている。そのために、地域の最も身近な窓口である市区町村が中心となり、起業を支援していくスキームが必要との認識から、産業競争力強化法(2014年1月20日施行)において、市区町村が民間事業者と連携し、創業支援を行っていく取組を応援することとしている。以下、具体的な支援として、「支援者、市区町村への支援」、「創業者への支援」、「特定創業支援を受けた創業者への支援」を紹介する。

  1. 支援者、市区町村への支援
    〔1〕認定を受けた創業支援事業者24への支援
    • 国からの補助金(創業促進補助金:上限1,000万円、補助率2/3、2013年度補正予算、約5億円)。
    • 市区町村と連携して創業支援事業を行うNPO法人、一般財団法人、一般社団法人に対して、信用保証協会が8,000万円までの無担保の信用保証を実施する。
    • 認定を受けた創業支援事業者に対し、中小機構が創業支援のノウハウの提供や専門家の紹介を行う。
    〔2〕認定を受けた市区町村25への支援
    • 認定を受けた市区町村に対しては、中小機構が創業支援の専門家を紹介したり、他の成功事例の紹介等の情報提供を実施する。
    支援者、市区町村への支援 図
  2. 創業者への支援
    〔1〕一般的な支援
    • 国からの補助金(創業促進補助金:上限200万円、補助率2/3、2013年度補正予算、約39億円)。
    • 具体的な計画を有する創業を行おうとする者のうち、具体的計画を有する創業2か月前(会社設立でない場合は1か月前)から創業後5年まで、信用保証の特例として1,000万円までは、無担保、第三者保証なしの創業関連保証を実施する。
      ※法律の認定は不要。
    創業者への支援 図
  3. 特定創業支援を受けた創業者への支援
    〔1〕認定特定創業支援事業26の支援を受けた創業者への支援
    • 認定を受けた特定創業支援事業の支援を受けた創業者が株式会社を設立する際、登記にかかる登録免許税を軽減(資本金の0.7%→0.35%)する。
      ※最低税額は通常15万円のところ7.5万円に減額
    • 創業関連保証(無担保、第3者保証なし)の枠を1,000万円から1,500万円に拡充する。
    • 創業2か月前(会社設立でない場合は1か月前)から実施される創業関連保証について、事業開始6か月前からの保証が可能になる。
    特定創業支援を受けた創業者への支援 図

お問い合わせ先:中小企業庁 新事業促進課 TEL:03-3501-1767

24 各地域を管轄する経済産業局に、実施しようとする創業支援事業の計画を申請した上で、認定された場合に、その事業は創業支援事業となり、こうした創業支援事業を行う者を創業支援事業者という。

25 市区町村は、実施しようとする創業支援事業の計画を策定し、各地域を管轄する経済産業局に申請し、認定されれば場合に認定市区町村となる。

26 特定創業支援事業とは、市区町村又は創業支援事業者が創業を志す者を対象とした継続的な支援で、経営、財務、人材育成、販路開拓等の知識が身につく事業をいう。

●官民が一体となった起業相談体制

では、起業希望者や起業家たちは、起業に関して、誰に相談しているのだろうか。第3-2-45図を見ると、起業に関する相談相手として、「相談する相手はいなかった」を選択する割合が最も高い。この事実は、我が国の起業に関する相談体制が十分に整備されていないことを示唆しており、前述のコラム3-2-2にもあった、地域で最も身近な窓口である自治体や中小企業支援機関等による起業支援体制の確立、商工会・商工会議所やよろず支援拠点の活用等、地域における起業に関する相談体制の整備が求められている。

次に、相談する相手がいた人は、誰に相談したのであろうか。第3-2-45図を見ると、「家族・親戚」、「知人・友人」、「起業仲間や既に起業した先輩起業家」を挙げる割合が高い。こうした周囲の者達は親身になって話を聞いてくれるため、起業を志す過程において生じる様々な課題や不安に対して、精神面で支えてくれるという重要な役割を持つといえる。特に、先輩起業家については、精神面の支えともに、実体験に基づいた様々なアドバイスを与えてくれる理想的な相談相手となり得る。先輩起業家が後輩起業家を育てる仕組みは極めて効果的であり、行政としては、積極的にこうした「生態系」ともいうべき仕組みを全国各地で作っていく必要がある。この点、後述する「創業スクール」の仕組みをうまく活用することが重要であろう。すなわち、創業スクールの卒業生達が現役生達を教えるという仕組みができ上がれば、起業を志す者にとって、これほどありがたい仕組みはないであろう。

第3-2-45図 起業に関する相談相手
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一方で、より専門的な課題については、経営コンサルタント、税理士、会計士等の民間の専門機関に対して相談を行っている者はいるものの、その割合は少ない。起業の準備を行うものにとって、こうした専門家に相談する必要性はあったとしても、自分にあった専門家を探し出すことはなかなか容易ではないことが一因と考えられる。上述したような創業スクールから、経営コンサルタントや税理士、会計士等の専門家を紹介するような仕組みが、起業希望者や起業家には、より使い勝手も良く、安心と思われる。

このように、自治体や中小企業支援機関等による起業支援体制の確立、また、創業スクール等を通した先輩起業家が後輩起業家を育てる仕組みの構築、さらに、民間の専門家機関が三位一体となり、起業を志す者に対してそれぞれの知識や経験、専門性を活かした厚みのある支援を行うことが、我が国の起業を促進するためには重要といえる。

事例3-2-9. かばんねこ

起業を通した、「母としての子育て」と「女性としての自立・自己実現」の両立

群馬県桐生市にある「かばんねこ」は、おもちゃの販売事業を展開している。おもちゃコンサルタントの資格を有している高橋美樹(たかはしみき)社長が、子どもの健やかな成長や親子のコミュニケーションに寄与するおもちゃを厳選し、それぞれの子どもに合ったおもちゃを提案している。

起業のきっかけは、約10年前に遡る。高橋社長が子育てで苦労していた時に、良いおもちゃに出会え、子育てに喜びを感じられるようになった体験をしたことである。さらに、子育て後に仕事に復帰することを考えていたが、職場経験も少なく再就職は難しいだろうという複雑な思いもあった。そのため、「自分で良いおもちゃを子どもたちと母親に伝えていくことを仕事にしよう。より多くの子どもと母親が毎日を楽しく過ごせるようにしたい。」と思うようになった。

しかしながら、お金も事業経験もない専業主婦が、在庫を仕入れ、店舗を保有して事業を行うのはリスクが大きいため、子育て期間は将来の事業発展に向けた準備期間とし、まずは小さな起業を志した。具体的には、おもちゃと子どものことを勉強して、おもちゃコンサルタントの資格を取得した。また、西欧おもちゃの輸入代理店を探したり、日本のおもちゃ作家の情報を集め、小規模ではあるが、おもちゃを仕入れて地域や保育園のイベントで販売した。

お客様から喜ばれる経験は自分の起業への思いを更に強くしたものの、イベントの頻度は少なく、店舗資金の確保は難しい状況であった。その折、以前から、ホームページの作成等でお世話になった商工会から、創業補助金の紹介があった。多くの人に相談し書類を完成させ、創業補助金の採択を受けることができた。店舗スペースとして、自宅の住居スペースを店舗に改装することで、ついに店舗確保の見込みが立った(2014年2月現在改装工事中)。

おもちゃの販売スペースに加え、その店舗にレンタルスペースが設置される予定である。高橋社長はイベント等で出会う女性達から、料理、お花、ベビーマッサージ等、技術があるが、それを活かせる場所や機会が少ないという声を聞いていた。このようなニーズに対してレンタルスペースを設置し、様々な人が教室や商品を販売する場にしたいと考えている。また、借主とともにそのイベント利用者は女性や子ども連れの女性であることを想定しており、子どもと一緒でも周囲への迷惑を気にしすぎることなくイベントに参加できる環境や、床等に配慮し子どもに優しい環境が提供される。高橋社長は、これらの、おもちゃの販売事業とレンタルスペースという二つの事業により、結婚や出産をめぐる女性の人生の変化に女性同士で支えあえる場の提供を行い、「母としての子育て」とともに「女性としての自立・自己実現」を目指す女性を支援することを目標としている。

同社の高橋社長

コラム3-2-3.

創業スクール

2014年度の予算事業(7.5億円)として、全国300か所で創業を支援する。

「地域プラットフォーム27」に属する機関又は産業競争力強化法に基づき認定を受けた創業支援事業者(基本的には、商工会・商工会議所等を想定)が、創業に必要な基本的知識からビジネスプランの作成支援までを実施する。また、金融機関から講師を招き、ビジネスプランを金融面からもブラッシュアップすることで、資金確保面での支援も行う。ベーシックなプランに加え、創業に再チャレンジする者や女性向けのプランも用意し、ニーズに応じた支援をする。また、目指すべき市場や、組織の態様等に応じたプランも検討する。こうした、創業支援を通して、卒業生の4割が創業することを目標としている。さらに、ビジネスコンテスト等の実施により、創業案件の掘り起こしも行う。

創業スクール 図

お問い合わせ先:中小企業庁 小規模企業政策室 TEL:03-3501-2036

27 「地域プラットフォーム」とは、地域の中小企業支援機関による中小企業・小規模事業者支援のための連携体のことをいう。詳細は第4部第1章を参照。

コラム3-2-4.

満足度が高い支援策と今後活用したい支援策

今回のアンケートにおいて、これまでに活用した起業に関する支援策で満足度や優先度が高いものを調査したところ、「インターネット等による起業・経営に関する情報提供」と回答する割合が最も高かった(コラム3-2-4〔1〕)。潜在的起業希望者に対して情報提供を行う手段として、インターネットは効果的である。現在中小企業庁においてはポータルサイト「ミラサポ」を運営しており、起業に関する情報提供を行っており、起業に役立つ情報やノウハウ、また、起業に関する疑問を認定専門家へ相談できる、オンライン無料相談28が紹介されている。こうしたインターネットを用いて積極的に潜在的起業希望者や起業希望者に情報提供を行うことが重要である。

28 オンライン無料相談については、以下のURLを参照。https://www.mirasapo.jp/tool/starting-online.html

コラム3-2-4〔1〕図 活用したことのある支援策の中で、最も満足度や優先度が高いもの
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また、起業家においては、「商工会・商工会議所」の満足度が最も高いことが分かった。ただし、商工会・商工会議所は起業に対する相談窓口として、実際に起業した者にとっては満足度が高いが、起業家になる前のステージにいる者の評価は現状では必ずしも高くない。商工会・商工会議所は、起業した者は会員となれば相談する機会がある一方で、まだ起業していない者にとっては接点が少ないことが理由と推察される。このため、今後の創業スクールを主催する可能性の高い商工会・商工会議所は、会員企業のみならず、将来の会員になりうる潜在的起業希望者や起業希望者等に対する起業支援もより積極的に行っていく必要があるのではないかと思われる。

では、起業を志す者は、今後どのような支援策を活用したいと考えているのだろうか。コラム3-2-4〔2〕において、今後活用したい支援策を見てみると、「起業・経営に関する講座やセミナー」、「インターネット等による起業・経営に関する情報提供」と回答する割合が高い。今後とも、「ミラサポ」や創業スクール等の取組を通じて、起業を志す者が必要とする情報を分かりやすく届けていくことが求められている。

コラム3-2-4〔2〕図 今後活用したい支援策
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次に、「民間の起業支援者(コンサルタント等)への相談」、「起業に伴う各種手続きに係る支援」を選択する割合が高い。「民間起業の支援者(コンサルタント等)への相談」に関しては、「ミラサポ」のオンライン相談サービスや、商工会・商工会議所が窓口となって、民間の起業支援者を起業希望者へ紹介する仕組みを促進する必要があると思われる。

また、「起業に伴う各種手続きに関する支援」と回答した者も多いが、この点は、世界銀行の調査(第3-2-10図)においても日本は開業手続きが多いという結果となっており、今後の起業に関する相談体制の拡充において、起業に伴う各種の手続きの簡素化等に係る支援も検討していくべきであろう。

コラム3-2-5.

エンジェル税制(ベンチャー企業投資促進税制)

エンジェル税制は、創業して間もない企業への投資を促進するために、その企業へ投資を行った個人投資家に対して税制上の優遇を行う制度である。1997年に創設された。具体的には、ベンチャー企業に対して、個人投資家が投資を行った場合、投資時点と売却時点のいずれの時点でも、税制上の優遇を受けることができる。

  1. 税制上の優遇措置
    税制上の優遇措置 図
  2. 申請手続き
    〔1〕投資を受けた企業が、確認書の発行を各経済産業局へ申請し、経済産業大臣の確認書の交付を受ける。
    〔2〕投資を受けた企業が、確定申告に必要となる書類を個人投資家に対し交付する。
    〔3〕個人投資家が、確定申告を行い、税制上の優遇を受ける。
  3. エンジェル税制を利用した企業数の推移
     コラム3-2-5図を見ると、エンジェル税制を利用した企業数は制度発足後に増加傾向にあったものの、2008年をピークに減少に転じている。そのため、政府としては、手続き負担の軽減やパンフレット・ホームページの整備、対象を広げたPRの強化といった運用改善により、エンジェル税制の利用促進に向けた取組を行っている。
    コラム3-2-5図 エンジェル税制を利用した企業数の推移
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問い合わせ先

経済産業省 経済産業政策局 新規産業室 TEL:03-3501-1569

以上、本章では、日本の起業の現状を概観した上で、潜在的起業希望者が起業家になるまでの四つのステージごとの課題や不安について見てきた。特に、開業率を倍増する上で、これまで焦点を当てられていなかった女性や若者、シニアに焦点を当てた分析を行ってきた。こうした分析を踏まえ、最後に、我が国を「起業大国」にするための対応策を論じてきた。起業に興味や関心を持つものを増やすための取組として、起業意識を変革するための「起業家教育」や「起業家に対する社会的評価の改革」を取り上げた。また、起業しやすい環境を構築するための取組として、「起業のセーフティーネット」、「兼業・副業の促進」、また、起業に伴うコストや手続きの低減のための取組として、「誰もが起業家応援社会の構築」、「起業することでメリットのある仕組み」、「起業家に対する相談体制の拡充」について、一つ一つ具体的に取り上げてきた。こうした取組を着実に進めていくことで、我が国において、起業を希望する者が増加し、かつ、起業を希望する者が起業を実現しやすい社会環境が醸成され、ひいては、「起業大国」の実現につながることを目指したい(第3-2-46図)。

第3-2-46図 起業のステージと支援策
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