第3部 中小企業・小規模事業者が担う我が国の未来 

第2章 起業・創業 ―新たな担い手の創出―

第2部で見てきたように、我が国の経済・社会構造の変化、及び、経営者の高齢化の進展に伴い、中小企業・小規模事業者の数は年々減少を続けている。これまで地域経済を支えてきた中小企業・小規模事業者が市場から退出することで、地域の活力が失われることが懸念されている。こうした状況において、新たな地域経済の担い手を創出するべく、起業を促進することの意義は大きい。さらに、起業は産業の新陳代謝を促進し、我が国経済を活性化する役割を持つ。しかしながら、我が国の開廃業率は欧米に比べ、低い水準で推移している。また、起業を希望する起業希望者の数も急激に減少している。

こうした現状を踏まえ、本章では、我が国の起業の現状を時系列や国際比較を用いて概観するとともに、これまで分析が行われてこなかった起業に関心を持つ者及び起業を希望する者に焦点を当てた調査・分析を行う。最後に、こうした調査・分析を踏まえて、我が国の起業活動を活性化し、「起業大国1」を実現するために求められる支援策を明らかにし、今後の政策につなげていく。

1 2013年9月25日、ニューヨーク証券取引所において、安倍晋三内閣総理大臣が、「日本を米国のようにベンチャー精神あふれる「起業大国」にする。」と発言した。

第1節 起業の現状

まずは、我が国の起業の現状として、起業の担い手の推移を概観した後、起業分野、自営業主の所得を見てみよう。さらに、新陳代謝の活発さを表す指標として、開廃業率を諸外国と比較する。

1. 起業希望者数、起業家数の推移

我が国の起業の担い手の数について経年推移を見たものが、第3-2-1図である。起業を希望する者である起業希望者は、1997年以降、減少傾向にあり、2007年及び2012年に激減している。こうした起業希望者の減少は、「起業大国」を目指す我が国にとって看過しがたい事実であり、早急な対策が求められる。

第3-2-1図 起業の担い手
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一方で、起業家数は大きく変化しておらず、1979年から2012年にかけて緩やかな減少傾向にはあるものの、毎年20万人から30万人の起業家が一貫して誕生している。すなわち、起業希望者は大きく減少する一方で、起業家数は起業希望者ほど大きく減少していない。この事実にこそ、起業分野で行政が何をすべきかの方向性が隠されていると考えられる。すなわち、行政は起業希望者を増加させるための取組とともに、起業希望者が起業家になりやすい環境を整備するための取組を、同時併行で推進していくべきということが分かる(第3-2-2図)。

第3-2-2図 起業家を増やすために必要な二つの取組

次に、こうした起業希望者数と起業家数の変化に関して、性別及び年齢ごとに詳細に分析する。第3-2-3図より、性別について見ると、近年では、女性の起業希望者の割合が79年以降で最も高くなっているが、起業家における女性の割合は最も低くなっている。その理由として、男性に比べて女性が起業家になる際に、家庭との両立や社会経験の不足等、より多くの困難に直面し、起業を希望していても実際には起業に至らないことが考えられる。この点については、第2節において詳細に分析を行う。

第3-2-3図 起業希望者及び起業家の性別構成の推移
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また、第3-2-4図より、起業希望者及び起業家の推移を年齢別に見ると、60歳以上の割合は年々高まる一方で、若者の起業希望者及び起業家の割合が減少している。シニア層は若者に比べて自己資金が豊富であり、社会経験を蓄積しているとともに、退職後も何らかの形で働き続けたいと希望する者が多い2。その一つの選択肢として、起業を選ぶ者が存在するため、シニア層は起業の動機が明確であり、かつ、その意欲も高いと推察される。

2 内閣府「2011年版高齢社会白書」によると、60〜64歳の不就業者のうち3割以上の人が、65〜69歳の不就業者のうち2割以上の人が、それぞれ就業を希望している。

第3-2-4図 起業希望者及び起業家の年齢別構成の推移
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