第3部 中小企業・小規模事業者が担う我が国の未来 

3. 類型ごとの販路開拓の目指すべき姿

以上、第1章では、小規模事業者を類型化し、類型ごとに、創業年、業種、経営者の属性、地域における必要性、経営課題、相談相手、販路開拓支援の在り方等について見てきた。

小規模事業者は、その類型ごとに特徴が異なっており、したがって、それぞれが目指すべき販路開拓の姿も異なるといえる。「地域型」、とりわけ「地域維持・充実型」においては、地域に古くから根ざして、地域住民の要望やニーズに応じて、財やサービスを提供するとともに、地域の一員として地域活動に関与してきた、まさに「顔の見える」小規模事業者であり、その「顔の見える」信頼感を積極的に活用したニッチな需要の掘り起こしを考えていくべきである。例えば、中山間地域のある衣料店では、大規模量販店の進出に対して、安価な製品で対応せずに、地域密着型で地域の住民と長年築いてきた信頼関係を活かして、高齢者のニーズに応じた、オーダーメイドの製品を提供することで差別化を図り、地域で事業を継続している。地域で持続的に経営を行ってきた小規模事業者は「事業者」であるとともに、その町を形成する「住民」でもある。地域で生きているという強みを活かして、地域内取引の優先による地域への貢献や地域の課題解決を通じた事業を行うことにより、地域が活性化し、自らの事業も持続的に発展できる姿を目指すべきであろう34

他方、「広域型」、とりわけ「広域維持・充実型」については、情報化の進展や流通構造の変化等の経済・社会構造の変化により、組織形態を進展させなくても全国、さらには海外への販路開拓は可能となっている。インターネット販売の活用や自治体を巻き込む形での国内外の大企業とのマッチング等を通じて、域外からの需要を獲得することで、地域内の経済活動を活性化することができる。小規模事業者の多くが存在する地域経済において、その地域により域外から多くの資金を循環させていく企業の存在は重要である。具体的には、仕入活動を地域内で行い、地域外へ財・サービス等を販売していく企業(「コネクターハブ企業(地域中核企業)35」)の存在により、地域外から当該地域に資金が流れる。その後、小規模事業者等の事業活動を通じて、地域内で資金が循環し、地域経済は活性化していく。

以上のような「地域型」、「広域型」ごとの特徴と販路開拓の目指すべき姿をまとめたものが第3-1-34図である。

34 このような考え方の一つとして「CRSV(Creating and Realizing Shared Value)」というものがある。詳細は、第3部第5章第3節を参照。

35 詳細は、第4部第3章を参照。

第3-1-34図 小規模事業者の類型ごとの特徴と販路開拓の目指すべき姿

今後、第2部でも見てきたような経済・社会構造の変化により、小規模事業者を取り巻く事業環境はますます厳しいものとなっていくことが予想されるが、商工会・商工会議所を始めとする中小企業支援機関や地方自治体を始めとする行政機関が、互いの強みを活かしてオールジャパン体制で小規模事業者を支援していくことに加えて、小規模事業者が自主的にその円滑かつ着実の事業の運営を図るよう努めるとともに、相互に連携を図りながら協力することにより、小規模事業者が「事業の持続的な発展」や「成長発展」を遂げていくことが、地域経済の活性化、ひいては日本経済の活性化につながっていく。

コラム3-1-5.

商工会会員向けアンケートによる経営相談の状況

全国商工会連合会が実施した、商工会会員向けアンケートにおいても、小規模事業者の経営相談の相手を聞いている。

コラム3-1-5図は、商工会会員(小規模事業者)の経営課題ごとの経営相談の相手を示したものである。これを見ると、いずれの経営課題についても、「商工会・商工会議所」への相談が多い結果となった。一方で、商工会会員でも、「特に誰にも相談しない」と回答している小規模事業者が一定割合存在している。今後は、様々な経営課題に対応していく必要はあるものの、誰にも相談していない小規模事業者への対応が何より求められるのではないだろうか。

コラム3-1-5図 小規模事業者の経営課題ごとの相談相手(複数回答)
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