第3部 中小企業・小規模事業者が担う我が国の未来 

第4節 小規模事業者の経営課題と相談相手

ここからは、小規模事業者の経営課題と相談相手について見ていく。

第3-1-27図は、類型ごとの小規模事業者の経営課題を示したものである。「地域型」では、「既存の営業力・販売力の維持強化」と回答する企業が多く、次いで「国内の新規顧客・販路の開拓」であった。これは、今ある販売先との関係強化や営業力強化の方が、新規顧客や販路開拓よりも課題となっていることが分かる。「広域型」では、「国内の新規顧客・販路の開拓」と回答する企業が多く、次いで、「既存の営業力・販売力の維持強化」であった。これは、「地域型」とは逆で、新規顧客や販路開拓の方が、今ある販売先との関係強化や営業力強化よりも課題であることが分かる。

第3-1-27図 類型ごとの小規模事業者の経営課題
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その他の特徴としては、「成長型」では、「人材の確保・育成」を経営課題として回答する企業も多く、組織を成長させるに当たり、人材の確保・育成が課題となるのだろう。また、全体として、「(日々の)運転資金の確保」や「新商品・新サービスの開発」と回答した企業も見られている。以上のように、小規模事業者は、類型ごとに特徴はあるものの、多様な課題を抱えていることが分かる。

以下では、経営課題として最も多く回答された、「営業・販路開拓」の問題を解決している小規模事業者及び「営業・販路開拓」のための支援を行う小規模事業者を紹介する。

事例3-1-6. 株式会社見浪製作所

企業規模を維持しながらも、海外販路開拓に成功した小規模事業者

大阪府大阪市東成区にある株式会社見浪製作所(みなみせいさくじょ)(従業員数7名、資本金1,000万円)は、自動織機部品メーカー向けのリードワイヤー29の製造業者である。戦後は全国で40社ほどあったリードワイヤー製造企業は、現在では国内に1社しか残っておらず、当社は世界的な企業である。

リードワイヤー製造業者は材料を鉄鋼業者より仕入れており、製品の品質が材料の質に非常に左右される。鉄鋼業者からの材料にはムラがあり、完成品の品質を一定に保てないのが業界の常識であった。

先代より事業を引き継いだ見浪哲郎(みなみてつろう)社長は、同業3社と連携して、鉄鋼業者の1社と提携をし、原料を統一化して製造できる伸線機を開発した。これにより、原料からリードワイヤー製造に必要となる材料を自社製造することが可能となり、品質が安定した。世界でも同品質のワイヤーを安定的に供給できる企業はないとされており、当社の伸線機開発が業界に与えた影響は計りしれない。

品質はもちろんのこと、「製品の納期を守りクレームに真摯に対応すること」により、顧客の信頼を得ることで、その事業基盤を強固なものとした。今では、紡績の先進国であったヨーロッパと比べても良質な製品を比較的安価で製造できていることもあり、年々、海外での取引を拡大している。

「今後も国内の需要は縮小していくことが予想され、売上や従業員の雇用を維持するだけでも大変だが、当社製品の技術は世界でも通用することが分かっており、海外の需要を獲得することで、事業を継続していきたい。」と見浪社長は語る。

29 「リードワイヤー」とは、自動織機等に用いられる線のことをいう。

同社の見浪哲郎社長

事例3-1-7. 有限会社平和食品工業

販売先を見直したことで、赤字から脱却した小規模事業者

宮崎県東諸県郡国富町の有限会社平和食品工業(従業員11名、資本金300万円)は、鶏肉を中心とした食品の加工を行う会社である。1986年の設立当初は、鶏卵の販売業者であったが、現在では主に「鶏の炭火焼」や「チキン南蛮」といった宮崎名物を利用した加工食品を製造している。

同社は、東国原知事就任後の宮崎ブームで観光関連商品の売上が大幅に拡大していたが、ブーム終結後、鳥インフルエンザや新燃岳の噴火等の影響により、売上は減少し、一時期赤字を計上していた。

そこで、今まで観光関係だけに偏っていた商品のラインナップを見直し、スーパーの加工食品売場で販売するような商品を増やしたことに加え、インターネットを通じて全国へ販売するなど、販売先を拡大したことで売上を回復させ、黒字化を達成している。

現在では、売上の拡大に加え、食の安全への意識が高まっていることもあり、衛生管理に重きを置いた新社屋を建設している。

同社社長の花堂伸樹(はなどうのぶき)氏は、「今後については、企業のOEM30商品を増やしていくことで、更に販路を拡大していきたい。新規顧客の獲得に向けた営業も積極的に行っていく。そのためにも、小ロットでも対応できるような食品製造会社にならなくてはならない。」と今後の意気込みを語っている。

30 「OEM」とは、「Original Equipment Manufacturer」の略で、他社ブランドの製品を製造すること、又は他者ブランドの製品の製造者のことをいう。

同社の花堂伸樹社長

事例3-1-8. 有限会社Gyo Lighthouse

日米の商工会議所と連携し、中小企業の米国への販路開拓を支援する事業者

兵庫県芦屋市の有限会社Gyo LightHouse(従業員1名、資本金300万円)は、企業のPR動画の作成や米国でのプロモーション活動によって、中小企業の海外への販路開拓を支援している企業である。

「中小企業にとって、販売先の確保が最も重要。販路開拓の支援は、我々のような民間企業こそ、力を発揮する。」と同社の笠原暁(かさはらぎょう)社長は言う。同社では、企業のPRポイントを英語の吹き替えの動画にしてインターネット上で配信することで、米国への販路開拓の支援を行っている。また、動画の作成だけではなく、ロサンゼルスでの常設展示場や米国の商工会議所でプレゼンテーションを行うなど、直接的なプロモーション活動も行う。

さらに、2拠点ある米国の同社の事務所を通じて、現地の企業とのやり取りも支援している。「海外でビジネスをする上で、現地の販売先の企業とのやり取りのため、現地の事務所は必要不可欠であるが、中小企業では拠点の開設のコストが負担できない。そこを当社の事務所を通じてサポートしている。」と笠原社長は語る。

また、同社では、豊中商工会議所を始めとした商工会議所とも連携をしている。商工会議所では、会員に対する海外展開支援への関心が高まっており、同社の海外展開支援事業に興味を持つ商工会議所も多い。同社では、現在、西日本を中心におよそ50か所の商工会議所と提携しており、その提携している数も大幅に増加している傾向にあるという。

同社の笠原暁社長

ここからは、小規模事業者が経営課題などについて相談をする際の相談相手について見ていく。第3-1-28図は、小規模事業者が経営相談を行うに当たって、相談者に期待する能力・素養を示したものである。これを見ると、小規模事業者は、「事業分野における専門的な知識・ノウハウ」、「財務・会計の知識」、「具体的な提案能力」などの専門的な知識や「幅広い人脈やネットワーク」、「人間としての信頼感・秘密保持」などの人間としての能力を求めていることが分かる。

第3-1-28図 小規模事業者が相談者に期待する能力・素養(複数回答)
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第3-1-29図は、小規模事業者の経営課題ごとの相談相手である。これを見ると、小規模事業者の最大の経営課題である「営業・販路開拓」については、「取引先」、「同業種の経営者」、「異業種の経営者」、「知人」に相談している企業が多い。また、公的な支援機関や専門家の中では、「メインバンク」や「商工会・商工会議所」に相談する小規模事業者が多い。今回のアンケートのサンプルがwebモニターによるアンケートであり、三大都市圏に対象が偏っている中で、「商工会・商工会議所」への相談が多いことは、地域における中核的な支援機関(「かかりつけ医」)として、一定の評価ができる。

第3-1-29図 小規模事業者の経営課題ごとの相談相手(複数回答)
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その他の経営課題についても「同業種の経営者」や「異業種の経営者」、「知人」に相談する企業は多くなっているが、他方で、「特に誰にも相談しない」と回答した企業も多く、「経営者仲間」や「親しい人間/身内」以外に、広範な相談に乗ることのできる商工会・商工会議所がこれまで以上に活用されるべく、小規模事業者からの様々な相談に乗ることのできる商工会・商工会議所を目指していくことが求められているといえよう。

以下では、自治体や商工会と協力して地域ブランドの確立・販路開拓に成功した企業を紹介する。

事例3-1-9. 株式会社豊年屋

自治体や商工会と協力をして、地域ブランド確立・販路開拓に成功した小規模事業者

長野県駒ヶ根市の株式会社豊年屋(ほうねんや)(従業員20名、資本金2,050万円)は、1951年に創業したごまの加工販売を行う企業である。

同社は、全国の流通量の1%以下といわれている国産ごまを、駒ヶ根市の特産物(地域ブランド)とする目的で、2007年より駒ヶ根市、商工会、農協と共同で「信州駒ヶ根ごまプロジェクト」を実施している。

ブランドを形成するには長い時間と膨大な労力に加え、地域からの信頼などがないと難しい。同社は、2003年に愛知県から駒ヶ根市へ移転してきた企業で、地域での知名度は低かったが、市役所や商工会議所、農協などのバックアップもあり、地域の生産者や飲食店などの協力も得られるようになっていった。その結果、徐々にではあるが、駒ヶ根市のごまという商品の知名度の向上、売上の拡大に成功している。

同社社長の橋重行(たかはししげゆき)氏は、「駒ヶ根市は、域内や域外に販路開拓するためのノウハウを教えてくれている。また、商工会議所や農協など、地域ブランドの確立のためのプロジェクトを一緒に進めている良き相談相手がたくさんいることが一つの安心感。」と経営課題に対する相談相手がいることの有り難さを語っている。

同社の工場外観
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