第3部 中小企業・小規模事業者が担う我が国の未来 

2. 小規模事業者の役割

これまで述べてきたように、厳しい経営環境にさらされる小規模事業者であるが、我が国の経済社会において果たす役割は大きい。以下では、小規模事業者が経済社会に果たしている役割を、雇用面、とりわけ女性や高齢者の雇用、域内の資金循環の観点から見ていくこととする。

第3-1-9図は、小規模事業者の三大都市圏と地方圏における規模別の従業者割合の比較を行ったものである。地方圏での小規模事業者の従業者数割合は三大都市圏での小規模事業者の従業者数割合よりも多くなっており、地方圏ほど小規模事業者が雇用を担っているといえる。

第3-1-9図 三大都市圏と地方圏における規模別の従業者割合の比較
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また、小規模事業者は、人口減少が進む地域の雇用も担っている。第3-1-10図は、2005年から2010年にかけての人口増加率上位5都県と人口減少率上位5県の規模別の従業者割合の比較を行ったものである。これを見ると、人口減少率が高い県ほど、小規模事業者の従業者割合が高く、人口が減少している地域における雇用の受け皿として小規模事業者が果たす役割は大きい。逆にいえば、人口減少による需要縮小が起こりやすい地域に小規模事業者が多く13、それだけ小規模事業者の経営環境は厳しいということを意味する。

13 人口増加率上位5都県の全企業に占める小規模事業者の割合が84.5%であるのに対し、人口減少率上位5県の全企業数に占める小規模事業者の割合は88.2%となっている。都道府県別の規模別企業数については、付属統計資料2表を参照。

第3-1-10図 人口増加地域と減少地域の規模別の従業者割合の比較
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小規模事業者は、女性の雇用も担っている。第3-1-11図は、従業員規模別の女性雇用者割合を示したものである。これを見ると、女性の雇用者割合は従業員規模が小さい企業ほど高くなっており、小規模事業者は女性の雇用に貢献している14といえる。

14 従業員規模の小さい企業は家族経営である割合も高いため、経営者が男性である場合、その妻が手伝いをするケースは多い。「就業構造基本調査」では、家族従業者を「自家営業の手伝い」と回答したものとしているが、給与をもらって雇用という形態をとっている場合には、雇用者に含まれるため、それが女性雇用者割合に寄与するとも考えられる。しかしながら、従業員数5-19人以上の企業のみで見ても、規模の小さい企業ほど、女性雇用者の割合が高いことから、規模の小さい企業ほど女性の雇用に貢献していると本文では分析している。

第3-1-11図 従業員規模別の女性雇用者割合
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小規模事業者は、高齢者の雇用にも貢献している。第3-1-12図は、従業員規模別の65歳以上の雇用者割合を示したものである。これを見ると、従業員規模が小さい企業ほど65歳以上の雇用者の割合は高くなっており、高齢者の雇用にも貢献しているといえる。近年、第3-1-13図のように、高齢者の雇用者数・雇用者割合が増加する中15で、小規模事業者は「高齢者雇用の受け皿」としての役割も有している。

15 農林業、自営業主を含めた、全従業者数に占める65歳以上の従業者の割合は1割を超えている。詳細は、付注3-1-1を参照。

第3-1-12図 従業員規模別の65歳以上雇用者割合
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第3-1-13図 65歳以上の雇用者数の推移
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反面、小規模事業者の従業員が高齢化しているともいえ、経営者の高齢化16だけでなく、従業員についても今後を担う若い世代が不足しているともいえる。

小規模事業者は、域内の資金循環にも貢献している。第3-1-14図は、従業員規模別の商品の販売地域を示したものである。これを見ると、従業員規模が小さい企業ほど、「同一市町村」、「近隣市町村」、「同一県内」と地域内での販売が多く、域内の資金循環に貢献しているといえる17。逆にいえば、小規模事業者は、商圏が限定されているが故に、人口減少による商圏の需要縮小や大規模小売店舗の進出等の影響を受けやすいともいえる。

16 自営業主の高齢化については、第3部第3章第3-3-1図を参照。

17 詳細は、第3-1-25図第3-1-26図を参照。

第3-1-14図 従業員規模別の商品の販売地域
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以上見てきたように、我が国経済、とりわけ地域経済にとって小規模事業者が果たす役割は大きい一方で、経済・社会構造の変化を受けやすいという脆弱性も有している。今後の小規模企業施策の立案に当たっては、このような小規模事業者が我が国の経済、特に地域経済において果たす役割の大きさと、小規模事業者であるが故の脆弱性を十分に踏まえることが重要である。

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