第2部 中小企業・小規模事業者が直面する経済・社会構造の変化 

4. 商店街の現状

ここからは、地域が抱える課題として、「人口減少」、「少子高齢化」の次に回答数の多かった、「商店街・繁華街の衰退」について見ていくこととする。

まずは、商店街の歴史について概観していく。

商店街は、戦後復興期から高度成長期にかけて数を増やしてきており、いわゆる地域の一等地で商売をするなど、「町の顔」として存在しており、祭りを開催するなど地域活性化の担い手、地域コミュニティを形成する「場」として地域に貢献してきた。その後、百貨店が台頭したことにより、商店街は百貨店とその地域内において競合することとなった。また、1973年以降「大規模小売店舗調整法」により、大規模小売店舗の出店が規制されてきたが、1998年に成立した「まちづくり三法8」の一部である「大規模小売店舗立地法」において、商業規制から社会的規制へと転換が行われた。加えて、モータリゼーションの進展もあり、郊外への大規模小売店舗の出店が進み、商店街を中心とする中心市街地は空洞化していった。近年では、第1章でも見てきたような情報技術の進展によりEC市場が拡大しており、リアル店舗とネット販売の競争も起こるなど、商店街の業況はますます厳しくなっていると考えられる。

以上を踏まえた上で、実際の商店街の空洞化の状況はどうなっているのかを見ていく。第2-2-18図は、商店街の空き店舗率の推移を示したものである。これを見ると、商店街の空き店舗の割合は、2003年に7.3%であったのが、2012年には14%を超えており、商店街はますますその活力を失っているのが分かる。

8 「まちづくり三法」とは、改正都市計画法、中心市街地活性化法、大規模小売店舗立地法をいう。

第2-2-18図 商店街の空き店舗率の推移
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店舗数が減少した結果、アーケード9の維持・修繕費を賄えなくなって、アーケードが消滅の危機に陥っている商店街やアーケードを建設した際の融資が返せなくなり自己破産した商店街振興組合は、地域を問わず存在している。

以上のような厳しい環境にある商店街が抱える課題にはどのようなものがあるのだろうか。第2-2-19図は、商店街振興組合に聞いた商店街の抱える課題を示したものである。これを見ると、商店街の抱える課題として最も多いのは、「経営者の高齢化による後継問題」、次いで「集客力が高い・話題性のある店舗/業種が少ない又はない」、「店舗等の老朽化」、「商圏人口の減少」、「大型店との競合」と回答されている。この中でも、特に商店街の経営者の高齢化は深刻であることが分かる。

9 「アーケード」とは、商店街等を覆うアーチ状の屋根のことで、日差しや雨から店舗や歩行者等を守る目的で設置されている。

第2-2-19図 商店街の抱える課題(複数回答)
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いずれの課題も、商店街振興組合等による適切なマネジメントにより、解決できる可能性もある。例えば、「経営者の高齢化による後継問題」については、自治体や商工会などの協力を得ながら、地域活性化などを行うことにより、空き店舗の解消と若者の商店街への出店を促進した事例10もある。また、「集客力が高い・話題性のある店舗/業種が少ない又はない」、「店舗等の老朽化」については、長期間老朽化して空き店舗となっていたビルを「賃貸ビル」として改装し、1階に知名度の高い海外輸入食材店を入居させたことで、新たな集客が生まれ、商店街の活性化につながった事例11もある。

10 事例2-2-2を参照。

11 事例2-2-3を参照。

事例2-2-2. 三条中央商店街

地域外の店舗を呼び込むことで、活性化に成功した商店街

新潟県三条市にある三条中央商店街は、JR信越本線三条駅から約1km、徒歩約12分の市街地に位置する、江戸時代から続く歴史のある商店街である。

同商店街では、商店主の高齢化や隣接市である長岡市に大型ショッピングモールが出店したことによる来客数の減少で、空き店舗が目立つ状況となっていた。

このような中、同商店街では、地域住民の集客を促し、地域活性化をしようと、2010年9月から商店街地域の中で行うイベントである「三条マルシェ」を定期的に開催することとした。「三条マルシェ」とは、三条市の補助金を利用し、各種団体、地元の若者で組織した実行委員会を中心として地域活性化を目指したお祭りのことである。三条市や商工会議所の協力を得ながら、地域の中心である三条大通りを歩行者天国にしたり、新潟県内の他地域からの出店を促したりするなど、街全体で大々的にイベントを開催することで、普段、商店街を訪れない若者などの集客に成功した12

また、「三条マルシェ」に出店した他地域の若者が、その後、三条市の空き店舗対策の補助金を利用して、三条中央商店街内で出店するなどという動きもあり、「三条マルシェ」開催から2年間で6店舗の新規出店があった。

その他にも、商店街へのリピート客を増やすための商店街共通のスタンプカードの作成や商店街主との接点を増やすための「まちゼミ13」等の様々な取組を通じて、商店街の集客アップに成功している。

12 2013年10月に開催された際には、171店舗の出店があった。また、2010年9月以降の延べ来客数は50万人を超えている。

13 「まちゼミ」とは、全国商店街振興組合の補助金を利用した事業で、商店街内の店舗が講師となり、プロならではの視点で専門知識や情報、商売のコツなどを教えている少人数制の勉強会である。

2013年開催の三条マルシェのポスター

事例2-2-3. 魚町商店街

遊休物件をリノベーション14して、地域活性化に結び付けた商店街

魚町商店街は、福岡県北九州市の中心である小倉地区の中心市街地を南北に縦断するメイン通りに位置する商店街である。

同商店街では、遊休物件の所有者と入居希望者(新規事業者)を結ぶ仲介機能を有する株式会社北九州家守舎(きたきゅうしゅうやもりしゃ)が、大学や商店街等と協力して街中の遊休物件を有効活用する「リノベーション事業」に取り組んでいる。

例えば、遊休物件の所有者に対しては、当社が家賃保証等を行うことで、賃貸することに二の足を踏んでいた遊休物件の所有者から賃貸の了承を得るなどしている。また、新規事業者に対しては、「リノベーションスクール」という実際の遊休案件を対象にした実践的なカリキュラムでの新規事業化支援等を行っている。

同社は、これまでに、数十件のリノベーションを行っており、100名を超える新規事業者と約150名の新規雇用者を生み出すなど、商店街の活性化に貢献している。

また、商店街でも、長期間空き店舗となっていた4階建てのビルを、商店街振興組合の主導により、まちづくり会社と連携して「賃貸ビル」として改装を実施するとともに賃料の適正化に向けた交渉を不動産の所有者に対して行い、賃料の引下げに成功した。賃貸ビルについてはまちづくり会社が借受け、テナントの募集と管理代行を行うサブリース事業を展開し、1階に海外輸入食材店、2階に多世代交流施設、3階に多目的ホール、4階にまちづくり会社が入居した。1階に知名度の高い店舗が入居したことにより、新たな集客が生まれ、来街者の増加につながっている。また、2階の多世代交流施設「ママトモ魚町」は、メインターゲットである子育て世代の女性のニーズに応じた託児スペースを設けていることに加え、多機能トイレを始めとした誰もが使いやすい施設を整備し、商店街に足りなかった機能を補完するなど、商店街の地域貢献的な要素も備えている。

以上のように、魚町商店街では、地域企業と商店街等が協力することで、遊休物件をリノベーションし、地域活性化を果たしている。

14 「リノベーション」とは、建築・不動産(公共空間も含む)の遊休ストックを活用して、対象となる建築・不動産の物的環境を改修等によって改善するのみならず、当該建築・不動産に対して新しいライフスタイルの提示、新産業や雇用の創出、コミュニティの再生、エリアへの波及効果等の新たな価値を同時に組み込むことをいう。

リノベーションにより生まれ変わったビル

以上のように、商店街振興組合や自治体が、商店街に対して、適切なマネジメントを行うことで、商店街の課題を解決し、商店街を活性化させた好事例はいくつもある。

では、商店街の適切なマネジメントを促すために、自治体はどのような取組をするべきであろうか。

欧米では、商店街を始めとする地域マネジメントの取組として「BID(Business Improvement District)制度」が普及している15。BID制度とは、特定の地区内で、資産所有者や事業者など一定の主体を対象に合意形成がなされ、それらの者の負担を財源に地区管理や活性化事業を行う仕組みのことである。公共施設・設備の維持管理から、治安維持・ホスピタリティ向上、景観向上、コミュニティ事業、ビジネス環境まで、幅広い事業が対象となっている。公共と民間の中間的な位置付けであり、公共サービスの民営化という側面と、きめ細やかな公共の育成という側面がある。

このBID制度を活用して、商店街のマネジメントを強化していくことができるのではないかと考えられる。我が国でも、地方自治体の分担金制度16を活用し、BID制度のような取組が可能との見方もあるが、これまでの分担金制度の活用事例としては、公共物管理等の自治体の事業に民間の負担を求めるものに限られており、商店街のような民間主体のものはない。民間主体のものに対して、分担金制度で負担を求めるには、周辺事業者の合意形成が必要であるが、分担金の対象になり得る事業の考え方や合意形成のための施策がないことが、分担金制度の活用が進まない原因とも考えられる。民間や自治体による取組を推進するとともに、国としても、取組を後押しするための仕組みを検討する必要があるのではないかと考えられる。

以下では、商店街が地区内の事業者に対して費用負担を求めていることに加え、自治体もまちづくりに関与したことで地区の活性化に成功している事例を紹介する。

15 「BID制度」に類似した取組や実際の英米での事例については、付注2-2-3を参照。

16 「分担金制度」とは、地方自治法第224条にて、「普通地方公共団体は、政令で定める場合を除くほか、数人又は普通地方公共団体の一部に対し利益のある事件に関し、その必要な費用に充てるため、当該事件により特に利益を受ける者から、その受益の限度において、分担金を徴収することができる。」とされている。つまり、地方自治体がある事業を行う際に、利益を得るものから、分担金(負担金)を徴収することのできる制度をいう。

事例2-2-4. 元町地区

商店街内の事業者に対し費用負担を求めることに加え、自治体もまちづくりに関与したことで活性化している地区

神奈川県横浜市にある元町は、山手旧外国人居留地の外国人が利用する商店街を中心に発展した歴史ある地区である。

元町地区は通りを中心として商店街が形成されており、その通りごとに存在する組合がまちづくりの基本方針に基づいて「まちづくり協定」を策定し、地区内の事業者に対して、建物の新改築等の際のまちづくり委員会との事前協議、同組合への加入と応分の費用負担を求めている。また、賃貸物件の所有者が組合等に加入することを賃貸契約上明記し、会費等の徴収を行うなど、関係者に対しまちづくりに必要な協力を求めている。

他方、横浜市においても、「元町地区街づくり協議指針」を策定しており、建築計画時には、夜間照明や街の個性を創出することなどについての指導を行っている。加えて、元町の商店街が存在する通りを含めた元町地区全体に対して、「元町地区地区計画」や「元町仲通り街並み誘導地区地区計画」に基づき、建築物の用途制限(自動車教習所、マージャン屋、カラオケボックス等を規制)、道路に面した1階部分のセットバック17等の届出審査を行っており、商業と居住の共存する街並みを創造している。

以上のように、組合が事業者に対して組合への加入や費用負担を求め、まちづくりへ事業者を関与させるとともに、自治体においても、地区計画などを策定することで、総合的なまちづくりへの取組を行っている。以上のような取組の結果、地元住民だけでなく観光客で賑わう地区となっている。

17 敷地や道路の境界線から後退して建物を建てること。

元町地区の商店街
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