第2部 中小企業・小規模事業者が直面する経済・社会構造の変化 

第2章 地域の抱える課題と地域活性化

第1章で見てきたような経済・社会構造の変化が地域経済に与える影響は大きい。

本章では、中小企業や自治体が認識している地域が抱える課題を「中小企業者・小規模企業者の経営実態及び事業承継に関するアンケート調査1」及び「自治体の中小企業支援の実態に関する調査2」により、明らかにしていく。その上で、地域が抱える課題の中で多くの回答があったものについて、より詳細に分析していく。

また、上記のような地域が抱える課題を解決し、地域活性化の切り札となり得る「地域資源」についても概観していく。

1 中小企業庁の委託により、(株)帝国データバンクが、2013年12月に、中小企業13,000社(うち小規模事業者9,100社)を対象としたアンケート調査。回収率27.3%。

2 中小企業庁の委託により、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)が、2013年11月に、47の都道府県及び1,742の市区町村を対象としたアンケート調査。回収率51.1%。

第1節 地域の抱える課題

1. 地域の抱える課題

第2-2-1図は、中小企業・小規模事業者が認識している地域の抱える課題を示したものである。中規模企業、小規模事業者共に、「人口減少」、「少子高齢化」、「商店街・繁華街の衰退」と回答した企業が多い。小規模事業者については、「大規模工場等の製造業の不在」と回答した企業も多く、大規模製造業がその地域から移転してしまった影響で、下請である小規模事業者が仕事を失ったことが推察される。

第2-2-1図 地域が抱える課題(中小企業・小規模事業者)
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第2-2-2図は、自治体が認識している地域が抱える課題を示したものである。都道府県、市区町村共に「人口減少」、「少子高齢化」と回答した自治体が多い。市区町村では、「商店街・繁華街の衰退」と回答した割合も多く、中小企業・小規模事業者の認識と同じ傾向を示している。なお、都道府県の「その他」には、「震災からの産業復興」、「内外経済環境の変化」、「製造品出荷額の減少」等が回答されており、都道府県の抱える課題が多岐に渡っていることが分かる。

第2-2-2図 地域が抱える課題(自治体)
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第2-2-3図は、中小企業・小規模事業者の地域が抱える課題への対応状況を示したものである。「自社で既に対応している」、「自社のみでは対応できず、他者に相談し、既に対応している」と回答した企業が、中規模企業では約2割、小規模事業者では約1割存在している。一方で、地域の課題に対して、「対応は実施していない」と回答した中規模企業は5割強、小規模事業者では7割強となっており、地域が抱える課題に対して、規模の小さな企業ほど対応できていないことが分かる。

第2-2-3図 地域が抱える課題への対応状況(中小企業・小規模事業者)
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第2-2-4図は、自治体の地域が抱える課題への対応状況を示したものである。これを見ると、「十分に対応できている」と回答した自治体はほとんどなく、都道府県では、「対応しようとしており、一定の成果は出ている」と回答した割合が6割強であったが、市区町村では、約2割にとどまっている。

第2-2-4図 地域が抱える課題への対応状況(自治体)
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また、「もはや、自治体のみで対応できる状況ではない」と回答した自治体も、都道府県で約1割、市区町村で約2割存在している。「もはや、自治体のみで対応できる状況ではない」と回答した自治体が抱える課題の内訳を見てみると、都道府県では、「人口減少」が2割強、「少子高齢化」が7割強、市区町村では、「人口減少」が約4割強、「少子高齢化」が約3割、「商店街・繁華街の衰退」が1割強となっており、「人口減少」、「少子高齢化」、「商店街・繁華街の衰退」の三つの課題が、特に深刻であることが分かる。

では、自治体が実際にどんな取組によって、地域が抱える課題への対応しようとしているかを見ていく。第2-2-5図は、自治体の地域が抱える課題への取組内容を示したものである。これを見ると、都道府県では、「企業誘致」などによる外部の需要を獲得することで、地域が抱える課題に対応しようとしているのに対し、市区町村では、「観光客の誘致」、「商店街活性化」、「地域ブランドの発掘・育成」などの内部からの需要創造型の施策により、地域が抱える課題に対応しようとしていることが分かる。

第2-2-5図 自治体の地域が抱える課題への取組内容
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大企業の設備投資が海外に向かう傾向が強まる中で、企業誘致を行うのは難しい状況となりつつある。そのような中で、今ある中小企業・小規模事業者の活力をどう活用していくか、今ある地域資源や地域ブランドをどう活用していくか、地域活性化の「鍵」は外部ではなく、むしろ内部にこそあるのではないかということに、市区町村を中心に気付き始めたということは、大いに注目すべき変化といえる3

次に、第2-2-5図で回答されたような取組に対する中小企業の認知度を見ていく。第2-2-6図は、自治体の地域が抱える課題への取組に対する中小企業からの認知度を示したものである。これを見ると、「よく分からない」と回答した中小企業が最も多く、3割を超えている。また、「取り組んでいない」と答えた中小企業も約1割おり、自治体の地域が抱える課題への取組に対する認知度は低いといえる。

3 2013年9月2日の日本経済新聞夕刊の記事によると、全国の市と東京23区を対象としたアンケート調査で、雇用対策として何を重視するかを調査したところ、「地場産業・起業支援に重点」が48%で「企業誘致に重点」の38%を上回ったという結果も出ており、各地の自治体で企業誘致から地場産業の育成に重点を置く動きが広がっていることが分かる。

第2-2-6図 自治体の地域が抱える課題への取組に対する認知度(中小企業・小規模事業者)
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以上見てきたように、「人口減少」、「少子高齢化」、「商店街・繁華街の衰退」などの地域の抱える課題に対しては、中小企業、自治体共に有効な取組ができておらず、今後も地域の中小企業・小規模事業者を取り巻く経営環境はますます厳しくなっていくことが予想される。

次からは、地域の抱える課題として、回答数の多かった、「人口減少」、「少子高齢化」、「商店街・繁華街の衰退」について、それぞれより詳細に見ていくこととする。

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