第2部 中小企業・小規模事業者が直面する経済・社会構造の変化 

第2節 国際化の進展

1. 国際競争の激化

第1節で見てきたように、我が国の人口は、2011年以降減少しており、今後も減少が見込まれている。一方、第2-1-9図は、地域別の中間層・富裕層の将来推計人口を示したものである。これを見ると、先進国の中間層・富裕層人口はほぼ横ばいであるものの、南西アジア、ASEAN、中国等アジアでは、中間層・富裕層人口の増加が見込まれており、これらの需要を取り込んでいくことは、中小企業・小規模事業者の成長発展のみならず、我が国の今後の持続的発展のためにも重要となる。

第2-1-9図 地域別の中間層・富裕層の人口
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また、第2-1-10図は、地域別の実質GDPの推移を示したものである。これを見ると、我が国の実質GDPは1990年から2000年にかけては、年平均5.2%の成長を見せていたが、2000年から2010年にかけての実質GDP成長率は、年平均1.6%と成長が鈍化した。また、2010年から2018年にかけての実質GDP成長率は、年平均で1.0%と、成長率はさらに低くなることが予測されている。一方、2010年に実質GDPで我が国を抜いた中国は、2010年から2018年にかけて、年平均16.5%と極めて高い実質GDP成長率が予測されている。また、インド、NIEs、ASEAN5合計の実質GDPについても、2010年から2018年にかけては、年平均8.0%と中国までとはいかないが高い実質GDP成長率で推移し、2016年には我が国の実質GDPを抜くことが予測されているなど、我が国の成長率が鈍化する中、アジア各国の実質GDP成長率は著しく伸びているといえる。

第2-1-10図 地域別実質GDPの推移(米ドル換算)
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他方、その他の地域を見てみると、2010年から2018年にかけての実質GDP成長率は、米国では年平均5.5%、EUでは年平均3.9%、中南米では年平均6.4%と、こちらも我が国と比べると高い成長率が予測されており、我が国の世界における位置付けが相対的に小さくなる一方で、アジアを始めとする世界の需要は拡大し続けていくといえる。

第2-1-11図は、我が国の貿易収支の推移を示したものである。これを見ると、2010年までは、一貫して貿易黒字であったのが、東日本大震災が起きた2011年以降は貿易赤字に転じている。これは、原子力発電所の稼働停止に伴う化石燃料の輸入増大に加え、化石燃料を含む輸入価格の上昇、さらには、日本企業の国際競争力の低下による輸出の減少等が原因と考えられる。今後、海外景気の底堅さやこれまでの円安方向への動きを背景に、徐々に輸出が増加することによる貿易収支の改善を予想する声はある6。しかしながら、国内のエネルギー構成が現状のように化石燃料に大きく依存する状態が続く場合には、貿易赤字が定常化する恐れはある。

6 自国通貨が切り下がった場合(本文中では円安)、短期的には、輸出数量の調整が行われず、貿易収支が悪化し、その後、輸出数量が増加することにより貿易収支が改善する現象が起こる。この現象のことを「Jカーブ効果」という。

第2-1-11図 日本の貿易収支の推移
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第2-1-12図は、我が国の対外直接投資の推移を示したものである。海外への直接投資(「流出」)は、リーマン・ショック以降、一時減少したものの、2010年以降、再び増加に転じた。その後も、2013年には実質実効為替レートが減価しているにもかかわらず、対外直接投資の増加傾向は継続している。他方、海外から国内への引揚げ(「流入」)については、10兆円前後で大きな変動はなく推移していることが分かる。

第2-1-12図 日本の対外直接投資の推移
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このことから、製造業を中心とした対外直接投資を進めた企業は、その後、国内に引揚げてくることは少なく、国内の産業空洞化が進展しているということが推察される。

また、第2-1-13図は、対内直接投資の推移を示したものである。これを見ると、2003年の小泉内閣時代の「対日投資倍増計画7」に後押しされる形で、2006年から2008年にかけては、国内への投資(「流入」)も活発化していたが、リーマン・ショックで海外の景気が落ち込んだため、2009年以降は、低調に推移している。その後も、我が国の経済成長率が低調であること等もあり、国内への投資は伸びておらず、我が国は投資対象としての魅力を失いつつあると考えられる。

7 小泉内閣総理大臣が、2003年1月の第156回通常国会の施政方針演説で「対日投資を5年間で倍増させる」と発言したことを受けて、対日直接投資相談窓口「INVEST JAPAN」を設置し、対日直接投資促進に取り組んだ。

第2-1-13図 日本の対内直接投資の推移
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他方、国内からの引揚げ(「流出」)については、国内への投資(「流入」)と似たような動きをしており、2010年以降は、国内への投資(「流入」)とほぼ同額の国内からの引揚げ(「流出」)が行われている。

第2-1-14図は、大企業の海外設備投資比率を示したものである。これを見ると、大企業の海外設備投資比率は、2002年には2割弱であったのが、2012年には5割弱となるなど、大企業の設備投資先は、海外に向いていることが分かる。

第2-1-14図 大企業の海外設備投資比率
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国内外の設備投資についてより詳細に見ていくこととする。第2-1-15図は、国内外の製造業8設備投資額(全規模9)の推移を示したものである。2003年1-3月期からリーマン・ショック前の景気拡張局面では、製造業では、海外への設備投資額だけではなく、国内への設備投資額も伸びていた。リーマン・ショック以降、設備投資額は国内・海外共に落ち込み、その後の、2010年1-3月期からの景気拡張局面では、海外投資・国内投資共に回復の傾向を見せていたが、2011年1-3月期の東日本大震災以降は、国内への設備投資額は伸び悩んでおり、海外への設備投資額のみが増える傾向で推移している。これは、震災以降の国内における厳しい事業環境が背景にあるものと推察される。

8 非製造業の設備投資額の推移は、付注2-1-1を参照。

9 規模別の国内外の設備投資額の推移は、付注2-1-2及び付注2-1-3を参照。

第2-1-15図 国内外の設備投資の推移(製造業)
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次に、国内外の設備投資を業種別に見ていくこととする。第2-1-16図は、輸送用機械の国内外の設備投資額の推移を示したものである。これを見ると、製造業全体と同様に、2003年1-3月期からリーマン・ショック前の景気拡張局面では、海外への設備投資額だけではなく、国内への設備投資額も伸びていた。リーマン・ショック以降は、設備投資額は国内・海外共に落ち込み、その後の、2010年1-3月期からの景気拡張局面では、海外・国内投資額共に増加傾向で推移しているが、特に、海外への設備投資額が伸びていることが分かる。

第2-1-16図 国内外の設備投資の推移(輸送用機械)
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第2-1-17図は、電気機械の国内外の設備投資額の推移を示したものである。これを見ると、大きなトレンドとしては、2002年からリーマン・ショック前までは、国内への設備投資額が減少し、海外への設備投資額が増加している。リーマン・ショック以降は、設備投資額は国内・海外共に落ち込み、その後の、2010年1-3月期からの景気拡張局面では、落ち込んでいた海外投資額が増加していたものの、近時では、再び減少傾向にある。

第2-1-17図 国内外の設備投資の推移(電気機械)
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以上のように、製造業の国内外への設備投資の推移を見ていくと、自動車産業を始めとする輸送用機械では、景気拡張期には、海外投資額、国内投資額共に増えている。一方で、電気機械では、景気拡張期には、国内投資額が減少し、相対的に海外投資額が増えているものの、輸送用機械ほど力強く海外投資が増加しているわけではないことが分かる。

また、リーマン・ショック後などの景気後退期には、輸送用機械、電気機械の両産業で、国内投資額・海外投資額共に減少させていることが分かる。

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