第1章 我が国の中長期的な構造変化
我が国では、中長期的な経済・社会構造の変化が起こっており、中小企業・小規模事業者の経営環境はますます厳しいものとなっている。
また、中小企業の数は、長期にわたり減少傾向にある。経営者の高齢化も進行しており、円滑な事業承継や起業・創業などの新陳代謝が図られなければ、中小企業の数はますます減少していき、地域経済の衰退に拍車をかける恐れがある。
本章では、人口減少・少子高齢化、海外との競争激化、情報技術の発達、就業構造の変化等、我が国の経済・社会構造の変化について概観する。
第1節 人口減少・少子高齢化社会の到来
1. 人口指標の国際比較
まずは、人口の推移と高齢比率の推移について、各国比較を行っていくこととする。
第2-1-1図は、主要国の人口推移(実績・予測)を示したものである。これによると、米国、英国、フランスでは人口増加が、日本、ドイツでは人口減少が予測されている。
米国では、中南米からの移民流入が多いことに加えて、移民の出生率が高いことから、2005年から2010年にかけての合計特殊出生率1も2.06と高い水準で推移しており、今後についても人口が増加することが予測されている。英国では、2000年から2005年にかけての合計特殊出生率は1.66であったが、2005年から2010年にかけては1.88と改善基調にある。加えて、英国では、留学等による移民が増加しており、2005年から2010年にかけて年平均で約17万人移民が増加していることから、今後についても人口の増加が予測されている。フランスでは、2005年から2010年にかけての合計特殊出生率が1.97であり、米国ほどではないが、高い水準となっている。また、移民についても、アルジェリアやモロッコ等の北アフリカからの移民が多い。これらにより、フランスについても今後の人口増加が予測されている。
他方、ドイツでは、2005年から2010年にかけての合計特殊出生率が1.36となっている。移民についても、過去は、ヨーロッパ最大の移民受入国であったが、現在では、合計特殊出生率の減少をカバーできるほど多くないため、今後の人口減少が予測されている。
日本についても、詳細は後述するが、2005年から2010年にかけての合計特殊出生率は1.34と低く、今後の人口減少が予測されている。
第2-1-2図は、主要国の高齢比率2の推移(実績・予測)を示したものである。これを見ると、1990年以前には、最も高齢比率の低かった日本が、現在では高齢比率が一番高くなっている。なお、2010年時点で、高齢比率が20%を超えている国は世界でも、日本(23.0%)、ドイツ(20.8%)、イタリア(20.3%)の3か国のみである。我が国は、世界に先駆けて、人類が未だかつて経験していない「超高齢社会」に突入していくこととなる。
1 「合計特殊出生率」とは、一人の女性が一生のうちに産む、平均的な子供の人数を示したものをいう。15歳から49歳の各年齢において、当該年齢の女性が1年間に産んだ女性の数を当該年齢の女性の人数で除して算出される「年齢別出生率」を合計したもの。
各国の合計特殊出生率については、United Nations「World Population Prospects, The 2012 Revision」より引用。
2 ここでいう「高齢比率」とは、65歳以上人口の総人口に占める割合のことをいう。
また、欧米を始めとする世界各国でも、高齢化は今後大きな社会問題となっていくことが予想されており、我が国は高齢比率の高さ、高齢化のスピードの早さ3、平均寿命の長さから世界の注目を浴びており、特に高齢化が進んでいる地方の自治体には、ヨーロッパから視察団が訪れるほどである。