第2部 自己変革を遂げて躍動する中小企業・小規模事業者 

4 現経営者と先代経営者の関係の変化

続いて、承継形態の変遷について見てみる。第2-3-7図は、事業承継の時期別に、現経営者と先代経営者の関係を示したものであるが、「親族以外の役員・従業員」、「社外の第三者」への事業承継が増加してきており、特に、中規模企業においては、その傾向が顕著に表れている。

第2-3-7図 規模別・事業承継時期別の現経営者と先代経営者の関係
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こうした傾向の背景には、後継者難や役員・従業員との関係があると考えられるが、それらの現状や課題については、次節で触れる。

以下では、後継者問題に対応すること、組織・体制を整えること等により、親族以外への事業承継に取り組む企業や、支援機関の取組を事例として示している。

事例2-3-7 蒲原屋

事業引継ぎ支援センターの支援を受け、起業希望者を後継者とすることで、後継者問題に取り組む中心商店街店主

静岡県静岡市の蒲原屋(従業員1名)は、豆類を中心とした乾物の食料品店を営む個人商店である。1946年創業の同店は、清水駅前銀座商店街の一角にある賃貸店舗で営業しており、店主の金子武氏は2代目である。店舗内の厨房設備を使った料理教室の開催により、20代の顧客も増えているが、顧客のほとんどは、40代以上の年配の方である。他店ではあまり見られない珍しい商品もそろえ、遠方からの来客も多い。

現在69歳の金子氏は、10年ほど前から事業承継を意識し始めた。金子氏には3人の娘がいるが、事業承継の意思はなかったため、取引金融機関に相談したほか、出入りの卸問屋の営業担当に事業承継を打診するなど、後継者を探してきた。実父が創業し、地域の人々の豊かな食生活に貢献している同店を、次世代に引き継ぎたいとの思いであったという。

2012年初めに、静岡県事業引継ぎ支援センターが開設されると、静岡商工会議所職員を通じて同センターを知り、事業承継の相談に赴いた。そこで、同センターは、起業希望者と後継者難に直面する中小企業とを、結び付けることができるのではないかと考え、同店を経営したいとの熱意を持つ起業希望者を公募することとした。

「創業・事業引継ぎ支援プロジェクト」と名付けられたこの取組では、応募者に対する店舗見学を含む説明会を開催し、同店の収支計画の策定やグループ討議を行うワークショップを実施して、半年程度を掛けて後継者候補を選考した。20人ほどから応募があり、最終的には、40代の女性が後継者に選ばれた。

金子氏は、10年間は、後継者と共に店頭に立つことを考えており、最初の5年間で経営ノウハウを伝え、6年目で屋号、設備を含む事業を、無償で譲渡する予定である。後継者は、2012年12月から同店に勤務し、金子氏が不得意なインターネットでの通信販売にも取り組み、将来的には法人化して、経営基盤を強化することも考えている。

金子氏は、「経営環境が変化する中で、若い経営者が新たな取組を始めることは、新たな客層を呼び込み、事業拡大にもつながる。商店街には、後継者がいない店も多い。こうした取組が広がって世代交代が進み、商店街が活気づいてくれれば良い。」と語る。

蒲原屋の外観

蒲原屋の外観

コラム2-3-1

事業引継ぎ相談窓口・事業引継ぎ支援センターの設置

2011年7月に施行された「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法の一部を改正する法律」に基づき、47都道府県の認定支援機関(法律に基づき認定を受けた商工会議所等の支援機関。)の業務に、事業引継ぎ支援業務を追加し、事業引継ぎ等に関する情報提供・助言等を行う「事業引継ぎ相談窓口」を設置した。

さらに、事業引継ぎ支援の需要が多く、支援体制の整った地域に、「事業引継ぎ支援センター」を設置しており、同センターでは、事業引継ぎに関する専門家が、事業引継ぎを希望する企業間のマッチング支援等を行う。同センターは、2012年度末現在、北海道、宮城県、東京都、静岡県、愛知県、大阪府、福岡県の全国7か所に設置しており、今後も全国的に拡充していく方針である。

事業引継ぎ支援センターの相談企業数の推移(2012年度)

事業引継ぎ支援センターの相談企業数の推移(2012年度)

事例2-3-8 静岡県事業引継ぎ支援センター

中小企業の事業引継ぎを支援する公的相談窓口

静岡県静岡市の静岡県事業引継ぎ支援センターは、2012年1月に、静岡商工会議所に設置された、次世代への事業引継ぎに関する様々な課題解決を支援する公的相談窓口である7。事業引継ぎを切り口として、静岡県経済の活性化・発展に貢献することを目標に、中小企業支援を行っている。同センターの開設から2013年3月末までに、225件に上る相談があり、そのほとんどがM&Aに関するものであった。

同センターの特色は、県内の地域金融機関との連携により、後継者難の中小企業、事業買収による経営拡大に関心のある中小企業等の、情報収集を行っている点にある。

同センターの統括責任者である清水至亮氏は、「事業引継ぎ支援センターの存在がまだ知られていない中、中小企業にとって身近な相談相手である地域金融機関を紹介窓口とすることで、より多くの中小企業の事業引継ぎニーズを把握することができる。」と連携の意義を語る。

2013年3月末現在、同センターの支援によって、4件のM&Aが成約している。また、事業売却が容易ではない小規模事業者の後継者確保も支援している。その取組は、「創業・事業引継ぎ支援プロジェクト」と名付けられ、起業希望者と後継者難の小規模事業者とを結び付け、リスクの少ない起業と地域に必要な事業の存続を、同時に実現するものとして注目されており、9月に後継者が決まった案件では、商店街の食料品店で実施され、中心商店街の空き店舗対策や活性化につながるモデルケースとなるものと期待されている。

7 詳細は、静岡県事業引継ぎ支援センターのホームページを参照。http://www.shizuoka-cci.or.jp/sbsc/

事例2-3-9 スタック電子株式会社

創業者による事業承継の準備や承継後の後継者支援により、社員への事業承継を円滑に行った企業

東京都昭島市のスタック電子株式会社(従業員55名、資本金7,000万円)は、1971年の創業以来、携帯電話基地局の通信、防災通信無線等に関連した、高周波・光伝送の技術開発に力を注いでいる研究開発型企業である。

同社では、2011年に、創業者である田島瑞也会長から当時専務であった渡辺勝博社長に、経営が引き継がれた。田島会長は、会社を私物化せず、公私混同はしない、という方針のもとに同社を設立したことから、血縁者は採用せず、親族以外への事業承継を、創業当初から決めていた。自身が65歳で引退することを見据え、後継者を決定する前から事業承継に向けた準備を始めた。

田島会長は、まず、人づくりが経営の基本であると考え、1982年から新卒採用を継続し、徹底した従業員教育を行ってきた。また、取引先等で経験を積んだ人材の招へいや中途採用も実施することで、組織の基盤を固め、次期社長を支える経営幹部を育成、登用してきた。

後継者を、技術畑の渡辺社長に決めてからは、営業、製造、管理等社内の幅広い部門に配属して、経営者としての視点を養わせるとともに、取引銀行との面談に同行させるなどして、社外の関係者への周知を行った。さらに、銀行と相談して借入金の個人保証の解除も行い、渡辺社長が経営を担う上での負担を軽くすることに努めた。

事業承継後も、田島会長は、1年間は渡辺社長と行動を共にし、経営に関する助言やサポートを行った。社内の意思決定についても、事前には関与しないものの、最終的なチェックを行うようにした。現在は、渡辺社長が経営を主導できるように、従業員の技術教育等を行い、組織の底上げを図る活動に、重点的に取り組んでいる。

同軸コンポーネンツ

同軸コンポーネンツ

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