平成23年度において講じた中小企業施策 

第1章 東日本大震災に係る中小企業対策

 平成23年3月11日に発生した東日本大震災への対応として、地域の経済や雇用を支える中小企業への支援を、平成23年5月2日に成立した平成23年度1次補正予算等も活用して、実施している。

第1節 資金繰り対策
 平成23年3月11日に発生した東日本大震災による被害を受けた中小企業者にとって、資金繰りは重要な課題の一つであり、震災発生直後から様々な支援策を講じてきた。
 まず、震災直後速やかに、公的金融機関に対し、既往債務に対する返済猶予について柔軟に対応するよう要請している。また、主に地震や津波で直接被害を受けた中小企業者向けの融資・保証制度として、一般保証とは別枠の「災害関係保証」や、(株)日本政策金融公庫(以下「日本公庫」という)等による長期・低利の「災害復旧貸付」等を実施した。加えて、風評被害等の間接被害を受けた者を含め、特に、業況の悪化している中小企業者向け資金繰り支援策として、セーフティネット貸付の適用やセーフティネット保証5号について対象業種を原則全業種(82業種)とする措置を実施した。
 また、平成23年度1次補正予算により、震災により直接・間接に被害を受けた中小企業者に対する資金繰り対策として、保証限度額を過去最大規模に拡充した「東日本大震災復興緊急保証」や、従来以上に長期かつ低利の日本公庫等による「東日本大震災復興特別貸付」を創設した。さらに、「東日本大震災復興特別貸付」及び2次補正予算で拡充された日本公庫等の「再挑戦支援資金」により借入を行う中小企業者のうち、地震・津波により事業所等が全壊・流失した者や、原発事故に係る警戒区域・計画的避難区域・緊急時避難準備区域の公示の際に当該区域に事業所を有していた者に対して、県の財団法人等を通じ、実質無利子化する措置も創設した。
 「東日本大震災復興緊急保証」及び「東日本大震災復興特別貸付」については、平成23年度3次補正予算においても予算を措置し、平成23年度の「東日本大震災復興特別貸付」等の貸付実績は、194,503件、4兆3,840億円、「東日本大震災復興緊急保証」の保証承諾実績は、79,415件、1兆8,160億円となっている。

具体的施策
1.既往債務の返済条件緩和等
 日本公庫、(株)商工組合中央金庫(以下「商工中金」という)及び信用保証協会において、返済猶予等既往債務の条件変更、貸出手続の迅速化及び担保徴求の弾力化等について、被災中小企業者の実情に応じて対応した。また、民間金融機関に対しては、震災当日から、金融担当大臣等より、中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律(平成21年度法律第96号、以下「中小企業金融円滑化法」という)の趣旨を踏まえた貸付条件の変更等への積極的な取組等を繰り返し要請し、民間金融機関も、被災中小企業者の実情に応じ、既往債務の条件変更や貸出手続の迅速化等に尽力した。

2.日本公庫、商工中金における返済条件緩和の遡及適用
 今般の地震災害等の影響で既往債務の延滞が生じている場合で、返済猶予の申出が遅れた場合でも、返済期日に遡及して返済猶予に対応することとした。また、提出書類の簡素化や契約手続の迅速化を行うことで、被災した中小企業の負担軽減を実施した。

3.信用保証協会による返済期日延長等
 審査書類の簡素化や契約手続等の迅速化、返済期日経過後の期日延長や返済方法の変更等を通じた被災中小企業等の負担軽減を、信用保証協会に要請した。

4.リースの支払猶予・契約期間延長等
 リース事業者に対し、被災地の中小企業者からリースの支払猶予や契約期間の延長等の申込みがあった場合には、柔軟かつ適切に対応するよう要請を行った。

5.「東日本大震災復興特別貸付」制度の創設【23年度1次補正:1,786億円、3次補正:2,300億円】
 東日本大震災により、直接又は間接に被害を受けた中小企業者等を対象とした、日本公庫・商工中金による新たな融資制度を創設し、必要な融資枠を確保するとともに、貸付期間、据置期間、金利引下げ措置等を大幅に拡充した。また、原発事故に係る警戒区域等の公示の際に当該区域内に事業所を有していた中小企業者等や、地震・津波により事業所等が全壊・流失した中小企業者等に対しては、県の財団法人等を通じ、実質無利子化する措置も創設した(平成23年8月22日から措置。)。地方団体等を通じ、要件に該当する中小企業者に対して利差補給を行って無利子とするための基金を新たに創設した。本制度の運用を開始した平成23年5月23日から平成24年3月31日までの貸付実績は、194,503件、4兆3,840億円であった。

6.マル経・衛経融資の貸付限度額・金利引下げ措置の拡充
 東日本大震災により直接又は間接的に被害を受けた小規模事業者に対し、無担保・無保証で利用できる日本政策金融公庫によるマル経・衛経融資の貸付限度額の拡充(通常枠とは別枠で1,000万円。)、金利引下げ(貸付け後3年間に限り、通常金利から更に0.9%引下げ。)を行った。平成23年度は、マル経・衛経融資合わせて612件、23億2,822万円の融資を行った。

7.災害関係保証の実施
 東日本大震災により直接的に被害を受けた中小企業者に対して、信用保証協会が一般保証とは別枠(セーフティネット保証とは同枠。)で保証を実施した(100%保証。保証限度額は無担保8,000万円、最大2億8,000万円)。平成23年度の保証承諾実績は、210,833件、3兆1,617億円であった。

8.セーフティネット保証(5号)の対象業種の拡大【23年度4次補正:4,011億円】
 特に業況の悪化している業種に属する中小企業者を対象とする「セーフティネット保証5号」については、平成23年度上半期の対象業種を48業種とする予定だったが、東日本大震災による被害の影響を踏まえ、同期の対象業種を原則全業種である82業種にして運用することとした。また、平成23年度下半期においても、東日本大震災や円高の影響を踏まえ、引き続き対象業種を原則全業種である82業種にして運用した。平成23年度の保証承諾実績は、3,020件、423億円であった。

9.「東日本大震災復興緊急保証」制度の創設【23年度1次補正:3,209億円、3次補正:3,703億円】
 震災により直接又はまたは間接的に被害を受けた中小企業者を対象に、既存の一般保証や災害関係保証、セーフティネット保証とは別枠の新たな保証制度「東日本大震災復興緊急保証」を新たに創設した。本制度の運用を開始した平成23年5月23日から平成24年3月31日までの保証承諾実績は、79,415件、1兆8,160億円であった。

10.小規模企業者等設備導入資金貸付等の償還期間延長
 東日本大震災に対処するため、東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律(平成23年法律第40号、以下「東日本大震災特財法」という)第129条により、震災で著しい被害を受けた者について、平成23年3月11日以降の制度利用に係る償還期間を7年から9年に延長するとともに、東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律の一部を改正する法律(平成23年法律第29号、以下「震災特例法」という)により、東日本大震災特財法第129条による者が、設備復興のために設備導入資金事業を利用し金銭消費賃借契約を締結する場合は、当該事業者に係る印紙税の免税措置を講じた。

11.原子力災害に伴う「特定地域中小企業特別資金」
 福島県及び経済産業省は、(独)中小企業基盤整備機構(以下「中小機構」という)の高度化融資スキームを活用し、原子力発電所事故で甚大な被害を被った中小企業等を支援するため、事業を継続・再開するために必要な事業資金(運転資金・設備資金)を長期、無利子、無担保で融資する制度を創設した。

12.小規模企業共済の共済金の早期支給等
 (独)中小企業基盤整備機構が実施する小規模企業共済について、共済契約者が行方不明のため共済金の支給ができず、資金繰りに窮する配偶者等の申出に対し、掛金総額の一定割合を早期に支給する環境を整備した。また、今般の災害により被害を受けた場合や計画停電等により売上げが急激に減少するなどの共済契約者に対し、低利の貸付制度(直接罹災者については無利子。)を発動するとともに、共済掛金納付や一時貸付金返済の猶予、共済金支払いの迅速化等の措置を講じた。

13.中小企業倒産防止共済の貸付事由の追加等
 中小機構が実施する中小企業倒産防止共済について、災害によって不渡り処分が猶予された場合や取引先(債務者)が死亡又は行方不明等となり、債務者自らでは債務整理手続を行うことが困難な場合について、共済金の貸付けが受けられるよう省令を改正した。また、今般の災害により被害を受けた者に対し、共済掛金納付や共済貸付金返済の猶予、共済金支払いの迅速化等の措置を講じた。

14.建設業における金融支援の拡充
(1)地域建設業経営強化融資制度の拡充
 建設企業の資金調達の円滑化を一層図るため、建設企業が公共工事発注者に対して有する工事請負代金債権について、未完成部分を含め流動化を促進すること等を内容とした地域建設業経営強化融資制度について、施工中工事の被災に伴う損害額や災害廃棄物の撤去等(がれきの処理等)に係る債権を対象に追加した。
(2)下請債権保全支援事業の拡充
 下請建設企業等の債権保全及び資金調達の円滑化を一層図るため、下請建設企業等の有する債権の保全を促進する下請債権保全支援事業について、ファクタリング会社に対し保証債務の履行の積極対応を要請する一方、被災地における工事及び災害廃棄物の撤去等(がれきの処理等)に係る債権の買取りを新たに実施するとともに、被災地域における災害廃棄物の撤去等及び建設機械の割賦販売・リース・レンタルに係る債権を保証対象に追加した。

第2節 二重債務問題対策
 被災者が復興に向けて再スタートを切るにあたり、既往債務が負担になって新規資金調達が困難となる、いわゆる二重債務問題に対応するため、政府は平成23年6月17日に「二重債務問題への対応方針」を決定した。同方針に基づき、被災各県に設立した「産業復興相談センター」において被災事業者の相談を受け付けるとともに、「産業復興機構」では金融機関等が有する債権の買取り等による支援を行っている。

具体的施策
1.「産業復興相談センター」及び「産業復興機構」の設立【23年度2次補正:31億円、3次補正:45億円】
 被災各県の中小企業再生支援協議会の体制を強化して「産業復興相談センター」を設立するとともに、債権買取り等を行う「産業復興機構」を設立することにより、東日本大震災により被害を受けた中小企業等の再生支援を強化した。平成23年度における各県の「産業復興相談センター」の相談受付件数は、合計921件であった。

2.「株式会社東日本大震災事業者再生支援機構」の設立
 株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法に基づき「株式会社東日本大震災事業者再生支援機構」を設立し、平成24年3月5日から業務を開始した。金融機関等からの債権買取りや被災事業者に対する出資、事業再生の専門家の派遣等を通じ、東日本大震災により被害を受けた中小企業等の再生支援の拡充を図った。

3.再生可能性を判断する間の利子負担の軽減【23年度2次補正:184億円】
 東日本大震災及び原子力発電所の事故により経営に支障を来した中小企業等が、産業復興相談センターを活用して事業再建に取り組む際、相談や調整等を行っている間に旧債務の利子負担が累積し、再建が困難になることのないよう旧債務に係る利子相当額を補給する制度を創設した。

4.被災中小企業復興支援リース補助事業の実施【23年度補正予算:100.5億円】
 被災中小企業の二重債務負担の軽減を図るため、東日本大震災に起因するリース設備の滅失等によりリース債務を抱えた中小企業に対し、設備を再度導入する場合の新規のリース料の10%を補助した。

第3節 工場・商店街等の復旧・復興への支援
 東日本大震災は、マグニチュード9.0という世界の歴史の上でも最大級の地震であり、巨大な津波により東北地方の沿岸部を中心に、甚大な被害が生じた。特に、甚大な被害を受けた被災地域では、寸断されたサプライチェーンの復旧や、施設の損壊により働く場を無くしてしまった被災事業者への支援が急務であった。被災地域の早期復旧を図るべく、被災した事業者に対して総合的な支援が実施された。
 まず、被災地域の早期の復旧に向けて、従来の震災時に措置していた、中小企業組合の共同施設の復旧に対する補助にとどまらず、地域経済の核となる中小企業グループの施設復旧に対する補助制度を創設した。当該補助事業は、例えば、〔1〕水産加工、流通、造船等の水産関連の産業集積のような地域の特性をいかした集積、〔2〕地域コミュニティを支える地域の中心的な商店街、〔3〕サプライチェーンの重要な一翼を担う部品供給等のものづくりの集積等、各県が地域の経済や雇用に重要な役割を果たすと判断した中小企業のグループを重点的に支援することで、被災地域の本格的な復旧・復興を推進した。また、今般の震災では、被災後すぐにがれきの片付かない軒先で在庫を安く販売するなど、商店街のコミュニティ機能の重要性が再認識された。被災した商店街の施設の補修やがれき等の障害物除去に対する補助、アーケード等の撤去や破損規模が大きい施設の修繕等に相当程度期間を要する取組に対する補助を行った。
 上記の施策に加え、被災した商店街に賑わいを取り戻すための復興イベントの開催や、災害に強い商店街の形成を図る施設整備等の取組に対して補助を行った。また、被災地において、中小企業等が早期に事業を再開できるよう、中小機構が仮設店舗や仮設工場等を設営し、自治体を通じて事業者に無償で貸出しを行う事業などを実施し、被災した事業者の早期事業再開を支援した。

具体的施策
1.中小企業組合等協同施設等災害復旧事業【予備費:1,249億円、23年度補正予算:255億円】
 東日本大震災に係る被災地域の復旧及び復興を促進するため、
〔1〕複数の中小企業等から構成されるグループが復興事業計画を作成し、地域経済や雇用維持に重要な役割を果たすものとして県から認定を受けた場合に、計画実施に必要な施設・設備の復旧にかかる費用に対して、国が1/2、県が1/4の補助
〔2〕激甚災害法に基づき、事業協同組合等が行う協同施設の災害復旧事業にかかる費用に対して、国が1/2、県が1/4の補助
〔3〕商工会等の中小企業者のための指導・相談施設等の災害復旧事業にかかる費用に対して、国が1/2の補助
を実施し、被災した中小企業等のグループ、事業協同組合等の施設の復旧・整備、修繕に対する支援を行った。

2.仮設工場・仮設店舗等整備事業【23年度補正予算:274億円】
 震災後、中小企業庁職員や各種専門家等による専門家チームが地元中小企業の要望を聴取した。当該要望等を踏まえ、平成23年4月から、被災中小事業者の早期事業再開のための支援として、中小機構が仮設店舗、仮設工場等を設置し、市町村を通じ、事業者に無償で貸し出す事業を実施した。6県45市町村において、250か所程度が竣工している(2月末時点)。

3.施設・設備の復旧・整備に対する貸付け
 東日本大震災により被害を受けた中小企業者が、県から認定を受けた復興事業計画に基づいて、その計画を実施するために必要な施設・設備の復旧・整備を行う場合に、中小機構と県が協力して、必要な資金の貸付けを行った。

4.高度化貸付の債権放棄・償還猶予・返済期限の延長
 東日本大震災により被害を受けた中小企業者に対して、高度化貸付の既往債権について債権放棄を含めその整理を円滑に進めるとともに、償還猶予や返済期限の延長について、対象の拡充、要件の緩和、手続の簡素化を行った。

5.商店街災害復旧事業【23年度補正:4.0億円】
 東日本大震災及びそれに伴う災害等による地震や津波等により被害を受けた商店街が、早期の復旧と地域のコミュニティ機能を回復させるため、災害により破損した既存施設の撤去や一部修繕等に要する経費に対し、平成23年度は114件の事業を採択した。

6.地域商業活性化を通じた被災地支援事業【23年度補正予算:5.0億円】
 地域商業の活性化を図ることを目的とした〔1〕被災した商店街等の賑わい創出・販売促進を図る取組、〔2〕被災した商店街等が被災地域以外の商店街等の協力を受けて賑わい創出・販売促進を図る取組、〔3〕被災地域以外の商店街等が被災地域を支援する取組を支援し、平成23年度は、全国で129件の事業を採択した。

7.地域商業活性化支援事業【23年度補正予算:9.0億円】
 地域商業の活性化を図ることを目的とした〔1〕被災地の商店街等が賑わい創出のために行う施設整備、〔2〕災害に強い商店街等の整備を行う取組を支援し、平成23年度は、全国で38件の事業を採択した。

第4節 風評被害への対策
 国内外における風評被害によって中小企業が不当に不利な扱いを受けないよう、その払拭に向けて、きめ細やかな支援を行う必要がある。
 このような背景を踏まえ、被災地等における中小企業等に対し、新商品開発・販路開拓への支援や、被災した商店街等の賑わいを創出し、活性化を図る取組への支援等を講じた。

具体的施策
1.放射線量測定指導・助言事業【23年度補正予算:0.8億円】
 福島県を中心として民間事業者等に工業製品等の放射線量測定等に関する指導・助言を行う専門家チームを派遣する事業を実施した。

2.農商工連携等による被災地等復興支援事業【23年度3次補正予算:44億円の内数】
 東日本大震災による被災や国内外での風評被害により影響を受けている被災地等の持続的な復興・振興に資する新事業活動の促進を図るため、中小企業が農商工連携、異分野連携、地域資源の活用、ものづくり基盤技術の活用により行う新商品・新サービス、新技術サービスの開発や販路開拓の取組に対し、支援を実施した。

3.中小企業の地域産品販路開拓等支援事業【23年度3次補正:10.0億円】
 東日本大震災の影響及び円高により、生産活動が減退した被災地を始めとする中小企業の持続的な復興・振興のために、中小企業の協働による国内外への販路開拓等を支援するとともに、大規模展示会や主要都市等への巡回販売、インターネットの活用により、被災地産品等の販売促進・販路開拓を支援した。

4.地域商業活性化を通じた被災地支援事業(再掲)

5.貿易円滑化事業費補助金【23年度1次補正:6.7億円、3次補正:13.0億円】
 風評被害による物流の停滞を防ぎ貿易の円滑化を図るため、政府による風評被害対策の一環として、国が指定した検査機関が行う輸出品に係る放射線量検査の検査料を補助した(中小企業への補助率は9/10)。

第5節 税制面での支援
 平成23年4月に成立した震災特例法により、被災した資産の代替として取得する資産の特別償却や、法人税の繰戻し還付等被災企業の手元資金の確保のための措置等を講じた。また、平成23年12月には震災特例法を一部改正する法律が成立し、事業承継税制の特例や復興特別区域に係る税制上の特例措置等の追加措置を講じた。

具体的施策
1.被災事業用資産の損失の特例
 平成22年分の事業所得の金額等の計算上、被災事業用資産の損失を必要経費に算入することを可能とした。この場合において、青色申告者については、平成22年分の所得において純損失が生じたときは、被災事業用資産の損失も含めて、平成21年分の所得への繰戻し還付を可能とする措置を講じた。また、被災事業用資産の損失による純損失について、繰越可能期間を5年とするなどの措置を講じた。

2.震災損失の繰戻しによる還付
 平成23年3月11日から平成24年3月10日までの間に終了する事業年度において、法人の欠損金額のうちに震災損失金額がある場合には、その震災損失金額の全額について2年間まで遡っての繰戻し還付を認める措置を講じた。

3.被災代替資産等の特別償却【税制】
 2011年3月11日から2016年3月31日までの間に、〔1〕被災した資産(建物、構築物、機械装置、船舶、航空機、二輪車等、車両)の代替として取得する資産、〔2〕被災区域内において取得する資産(建物、構築物、機械装置)について特別償却を認める措置を講じた。
 なお償却率は、2014年3月31日以前に取得した場合、建物・構築物について15%(中小企業者等は18%)、機械装置・船舶・航空機・二輪車等・車両について30%(中小企業者等は36%)、2014年4月1日以後に取得した場合、これらの2/3の率である。
 また、青色申告法人以外の法人であっても、特別償却不足額を1年間繰り越すことを可能とした。

4.事業承継税制の特例
 事業承継税制(非上場株式等に係る納税猶予の特例)に係る認定会社等について、大震災による〔1〕事業資産の被害が大きい場合、〔2〕従業員の多くが属する事業所が被災した場合、〔3〕売上高が大幅に減少した場合には、雇用確保等の要件を緩和する措置を講じた。

5.復興特別区域制度における課税の特例
 復興特別区域制度の創設に伴い、復興産業集積区域内において2016年3月31日までの間に指定を受けた法人に対し、下記の税制上の措置を講ずる(〔1〕、〔2〕及び〔3〕は選択適用)。
〔1〕新規立地新設企業を5年間実質無税とする措置:指定の日から5年間を経過する日までに、年間の所得を限度に再投資準備金として積立て損金算入を認める。また、区域内の再投資に対し準備金の範囲内で即時償却が可能となる。
〔2〕法人税の特別控除:指定の日から5年を経過する日までの期間内に被災者を雇用した場合、給与等支給額の10%を法人税額から控除する。
〔3〕事業用設備等の特別償却等:機械装置について即時償却又は15%の税額控除(但し、2014年4月1日以降は50%の特別償却又は15%の税額控除)、建物・構築物について25%の特別償却又は8%の税額控除を行う。
〔4〕研究開発税制の特例等:開発研究用資産の取得等をした場合に即時償却を行う。また、当該資産の減価償却費を特別試験研究費として研究開発税制の対象とする。
 また、上記〔1〕〜〔4〕に加え、地方税についても、事業税、不動産取得税又は固定資産税の課税免除又は不均一課税の減免による減収に対する、地方交付税による補填措置を講ずることとしている。

第6節 経営支援・広報相談体制の強化
1.特別相談窓口等の設置
 全国の日本公庫、商工中金、信用保証協会、商工会議所、商工会連合会、中小企業団体中央会、中小機構支部及び経済産業局に特別相談窓口を設置し、東日本大震災の被災中小企業者等からの経営・金融相談に応じた。

2.中小企業電話相談ナビダイヤルの実施
 どこに相談したらよいのか困っている中小企業のために、一つの電話番号で最寄りの経済産業局につながる「中小企業電話相談ナビダイヤル」を実施した。

3.復旧・復興のための支援専門家派遣【23年度補正予算:26.4億円】
 中小機構が盛岡市、仙台市、福島市等の被災地に支援拠点を設置し、中小企業の相談対応や被災した中小企業、自治体及び支援機関(各種経済団体)に対して、専門家を無料で派遣するなどの事業を実施した(災害復興アドバイス等支援事業)。また、災害対応の相談員が被災地域の支援機関(商工会・商工会議所等)を巡回し、被災中小企業の相談を幅広く受け付ける事業を実施した(中小企業支援ネットワーク強化事業)。

4.被災地における出張相談会(金融相談)の開催
 日本公庫、商工中金、信用保証協会が、被災地(青森県、岩手県、宮城県、福島県等)に出張し、中小企業からの金融相談を受け付ける出張相談会を実施した。

5.広報体制の強化
 中小企業庁を始め、政府等が行う東日本大震災に関する支援情報を中小企業関係機関に一元的にメールで配信するとともに、関係機関に対しては、地方組織、会員、取引先等広く中小企業者に情報提供することを要請した。

6.「中小企業向け支援策ガイドブック」等の配布
 被災した中小企業者向けの資金繰り、雇用、税制等の各種支援策を分かりやすくまとめた「中小企業向け支援策ガイドブック」をver1、ver2に続き、事業用施設の復旧・整備支援等、平成23年度1次補正予算事業を盛り込んだver3(総印刷部数44万3,000部)と平成23年度1次補正予算で拡充・強化された支援内容を1枚にまとめたチラシ(40万枚)を作成し、被災地域を始め全国の中小企業支援機関、金融機関等に配布し、広く中小企業者に周知した。

7.特別相談会開催による下請取引の適正化【23年度補正予算:2.0億円】
 東日本大震災や急激な円高の影響等により、厳しい経営環境に置かれている中小企業の取引についての悩みの解決を支援するため、全国で無料弁護士相談会を開催した。

第7節 その他の対策
1.東日本大震災中小企業対策連絡協議会の開催
 全国的に多数の中小企業に深刻な影響が生じている現状を踏まえ、必要な中小企業対策を検討・実施していくため、政府と中小企業関係機関が、中小企業の被災状況や、被災中小企業救済に係る取組状況、今後取り組むべき施策の在り方について情報共有と意見交換を実施した(会長:経済産業大臣政務官)。平成23年3月から8月にかけ、計5回開催した。金融庁、厚生労働省、農林水産省、国土交通省や関係団体等も出席した。

2.官公需における被災中小企業の受注機会の増大
 毎年度策定する「中小企業者に関する国等の契約の方針」において、平成23年度新たに、東日本大震災の被災地域等の中小企業者に対する配慮等を盛り込んだ。
 また、東日本大震災の被災地域等の中小企業者の受注機会の増大のために、以下の施策を実施した。
(1)平成23年6月28日、経済産業大臣から各府省等の長、都道府県知事、人口10万人以上の市の長及び東京特別区の長に対し、「中小企業者に関する契約の方針」の閣議決定に係る要請を行うとともに、中小企業者の受注機会の増大のための措置を講じるよう要請した。また、復旧・復興のための公共事業費が盛り込まれた補正予算成立時の5月と11月に同様の要請を行った。
(2)地方における「契約の方針」の周知徹底を図るための全国説明会(官公需確保対策地方推進協議会)を7月から8月にかけて51回開催した。
(3)「官公需契約の手引き」を作成し、国等の機関、地方公共団体等の機関及び商工関係団体等に配布した。

3.親事業者への被災中小企業への優先発注等の要請
 東日本大震災により影響を受け厳しい状況に置かれている下請中小企業が事業活動を維持又は再開させる場合に、できる限り従来の取引関係を継続し、あるいは優先的に発注するなどの配慮を行うよう、親事業者へ要請した。

4.震災復興特別商談会による被災中小企業の販路開拓支援
 東日本大震災の影響を受けた中小企業の新規受注の確保等の支援や新しいものづくりの体制の確保に向け、東日本大震災の被災県の中小企業を対象とした商談会を4回開催した。参加中小企業は、延べ約710社であった。

5.NEXIによる対応について
 (独)日本貿易保険(以下「NEXI」という)では、平成23年4月11日に、被災者対策として、罹災した中小企業を対象とした〔1〕保険契約諸手続の猶予、〔2〕被保険者義務の猶予・減免、〔3〕被保険者の経済的負担の減免を発表した。また、風評被害への対応として、放射能汚染を理由とした貨物の輸入制限・禁止等による損失のうち、新たな規制が導入されて輸入が制限又は禁止される例や仕向国政府による違法又は差別的な対応を受ける例等、貿易保険により填補される具体的事例を公表した。また、相談窓口をNEXI内に設置し、貿易保険未加入者も含め、風評被害に関する相談等に応じた。

6.知的財産の手続に関する救済措置
 震災の影響により、特許出願の審査請求や特許料の納付等の手続を期間内に行うことができなかった場合に、申請により、平成24年3月31日まで手続期間の延長が可能となるよう措置した。平成24年1月末現在、1,128件の手続延長を認可している。また、外国出願等の手続についても、海外の知的財産庁に救済措置を要請し、48か国・地域が特例措置を実施した。

7.電力需要抑制対策節電サポート事業【23年度予算:77.2億円の内数】
 中小企業を含む小口需要家向けに、個々の需要家の特性に応じた自主的な節電行動計画を作成・公表いただくため、東京電力・東北電力管内における節電サポーター(電気主任技術者)による戸別訪問、出張節電説明会等を開催し周知を図った。また、需要家の節電の取組を情報共有し、節電に対する一層の理解と協力を得るため、政府の節電ポータルサイト「節電.go.jp」に個々の需要家の節電行動計画を公表した。(新規)

8.外国政府・産業界向け説明会の開催
 経済産業省、外務省、(独)日本貿易振興機構(以下「ジェトロ」という)等の関係省庁及び機関が連携し、東京電力(株)福島第一原子力発電所事故への対応や、国内のモニタリング及び食品・鉱工業品の安全確保等に関する我が国の取組についての説明会等を、国内外で実施した。平成24年3月末現在、海外の産業界向け説明会(12か国・地域、15都市)に加え、国内の外資系企業や在京・在関西の領事団及び国際機関向けにも説明会(東京4回、大阪3回)を開催した。

9.被災者への就職支援
 被災者の就職を支援するため、合同就職説明会を被災地等にて順次開催するとともに、新卒者就職応援プロジェクトの受入企業のうち、被災地域の新卒者等の雇用に積極的な企業のリストを公表した。また、被災地域において行う職場実習については、時間数や実施日数の要件を緩和するなどの特例措置も実施した。
 さらに、未内定者や内定取消しにあった新卒者等と中小企業をマッチングする「ドリームマッチプロジェクト」(中小企業採用力強化事業)のホームページをリニューアルして未内定者等を継続して募集する求人を掲載し、被災地域の新卒者等に配慮する求人を検索可能とした。

10.中小企業人材対策事業【23年度補正予算:24.9億円】
 新卒者及び平成19年9月以降に大学等を卒業した未就職者に対し、中小企業の事業現場で働く上で必要な技能・技術・ノウハウを習得する機会を提供するため、中小企業で原則6か月間の職場実習(いわゆるインターンシップ)を実施した。なお、東日本大震災の被災地域においては、職場実習時間を短縮するなどの要件緩和を実施した。
 また、中小企業が優秀な若手人材を確保していくために、地域の中小企業団体と大学等が連携し、日常的に顔が見える関係構築から中小企業と若手人材のマッチング、新卒者の採用・定着までを一体的に支援する取組を実施した。

11.雇用調整助成金【23年度予算:3,868.9億円、23年度補正予算:7,269.0億円】
 東日本大震災の影響に伴う経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者の雇用を維持するために休業等を実施した場合、休業に係る手当相当額等の2/3(中小企業の場合は4/5)を助成した。
 さらに、東京都を除く災害救助法適用地域に所在する事業所の事業主等について、支給要件緩和等の特例措置を講じた。

12.雇用保険失業給付【23年度予算:20,298億円】
 震災による事業所の損壊や東京電力(株)福島第一原子力発電所事故の影響による警戒区域、計画的避難区域、緊急時避難準備区域に事業者が位置することにより、事業所が休止になり休業を余儀なくされた場合、激甚災害の指定に伴う雇用保険の特例により、賃金を受けることのできない労働者に対し、離職していなくても、失業給付を受けることができる特例措置を実施した。

13.被災者雇用開発助成金の創設【23年度補正予算:62.6億円】
 東日本大震災による被災離職者及び被災地域に居住する求職者の方を、ハローワーク等の紹介により、継続して1年以上雇用することが見込まれる労働者として雇い入れる事業主に対して、助成金を支給する被災者雇用開発助成金を創設した。また、対象労働者を10人以上雇い入れる事業主に対して奨励金を上乗せする措置を実施した。

14.成長分野等人材育成支援事業の拡充【23年度予算:500億円の内数】
 平成22年11月から実施している成長分野等人材育成支援事業を拡充し、平成23年7月から、東日本大震災による被災者を新規雇用・再雇用した中小企業事業主が、その労働者に職業訓練を行う場合には業種を問わず、OJTも含め訓練経費を助成することとした。
 さらに、平成23年11月から、被災地の復興に資する産業分野の事業を行う岩手県、宮城県及び福島県の中小企業事業主が、従業員を中核的人材に育成するため、高度な研修・訓練を県外の大学院や研究機関等で受けさせた場合に、事業主が負担した受講料や住居費の一部を助成することとした。

15.中小企業高度グローバル経営人材育成事業【23年度補正予算:5.0億円】
 中小企業者が、海外における新たな事業展開を図るため、専門人材の招へいに要する経費の一部の補助を実施した。事業計画の策定等の段階から専門人材の知識やノウハウ等の習得を通じた社内人材の育成を支援した。


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