第2部 潜在力の発揮と中小企業の役割 

5 海外展開の効果

 さらに、中小企業の海外展開の効果について見ていく。第2-2-19図は、海外展開したことによる増益効果について示したものであるが、輸出、直接投資ともに、過半の企業が増益効果があると回答している。
 
第2-2-19図 海外展開の増益効果

第2-2-19図 海外展開の増益効果
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 また、中小企業が直接投資を行ったことよる、事業運営上のメリットについて、拠点の機能別に示すと、販売拠点設立では「現地での販路拡大」が、生産拠点設立では「コストの低減」が最も高くなっている(第2-2-20図、第2-2-21図)。
 
第2-2-20図 販売拠点設立による事業運営上のメリット(複数回答)

第2-2-20図 販売拠点設立による事業運営上のメリット(複数回答)
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第2-2-21図 生産拠点設立による事業運営上のメリット(複数回答)

第2-2-21図 生産拠点設立による事業運営上のメリット(複数回答)
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 次に、経済産業省「企業活動基本調査」により、中小企業における、直接投資企業と直接投資を行っていない企業との国内雇用推移を比較してみる。中小企業白書(2010年版)においては、2000年度に直接投資を開始し、2007年度まで継続している企業の国内雇用について分析した13ことから、ここでは、2002年度に直接投資を開始した企業の国内雇用について、フォローアップ分析を行う14

13 中小企業白書(2010年版)p.162〜164では、直接投資開始企業の国内雇用は、直接投資非開始企業と比較して、直接投資開始3年後には約9割に減少するが、6〜7年後には直接投資非開始企業を上回るとの分析がある。
14 2001年度に直接投資を開始した企業の国内雇用推移については、付注2-2-6を参照。

 2002年度の直接投資開始企業の国内雇用は、開始直後から増加傾向を示し、直接投資非開始企業を大きく上回って推移している15(第2-2-22図)。直接投資開始後に国内雇用が落ち込まなかった理由としては、世界景気の拡大局面16で、中小企業が、新事業展開や工場新設等の、国内基盤の充実に取り組んでいたこと等が考えられる。

15 国内雇用が、直接投資開始前から増加傾向にある企業だけが、直接投資をしているわけでは必ずしもない。開始前は国内雇用が横ばいであった企業や、減少傾向であった企業の、直接投資開始前の国内雇用推移については、付注2-2-7付注2-2-8を参照。
16 日本・米国・中国・世界全体の経済成長率については、付注2-2-9を参照。また、世界経済が拡大局面入りしたこともあり、2002年以降国内の完全失業率が低下していく。付注2-2-10を参照。
 
第2-2-22図 直接投資開始企業の国内従業者数(中小企業)(2002年度開始)

第2-2-22図 直接投資開始企業の国内従業者数(中小企業)(2002年度開始)
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 また、より多くの直接投資企業の国内雇用推移を確認するため、1998〜2004年度に直接投資を開始した企業について、開始年度からの国内雇用推移を第2-2-23図で示すと、第2-2-22図と同様の結果になっていることが分かる17

17 1994年以降の全ての直接投資企業と直接投資を行っていない企業を対象に、最新の計量分析的手法を用いて、国内雇用への影響を推計した結果については、補論2-2-1を参照。
 
第2-2-23図 直接投資開始企業の国内従業者数(中小企業)(1998〜2004年度開始)

第2-2-23図 直接投資開始企業の国内従業者数(中小企業)(1998〜2004年度開始)
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 直接投資による効果を高めるためには、国内本社と現地法人が、緊密に連携することも重要であると考えられる。(株)商工組合中央金庫及び(財)商工総合研究所が実施した「中小企業の国際事業展開に関する実態調査18」によると、国内本社から現地法人への支援として、「新しい製品・サービス立上げ時の支援」や、「常駐・巡回による技術指導」、「資金供給」等の支援を行っている中小企業が多い(第2-2-24図)。

18 (株)商工組合中央金庫取引先中小企業のうち、海外に情報収集、営業、生産等のための事業拠点を保有している企業を対象に実施した調査。有効回答数697社。
 
第2-2-24図 業種別の海外事業拠点に対する国内からのサポート状況(複数回答)

第2-2-24図 業種別の海外事業拠点に対する国内からのサポート状況(複数回答)
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 また、製造業における国内外の拠点の事業分担について見てみると、高度な技術が必要で、高付加価値、小ロット、短納期の製品は、国内拠点での生産が中心との回答割合が高い(第2-2-25図)。
 
第2-2-25図 製造業における国内外事業分担の現状と今後の方針

第2-2-25図 製造業における国内外事業分担の現状と今後の方針
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 以上、海外展開を行っている中小企業においては、国外の新市場に対応することで、国内事業が活性化される可能性を示しているといえよう19

19 新市場対応で国内事業を活性化している中小企業として、事例2-2-9事例2-2-10を参照。



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