第2部 多様性が織りなす中小企業の無限の可能性 

7.廃業が従業員に与える影響

 6.では廃業に際して、直接、事業経営者に対して発生する費用を見てきた。しかしながら、廃業に伴う影響を広く社会全体で捉える場合、この他にも影響がある。この点についてまず、従業者への影響を見ていこう。
 廃業により事業所が消滅すると、その事業所での雇用は失われることになる。本調査では小規模企業の元経営者が回答者のほとんどを占めていることから、回答企業のうち廃業した企業の一企業平均の従業員(経営者を除く)は2.2人と決して多くはないものの、廃業・清算したことにより、その雇用は失われたことになる。総務省「就業構造基本調査」(2002年)によれば、2001年10月から2002年10月1日の調査日までに前職を離職した者のうち、「会社倒産・事業所閉鎖のため」に離職した者が7.7%を占めており、前職が小規模な企業であるほど、そこから離職した者に占める「会社倒産・事業所閉鎖」事由の離職者の割合は高くなっている(第2-3-88図)。その結果、離職者数で見て、過去1年間に「会社倒産・事業所閉鎖のため」に前職を離職した者574,800人のうち、前職の従業者規模が1〜4人の最も小規模な企業であった者が92,600人と16.1%を占めることとなっており、小規模企業の廃業は、それぞれの企業ごとの雇用に与える影響は小さくても、雇用への影響も決して無視できないものであると言える。特に、年齢の高い層ほど就業先が小規模企業である割合が高くなっており(第2-3-89図)、高齢者の雇用の場を提供するという意味においても、小規模企業の廃業による雇用の喪失は無視できないものがある。

 
第2-3-88図 前職の従業者規模別前職離職理由
〜小規模な企業や事業所の閉鎖により離職した者は大企業の閉鎖により離職した者より多い〜

第2-3-88図 前職の従業者規模別前職離職理由〜小規模な企業や事業所の閉鎖により離職した者は大企業の閉鎖により離職した者より多い〜
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第2-3-89図 年齢別就業先従業員規模
〜高齢な層ほど、従業員規模の小さい企業に雇用されている割合が高い〜

第2-3-89図 年齢別就業先従業員規模〜高齢な層ほど、従業員規模の小さい企業に雇用されている割合が高い〜
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 また、経営が行き詰まっている場合には、給与の支払に影響が出ることも考えられる。「引退実態調査」の結果によれば、従業員を雇用していた企業のうち、月給の「未払いが生じた」とする回答が3.1%あった(第2-3-90図)。

 
第2-3-90図 従業員の給与未払いの発生状況
〜従業員への給与未払いが発生したとする回答者が3.1%存在〜

第2-3-90図 従業員の給与未払いの発生状況〜従業員への給与未払いが発生したとする回答者が3.1%存在〜
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 では、給与未払いが発生した企業はどのような財務状況にあったのであろうか。第2-3-91図が、利益状態と資産状態を同時に考慮して給与の未払い発生状況を見たものである。これを見ると、2期連続経常赤字といった、利益状態が悪化している企業であっても、債務超過ではない企業ではほとんど給与の未払いが発生していないのに対し、直前期経常黒字であっても債務超過状態の企業では、給与の未払いが発生している割合が高くなっている。このことから、給与の未払いに大きな影響を与えるのは利益状態ではなく、資産状態であることが予想される。

 
第2-3-91図 事業の状況と給与未払の発生状況
〜給与の未払発生状況は債務超過かどうかによって大きく異なる〜

第2-3-91図 事業の状況と給与未払の発生状況〜給与の未払発生状況は債務超過かどうかによって大きく異なる〜
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