第3節 開廃業の状況
本節では、我が国の開業率及び廃業率について現状把握を行う7。
7 本節での分析に用いる「雇用保険事業年報」を基に中小企業庁で算出した開廃業率は、事業所における雇用関係の成立、消滅をそれぞれ開廃業とみなしている。そのため、企業単位での開廃業を確認できない、雇用者が存在しない、例えば事業主1人での開業の実態は把握できないという特徴があるものの、毎年実施されており、「日本再興戦略2016」(2016年6月2日閣議決定)でも、開廃業率のKPIとして用いられているため、本分析では当該指標を用いる。なお、「事業所・企業統計調査」、「経済センサス-基礎調査」及び「経済センサス-活動調査」を基に算出した開廃業率は付属統計資料10表及び11表、「民事・訴訟・人権統計年報」及び「国税庁統計年報書」を基に算出した開廃業率は付属統計資料13表を参照されたい。
我が国の開業率は、1988年をピークとして低下傾向に転じた後、2000年代を通じて緩やかな上昇傾向で推移してきたが、足元では再び低下傾向となっている。廃業率は、1996年以降増加傾向で推移していたが、2010年からは低下傾向で推移している(第1-2-17図)。

続いて、業種別に開廃業の状況を確認する(第1-2-18図)。開業率について見ると、「宿泊業, 飲食サービス業」が最も高く、「生活関連サービス業,娯楽業」、「情報通信業」と続いている。また、廃業率について見ると、「宿泊業,飲食サービス業」が最も高く、「生活関連サービス業,娯楽業」、「小売業」と続いている。
開業率と廃業率が共に高く、事業所の入れ替わりが盛んな業種は、「情報通信業」、「宿泊業,飲食サービス業」、「生活関連サービス業,娯楽業」であることが分かる。他方、開業率と廃業率が共に低い業種は、「製造業」、「運輸業,郵便業」、「複合サービス事業」となっている。

第1-2-19図は、都道府県別に開廃業の状況を見たものである。開業率について見ると、沖縄県が最も高く、福岡県、愛知県と続く。また、廃業率について見ると、長崎県が最も高く、青森県、福岡県と続いている。

第1-2-20図は、諸外国の開廃業率の推移と比較したものである。各国ごとに統計の性質が異なるため、単純な比較はできないものの、国際的に見ると我が国の開廃業率は相当程度低水準であることが分かる。
