2020年版 中小企業白書の概要
第1部では、中小企業・小規模事業者の動向に関する分析に加え、中小企業・小規模事業者の労働生産性、新陳代謝、多様性と役割・機能について分析を行う。
第2部では、付加価値の創出に向けた、事業領域・分野の見直し、製品・サービスの差別化、無形資産の有効活用、外部連携・オープンイノベーションの推進などの取組について分析する。加えて、適正な価格設定や取引関係の構築に関する取組についても分析する。
第1部 令和元年度(2019年度)の中小企業の動向
●中小企業・小規模事業者の動向
中小企業・小規模事業者の業績は2019年以降横ばいから低下傾向で推移し、業況にも一服感が見られること、感染症の影響による厳しい状況が続くと見込まれる中、多様な課題に対処する必要があることなどを示す。
●中小企業・小規模事業者の労働生産性
中小企業の労働生産性が横ばい傾向で推移しており、業種に関わらず大企業との格差が存在していること、その一方で、中小企業の中にも大企業の労働生産性を上回る企業が一定程度存在することなどを示す。
●中小企業・小規模事業者の新陳代謝
企業の廃業は、経済全体の生産性向上に寄与する側面がある一方、生産性の高い企業の廃業も一定程度生じていることなどを示す。また、生産性の高い企業の廃業の背景には、経営者の高齢化と後継者不足があると考えられ、企業の貴重な経営資源を散逸させない事業承継の取組が重要性を増していることなどを示す。
●中小企業・小規模事業者の多様性と役割・機能
中小企業・小規模事業者の「目指す姿」を四つの類型に分類した上で、それぞれの特徴を分析し、業種だけでは捉えきれない異質性を有することなどを示す。
第2部 新たな価値を生み出す中小企業
●付加価値の創出に向けた取組
(企業が生み出す付加価値と労働生産性)
収益拡大から賃金引上げへの好循環を継続するためには、起点となる企業が生み出す付加価値自体を増大させていくことが必要であることなどを示す。
(事業領域・分野の見直し、製品・サービスの差別化)
新たな事業領域・分野への進出は数量増加や単価上昇に有効であること、既存領域での差別化の取組として、製品・サービス開発に取り組む企業の労働生産性の上昇幅が大きいことなどを示す。
(無形資産の有効活用、外部連携・オープンイノベーションの推進)
人的資本投資を実施している企業の労働生産性の上昇幅が大きいこと、製造業では知的財産権・ノウハウを重視する企業の労働生産性が高い傾向にあること、異業種や大学と連携してオープンイノベーションに取り組む企業において、労働生産性の上昇幅が大きいことなどを示す。
●付加価値の獲得に向けた適正な価格設定
競合他社と比較して製品・サービスに優位性を有する企業の中にも、優位性が価格に十分に反映されていない企業が約半数存在すること、「顧客への優位性の発信」、「価格競争に参加しない意識」、「個々の製品・サービスごとのコスト管理」が、優位性を価格に反映する上で有効であることなどを示す。
●付加価値の獲得に向けた取引関係の構築
中小企業が自らの強みを発揮し、付加価値を獲得していくためには、それぞれの企業が交渉力を高めるとともに、取引条件の改善を図る必要があること、良好な取引関係の構築に向けては、大企業を含む発注側事業者に求められる役割も大きいことなどを示す。