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取引問題小委員会(第1回) 議事要旨

日時:平成28年10月24日(月曜日)10:00~12:00
場所:経済産業省別館3階301共用会議室
出席委員: 細田委員長、石川委員、酒井委員、諏訪委員、長澤委員、引地委員、代理出席1名(小正委員)
事務局:吉野事業環境部長、安藤取引課長、田邉取引課長補佐
議題:下請中小企業振興法第3条第1項の規定に基づく振興基準の改正案について 等

■吉野事業環境部長から挨拶
■事務局(安藤取引課長)から、小委員会の設置、小委員長及び委員の指名について説明。
■細田小委員長から、「資料4 会議の公開について(案)」を説明し、異議なし。
■事務局(安藤取引課長)から、資料5~資料10について説明。
■委員からの見解

委員
<振興基準について>
改正案の前文のような取引を親会社と子会社でできれば、日本は素晴らしい国になると思う。
振興基準については、前文が重要。事業継続や経営強化法について書いていただいたことは大変ありがたい。中小企業は人手不足で事業承継ができていないことが大変大きな問題。
振興基準に書かれていることは、本来は当たり前のこと。ただ、それが文章として書かれていることは意味があることであり、評価できる。
振興基準において、経営強化法の中でも計画があるため、触れておくべきではないか。
振興基準において、相談窓口の設置について記載があるが、下請の問題を考えるときには重要であり、しっかり明記されていて良い。
振興基準において、都道府県、市町村の協力という部分について、「下請企業振興協会」と記載があるが、下請といれるのか、「中小企業取引振興」とするのかは少し考えた方がよい。
<原価低減要請、値決めについて>
原価低減要請について、発注者と受注者の寄与度を踏まえて対価に反映させていくべきもの、とした事には非常に意義がある。原価低減に留まらず、対価の決定・変更にまで応用できる重要な考え方。
振興基準において、労務費と最低賃金の問題はもう少し具体的なプラン、総合的な対策が重要になってくるかと思う。
電力や原材料が上昇したという理由での価格交渉はやりやすいが、賃金があがったからという理由はやりにくい。労務費上昇について文言を入れていただいたのは良かった。
<型について>
金型の問題について、サプライチェーンの頂点にある親事業者の方から、率先して取り組んで頂かなければ解決できない。実行段階で政府もしっかりみてほしい。
  <手形について>
手形については、いただくものがあれば払うものもあるので、大企業から順次やっていただけるとありがたい。
支払条件について、中小企業、特に小規模事業者にとっては厳しいところがあるので、是非改善して欲しい。
これまで手形で支払いを行っており、引き続き手形払いを続ける場合、ほとんどの発注者は現在の対価に手形割引料を含んでいる、と答えるはず。今後どのように浸透させていくのかは知恵が必要。
<サプライチェーンの取組について>
中小企業は受注側にも発注側にもなりうることから、サプライチェーン全体で、かつ業種横断的に取り組んでいくこと、特にサプライチェーンの頂点にある親事業者の方から率先して取り組んで頂くことが重要。
自主行動計画の策定が進められているが、1社の中で発注・受注側両方を兼ねている中小企業も多いことや、サプライチェーンの中間に位置する企業への負荷が懸念されること等から、サプライチェーン全体での取組が重要。
振興基準に記載されているサプライチェーン全体での取組に加え、親事業者(発注元)の連帯責任を求めていくべき。法律よりも怖いのは親事業者であり、その親事業者に下請を監視させるような仕組みを作った方がよい。
今後のフォローアップの際には、サプライチェーン全体の多くの利害関係者が集まる場で、基準やガイドラインをつくるなど、実効性をもたせるための工夫をする必要がある。
<振興基準の周知・浸透について>
買いたたきなどで苦しむ中小企業を、実際に下請振興法で救うのは難しい。どうやって浸透させるのかが一番重要。
下請振興法については、法的拘束力がないためか話題にあがることは少ない。下請代金法の調査、指導等においても、振興法の趣旨に触れるなど、折りに触れて周知していくべき。
<その他>
債権法ですぐに中小企業の資金の問題が改善するとは思えなかったところ、金融機関について適切な行き先を基準に書いていただいたことは、ここまでやっていただいたことに感謝する。
いつまでも下請という言葉を使われていることには違和感がある。下請という言葉は「親と子」という関係にそぐわない。
親のもつ責任は大きく、それを追及する制度を考えていただいてもいいのではないかと思う。
最近はホールディングスが多く、中堅企業が多い。業種がわからない、あるいはあっせんだけをするような、「見なし大企業」もある。実態のない手数料が中抜きされないよう目配りいただきたい。
現在、これまでの大企業が儲かるから中小企業も儲かるという構造ではなくなっている。
大手企業のトップは価格について理解していただけるが、それが下まで行き届いていない。やはり購買担当者は、どこまで安く買うかが評価基準になっているので、こういう改正によってテコ入れしていただくのがよい。
下請代金法は、これまで海外取引には適用されてこなかったようだが、現在においてもその運用方針で妥当なのか。今回の振興基準とは関係しないが、今後ご検討いただきたい。

事務局(安藤取引課長)
<振興基準について>
これまで、下請ガイドライン、及びそれをわかりやすくした事例集・ハンドブックは浸透してきているところ。振興基準を浸透させていく手段については、関係者とも話し合い、注力していく。
サプライチェーン全体の関係者が集まる場において行うフォローアップについても、工夫ができないか考えていく。
今回の振興基準で対処することは難しいが、前文において、親事業者と下請事業者で連携していく精神は盛り込んでいる。「下請」という言葉以外でふさわしい文言があるのかどうか、今後の課題として承る。
<値決めについて>
官邸の関係府省等連絡会議では、厚労省も最低賃金の関係で参加しているが、最低賃金違反の事業者を多数出すことがないよう対策を講じるよう指示がでている。関係府省も協力できるところは協力していく。
<手形について>
どれだけ手形から現金払いに変えたか、割引コストの負担を見直したか、毎年の調査や、今後継続して実施していく大企業ヒアリング、下請等中小企業ヒアリングの場でどれだけ実効性が上がったか、フォローアップさせていただく。
<サプライチェーンの取組について>
親事業者たる中小企業にとっては、業種横断的かつサプライチェーン全体で取り組んでいくことが重要なものと認識。現在、業界が着手している自主行動計画の策定にあたっては、サプライチェーン全体でどう取り組んでいくのかを工夫していただいている。二、三次以降にまでいかに浸透させていくかが重要なので、知恵を出し合っていきたい。
下請代金法にはトンネル会社規制があるが、そこまでいかない関係で親と子をどうしていくのか。今回、まずはサプライチェーン全体での取組として、運用基準の強化、基準の明確化、調査・検査の徹底とあわせて、自主行動計画の策定を具体的な行動に結びつけ、フォローアップもしていく。
<その他>
下請代金法の海外取引への適用については、今後の課題とさせていただく。

■討議

委員
<振興基準について>
これまで、下請法振興法や振興基準はどうのように運用されていたのか。下請代金法とはどこが違うのか。
下請代金法は守るべき最低基準。振興基準は望ましい基準であり、下請法よりは一歩進んだもの。これまで活用されてこなかったし、どれだけ効果があったかもこれまで十分試されてこなかった。今回、見直す中で活用されるようになって欲しい。
大企業は、講習会テキストをよく見ている。テキストの本文の方に、振興基準の中身をもっと書き込んで頂くと、より注意が向くと思う。
 
<型について>
金型という表現が多用されるが、型には木型も存在する。木型は鋳造が代表的だが、そのうち工作機械関係については非量産が多い。振興基準案中、「量産」という表現をすると木型が想定しにくくなるため、書き方を工夫していただきたい。
 
<手形について>
事業者が手形を割引するかどうかは自由な選択。事業者が選択した結果として発生したに過ぎない割引負担料を、親事業者の負担にできるのか、実際にできるか疑問。さらに、どのタイミングで割り引くかによっても割引額は変わってくる。
取引条件は、基本契約で一律で決まっている企業もある。その場合、一々取引条件を勘案して値決めをすることはあり得ない。一定利率をかけて支払い金額を算出することはありえるが、個別の価格を定めるような表現には違和感がある。
割引額は自動的に計算できるようにした方がよい。支払いは、現金と手形を分けるケースもあるので、手形の金額が確定した段階で手形分の金額のみに一定利率をかけるものにするべき。
今や手形の割引料を払う時代だということや、支払いサイトは120日ではなく60日だということを広げていけば、手形をやめようという動きになるかもしれない。
 
<その他>
バブル崩壊前は、川上から川下までしっかり経済が流れていた。今は、流れるパイが小さく、かつ事業者が多すぎる。そのため、買いたたきがしやすい環境になっている。辞めたい人が辞めやすい環境を作り、残る人を強くするのも大事。
今回の取組は、おおもとにあるのは、アベノミクスにより大企業の利益・賃金があがり、中小企業への流れが止まっているなかで、中小企業を元気にして一億総活躍を目指すということなのか。
親事業者たる中小企業は相談窓口を持っていないこともある。自主行動計画の中で、サプライチェーンの下の話も親事業者の方に持って行けば話を聞いてくれることを推奨していただくとよい。

事務局(安藤取引課長)
<振興基準について>
下請代金法は取締りの法律で、その両輪として下請振興法を中小企業の振興の法律として運用してきたが、これまで下請振興法まで遵守しようという企業はほとんどなかった。今回、やり方を工夫すれば、かなり浸透できると思うので、しっかり取り組んでいきたい。
 
<手形について>
手形について、自分は現金で支払いをしているが、親事業者からは手形で支払われており、資金繰りに困るという事業者の声がある。あるいは、支払いは手形でもいいが、割引コストを見てもらえないのは困るという声がある。値決めの時に、支払いは手形でいいのか、手形の場合には割引コストはどれだけ加味してもらえるのか、押しつけではなく協議して決めていただくべき。
大企業ヒアリングでは、「なぜ手形を使用しているのか?」という質問をすると、「これまで手形を使っていたから今でも使っている」と答える企業が大半。お客さんが現金の方がいいということであれば、いつでも変えると言うような企業もあった。ただ稀に、100%手形支払いという企業もある。中小企業は資金調達に苦慮することが多いが、大企業がそれに困るということはない。基本は現金で支払っていただくという方向になるとありがたい。
 
<その他>
取引条件改善の取組は、中小企業の賃上げ原資がでてこないことを問題意識として取り組んでいる。今後の下請中小企業のあり方として、大企業サイドが目先の条件だけで下請事業者を絞っていっていいのか、その曲がり角にきている。大企業と下請等中小企業の関係はどうあるべきか、今後この委員会でもご議論いただきたい。
下請代金法の運用基準改正を公正取引委員会の方で準備している。金型や原価低減の問題事例を倍増させ、下請法違反になる可能性のある基準を明確化する。振興基準の改正とも連動して動いている。

■まとめ

下請中小企業振興法第3条第1項の規定に基づく振興基準の改正案について、最終的なとりまとめについては小委員長一任で了承。後日、パブリックコメントを踏まえ、中小企業経営支援分科会において議決し、中小企業政策審議会の答申とする予定。
金型保管については、別途検討の場を設け、議論の結果は小委員会に報告してもらうこととした。

<お問い合わせ先>
中小企業庁事業環境部取引課
電話:03-3501-1669