トップページ  審議会・研究会 審議会(平成25年6月30日以前分) 取引部会 中小企業政策審議会基本政策部会・中小企業経営支援分科会取引部会中間とりまとめ~今後の官公需施策の在り方について~

中小企業政策審議会基本政策部会・中小企業経営支援分科会取引部会中間とりまとめ~今後の官公需施策の在り方について~

                            

検討の背景

 昭和41年以降、「官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律(昭和41年法律第97号)」(以下「官公需法」という。)に基づいて、中小企業者の受注機会の増大についての施策が推進されてきたところである。この結果、中小企業者向け契約の実績額と、その国等の官公需(注)総額に占める比率は、昭和41年度には、約4891億円、25.9%であったものが、平成14年度には、約5兆3650億円、46.1%と高まっている。【参考資料1参照】

  こうした官公需施策については、毎年度「中小企業者に関する国等の契約の方針」を定める際に、施策の見直しが行われてきたところであるが、平成15年12月の総合規制改革会議「規制改革の推進に関する第3次答申」においては、主として競争政策の観点から、次のような指摘がなされたところである。

  「官公需制度については、官公需法(官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律(昭和41年法律第97号))に基づく中小企業者向け契約目標が中小企業者の受注の「機会」のみならず「結果」の確保になっているおそれがあると思われる。そのため、今後は、中小企業の競争力を高めるとともに、技術や意欲があり、創造的な事業活動を行う中小企業の育成に資するよう制度の位置付けを見直す必要があり、中小企業基本法(昭和38年法律第154号)第3条に掲げられている基本理念と整合した運用が確保されるよう、上記目標の水準についての検討も含め、改善のための継続的な取組が必要である。」【参考資料2参照】

 このため、官公需施策の在り方について、中小企業政策審議会基本政策部会・中小企業経営支援分科会取引部会の下に官公需施策に関する合同検討小委員会を設置して検討を行い、その検討結果を両部会の報告としてとりまとめ、今後講ずべき施策展開の方向について提言することとしたものである。

(注)「官公需」とは、国、独立行政法人、公庫、公団等(以下「国等」という。)を相手とする工事の完成、物件の納入、役務の給付に係る契約をいう。


1.官公需施策の位置付け及び現状
(1)官公需施策の位置付け
a)中小企業基本法における位置付け 
  中小企業基本法(昭和38年法律第154号)第3条においては、中小企業は、1)新たな産業の創出、2)就業機会の増大、3)市場における競争促進、4)地域経済の活性化等の点で我が国経済の活力の源泉であると位置付けられており、独立した中小企業者の自主的な努力の助長と経営基盤の強化等により、多様で活力ある成長発展が図られるべきことが基本理念として定められている。
  この基本理念を受けて、同法第5条では、中小企業施策の基本方針を定めているが、官公需施策は、このうち、中小企業者の経営基盤の強化対策の一つとして位置付けられているものである(同法第21条)。【参考資料3,4参照】

※中小企業基本法
(基本方針)
第五条 政府は、次に掲げる基本方針に基づき、中小企業に関する施策を講ずるものとする。
一 中小企業者の経営の革新及び創業の促進並びに創造的な事業活動の促進を図ること。
二 中小企業の経営資源の確保の円滑化を図ること、中小企業に関する取引の適正化を図ること等により、中小企業の経営基盤の強化を図ること。
三 経済的社会的環境の変化に即応し、中小企業の経営の安定を図ること、事業の転換の円滑化を図ること等により、その変化への適応の円滑化を図ること。
四 中小企業に対する資金の供給の円滑化及び中小企業の自己資本の充実を図ること。
(国等からの受注機会の増大)
第二十一条 国は、中小企業が供給する物品、役務等に対する需要の増進に資するため、国等の物品、役務等の調達に関し、中小企業者の受注の機会の増大その他の必要な施策を講ずるものとする。

b)官公需法に基づく施策
 このような官公需施策は、官公需法に基づいて実施されている。
  すなわち、官公需法第4条に基づき、国は、毎年度、国等の契約に関し、中小企業者の受注の機会の増大を図るための方針(「中小企業者に関する国等の契約の方針」)を作成し、閣議決定を行っており、同方針に基づいて、国等は、中小企業者の受注機会の増大のための措置(官公需施策)を実施している。また、同方針では、併せて、当該年度における国等の契約のうち、中小企業者向け契約の金額についての目標を示している。これは、昭和41年の官公需法制定時の衆議院商工委員会における附帯決議を踏まえて掲げられているものであるが、この目標は、法的拘束力のあるものではなく努力目標としての性格を持つものである。さらに、同方針の付表で、前年度の中小企業者向け契約実績を示しているが、これは、同法第5条に基づいて各省庁から経済産業大臣に通知された国等の契約の実績の概要を集計したものである。なお、国は同方針の中で、地方自治体に対し、同方針を参考として、中小企業者の受注機会の増大のための措置を講ずるよう要請している。【参考資料5,6参照】

(2)官公需施策の現状
a)官公需施策
  中小企業者の受注機会の増大のための措置として、官公需に関する発注情報等の中小企業団体中央会等を通じた提供、官公需適格組合制度の周知徹底等中小企業者の受注機会の増大に繋がる諸施策を実施している。平成15年度は、次の事項について施策を講じることとしたところである。【参考資料7,8参照】
・中小企業官公需特定品目等の発注情報等の提供及び発注の増大
・官公需適格組合等の活用
・指名競争契約等における受注機会の増大
・中小企業者への説明の徹底
・銘柄指定の廃止
・分離・分割発注の推進
・計画的発注の推進及び労働時間短縮への配慮
・適正価格による発注
・地方支分部局等における地元中小企業者等の活用
・中小建設業者に対する配慮
・技術力のある中小企業者に対する入札参加機会の拡大
・新規開業者に対する受注機会の増大に向けての措置
・調達手続に関する簡素・合理化
・中小企業者の自主的努力の助長
・阪神・淡路大震災の被災地域の中小企業者に対する配慮

b)中小企業者向け契約目標
  「中小企業者に関する国等の契約の方針」における中小企業者向け契約の金額についての目標は、基本的に、毎年度の官公需総額のうち中小企業者による受注が見込まれる契約の金額について、年度当初に発注機関ごとに報告されたものを集計して得られるものである。平成15年度の中小企業者向け契約目標は、約4兆8,450億円となっており、官公需総予算額約10兆6,940億円の45.3%を占めている。【参考資料8参照】

c)中小企業者向け契約目標に係る内訳の公表
  同方針に示されている中小企業者向け契約目標に関しては、同方針の閣議決定後に、各発注官庁ごとの内訳が公表されている。これは透明性の向上を図るためのものである。【参考資料9参照】

d)なお、国等の契約の締結に当たっては、予算の適正な使用に留意すべきことが、官公需法第3条で規定されており、実際の予算の執行については、会計法令に基づいて行われている。また、その際、仕様書等に示された契約の内容に基づき品質の確保等多様なニーズへの対応がなされるべきことは言うまでもないことである。

【参考】海外における官公需施策の主な例【参考資料10参照】
  米国では、1988年、連邦政府として中小企業に一定の受注割合(1997年の改正により、23%以上と定められている。)を与える旨を法律で定めている(連邦政府としての中小企業向け契約比率(目標)については、我が国とは調達対象となる官公需の内容、性質が国防、エネルギー及び宇宙開発が中心であるなど、かなり違うと見込まれることから、単純に比較できないことに留意。)。 また、この契約比率の設定以外にも、一括発注を行う場合に発注機関が守るべき要件を法律上定め、契約の分割を進める等の施策も講じられている。
  この他、英国では、官公需についての情報提供の推進が規定され、フランスでは、職人や職人組合に配慮する旨の規定が置かれている。
 
2.官公需市場の現状

  官公需市場について、その推移、内訳、変化の要因等を分析すると、次のとおりである。

(1) 官公需の推移
a)官公需総額の推移
  官公需総額(実績額)は、官公需施策発足当時の昭和41年度における約1兆8,850億円と比べ、平成14年度には、約11兆6,376億円に大幅に増加している。ただし、その推移を見ると、経済情勢や財政事情を反映して、前年度を下回る年度もかなり見られるところである。近年でも、厳しい財政事情を反映し、平成11年度以降は、減少傾向が続いている。なお、官公需総額について、予算額と実績額の間には通常大きな乖離があるわけではないが、補正予算が講じられる等の年度当初に想定していない事情が発生することにより、ある程度の乖離が生じる場合もある。【参考資料1参照】

b)中小企業者向け契約の実績額、目標額の推移
  中小企業者向け契約の実績額も官公需総額の実績額と同様に、昭和41年度の4,891億円に比べ、平成14年度には、5兆3,650億円に大幅に増加しているが、その推移を見ると前年度を下回る年度もかなり見られる。近年でも、平成11年度以降は、減少傾向にある。
  中小企業者向け契約の目標額も、同様に、昭和41年度の5,050億円に比べ、平成15年度には、4兆8,450億円に大幅に増加しているが、平成12年度以降は減少傾向にある。
  各年度の目標額と実績額を比較すると、近年は実績額が目標額を上回っているが、制度発足当初から通じて見れば、実績額が目標額を下回っている年度がほとんどであることに留意する必要がある。【参考資料1参照】

(2)中小企業者向け契約実績比率、目標比率の推移
  上記(1)から計算される中小企業者向け契約実績比率、目標比率の推移、相互の関係は次のとおりである。【参考資料1参照】

a)中小企業者向け契約実績比率は、昭和41年度の25.9%から平成14年度には46.1%となっている。長期的には緩やかな上昇傾向にあるが、年度を追って細かく見れば、上昇、低下を繰り返している。近年も、平成5年度から7年度までは低下し、平成7年度以降は上昇傾向にある。そして、特に最近においては、過去に例を見ないペースで上昇している(なお、平成12年度以降は、中小企業の定義の変更に伴う目標比率及び実績比率の上昇分があることに留意する必要がある。)。

b)中小企業者向け契約目標比率は、昭和41年度の26.8%から平成15年度には45.3%となっている。制度発足後の昭和40年代には、目標比率が上昇したり低下したりしているが、昭和50年代以降は、緩やかな上昇ないし横ばい傾向にある。

c)目標比率と実績比率の相互の関係を見ると、平成9年度以降は実績比率が目標比率を上回っているが、制度発足当初から通じて見れば実績比率が目標比率を下回る年度の方が多い。

(3)省庁別内訳
  各省庁の中には、官公需総額が年度ごとに大きく変化する官庁もあり、また、中小企業者向け契約の実績比率及び目標比率を見ると、20%台から70%台に至るまで、省庁により、その発注の特性等に基づき、大きなばらつきが見られるところである。【参考資料9参照】
  ただし、各省庁の官公需総額(実績)、中小企業者向け契約実績額のシェアを見ると、それぞれ、上位5省庁までのシェアの合計が60%を超えており、特に、上位4省庁は、順位こそ異なるが、同じ省庁が占めている。このため、中小企業者向け契約実績については、これらの省庁における契約実績によって大きく変動するという状況にある。【参考資料11参照】

(4)種別内訳(工事、物件、役務)の推移
  官公需総額(実績)、中小企業者向け契約実績額について、ここ10年間の推移を工事、物件、役務という種別に見ると次のとおりである。【参考資料12参照】

a)工事
  官公需総額全体に占める工事のウェイトは、53.5%(平成14年度)と、最大のウェイトを占めている。ここ10年間の推移を見ると、工事の総額は、平成7年度をピークとして、平成10年度を除き、一貫して減少傾向にある。これは公共事業の減少によるものである。
  工事に係る中小企業者向け契約実績額は、中小企業者向け契約実績額全体の50.5%(平成14年度)と最大のウェイトを占めている。工事に係る中小企業者向け契約実績額の推移は、工事の総額の推移とほぼ同様の傾向にあり、平成11年度以降減少傾向が続いている。
  工事に係る中小企業者向け契約比率は、物件、役務と比較するとやや低い水準にあるが、ここ10年間ほぼ一貫して上昇し、平成14年度には43.5%となっている。

b)物件
  官公需総額(実績)全体に占める物件のウェイトは、24.0%(平成14年度)であるが、ここ10年間、その総額は、増減を繰り返している。物件に係る中小企業者向け契約実績額は、中小企業者向け契約実績額全体の24.4%(平成14年度)を占め、平成13年度まで一貫して増加してきたが、平成14年度は減少している。
物件に係る中小企業者向け契約比率はここ10年間ほぼ一貫して上昇しており、平成14年度には、46.7%となっている。

c)役務
官公需総額(実績)全体に占める役務のウェイトは、22.5%(平成14年度)であるが、ここ10年間、その総額は平成12年度までほぼ一貫して増加している。役務に係る中小企業者向け契約実績額は、中小企業者向け契約実績額全体の25.1%(平成14年度)を占め、平成13年度までほぼ一貫して増加してきたが、平成14年度は減少している。
  役務に係る中小企業者向け契約比率は、他の種別に比べ高い水準にあるが、ここ10年間上昇、低下を繰り返しており、平成14年度には51.6%となっている。

(5)変化の要因分析
  工事に比較して中小企業者向け契約比率が高い役務の官公需全体に占めるウエイトが趨勢的に高まりをみせている中で、上述したとおり、近年、官公需の中小企業者向け契約実績比率は、過去に例を見ないペースで上昇している。その要因としては様々なものが考えられるが、次の検証可能なデータから判断すると、工事において、特に大規模工事の減少が中小企業者向け契約実績比率の上昇のうち大きな要素を占めているものと考えられる。

a)そもそも工事は、官公需総額及び中小企業者向け契約実績額のうち5割強のウェィトを占めるものであること。【参考資料12参照】

b)官公需総額(実績)のピーク(平成11年度)から直近(平成14年度)にかけての減少幅について、物件、工事、役務の種別ごとに、大企業、中小企業者の契約主体を分けて、その減少に対する寄与度を測定すると、当該減少に最も寄与しているのは、大企業向け工事であること。【参考資料13参照】

c)国等の公共事業に係る工事規模別推移を平成12年度から平成14年度にかけて見ると、金額ベースでは、特に規模の大きな工事(20億円以上)が大幅に減少したことが公共事業の総額の減少に最も寄与していること(なお、件数ベースでは、小規模な工事(1億円未満)の減少が最も公共工事の件数の減少に寄与していることに留意する必要がある。)。【参考資料14参照】

d)平成9年度以降、契約の1件当たりの単価は、物件及び役務については、概ね上昇傾向にある一方、工事については、概ね減少傾向(官公需総額が平成10年度以降、中小企業者向けが平成11年度以降、それぞれ減少傾向(ただし平成14年度は除く。)にあり、相反する傾向にあること。【参考資料15参照】

3.官公需施策見直しに当たっての基本的考え方

(1)官公需施策の位置付け
  上述のとおり、官公需施策は、地域経済の活性化、雇用の創出等の観点から、中小企業者の経営基盤強化のための重要な施策として位置付けられるものである。これは、官公需市場においては、次にみるように、中小企業者にとって、いわゆる情報の非対称性や市場に参入する上での格差があること等から、政策的に、中小企業者の受注の機会を確保するための施策を講じ、これによって中小企業者の経営基盤を強化する必要があることによるものである。

a)官公需に係る発注は、通常の取引のように双方向の働きかけによるものではでなく、発注者による一方向的な情報発信に基づき行われることが多いことが特徴である。特に、中小企業者等の受注者にとっては、発注情報の受信に困難が伴い、また、逆に、受注者に関する情報も発注者側には伝達されにくい。さらに、発注者と他の発注者の間の情報交流も必ずしも十分とは言えず、優れた発注手法などの伝達も十分でない可能性がある。このように、情報の流通に障害が生じ、非対称性が生じやすい。

(注)中小企業者に対するアンケート調査の結果では、大企業と比べた競争上の不利性として、情報の収集を挙げる者が多い。【参考資料16参照】

b)前記小委員会におけるヒアリング事例に見られるように、発注者の側に、調達する財・サービスに係る十分な専門的知見がない場合や、管理に係る手間やコストをかけたくない場合があり得るが、このような場合には、発注者の側に、公的資金を支出することとの関係上、リスクの分担や事務負担の軽減の方向にインセンティヴが強く働くものと考えられるところであり、その結果として、中小企業者にとっては、官公需市場に参加する上での格差が生じやすい。

(注)地方自治体(長崎県)からのヒアリングでは、情報システムの開発において、発注機関に外部の専門家を登用して体制を整備し、併せて、発注の手法に創意工夫を図ることにより、入札単位を適切に管理して分割して発注し、大幅にコストを引き下げるとともに、地場の中小企業者への発注を増大させることが可能となったという事例も紹介されたところである。【参考資料17参照】

(2)官公需施策に係る指摘と官公需市場における競争による活性化
  ただし、官公需施策については、その運用において、中小企業者向け契約目標が中小企業者の受注の「機会」の確保のみならず「結果」の確保になっているおそれがあるのではないか、中小企業者の自立と競争力の向上を妨げているのではないか等の問題提起もなされている。上記(1)のとおり、本来、官公需施策は、情報の非対称性や格差等を是正し、競争条件を整えることにより、適切に、中小企業者の受注機会の確保を図ることを目的とするものであり、その運用に当たっては、競争を阻害し、非効率を招来することがないよう、その趣旨に則った適切な運用が図られるべきことは言うまでもない。
  さらに、官公需施策が適切に運用され、中小企業者の市場参入が促進されることにより、むしろ競争促進に資することが期待され、コスト削減を図りつつ品質の確保等多様なニーズへの対応が図られることにより、経済社会の活性化に寄与することが期待されるところである。

(3)発注機関の積極的な協力による情報提供等の推進
  我が国の官公需施策については、米国において拘束力のある中小企業者向け契約比率が数値目標として設定されているものとは異なり、契約目標の設定は、基本的に各発注機関の裁量に委ねられており、自由度が高い制度となっている。このため、平成15年度から、中小企業者向け契約目標及び実績を省庁別に開示するなど、これまで各発注官庁の協力で情報開示に努めてきたところであるが、各発注官庁の創意工夫を活かしながら、全体として中小企業者による官公需の受注機会の増大を図るためには、各発注機関自らの責任と自由度を重んじる現行制度を維持しつつ、その協力の下、発注全般にわたり、更なる情報提供等の拡大を推進することに努めることが必要である。

4.官公需施策の各措置に関する見直しの方向性

(1)契約目標の位置付け
a)政策評価の指標
  中小企業者向け契約目標は、前年度の実績と当年度における予算内容等を勘案して、どのような中小企業者向け受注機会の増大のための具体的措置が当年度において講じられるかにより、中小企業者向けにどれだけの契約を見込むことが可能であるかを示すものであり、見込みないし見積もりといった性格を有する。(注)さらに、当年度の契約実績を前年度の契約実績と比較すること等により、国として掲げている官公需施策がどの程度実現されたか、また今後どのような対応をとる必要があるかを検討することが可能である。こうしたことから、中小企業者向け契約目標は、各発注機関の創意工夫によって推進される施策の効果を把握し、次年度以降の施策の企画立案・実施に活用するための政策評価に係る指標の一つとしての意味合いを有するものである。(ただし、上記2.において示したとおり、物品、役務、工事の種別で見ると、中小企業者向け契約の実績比率は、必ずしも、すべての種別において常に上昇傾向を示しているわけではなく、役務のように増減を繰り返しているものも見られる。また、近年、中小企業者向け契約の実績比率が過去に例を見ないペースで上昇傾向にあるのは、大規模工事の減少が大きな要素を占めているものと考えられることも既に示したとおりである。さらに、契約の内容は毎年度ごとに異なるものである。このため、中小企業者向け契約の実績比率、そして目標比率は、ともに、制度創設時以来しばしば見られたように、様々な要因によって、年度ごとに増減があるものである。上記の政策評価としての意味合いについても、こうした要因を踏まえた上で理解されるべきものであることはいうまでもないところである。)

(注)したがって、中小企業者向け契約目標は、中小企業者等が契約を受注するという結果を確保するというものではなく、受注機会を示すというものである。中小企業者向け契約目標を掲げることにより、その趣旨が誤って伝わることのないよう制度の信頼性を引き続き保持することが重要である。
 
b)予見可能性を高める情報提供手段としての指標
  また、官公需市場は、発注者側に何を調達するかという情報が独占されている市場であり、一般の取引のように当事者相互が取引に関して提案を自由に行うことにより、情報の相互交流が起こりうる市場とは性質が異なるものである。仮に、情報提供が何ら行われない場合には、果たして中小企業者が参入し得る発注がどの程度行われるかを予想することが困難であり、このために、中小企業者は、営業努力を節減し、十分な参入努力を行わなくなるおそれもある。したがって、中小企業者向け契約目標を掲げて市場に関する情報を提供し、中小企業者の官公需市場への参入の予見可能性を高めることは、結果的に官公需市場への中小企業者の参入を促し、競争促進に資するものである。

c)中小企業者向け契約目標に係る改善点
  しかしながら、情報提供の観点から現在の中小企業者向け契約目標を見た場合には、次のとおり、改善すべき点があると考えられる。

1)「規制改革推進3か年計画(再改定)」(平成15年3月)も踏まえ、平成15年度から、国及び公団等の区分に加え、各省庁別の契約目標の内訳も開示するなど、情報開示には一定の進捗が見られるものの、政策評価を適確に行い、中小企業者への予見可能性を高める観点からは、さらに、各発注機関の協力の下、より詳細な情報開示が行われることが求められる。例えば、官公需市場に積極的に参入しようとする意欲ある中小企業にとっても、得意とする分野、関心のある分野は企業によって様々であることから、官公需市場全体に係る情報に加えて各発注機関別に、工事、物件、役務の種別等についてできるだけ細分化した情報の開示が有効であると考えられる。
  なお、その際、大企業ならではの特別の技術を要し、極めて大規模なインフラストラクチャーの整備等大企業が得意とする分野とその他の分野とを区別することが、より中小企業者による参入の度合いを示す上でむしろ有効であるとの観点から、各発注機関による当該区別に係る情報の開示が求められる。

2)また、「規制改革・民間開放推進3か年計画」(平成16年3月)において、競争促進に資する新たな指標の導入も含めて検討すべきである、との指摘がなされている。現在でも既に一部の省庁では、入札件数等の積極的な開示を行っているところであるが、こうした例を参考としつつ、積極的な情報開示が進められることにより、より一層、競争の促進につながる市場の整備が図られるものと考えられる。今後行われる電子入札の本格的な展開に合わせて、こうした先進的な取り組みが各省庁で行われることが求められる。

(注)例えば、工事関係については、入札契約適正化法に基づく各種情報が公表されている。

(2)分離・分割発注の在り方
a)分離・分割発注の推進の位置付け
分離・分割発注の推進は、中小企業者の受注機会の増大を図るため、可能な限り、中小企業者が参入できる単位での発注を行おうとするものであり、その前提として、価格面、数量面、工程面等から見て適切であるかを十分に検討することが必要とされている。
  上述の「規制改革・民間開放推進3か年計画」においては、「発注者においても理由の公表等を通じて分割発注に関する透明性を向上させ、経済合理性の無い分割発注の実施の禁止を徹底する方向で検討」すべきとの指摘がなされており、また、前記小委員会においても、分割発注については、コスト高を招来するとの指摘がなされたところである。
  ただし、その一方で、上述のとおり、発注機関による体制の整備と創意工夫を図ることにより大幅にコストを引き下げることが可能となったという事例も本委員会において紹介されたところである。【参考資料17参照】
確かに、経済合理性のない不適切な分割発注がなされれば、非効率や競争の阻害をもたらすおそれがあるが、分割発注に係る透明性を確保しつつ、経済合理性を適切に判断した上でなされる分割発注については、むしろ、幅広い企業の参入を可能とし、競争促進に資する効果を期待できるものであり、一層のコスト削減につなげることをも可能とするものであると考えられる。

b)分離・分割発注のあり方の見直しの方向性
したがって、分離・分割発注を的確に運用し、より活用していくためには、次のとおり改善を進めていく必要がある。

1)発注能力の向上
  発注者側が的確な分離・分割発注を行うためには、発注内容について十分な知見と能力を持つことが必要である。しかし、官公需市場においては、発注者とほかの発注者との間での情報交流は十分とはいえない状況にある。このため、適切な発注事例(グッド・プラクティス)の収集と発注者側への普及を行うことにより、発注者側において知見を共有する仕組みを構築していくことが求められる。また、発注者側において、部内の人材育成等により十分な発注能力を持つ体制を整備することも重要である。さらに、IT分野では外部専門家であるCIO補佐官を省庁毎に配置するといった措置が講じられているところであり、分野によっては、こうした例も参考として、外部人材の活用を行うことも有効であると考えられる。【参考資料18参照】

2)発注機関の協力による積極的な情報開示
分割発注については、経済合理性が確保され、かつ、競争が阻害されないように運用がなされることが必要である。このため、大企業と中小企業の双方が参入しうる分野については、分割発注を行うことの合理性についての評価を含め、発注についての考え方が発注機関から積極的に示されることが求められる。こうした情報開示については、各発注機関の協力によりなされることが不可欠であるが、その蓄積がなされることにより、分割発注に係る信頼性が向上することが期待される。

(3)意欲ある中小企業者の参入促進について
  意欲ある中小企業者による官公需市場への参入を促進することは、独立した中小企業者の自主的な努力を助長し、その経営基盤を強化することにつながるものであり、官公需施策の中でも中心的地位を占める重要なものである。意欲ある中小企業者に対し、より官公需市場への参入を促進するため、次のa)からc)までに掲げる措置を推進することが求められる。

a)官公需に関する情報提供の着実な推進
  各発注機関や中小企業団体中央会のホームページ、中小企業庁のメールマガジン等の電子的手段を活用すること等により、これまで以上に、積極的、かつ、着実に官公需に関する情報の提供を推進することが必要である。【参考資料19参照】

(注)中小企業者に対するアンケート調査の結果では、大企業と比べた競争上の不利性として、情報の収集を挙げる者が多い。【参考資料16参照】

b) 技術力が高い中小企業者等に対する参入促進措置の推進
1)入札参加資格の拡大措置の徹底
技術力が高い中小企業者については、平成12年10月から、政府調達(公共事業を除く)手続の電子化推進省庁連絡会幹事会決定「技術力ある中小企業者等の入札参加機会の拡大について」に基づく入札参加機会の拡大措置が講じられているが、これまでの実施状況は必ずしも十分とはいえない。このため、各省庁の活用実績などを把握し、問題点を分析することや、情報開示を進めること等により、同措置の活用を促進していくことが求められる。【参考資料20参照】

2)IT分野、研究開発分野における取り組みの推進
  官公需市場のうち、特に、IT分野、研究開発分野においては、技術力の高い中小企業者による参入に向けた積極的な挑戦がなされやすい分野である。中小企業者が切磋琢磨し、技術力の研鑽を行うことにより、国全体としての技術力の底上げを図るという産業政策上の観点からも、引き続き、かかる分野での技術力の高い中小企業者の参入を促していくことが重要である。このため、発注機関において入札参加資格の弾力化や、特定の技術等を有することが研究開発を進める上で必須な場合には当該特定の技術等を有していることを条件として随意契約を活用する等の取り組みを積極的に行うことが求められる。【参考資料21,22参照】

3)技術力等の適正な評価に関する取り組み
技術力が高い中小企業者について、技術力等が正当に評価され、官公需市場への参入機会の増加が図られることが重要である。このため、前記小委員会における地方自治体(茨城県)からのヒアリングにおいて示されたベンチャー企業等に対する推薦書の交付の事例や、技術開発補助金の交付先企業のデータベースの活用等を参考としつつ、技術力等の正当な評価に関する取り組みを推進していくことが求められる。なお、その際には、各発注機関において技術力等の評価を行うことのできる体制を整備することが重要であることは、いうまでもないところである。【参考資料17参照】

4)入札参加資格の在り方の検討
中小企業者に対するアンケートでは、大企業と比べて競争上不利な点として、資格等級上の制約を挙げる者が多かったところである。「規制改革・民間開放推進3か年計画」の「国の物品の製造・販売等に係る入札参加資格の見直し」において指摘されているように、高い技術力を有しながらも創業後間もなく企業規模も小さい新規事業者の入札機会を拡大するため、営業年数や自己資本額等既存の指標の見直しや新たな指標の検討を含め、入札参加資格のあり方を検討するとともに、すでに講じられている弾力化等の措置については、その徹底を図ることが求められる。【参考資料16、23参照】

c)官公需適格組合の積極的活用
  官公需適格組合は、中小企業者が連携することにより企業規模の格差を補うとともに、地方経済産業局長の証明により、信用力を高めようとするものである。しかし、まだ発注機関において官公需適格組合制度に対しての十分な認識や理解が得られない等の問題も散見されるところであり、今後、官公需適格組合の受注実績を発注機関別に一覧できるリストを公表すること等を通じて、官公需適格組合制度の周知を図ることが求められる。【参考資料24参照】

おわりに

  官公需市場において、適切な施策の実施により、中小企業者の受注機会を確保することで、その市場参入を促進し、競争の促進、市場の活性化を実現していくことが期待される。また、このことにより、中小企業の経営基盤強化を図るとともに、より効果的な政府調達を推進することも期待できる。このため、中小企業政策として、今後とも官公需施策を適切に実施していくことの意義は大きい。政府においては、本中間とりまとめを踏まえ、平成16年度における「中小企業者に関する国等の契約の方針」への反映をはじめとして、積極的な施策の展開が望まれる。加えて、引き続き官公需施策の適時適切な見直しと、施策の実施状況について、関係省庁との連携を図りつつ、関連の審議会等の場においてフォローアップを行っていくことが必要不可欠である。
  今後、本中間とりまとめを踏まえ、広く議論が行われ、官公需施策が適切に推進されることを強く望むものである。

中間とりまとめ (PDFファイル)
参考資料 (PDFファイル)