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中小企業政策審議会(第9回)・基本政策部会合同会議 議事録


日時:平成20年3月31日(月曜) 15時~17時
場所:経済産業省別館10階1028号会議室
議題:
  平成19年度中小企業の動向に関する年次報告(案)
  平成20年度において講じようとする中小企業施策(案)
  その他

議事録:

  • 餅田企画課長 それでは定刻となりましたので、ただいまから、中小企業政策審議会・基本政策部会合同会議を開催いたします。
    本日は年度末の御多忙中のところ、委員の皆様方には多数御出席いただきまして誠にありがとうございます。なお、本合同会議の委員及び臨時委員は計41名でございますが、本日過半数の委員及び臨時委員の方々に御出席いただいておりますので、中小企業政策審議会令第8条第1項の規定に基づきまして定足数を満たしていることを申し添えします。
    初めに、本審議会会長の交代がございましたことを御報告いたします。過日、平成13年より会長をお務めいただきました山口信夫会長が辞任され、中小企業政策審議会委員の皆様方による互選の結果、岡村正委員が新しく会長に選任されました。
    それでは、まず、岡村新会長よりごあいさつをいただきたいと存じます。
  • 岡村会長  この度、皆様方から御選任をいただきまして、中小企業政策審議会の会長を仰せつかることになりました岡村でございます。山口信夫前会長の後任にいたしまして大変重要な職務をお引き受けすることになりまして、身の引き締まる思いをしているところでございます。
    中小企業は、我が国経済の屋台骨を支える存在でございまして、中小企業の活性化を図ることが我が国経済の持続的な成長を達成していくための鍵といっても過言ではございません。しかしながらグローバル化、あるいはIT革命の発展など中小企業を取り巻く環境が大きく変化をしておりまして、また足下の景気動向は原油・原材料価格の高騰やサブプライム住宅ローン問題に伴いますアメリカ経済の失速への懸念が到来しておりまして、景気の下振れリスクが高まっており、中小企業の経営環境は誠に厳しさを増していると言わざるを得ないと思います。
    中小企業政策審議会といたしましては、経営、技術、人材等の様々な視点から中小企業が直面している課題に対する調査・審議を行う機関として中小企業政策の方向性の決定に大きく貢献をしてきたと承知をいたしております。また、個別の専門的な問題につきましては、当審議会に属する2つの分科会と8つの部会におきまして、具体的な政策のあり方が検討されてきたと承知しておりますが、それぞれの分野の第一線の専門家に御参加をいただいておりまして、私自身も大変頼もしく感じているところでございます。
    当審議会の使命達成に向けまして、委員の皆様のより活発なご審議を通じまして、各分野の専門的な知見を結集させ、中小企業政策として採るべき方向性を的確に導き出すことができるよう努力してまいりたいと存じます。委員の皆様のご協力の程よろしくお願い申し上げます。どうぞよろしくお願いいたします。
  • 餅田企画課長  ありがとうございました。
    本日は、お忙しい中、山本香苗経済産業大臣政務官に御出席いただいておりますので、審議に先立ちまして山本政務官にごあいさつをお願いしたいと存じます。
  • 山本政務官  ただいま御紹介をいただきました政務官の山本香苗でございます。本日は御審議に先立ちまして一言ごあいさつをさせていただきたいと思います。
    委員の皆様方におかれましては、日頃より経済産業省の施策、特に中小企業施策の推進にひとかたならぬ御尽力をいただいておりまして、この場をお借りいたしまして一言、心より御礼申し上げます。本当にありがとうございます。
    さて、今、会長からお話がございましたとおり、我が国経済はこのところ回復が足踏み状態となっておりまして、地域や業種によってかなり景況感にばらつきが見られるところでございます。中でも原油・原材料価格の高騰や建築着工件数の減少といったものを背景といたしまして、中小企業の業況は悪化をしております。中小企業に対する支援を、こういう中で迅速かつ的確に行っていかなくてはなりません。これは極めて重要なことであります。
    私も国会の合間を縫って、中小企業の現場に足を運ばせていただいております。先日も大田区で下請取引適正化に取り組んでいらっしゃいます金型メーカーの方々からお話を伺わせていただきました。また財務のIT化に取り組んでいらっしゃる中小企業の皆様方の現場も拝見させていただきまして、現場の皆様方の実態またニーズを踏まえた上での政策推進というものが本当に重要だということを感じております。
    経済産業省といたしまして、より一層下請適正取引の推進に取り組んでいくとともに、中小企業の皆様方の経営力向上を支援する地域力連携拠点というものを全国に200から300置かせていただきまして、ITを活用いたしました財務会計の導入促進などの施策を総合的・集中的に実施していくなど、中小企業施策に全力を挙げて取り組んでまいりたいと思っております。
    本日の議題でございます中小企業白書は今年で45年目を迎えます。中小企業白書は、日々懸命に経営努力を続けておられます中小企業の皆様、中小企業向けの支援機関やアドバイザーの方々をはじめ国民の皆様方に対しまして、急速に変化をしておりますこの経済環境の下におけます中小企業の実態や中小企業が直面している課題をお示しする重要な文書であると考えております。
    今回の中小企業白書におきましては2つ新しい分析を加えさせていただいております。1つは中小企業の生産性の現状を踏まえ、生産性向上に向けたITの戦略的な活用やグローバル化への対応について分析したもの。そして2つ目は、地域経済の厳しい現状を踏まえて、地域の中小企業の事業再生や小規模企業の活性化、地域金融の機能強化、中小企業の連携やネットワーク、すなわち「つながり力」といったものの現状と今後の課題について分析したものを加えさせていただいております。
    委員の皆様方におかれましては、本案につきまして様々な角度から忌憚なくご審議をいただくとともに、今後とも中小企業施策の推進に対しまして、より一層ご指導とご支援をいただきますようよろしくお願い申し上げます。
  • 餅田企画課長  山本政務官どうもありがとうございました。
    (山本政務官退室)
  • 餅田企画課長  続きまして新しく就任されました2人の委員の方々をご紹介させていただきます。
    新たな委員といたしまして、全国商工会連合会理事の荻堂盛秀委員でございます。
    日本労働組合総連合会副会長の河野和治委員、河野委員は本日は御欠席でございまして、代理といたしまして、清水様に御出席いただいております。
    次に審議会の運営につきまして御説明いたします。
    審議会の運営につきましては、平成7年9月の閣議決定に基づきまして、審議会は原則として公開するという方針がございますので、本審議会につきましても、原則公開とし、資料及び議事録を公表させていただきます。ただし、皆様にお配りしている資料のうち、中小企業白書に関するもの、これは資料-5~10でございますが、これにつきましては、4月下旬を予定しております閣議決定を経て公表することになります。それまでの間、委員限りの取り扱いとさせていただきますので御了承願います。
    それでは、以下の議事の運営は岡村会長にお願いします。どうぞよろしくお願いいたします。
  • 岡村会長  わかりました。それでは、引き続きまして議事を進行してまいりたいと思います。
    本日は、「平成19年度中小企業の動向に関する年次報告」(案)についてご報告いただきますとともに、「平成20年度において講じようとする中小企業施策」(案)についてもご審議をいただくことになっております。なお、「平成19年度中小企業の動向に関する年次報告」(案)及び「平成20年度において講じようとする中小企業施策」(案)は、中小企業基本法に基づいて、政府が国会に提出することとなっております。
    それでは、まず、「平成19年度中小企業の動向に関する年次報告」(案)につきまして、事務局からご説明をお願いします。
  • 川上調査室長  調査室長の川上でございます。私の方から、「平成19年度中小企業の動向に関する年次報告」(案)の内容につきまして御説明させていただきます。お手元の資料でございますと、資料-5から資料-7がこの関連でございます。資料-6、資料-7と製本されているものが本体でございますが、何分400ページ弱にわたる分量になりますので、資料-5の概要に基づきまして御説明をさせていただければと存じます。
    1枚おめくりいただきまして、1ページ目でございます。ここに中小企業白書の全体概要をお示ししてございます。全体で3部構成になってございます。
    第1部は「2007年度における中小企業の動向」ということで、この1年間の景気全体の状況の中で、中小企業の景気の動向を分析してございます。この1年間、先ほどもご説明ございましたように、原油価格・原材料価格の高騰や住宅着工件数の落ち込み、金融市場の変動でございますとか、色々中小企業をめぐる環境の変化がございました。そういった中で、中小企業の景況が悪化している、厳しさを増しているといったところを分析させていただいております。
    併せて、やや構造的な話にもなりますが、中小企業の生産活動等、どちらかといいますと、国内の内需に相対的に依存したものであるといったことから、中小企業の中でも業種別のばらつき、そういったものに伴いまして、地域ごとへの立地状況を反映した形での地域ごとのばらつきといったものが依然として生じているというところを指摘してございます。
    第2部、第3部ということでテーマに関しまして分析をさせていただいております。
    第2部は「中小企業の生産性の向上に向けて」ということで4点ばかり分析させていただいております。
    まず、第1点目でございますが、いわゆる「労働生産性の現状」ということで、中小企業と大企業等の生産性の比較、そういったことから導かれるであろうインプリケーションというものをお示ししてございます。
    それから「サービス産業の課題」ということで、我が国の産業の相当なシェアを占めますサービス産業に関しまして分析をしてございます。
    それから、ややツールといいますか、生産性向上に向けて活用の方策ということで2点ばかりテーマをお示しさせていただいております。1点目、「ITの活用」ということで、中小企業がITを活用する上でのボトルネック、併せてITを活用することによる効果というものもお示しさせていただいております。
    それから、「グローバル化への対応」ということで、輸出ですとか海外展開、こういったものを通じまして生産性の向上、中小企業が直面する課題といったようなものも示させていただいております。
    それから、第3部は「地域経済と中小企業の活性化」ということで、地域経済、地域という点に着目いたしまして3つばかりテーマを選ばせていただいております。
    1点目は開廃業の動向に着目いたしまして、今回新しく統計がアップデートされたものですので、白書の中でお示しさせていただいております。併せて地域ごとの開業の状況といったものの中から、いわゆる地域といいますか、地方圏の厳しい状況、そういった中での事業再生、また、地域経済を支えます小規模企業の活性化に向けた課題といったようなものを示させていただいております。
    それから、地域金融、中小企業金融の機能強化といったところで、担保や保証に過度に依存しない融資を進める上での金融機関のみならず中小企業サイドにも関係します課題といったようなものをお示しさせていただいております。
    最後に、中小企業のネットワーク形成ということで、様々な異業種との連携や産学官、施策としても取り組んでいこうと思っております農商工の連携、それから、商店街等をめぐる連携といったものを事例とともにお示しをさせていただいております。
    早速ですが、第1部ということで、2ページ目をお開きいただけますでしょうか。「2007年度における中小企業の動向」ということで、まず全体の景気動向の確認でございますが、このところ足踏み状態にあるという厳しい状況にございます。
    それから、先ほどご説明申し上げましたような原油価格の高騰や、住宅着工件数、マイナス幅は段々縮小してきてまいりますけれども、昨年の夏場以降大きな落ち込みがございました。そういったようなことを確認させていただいております。
    そういった中で、3ページ目になりますが、中小企業におきましては、原油価格の上昇というところで収益を圧迫されている。それから、価格転嫁の状況を見てみますと非常に困難な状況になってございます。
    3ページ目の下、中小企業の業況感というものが足下で悪化をしているという状況でございます。
    4ページ目をおめくりいただきます。そういった中で今回の景気回復局面、従来から言われておるところですが、大企業の収益は増加している一方で、中小企業の収益が伸び悩んでおりまして、差が拡大傾向にあるという状況にございます。
    それから、中段のいろいろグラフで線を書いてございますが、資金繰り関連の指標を見てみましても、2001年、2002年ごろと比べると同じような状況ということでは全くございませんけれども、昨年に入りましてから資金繰りの状況もやや弱含んでいるという状況にございます。
    併せて雇用関係を見てみましても、雇用の逼迫感というものは依然としてあるのですが、右側のところ、新規求人の推移を見てみますと、規模の小さい企業におきまして新規求人数をやや絞っているというような状況になってございます。
    5ページ目をおめくりいただきます。
    今回のいわゆる景気回復の局面は、消費が伸び悩んでいたというところに1つの特徴があるわけでございますが、上段の左でございますが、それぞれの内需・外需の需要項目が1単位増えたときの大企業と中小企業のいわゆる生産の誘発を見てみますと、一番右の輸出ですとか設備投資、こういったところは大企業の方が高いわけでございますが、民間消費支出こういったところは大企業に比べて中小企業の方が高いということでございまして、内需と外需ということで申し上げますと、消費を中心とした内需に依存をしているというような姿かと思われます。
    そういった中で、中段、下段でございますが、中小企業の中でも業種別に見てみますと、いわゆる製造業の中での加工・組み立て型の業種が相対的ではございますが、業況感が比較的よい。一方で建設、小売、サービスといったようなところは業況が相対的に悪いというような状況にございます。
    有効求人倍率の都道府県間のばらつきを見てみましても、機械関連型産業の立地の割合が比較的高いというようなところにおきましては、比較的有効求人倍率が高い。青いところが低い地域でございますが、そうでない地域は有効求人倍率も低いというような状況になってございます。
    6ページ目をおめくりいただきます。「中小企業の生産性の向上に向けて」というテーマでございます。
    6ページ目は全体の確認的なところを記させていただいてございますが、将来人口が減っていく中で、労働力人口も減っていくわけでございます。そういった中で持続的な経済成長を行っていく上では労働生産性の向上が必要不可欠というところでございます。
    あと、よく色々なところで議論がなされておりますが、諸外国と比べた労働生産性といったところで見てみましても、日本はアメリカの7割程度ということで、国際的に見ましても必ずしも労働生産性は高くない状況にございます。
    7ページ目をお開きいただきます。中小企業と大企業の労働生産性の水準を主な業種ごとに比較分析をさせていただいてございます。橙色が大企業で黄色が中小企業でございます。総じて大企業に比べて中小企業の労働生産性の水準は低いわけですが、その中でも小売業、飲食・宿泊業といったところが低いというようなことで、これは定量的な分析で出てまいるところでございます。
    これを要因分解してみたのが下段のところです。
    左側をご覧いただきますと、資本装備率というものがございまして、これで大企業と中小企業を見てみますと差が出ております。資本の生産性ということで見てみますとあまり差がございません。そういったところからしまして、こういった水準の差というものは資本装備率の差ということでほとんど説明できるかということで考えてございます。
    そういった中で中小企業が資本装備率を引き上げると、大企業並みに引き上げるのはなかなか難しいので、例えばITということでいいますと、不足しているような部分を補っていくというのは1つあるかと思いますが、後ほど出てまいりますような必ずしも資本装備ということには結びつかなくても、SaaS・ASPといったような技術を活用しまして、IT資本を導入したのと同じような効果が得られる技術もございますので、そういったものの活用も1つインプリケーションとして出てくるのでないかと考えられるところでございます。
    8ページ目をお開きいただきます。
    7ページ目は水準でございましたが、8ページ目は伸びについて見てみたものです。状況としましては同じような状況でございます。
    伸び率を要因分解いたしましたのが下段のグラフでございます。橙色が付加価値、例えば売上や利益が伸びたという部分です。黄色い部分が労働投入量を減少させたということで生産性が高まっているというものでございます。例えば中小企業で小売業、飲食、宿泊といったようなところを見てみますと、伸びを牽引しているのが労働投入量の減少というところでございます。そういった中でもちろん効率化していくことは重要なわけですが、いわゆる付加価値を増やすといいますか、分子を増やして生産性を上げていくと、こういったような取組も重要であると考えられるところでございます。
    9ページ目をお開きいただきます。
    次にサービス産業に関する分析ということで、9ページ目にお示ししておりますのは、これも全体概要でございますが、就業者数、企業の数を見ましてもサービス産業の割合が高まってきている状況にございます。それから、サービス産業といいましても色々な業種がございます。こういった業種につきまして、それぞれ生産性の高い企業、あまり高くない企業の分布を見てみますと、情報通信、卸売、対事業所向けサービスといったような業種におきまして、相対的に労働生産性の高い企業が多くございます。業種ごとの比較といいましても、例えば市場の需給関係でございますとか、あと顧客に応じてどれだけカスタマイズした商品、サービスを提供するかといったようなことによりましても、いわゆる生産性は変わってまいりますので、一概に業種ごとの比較は難しいかと存じますが、今まであまり事実関係としてお示ししたことがなかったものですので、ここにお示しをさせていただいてございます。
    資料の10ページ目でございます。〈サービスの付加価値向上に向けた取組〉ということで、経営者の意識も含めましてアンケートを使いまして分析をさせていただいてございます。
    これまでの取組につきましては、どちらかといいますと、規模を拡大するというところを重視しているわけですが、今後の戦略といたしましては顧客単価を上げる、付加価値を増やしていくところに意識はあるようでございます。
    そういった中で、顧客ニーズや満足度というものをいかに把握をしてサービスに対する不満やトラブルを減らしていくかというところが課題になってまいるわけでございますが、下段の円グラフと棒グラフをつけたものですが、事業所向けサービス、消費者向けサービスとそれぞれ聞いてみますと、過去3年間で、例えば対消費者向けサービスですと、3分の2の企業につきましては不満というものを受けているというところでございます。不満の内訳というものを見てみますと、当然ながら顧客が期待する水準にサービスの質が達しなかったというものがあるわけでございますが、また品質にばらつきがあったというところも比較高く回答として上がってきているところでございます。顧客のニーズを踏まえながらいかに安定した品質のサービスを提供していくかというのが1つの課題になるのではないかと考えられるところでございます。
    資料の11ページ目でございます。
    どちらかといいますと、事業環境、取引環境に関連した部分でございますが、良いサービスを提供しても価格に反映できないというようなことがあり得るのではないかということで見てみたものでございます。上段のグラフを見ると、右側の4分の1程度が価格に反映できていないという回答でございます。
    そういった中でどういった取組が必要かというところでアンケートで聞いてみますと、顧客への説明の強化といいますか、顧客に商品の内容を理解してもらうというものは当然高いわけでございますけれども、例えば事業者向けサービス、右側の細かいグラフが並んでおりますが、点線で囲っております運輸業のところを見てみますと、業界の慣行や関連の是正というところが高く出ております。いわゆる燃料が高騰している中でサーチャージ制の料金体系をなかなか導入してもらえないとか、運賃が距離制になっているといったような色々な業界の慣行があるわけですが、そういったようなものを是正していくと、取引環境を整備していくというのも1つの課題だと考えられるところでございます。
    下段でございますが、〈効率化に向けた取組〉も重要なわけでございまして、業務プロセスを見直していくといったようなことを通じまして効率的な生産、サービスの提供というものを行っているような企業の事例もあるわけでございます。
    12ページ目をお開きいただきます。サービス産業の中でもう一つの課題として人材面に着目してみたものでございます。
    97年度から第二次産業よりも第三次産業の方が平均給与が低くなっている。逆転しているという現象がずっと続いております。これの原因といたしましては非正規雇用者の比率が高まっているというところが主な原因になっております。
    一方で中段でございますが、正規雇用者につきましても、3年間で企業のどのくらいの割合の職員が離職していくかというものを見てみたものですが、7割以上離職するといったような企業も結構あるわけでございます。そういった意味でこのサービス産業におきまして人的資本の蓄積がなかなか進んでいないと、そういったような恐れも見てとれるわけでございます。
    そういった中で、企業がどのような取組を行っているのかということでございますが、下段の左、「組織・人材マネジメントに関する取組」というもので見てみますと、人材の育成やモチベーションをいかに向上させるかといったような取組はあまり高くはないというアンケートの結果になってございまして、そういった意味でもよりこういった分野の取組が必要になってくるかということが示唆されるわけでございます。
    13ページ目以降がツール面に着目いたしまして、まずITの活用という点につきまして分析しました。下段でございますが、中小企業のパソコンの装備状況とソフトウェアの残高を見てみたものでございます。左、横棒グラフがいろいろ並んでおりまして、規模の小さい企業の方がパソコンの従業員当たりの装備状況が低い状況になってございます。
    右側の折れ線グラフは、総資産に占めるソフトウェアの残高というものでございまして、これを見てみますと、下の方に2つ線が張りついてございますが、これが中小企業の製造業、非製造業ということで、ソフトウェアの残高も低いということでございます。ハードだけではなくてソフトの導入状況も低いということで、導入したITを活用しきれていないという懸念があるわけでございます。
    14ページ目をお開きいただきます。
    課題につきまして見てみたものが上段でございます。中小企業におけるITの投資、活用における課題は自社に適したIT人材が不足しているとか、あと設備投資にかかるコストの負担というものが高く出ているところです。
    いわゆるシステムエンジニア、情報システム会社の充足度を見てみたものが真ん中の横棒グラフでございます。大都市圏にこういった職種が集中しております関係もございまして、やはり地方圏に行くほど黄色い部分が増えているかと思いますけれども、不足しているというような状況でございます。そういった中で、先ほど御説明しましたような必ずしも自社でシステムを導入しなくても、サーバーにつなぐことによって実質的にITのシステムが構築できるような技術の有効活用というものは1つ方策としてあるのではないかと思われるところでございます。
    それから「ITの活用による効果」というものでございます。中小企業の場合、業務プロセスの効率化やコストの削減といったようなところを大きく効果として見ているわけですが、売上の拡大というところはあまり意識としては高く出てこない結果になっております。
    ページをおめくりいただきまして15ページ目でございますが、実際に取引先がどのように変化したかというのを見てみたものですが、上段の横棒グラフでございますが、真ん中の販売先数の変化というもので変わらない割合が高いわけでございますが、減ったところよりも、圧倒的に増加した、大幅に増加したという部分が多くなっておりまして、そういった意味で取引先の数が増えている。それから増えた取引先について見ましても、国内全域でありますとか、国内・海外問わずということで、日本全国的に取引先が広まっていくというような効果、こういった効果も実際は上がっているということでございます。
    事例にいろいろございますが、ホームページの開設やメールの活用といったことで売上が伸びているといった事例も結構あります。
    それから、16ページ目、グローバル化ということでございまして、中小企業をめぐるグローバル化の状況を確認的にお示ししたものでございます。
    我が国の輸出入増加しておるわけですが、アジアを中心に増加をしてございます。
    それから、中段の左でございますが、中小企業の売上高に占める輸出の比率もここ数年で徐々にではありますが、高まってきているという状況でございます。
    これは我が国全体ではございますが、サービスの貿易につきましても、ここ数年で増加をしているというような状況にございます。
    17ページ目をお開きいただきます。
    まずグローバル化の1つの方策としまして、輸出に関して見ますと、上段の左でございますが、輸出を行っている企業と行っていない企業の労働生産性の比較をしたものです。輸出を行っている企業が高いという関係になってございます。相関関係ということで、因果関係まできちんと学術的に示せるものでは必ずしもございませんが、上段の右側でアンケートによりまして、輸出によって付加価値が増えたかどうかというのを確認してみましても、4割程度が増えているというところでプラスの効果が確認できるのではないかということで考えておるところでございます。
    中段ですが、中小企業が輸出をするというところでの課題を見てみたものでございます。左側の「輸出希望企業の課題」というものを見てみますと、優秀なパートナーの確保、現地のニーズの把握といったところが高く出ているわけでございます。中小企業の場合、これは必ずしもスケールメリットと申しますか、生産の規模が拡大することによってコストが相対的に下がっていくことだけではなくて、いわゆる現地マーケットをつなぐ優秀なパートナーを確保いたしまして、競合関係がない現地マーケットで高い付加価値を認めてもらって輸出に結びつけるといったような効果があるのではないかと考えてございます。
    17ページ目の下段、今度は海外展開でございますけれども、中小企業が現地に、これは法人企業に関してでございますが、現地に子会社、関連会社を有している企業が日本全国で7,500社ぐらい確認できているところでございます。中小企業のうち非製造業というものもそれなりに進出をしているところでございます。
    それから、18ページ目、これは輸出と同じような手法の分析ですが、労働生産性、国内部門の労働生産性を見ましても同様の結果が出てございます。
    中段でございますけれども、海外展開に伴う国内部門の影響を見てみましても、8割ぐらいの企業におきましては、生産活動に変化がない、もしくは高付加価値な部門にシフトをしているといったところでございまして、いわゆる縮小均衡的な活動は行っていないというところで前向きなグローバル化が進んでいるのではないかと考えられるところでございます。
    それから、19ページ目をおめくりいただきます。
    第3部「地域経済と中小企業の活性化」というところでございまして、まず事業所企業統計に基づきまして開廃業の状況を分析させていただいてございます。2006年の事業所企業統計が公表されまして、それに基づきまして再編加工を行ってお示しさせてございます。上段の折れ線グループと棒グラフですが、開廃業率を見てみますと、廃業率につきましては6%台ということで引き続き高い水準で推移をしてございますが、橙色の開業率につきましては、01~04年が3.5%というところが5.1%ということで上昇をしてございます。景気の回復局面であったというようなことも1つあるかと存じますが、最低資本金特例の施策など、同時期に色々と創業支援策を講じてまいりましたので、若干ではございますけれども、開業率を引き上げる要因にはなったのではないかと考えられるところでございます。
    右側ですが、中小企業の数というところでございます。一番右側ですが、再編で推計いたしますと、420万社ということになります。下段でございますが、開廃業を業種別に見てみた場合でございますが、情報通信、医療、福祉、こういったようなところが高くなっているところが確認できます。
    これを地域別に見てみましたものが20ページでございます。
    都道府県別の開廃業率、総じて三大都市圏等々が高いわけでございますが、開業率と廃業率というものも相関関係があるわけでございます。中段の日本地図ですが、県庁所在地とそれ以外の市町村ということで各都道府県別に開業率を分解してみたものですが、人とか企業が集まっている県庁所在地のところで開業率が高くなっている。右側のちょっと薄めの赤い日本地図ですが、これがその他の市町村ということで開業率は相対的に低い状況でございます。
    下段の青い日本地図ですが、事業所の数の変化を見てみたものでございます。左側は県庁所在地でございますが、青色が減っている部分でございますが、減っていないところ、減っているところ相半ば見られるところでございますが、右側のその他の市町村といったところをご覧いただきますと、ほとんどのところで事業所の数が減少しているというような、いわゆる地方圏で厳しい状況にあるのではないかと推察できるところでございます。
    21ページ目でございますが、そういった中で事業再生につきまして確認的に分析をさせていただいてございます。
    過去3年程度で経営が困難になったことがあるかどうかというものを中小企業にアンケートで聞いてみますと、4社に1社が「とても困難に感じたことがあった」というような回答になってございます。
    そういった際にどういった主体に相談をされたかどうかというものを聞いてみますと、役員、家族、公認会計士、取引金融機関といったようなところが相対的に多くなっています。
    中小企業再生支援協議会の実績は着実に上がってきているわけでございますけれども、真ん中のグラフで見てみますと、まだまだ相談先としましては低い状況にございまして、一層の活用が期待されるというところでございます。
    22ページ目でございます。小規模企業の実態につきまして簡単に見てみたものでございます。
    上段ですが、経営の意識というところでみますと、雇用の場の提供といったところが割合としては高いです。一方で中段の幾何学的グラフが並んでいるところでございますけれども、売上高経常利益率を低い方から高い方に並べて見てみたものですが、上位2割ぐらいの層につきましては、いわゆる小規模企業の方が利益率が高いというような状況でございまして、小規模企業といいましても、こういった高収益を上げているものもきちんと存在するというところでございます。小規模企業が考える強み、弱みを聞いてみますと、少数精鋭のノウハウ、対応の柔軟性といったようなところが強みとして出てまいるわけでございますが、設備投資ですとか、資金調達、こういったところにつきましては弱みというところで相対的に出てまいります。こういった強みを活かして弱みを補完していくといったような施策・取組も示唆されてございます。
    23ページからが地域金融に関してでございます。
    いわゆる地域金融機関の不良債権処理は、真ん中の日本地図でお示しさせていただきますとおり、ここ数年で進展してきてございます。
    一方で、一番下の日本地図でございますが、いわゆる預金に対する貸出しの比率を見てみた場合、これも下がってきております。貸し手、借り手双方の原因はあろうかと思いますが、地域で集めたお金を十分に投資をできていないというようなことも懸念される、そういった状況にあるわけでございます。
    24ページ目はそういった中でエクイティの役割を見てみたものです。
    地域金融機関によりましては、ファンドの組成等を積極的に行って地域の中小企業の活性化というものを積極的に施策として講じている、そういったような金融機関も結構見られます。そういった中で、中小企業の場合、全体として見ますと、同族経営、同族企業は結構ございまして、そういった中で、全体として、もちろんIPO(株式公開)こういったものを志向する企業におきましては需要はあるわけですが、やはり全体として見ますと、まだ間接金融による依存度というのは圧倒的に高いわけでございます。
    そういった中で、25ページ目をお開きいただきます。
    中小企業が金融機関に求めている取組サービスといったところで、いわゆるメガバンクで比較してみたものです。上段の右でございますが、担保条件の柔軟さというものが地域金融機関、要望・ニーズとして高く出ているわけでございます。
    一方で中段のグラフですが、今度地域金融機関側に確認いたしますと、やはりまだ目利き能力というものが足らないと、こういったものを高めていくというものを課題として認識しているわけでございます。
    下段のところでございますけれども、資金調達手法といたしまして、いろいろと新しい資金調達手法が出来てきてございますけれども、中小企業におきます認知度というものはそれなりに高まってきているという状況にございまして、こういった一層の普及というものが期待されるわけでございます。
    26ページ目でございますが、いわゆる担保・保証に過度に依存しない融資を進めていく上での中小企業側の課題ということでございますけれども、いわゆる情報開示という観点から確認してみたものでございます。
    決算書におきましては、ほとんどの中小企業が金融機関に開示しているわけですが、それ以外の事業計画等につきましてはまだ低いという状況でございます。情報開示のメリット・デメリットというものがそれぞれございまして、デメリットといたしましては、作成の時間がかかる、色々なノウハウ、コストがかかるといったような部分が挙げられているところでございます。そういったものをいろいろと補完していくような政策も1つ示唆されるわけでございます。
    27ページ目をお開きいただきます。いわゆるネットワーク、つながりに関係いたしまして分析をしたものでございます。
    上段、右でございますが、業種によりまして、建設は共同受注、製造業ですと研究開発等いろいろ中身は異なりますけれども、中小企業における業種の連携は進んできておるわけでございます。
    中段でございますが、連携の相手先の所在地を右側の黄色いグラフで並べておりますが、同一の地域内というのは高いわけですが、隣接しない都道府県、海外というものも一定程度ございまして、取引関係が広がっているというものが確認できるかと思います。
    連携する際の課題といたしましては、実績がないところにおきましては最適な相手をいかに見つけるかというところで、そういったものを仲介する機能というものが求められるわけでございます。
    28ページ目、産学連携におきまして分析をしてみたものでございます。
    大学と中小企業の連携におきましては進展してきてございます。上段のグラフでございますが、人材の受入、インターンの派遣といったものも一定程度でございますが、進んできてございます。
    そういった中で、連携を進めていく上での仲介者としてどういった機能が求められるかということでございますが、中段のグラフの右側でございますが、連携実績がないところにおきましては、やはり商工会、商工会議所等に対する期待というものが高いわけでございます。
    29ページ目、農商工連携の関係で分析をしてみたものでございます。
    中小製造業における食品加工業の付加価値の比率というものを日本地図で示しておりますが、当然のことながら地方圏が高いという状況でございます。
    一方で、消費者向けに対して聞いてみますと、地域名が付されていることに対する優位性というものがどこにあるかということでございますが、圧倒的に安全・安心というものが高く挙がってきておるわけでございます。
    中小の食品加工業の方々に聞いてみますと、下段の左のグラフでございますが、6割ぐらいの企業におきましては積極的に機会があれば取り組みたいということで高い回答をいただいてございます。
    最後のページ、30ページ目でございますが、商業の関係で分析をさせていただいたものでございます。
    昨年の中小企業白書でも若干触れさせていただいてございますが、地域住民、地域の行政が商店街に求めるサービスというようなところで見ますと、高齢者福祉、児童福祉というサービスが比較的高いわけでございます。
    一方で、商店街の活動の取組といたしましては、アーケードの整備、イベントが割合としては高くなっているわけでございますが、こういった中でNPOと商店街の連携も進みつつございます。
    NPOに聞いてみますと、下段の左ですが、1割強ぐらいのNPOが商店街と連携をしている。将来的には倍以上のNPOが連携を期待しているというところでございます。実際に空き店舗等を活用しまして、NPOが入りまして地域のにぎわいというものを取り戻していくというような成功的な事例もあるわけでございまして、そういった連携が期待されるところでございます。
    動向(案)の概要、以上でございます。
  • 岡村会長  ありがとうございました。
    それでは、続いて「平成20年度において講じようとする中小企業施策」(案)について、また事務局から御説明をお願いします。
  • 数井参事官  お手元にございます資料-8と書いてあります資料をご覧いただけますでしょうか。平成20年度に講じようとしております中小企業施策のポイントを御説明させていただきます。
    右の下にページございますが、2ページをご覧いただけますでしょうか。
    平成20年度におきましては、私ども中小企業庁といたしまして3本の柱に整理いたしまして施策を講じたいと思っております。
    1つが中小企業の「付加価値の創造」の支援策、もう一点が中小企業の「経営力の向上」のための施策。それから、下に書いてありますのが、中小企業をめぐる種々の「事業環境の整備」、この3点の施策を進めたいと思っております。
    代表的な施策についてポイントを絞って御説明させていただきます。4ページ、2枚ほどめくっていただきますと農商工連携の資料がございます。
    農商工連携、既にお聞き及びかと思いますが、右下に書いてございますように、例えば製粉業者、製麺業者と地元の小麦の生産農家が連携いたしまして非常に付加価値性の高い、要するに消費者から求められるような新しいタイプの麺を開発し地元のブランドを築いていくと、こういった農林水産漁業と商業、工業が連携して新しい市場を開拓すると、こういったものを農商工連携として私ども強く次年度に推進したいと思っております。
    そのために4ページに書いてございますように、農商工連携そのものについての支援策、キャンペーン、PR策、それから、この農商工連携を支援するために新商品の開発、販売促進の取組支援、関連の立地促進などを内容とした農商工関係の関連2法を今国会に提出しておるわけでございます。
    5ページが農商工連携を進めますための必要な関連予算、約100億円ほど20年度は用意させていただいております。
    次の施策が6ページにございますが、中小企業の地域資源活用プログラムでございます。
    これはそれぞれ日本の各地域にあります地域資源、これは産地の技術、地域の農産品、観光資源、こういったものを活用いたしまして、中小企業が新商品あるいは新サービスの開発を進めると、こういった考え方を「地域資源活用プログラム」として、これを支援する施策を既に講じております。これを20年度も引き続き強力に推進したいと思っております。
    具体的には下にございますように、地域におけます推進の窓口、あるいは支援のためのネットワーク、さらにはサポーター、関連するファンドをつくる、こういったものを含めまして、真ん中の流れ図にございますように、既に昨年つくっております法律に基づきまして、この地域資源の関係のプログラムを支援したいと思っております。
    7ページが具体的な地域資源の例でございます。
    右上にございますが、3月6日現在で既に299、実は27日、今月の末では328の具体的な事業計画が既に認定されておりまして、日本各地でこのプログラムに従いまして、それぞれの産地の強みを活かした新商品の開発が進められていると理解しております。次年度もこれを強力に推進と思っております。
    8ページが新現役チャレンジプランでございます。
    この絵の左側にありますように、間もなく団塊の世代の方々が第一線を退かれるわけでありますが、この方々が自分の生活費を補うだけではなくて、技術、経験を伝えたいというお考えをお持ちでございますが、一方、右側の中小企業がなかなかこういった方々とのコンタクトのチャネルがないという現状がございますので、真ん中にありますように、県内だけではなく全国レベルで中小企業のニーズ、それから新現役の方々のシーズ、これをつなぎまして新しい新現役の方々の活躍の場をうまくマッチングしていきたいと考えておりますのが新現役チャレンジプランでございまして、平成20年度この事業を推進したいと考えてございます。
    次が経営力の向上でございます。
    10ページをご覧いただきますと「地域力連携拠点の支援の流れ」がございます。これは地域力連携拠点、おおむね日本全体で約300程度の地域力連携のための拠点を設けまして、そちらにコーディネーターの方々をご活躍いただいて色々な専門の人材、それから中小企業の経営診断によります問題点の把握、こういったものを通じて中小企業の経営戦略の立案、その後、IT化、あるいは販路拡大、事業転換、を支援したいと思っております。
    その際、特に右下にありますように、国の支援策として政府系金融機関、と連携いたしまして、中小企業の自己診断、問題点の把握ができました場合に、金融を円滑化することによりこういった支援をより一層進めたいと考えております。
    11ページが事業承継の支援でございます。こちらは現在、先ほどの農商工連携と同じように、今国会に法律を提案しておりますが、黄色の欄に書いてございますように、本年おおむね秋を想定しておりますが、以降、経済産業大臣の認定を受けた場合に、非上場中小企業の株式の課税価格の8割を納税猶予する、こういった施策を中心といたしまして、民法の特例等も含めまして事業の承継を円滑化するべく施策を講じたいと思っております。
    3番目の大きな括りが中小企業の事業環境の整備でございます。
    13ページの左側にございますように、金融をめぐる環境として課題がいくつかございますが、1つは手形が大幅に減少している現在、中小企業の売掛債権というものが増加しておりますが、これを早期現金化するニーズが高まっています。あるいは中小企業の再生支援のニーズが高まっている。こういう点を踏まえまして、金融関係の三法、右に書いてあります法律の改正を今国会で提案しているところでございます。
    具体的には2枚めくっていただきまして15ページをご覧いただきますと、真ん中に一括決済型の納入企業と書いてございますが、こちらの中小企業は、左側の支払いしていただく中小企業に物を納めますけれども、現在手形という形ではなくて売掛債権という形で、後々お金が支払われる権利を納入企業は持つわけです。これを金融機関が買い取って売掛金の期日到来以前に現金化する、こういったことを円滑化するために、その個別支払企業の信用を見てそれを保証するという保証協会の機能を拡充したいと思っております。
    右側がプール型で、この施策を講ずる場合の中小企業金融公庫法の一部改正による機能の拡充でございます。
    そのほか16ページに再生支援のケースもございます。
    これは債権者の数が非常に多い場合、メイン行以外に債権者が多くて再生が進みづらいような場合に地域におけます信用保証協会が権利を買い取りまして、それによる中小企業の再生を進めたいと、こういったことも考えておるわけでございます。
    そのほか、17ページに予約保証制度の創設も20年度に進めたいと思っております。
    これは右側の下にグラフございますが、現在の保証制度ですと、保証契約を締結すると実際の借り入れがなくても通常の料率で保証料を支払わなければならないわけですが、これを保証制度というものを講じまして実際の借り入れがなされる以前は比較的低額の保証料で保証を予約することができる、こういったことをするように施策を講じたいと思っております。
    18ページご覧いただきますと、下請取引の適正化でございます。
    既に19年度から、右側にございますように、取締りの強化、ガイドラインの策定、拡大といったものを進めておりますが、特に20年度は「下請かけこみ寺」と申します下請関係の各種相談への対応、こういったことをする拠点を全国各地に設けまして、下請の方々の幅広い相談に乗っていくような体制を講じたいと考えてございます。
    最後が20ページご覧いただきますと、中小企業の再生支援協議会の機能強化でございます。
    既に全国の各都道府県に中小企業の再生支援協議会がございますが、平成20年度は全国本部の活動を強化いたしまして、人数を増やすと同時にデータベースを整備いたしまして、各地域の支援の取組をサポートしたいと思っております。
    また、各地域におきます再生支援協議会の常駐専門家を拡充いたしまして、迅速な再生支援をできる体制を構築したい、こういったことを考えております。
    以上、中小企業施策の20年度のポイントであります付加価値の創造、経営力の向上、事業環境の整備のポイントなる施策の御説明をさせていただきました。
  • 岡村会長  ありがとうございました。今、19年度の年次報告と20年度の施策についての説明がございました。ここでしばらく時間をいただきまして、皆様方の御質問、御意見をお受けしたいと思います。大変たくさん御発言いただけると思いますが、お一人様の発言を申し訳ございませんが、2分以内ということにさせていただいて、手短な御質問をお願いしたいと思います。挙手をいただければ、こちらから御指名いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  • 村本委員  成城大学の村本と申しますけれども、大変興味深い分析をしていただき、特に労働生産性の分析は大変興味深くて、これからITの投資が必要であると。IT投資が必要であるがゆえにその分野での拡充ということだと思うのですが、ITの分野、ただパソコンを置けていってもなかなかうまくいかないわけですから、例えばe-Taxのような納税等の問題、あるいはこれから普及するであろう電子手形でしょうか、そういう電子記録債権のようなこととリンクするような、そういう施策までいくことが必要ではないかということをちょっと感じました。これは印象でございます。
    データで二、三、これをコメントと受けとめていただければいいのですが、3ページのところで、中小企業の業況感の問題で、直近のところまで拾って大変下がってきていて、過去の悪いところと似てきている、悪化しているということなのですけれども、左側に日銀短観がございます。明日、日銀短観が発表されますが、恐らく悪いだろうと思いますが、日銀短観の中小企業というのは、資本金が2,000万円以上、かなり大きなところでございます。したがって、その動きを見ると、右側のデータが早く下がり始めている。少なくとも1年ぐらい前から中小企業基盤整備機構のデータが下がっておりますが、この辺の見方をどう考えたらいいということをぜひ深堀していただけないだろうかなというのが1つでございます。
    それから、もう一つ、開業率・廃業率についてここのところずっとフォローしていただいておりまして、大変丁寧な分析なのですが、例えば19ページのところの開廃業率で開業率が高まっているという分析がございます。これは本文のところの図表にはあるのですけれども、有雇用企業といいますか、従業員を雇っている企業の場合には、既に開業率の方が上回っている状況になってきておりますが、この辺をどう考えていったらいいのかということですね。あるいはその廃業というのは、実はある特殊なところに重なっているのではないかという問題があると思いますので、その辺の分析をよりしていただけるとありがたい。
    質問が1点ございまして、24~25ページのところで、リレーションシップバンキングの問題について触れておられて、中小企業に対する貸出しが必ずしも伸びてない。あるいは十分な目利きが行われていないというような分析がございますが、この辺はリレーションシップバンキングのいわば評価としてどのようにとらえたらいいか。もう少し頑張るべきであるとか、これは恒久化されたわけですが、どういう形でもっていったらいいか、その辺のサゼッションみたいなものがもしあれば教えてください。
    以上でございます。
  • 岡村会長  ありがとうございました。あと2~3人の方から御意見伺った後、まとめて、お答えいただけますか。
  • 鹿住委員  高千穂大学の鹿住でございます。中小企業の労働生産性についての分析を深堀された点は非常に評価できると思うのですが、ただ、そこから出てくる結果をどう解釈するか、あるいはどう政策に活かすかというところで多少意見がございます。
    具体的には資料-6の19ページのところ、中のデータ分析で、労働生産性の高い企業は、終身雇用とか年功序列型の賃金体系をとっている企業が多いと出ておりまして、そうしますと、これはもともと労働生産性が高い企業が高い賃金を出して、だからいい人材が採用できる、あるいは定着が図られると。さらに人材の質が高まって付加価値の高いサービスを提供できるという、プラスのスパイラルが働いているのかなと思うのですが、逆に労働生産性の低い企業は賃金も高く払えない。御存知のとおり、中小企業の労働分配率は大企業より高い水準ですので、これ以上高く払えない。そうすると賃金が安いのですぐやめる、あるいは質の高い人材が採れない。さらに製品サービスの付加価値下がるというような負のスパイラルに陥ってしまっているところが多いと思うのです。では、その負のスパイラルに陥っている企業をどうやって引き上げていくか、どういう対策をとれば引き上げられるのかというところが政策として求められることかなと思うのですね。
    そう言うと、来年度の政策の中で、人材面のところが大企業の再チャレンジ人材というのだけではどうかなと。既に中小企業基盤整備機構で、中小企業大学校で人材育成やっていますが、ただ、厚生労働省とのデマケーションでどうしても中小企業の従業員に対する研修はなかなかできない。その辺は厚生労働省と連携していくか、もしくはもっと厚労省ができない中小企業のニーズに合った、例えば出前講義、出前セミナーのような形で新たな人材育成政策というのもあるべきなのではないかと思います。
    もう一点、質問なのですが、今の点で、実は図表編の21ページに、各国の労働時間当たりGDPというのが一覧表になっているんですね。ここで労働時間当たりGDPが高い企業、例えばアメリカは100としていますが、オランダも同じぐらい。ちょっとほかの国はよく存じ上げないのですが、オランダなどはワークシェアリングが非常に進んでいる国ですし、アメリカなども必ずしも年功序列あるいは終身雇用というスタイルがないと思うんですね。
    そうしますと、こういう諸外国では労働生産性の高い企業はどのような雇用形態、あるいは賃金体系をとっているのか。それと日本と比較して日本だけが特殊なのか、それとも一般的に年功序列あるいは終身雇用というのが労働生産性の向上、人材の育成にプラスなのかという点をもし御存じでしたら教えていただきたいと思います。
    以上です。
  • 小松委員  小松でございます。IT活用による生産性向上ということになっておりますけれども、これらを活用するためのインフラ整備について少しお話しを伺いたいと思います。例えば首都圏とかは回線が大変スピードのあるものがありますけど、地方においては、いまだにISDNぐらいしかないという、そういうところで、例えば私ども本社から地方工場に色々な資料、生産性を上げるために送るにしても、大変スピードが遅くて、それらを送れないものもあったり、大変複雑な資料は送りにくいとか、そのようになっておりますので、その辺の回線を早く引いていただきたいということをお願いしておりますけど、なかなか進んでおりませんので、その辺の状況をお願いしたいと思っております。
  • 岡村会長  回線をという意味ですね。
  • 小松委員  もっと引いていただきたいです、地方に。
  • 竹岡委員  2点あります。1つは、グローバル化といいまして、資料-5の5ページにも、中小企業と一口で言ってもグローバル化に対応している業種というか、中小企業と、いわゆる内需型と書かれていますが、非グローバル化の中小企業とはかなり差が開いているという、状況が違うということが現実だと思います。グローバル化している中小企業にはもっともっとグローバル化、海外展開とか海外取引機会の増大とかの支援を引き続き強力にお願いしたいと思っていますが、問題はいわゆるグローバル化に恩恵を受けてない内需型と言われているところだと思うのですが、問題は、例えば観光にしても、必ずしも日本の中小企業自身が気が付いてない良さといいますか、例えば非常にアニメーションの分野などでとても今日本のそういうコンテンツとか見直されているとか、そういうことは、みんなが気が付いていないような良さがあるというのが、例えばここで地域資源の活用化というところの施策が、資料-8の7ページ目あたりで出ていますが、新しく地域資源を活用して色々なところに売っていこうというときに、ブランドというところの見せ方、この見せ方をどう工夫するか。これは従来の地域の中小企業はあまり気がついてないのだけれども、外から見るとすごく実は魅力的なところがもしあるのだとすれば、その見せ方をどうするかという支援といいますか、そういうちょっとコンサル的なところを入れると、実はとても日本は魅力的な国になるかもしれなくて、そうしますと、内需型の産業と言われているところもかなり元気になってくるところがあるのではないかというのがまず1点です。
    2点目が地域内のあらゆるリソースの連携というのは今待ったなしだと思っています。つまりこれは中小企業庁なので、ここは中小企業庁の施策ということになるのでしょうが、例えば産学連携にしても、ある地域内で、例えば何々地方とか、色々な地域内で、例えばJSDとか大学側が一生懸命出先機関を持っているというところと、そこは情報発信しているんだけど、受け手の中小企業との連携がとれなくてどうしたらいいかというところがあったりして、今度は中小企業側がどういうところに、どういうような、例えば大学の先生とか、そういうリソースがあるのかとか、そういう情報がないというような状況だと思います。
    資料-8の地域の連携拠点という中でぜひ中小企業庁の施策の中で完結するだけではなく、同じ地域内である他の機関との連携というのも、特に情報の交換、流通というのもぜひ一生懸命やっていただければ大変助かるなと思います。
  • 岡村会長 ありがとうございました。それでは、伊藤委員、どうぞ。
  • 伊藤委員 日本電鍍工業の伊藤と申します。事業継承の問題で、実際に身近に起きていることなんですけれども、非常に中小企業、特にものづくりに携わっているところは継承する人がいないという問題が大きくて、もちろん娘さん、息子さんも個人保証してまでは会社を継ぎたくないという声があります。優秀な従業員がいても、その家族が個人保証させるのを反対することで、やむなく廃業に追い込まれているところも多いと聞きます。
    先日、実際起きた話なのですが、廃業寸前のところにM&Aの話が来まして、ブローカーか何かが間に入ったらしいのですが、これなら事業も安泰ということで、実際売ってみたら相手先が中国の企業で技術を持っていかれてしまったという話があるということを聞きましたので、本当に日本国内の技術を守るためにもそういったシステム、簡単ではないと思いますが、考えていかなければいけないと思います。
  • 岡村会長  ありがとうございました。
    そうするとこの辺で切って、御回答いただけますか。
  • 川上調査室長  いただきました御質問につきまして、動向関係でございますが、御回答させていただきます。最初に、村本委員から御質問のございました、いわゆるリレーションシップバンキング等の関係でございますが、地域金融機関の方といたしまして、目利き能力が引き続き課題ということで出ておりますが、これはいわゆるニワトリと卵と申しますか、中小企業側も情報を提供していく。それを踏まえて地域金融機関もノウハウ、知見を高めていくといったような好循環というものがリレーションシップバンキングの効果を強めていく上での重要な点だと思っておりますので、そういった双方の取組を活かしていきながら、例えば拠点の活用みたいなものを含めまして行っていくというところが1つの方向性かなと思っておるところでございます。
    業況判断のDIのところについて御質問がございましたが、日銀短観は御説明いたしましたように、資本金2,000万円以上の比較的中小企業の中でも規模の大きなところでございます。一方で、グラフの右側につけさせていただきましたものは、中小企業景況調査ということで、シェアの8割ぐらいが小規模企業ということで中小企業の総体全体を一番示すDI調査ということで考えてございますが、そういったところが悪化といいますか、DIが早い段階から厳しくなっているというところで、中小企業庁としましても、そういった動きを慎重に見て注視しているところでございます。
    次に鹿住委員から御指摘のございました労働生産性の関係なのでございますけれども、図表の資料-7の21ページのところで御質問いただきました。これにつきまして、諸外国との比較におきまして生産性の高い国、あまり高くない国とあるのでございますが、雇用形態というのも1つ要因としては重要な点としてあるのだと思いますが、例えばルクセンブルクとかベルギーでございますとか、欧州の比較的小さな国、こういったところはどちらかといいますと、ちょっと白書とは離れますが、いわゆる金融といったような業種で生産性が高くなっている、そういったところが国全体を引き上げているといったようなことでございまして、生産性を引っ張っている業種というものが結構国によってまちまちといいますか、いろいろあるわけでございます。
    そういったところで生産性を高めていく上での、どういった業種の生産性が高いのか、低いのかといったところの国際比較も踏まえながら政策を進めていくというようなことが1つの進め方ではないかと存じます。
    それから、文章編の終身雇用と生産性の関係で御指摘いただきました。ここは委員のおっしゃるとおりでございます。相関関係はお示しさせていただいてございますが、因果関係まできちんと計量的に分析的にできるかというとなかなか難しい分野であることは承知してございます。ここは相関関係ということでお示しをさせていただいているところでございます。
    それから、グローバル化のところにつきましては、竹岡委員から御指摘ございましたけれども、確かにグローバル化している企業としていない企業といいますか、これは業種によっても違うとは存じますけれども、そういったところで対応が政策的に異なるというところは承知をしておるところでございます。ここの第2部の第4章のところにおきましてはグローバル化といったものの生産性との関係といったものをポジティブに示させていただいたところでございますけれども、内需型の業種と中小企業といったところにつきましては、例えば生産性の向上をいかに図っていくかといったようなところも含めまして課題があるものと承知してございます。
    簡単ではございますが、以上でございます。
  • 数井参事官 そのほかの御質問につきましてお答えをさせていただきます。鹿住委員から人材育成につきましての重要性を御指摘いただきました。御指摘のとおりでございまして、私も中小企業の経営資源としての人材は大変重要だと思っております。今日、御紹介いたしました平成20年度の施策のポイントと申しますのは、新たに20年度に講じます施策の重要な点についてのみ記述してございます。御指摘いただいておりますように、既に中小企業基盤整備機構の中小企業大学校におきまして、経営者の方々のいわゆる人材育成の種々なコースを用意しております。こちらにおいては、特に最近力を入れておりますのが、駅前の出張・出前形式の比較的便のいいところでの色々なコース、こういったものも重点に拡充しております。そのほか、技術系の点につきましては、例えば各地にあります高専を使いまして、設備等、教授の方々を使って地域の技術面での人材育成と、こういったものも進めておりまして、人材育成については引き続き20年度でも私ども力を入れて支援したいと思っております。
    それから、竹岡委員からブランドの見せ方の重要性御指摘ありました。これも私ども全く同感でございまして、特に「JAPANブランド」という名称で、各地の持っております資源をいかに組み合わせて海外に売っていくかという施策をこの数年力を入れてやっております。昔よくありましたように、洋食器であると燕とかといったような、世界でもゾーリンゲンの刃物とか、こういったように、地域とブランドがある程度結び付つくような形での地域のブランド化を進めるべくデザイン化、あるいは市場開拓、海外の展示会への出展とこういったものの支援に非常に力を入れてしておるわけでございます。
    また、地域内のあらゆるリソースを使うべきであると、これも非常に私どもいたく痛感しておりまして、御指摘のありました地域力連携拠点においては、地域の色々な支援関連機関、あるいは大学、研究所、そういったものを使いまして中小企業のニーズに応えるべきつなぎを進めたいと。特に我々20年度のキーワードとして「つなぎ力」とか、「つなぎの力」と、こういった地域の中小企業と都会、あるいは大企業と中小企業、国内と海外、こういったところをつなぐことによってリソースの連携を進めたいというふうに考えております。
    また、伊藤委員から事業承継のお話でも御指摘ありました。これは先ほど御説明いたしました11ページにあります事業承継円滑化の法律のときに、この法律そのものには直接結びつかないので御説明を割愛させてしまっておりますが、来年度日本各地に「事業承継支援センター」というものを設けまして、これは既存の組織の中に一部こういったことのできる窓口を設けまして、そこで開廃業のマッチングですとか、あるいは相談、専門家の派遣、企業と後継者の交流会、こういったことを総合的に進めまして、事業承継のためのニーズとシーズ、このマッチングをうまく進めたいということで、具体的に取組を支援していきたいと考えております。
    技術については技術課長からお答えさせます。
  • 中野技術課長 小松委員からITインフラの御指摘がありましたけれども、私どもも地域によるITインフラの格差については、大都市において各戸にファイバーが来ている状況で、地域においてはブロードバンドが普及していないという格差が生じていると認識しております。この問題につきましては、御承知のとおり受益者の負担で線を引くということが電気通信事業の基本になっているわけでございますけれども、実際には企業あるいは個人の負担で線を引くということが現実でない広域的なインフラの未整備というのがございますので、この点につきましては、IT戦略本部などでも議論されておりますとおり、国及び自治体の判断で企業の立地に必要なインフラであるということで整備計画を前倒しすることを働きかけていくということになっているところでございます。
  • 岡村会長  よろしゅうございますでしょうか。御質問に対しては全部カバーさせていただいたつもりでございます。そのほか御質問、御意見ございましたら、まだ、少し時間がございます。どうぞ。
  • 石原委員 関西学院大学の石原です。「農商工連携」のことで、これは御質問というよりも意見、希望だけ言わせていただきたいと思うのですが、大変大事なことだと基本的に思っておりまして、ぜひお進めいただきたいと思うのですが、この資料-8の例えば5ページあたりの図の中にあるのを見ていますと、並んで出てくる言葉が、例えば「地産地消」であるとか「空き店舗を活用した農産物販売のアンテナショップ」云々そういう感じで、いずれも非常に大事なことでありますけれど、これだけですとマーケットはそれほど大きくはならないと。だから農・工に与える影響も非常に限られてくるということになりまして、この連携を広げていこうと思うと、マーケットをつくっていかなければならないわけですが、それが省の役割ということになるのだと思います。
    その意味では、市場を外に広げていくということをぜひ視野に入れておいていただきたいと思います。多分入れておられると思うのですけれども、一気に全国流通に乗っかるような話でもありませんし、そんなことをすると農・工の負担が非常にかかることになるのを承知しておりますので、少しずつになろうと思いますけれども、マーケットは外に向けて広げなければこの辺の話というのは多分乗りにくいのかなと。その仕組みづくりをぜひ応援してやっていただきたいと思います。
    以上です。
  • 岡村会長  ありがとうございました。そのほか、いかがでございますか。
  • 西藤委員  食品産業センターの西藤と申しますが、ただいまの御意見、誠に私もそうだと思いますが、施策の中で農商工連携にしろ地域資源活用型プログラムにしろ、あるいは支援の拠点事業ですか、それぞれ当然そう運用されていくと思うのですが、事業が縦割りになって推進されると、あるいは囲い込んで推進されるというようなことというのは、地域の実態、それはそれぞれ区、区ですけれども、事業が相乗的に効果を持つような形ということを常に心がけてやっていただきたいと、そういうことが非常に重要なのではないかと思っていますのでよろしくお願いいたします。
  • 岡村会長 具体的にはいかがでしょうか。
  • 西藤委員 地域資源活用型と農商工連携といったときも、あるいは拠点づくりの事業がその事業のためだけに縦割りにならないように、現場は1つでして、どういう事業で総力的に効果を持つように運用していくかということの方が実は効果が大きいのではないかと、それが本来のねらいではないかと思いますので、これは中小企業庁というだけではなくて、各地方の部局であり、あるいは他省庁との関係もあると思いますので、全体を見る目が常に必要なのだろうなと思っていますので、事業ごとの縦割りになるというのが一番良くないのではないのかなという気がしますので、そういうことを御留意いただければ。そうされていると思うのですけれども。
  • 岡村会長  わかりました。ありがとうございました。その他、いかがでございます。
  • 浦田委員  ありがとうございます。早稲田大学の浦田と申します。労働生産性の分析、非常に私も興味深いと思いました。その中で、8ページを見ると、情報通信業というのがほかの業種とかなり違う動きを示している。もう少し具体的にいいますと、中小企業の方が大企業よりも労働生産性の伸びも高いですし、分解した場合の下の方の絵ですけれども、そこでも大企業より中小企業の方が数字が余っている。ほかの業種は多分すべて反対だと思います。
    19ページを見ますと、これも先ほど御説明ありましたが、情報通信業というのは開廃業率が非常に高いという特徴を持っています。お聞きしたいことは、1つは、情報通信業というとどうしてもすぐNTTとか、そういう大企業を頭に浮かべるわけですが、私はそうなんですけれども、中小企業で情報通信業というのはそもそもどういう事業を行っているものなのかというのをちょっとお聞きしたいのが1つ。
    それから、19ページに、今言いましたように、開廃業率が非常に高いということで、これは参入障壁及び撤退障壁といいますか、これがほかの業種に比べて低いということだと思うのですけれども、もう少しこの部分を具体的に教えていただければありがたいのですが、なぜ情報通信業はほかの企業体と比べて開廃業率が高いのかということをぜひお聞きしたいと思います。
    それから、これは先ほど伊藤委員がご質問されて、まだお答えになってない部分なのですけれども、海外直接投資を促進していこうというのは、これは私の理解では非常に重要な政策目標だと思っております。ただ、先ほどのお話にありましたように、技術を確保するというような観点から、必ずしもすべての直接投資を受け入れるかどうかというのはこれは議論があるところだと思います。中小企業庁ではそこのところをどのようにご覧になっているのかというのをお聞きしたいと思います。
    以上、2点です。
  • 岡村会長  ありがとうございました。それでは、最後にもう一方お伺いして、お答えいただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。よろしゅうございますか。それでは、今のお三人の方の御質問に対して。
  • 川上調査室長 まず浦田委員から御質問のありました分でございます。資料の8ページ目の労働生産性の伸びで見ますと、確かに情報通信のところにつきましては中小企業のほうが若干伸びが高いということでございます。ただ、ここは統計的なデータのとり方ということで、2003年~2005年というところで、期間が直近短くなっているというのがまず1点ございます。情報通信のうち、どういった業種があるかどうかというところでございますけれども、いわゆる情報サービスといったようなソフトウェアをつくっていくような業態でございますとか、インターネットの付随サービスでございますとか、そういったところが比較的あるというところでございます。あとは映像とか音声の文化情報関係の業種といったようなところがあろうかと思います。
    そういった中で、いわゆる情報通信といったときに、通信関係につきましては、ほとんどこれは大企業でありまして、中小企業は放送関係の業務はほとんどやってございませんので、情報通信のうちの情報だということで御理解いただければと思います。
    あと、2点目の開廃業との関係でございますが、恐らく参入障壁みたいなものが低いと。あとはいわゆる通信と違いまして、情報関係でございますと、初期投資のコストというものがあまり要らないのではないか。そういったようなところが開業を高めているといったような要因になろうかと思います。
    2点目のいわゆるM&Aといいますか、対内直接投資のところでございますけれども、いわゆる外為法との関係で申し上げますと、我が国の防衛上重要な技術につきましては、これは事前届ということになってございます。その他の、これは大企業、中小企業に限らず一般的な技術につきましては、単なる届出制ということになってございます。そういった中で、中小企業がどのように、いわゆる対内直接投資との関係で色々と手を打っているかということでございますが、ここは中小企業としましては、民と民の取引ということになってまいると思うのですけれども、例えば中小企業の場合ですと、上場している会社はあまりないと思いますので、そういった中では譲渡制限の特約をつけるとか、そういったところでの中小企業ならではの対策のとり方というものはあろうかと思っています。
    以上でございます。
  • 数井参事官  御指摘受けました1つは、連携を広げるためのマーケットを域外につくる仕組みづくり、石原委員から御指摘受けております。この点につきましては、既に進めております地域資源活用プログラムにおきましても、首都圏を中心としたネットワークの拡充のために、流通業者あるいはマスコミ、大学、情報通信等の関係者をパートナーとして登録いたしまして、中小企業の販路拡大のための支援を進めておるわけでございます。農商工連携におきましても、こういった取組を踏まえながら大都会におけます販路の拡大を支援したいと思っておりますし、支援プログラムそのものの中にも新商品のモデル的な取組のための支援の施策も含んでおるわけでございまして、それによりまして、域外へのマーケットの拡充を進めたいと思っております。
    また、特に農商工連携につきましては、JETROを使いまして、海外におけます日本の農産品の輸出振興、こういったことも取り組みたいと思っておりまして、特に最近報道等で出ております野菜とか果物の近隣のアジア地域におけます市場開拓、こういったところも念頭に置きながら、地域の中だけに閉じない形でのマーケットの拡充を進めたいということを考えておるわけでございます。
    また、西藤委員から御指摘のありました縦割りにならないようにという御指摘、この点も我々非常に念頭に置いておるところございます。
    農商工連携につきましては、私ども経済産業省と農林水産省との全く対等な立場で、いわゆる共管という形でこの施策をつくっており、密接に連携をとりながら事業を進めたいと思っております。具体的には地域におきましても、経済産業局と農政局、地域出先機関の合同の説明会を行うとか、あるいは東京ベースにおきましても、中小企業の支援機関と農林関係団体の連絡会を既に設けているとか、そういったことを通じまして、縦割りにならないように、事業ごとの連携も進めながら省庁間の壁を乗り越えた施策を講じたいと思っております。
    また、側面から支援いただきます中小企業基盤整備機構におきましても、こういった関連の事業を支援する部局をなるべく近くにおきまして、それぞれ横の情報を連絡を密にしながら、側面からいろいろと支援をいただくような体制づくりをしていただいていると、こういった理解でございますので、政府一丸となった支援をつくるような体制をつくりたいと思っております。
  • 岩井中小企業庁次長  1点補足です。M&Aのところでございますけれども、どの国、どの企業からの投資を、どう受け入れるのか、中小企業分野でどう考えるか、ということで色々難しい問題があろうかと思います。他方で、私どもが今、考えておりますのは、国内で、例えば後継者がいないというような理由で企業がうまく続けられないというような場合には、そのように引き継いでもよいということのマッチングをご協力させていただくということがあります。また、例えば技術の問題でも、やや事業承継からずれますけれども、先ほど申し上げました新現役チャレンジプランを活用し、国内の別の業界や別の地方の専門家を紹介できれば、国外に技術を持っていかれることがなくなることもあり得るかと思っております。他の中小企業の方のお役に立つようなやり方を振興することが、事業をうまく継続できず、その技術を国外に安易に流出させてしまうことを防ぐ1つの方策ではないかと考えて、色々な施策を思案しているということを追加的にご説明申し上げます。ありがとうございました。
  • 岡村会長  ありがとうございました。それではまだいろいろ御意見あろうかと思いますが、時間も迫ってまいりましたので、質疑はこの辺で終了させていただきたいと思います。
    それでは、御説明申し上げました「平成19年度中小企業の動向に関する年次報告」(案)及び「平成20年度において講じようとする中小企業施策」(案)につきましていろいろ御意見を伺いましたけれども、基本的に政策の運用に当たって留意すべきことという意味での御指摘だと理解をいたしますので、表現の変更については、私に御一任いただくことといたして、了承していただきたいと存じますけれども、御異議ございませんでしょうか。
    (「異議なし」と声あり)
  • 岡村会長  よろしゅうございますか。ありがとうございます。
    それでは、御承認をいただいたことにさせていただきます。
    続いて、本審議会の下には各分科会及びそれに属する部会がございまして、ここで、今年度の1年間の開催されました各部会の活動状況につきまして、事務局から御報告をさせたていただきます。
    まず経営安定部会について、担当の飛田経営安定対策室長よろしくお願いいたします。
  • 飛田経営安定対策室長  それでは資料-11をご覧いただきたいと思います。経営安定部会における審議でございます。
    経営安定部会は、金城学院大学の足立文彦教授を部会長にお願いして、本年度「小規模企業共済制度の今後のあり方について」、第14回から第16回にかけまして3回にわたり御審議をいただきました。その結果(報告書)の内容でございますけれども、小規模企業共済制度の今後のあり方について、取りまとめられましたポイントでございます。
    2点ございまして、1点は、共済金の責任準備金の積立不足、これは18年度末決算で約5,000億程度ございます。これの解消にめどがたつまでの間は現在の支給水準、これは予定利率1%でございますけれども、この1%及び付加共済金、これは毎年御審議いただきまして決定するものでございますけれども、これはゼロを維持することはやむを得ないことであるということでございます。
    2点目が、加入資格につきましてでございます。現在は個人事業主及び小規模企業の役員が加入対象者になってございますが、ここに個人事業主の配偶者、あるいは後継者を追加すべきではないかという御意見がございました。この御意見につきましては、共同経営者ということになろうかと思いますけれども、この共同経営者につきましては、事業主との区別の明確性というようなことから色々な問題がある、そういうことでございまして、引き続き検討することになってございます。
    それと2点目でございます。これは毎年御審議いただくことでございますけれども、小規模企業共済制度、これにつきましては、基本共済金額及び付加共済金額という二階建て方式になってございます。この付加共済金額でございますけれども、この計算につきましては、先ほど御説明申し上げました18年度末決算で約5,000億の責任準備金の積立不足があるという実態を踏まえまして、今年度も引き続きゼロとすることが適当であるというような答申をいただきまして、経済産業大臣あてに行ったところでございます。
    以上でございます。
  • 岡村会長  ありがとうございました。続いて経営支援部会につきまして、担当の中野技術課長から御説明をお願いします。
  • 中野技術課長  資料-12で説明させていただきます。一橋大学の伊丹敬之部会長のもと、3回今年度開催されております。
    1つ目が地域資源法の関係でございまして、7月5日に基本方針、昨年6月に成立しました地域資源活用促進法の第3条3項に基づきまして審議をいただいています。
    部会に地域中小企業政策小委員会が設置されまして5月15日に先立って審議が行われております。この基本方針は、都道府県が地域資源を特定する際の基準を示したもので、例えば地域資源自体に関しましては、中小企業の活用が可能であること。あるいは当該地域において相当程度認識されていること。この表現がこれでよいかといったことについて審議いただきました。また、どの程度の行政単位、広さで指定するのかということについては、単数または複数の市町村を単位とするといったことが決められました。
    資料-8の6ページにありますようなスキームがございますけれども、この基本方針に基づきまして、各都道府県が基本構想をつくって、その中で、これまで1万59の地域資源を指定しているということでございます。
    2番目が下段にございます今月19日の部会でございまして、これは中小企業支援法第3条に基づきまして、国、都道府県、中小企業基盤整備機構が行う中小企業の経営資源の確保を支援する事業の実施に関する計画、通称「中小企業支援計画」と言っておりますけれども、これも20年度版の審議をしていただいたというものでございます。
    それから、2枚目にまいりまして、中小ものづくり高度化法の関係でございますが、これは特定ものづくり基盤技術、昨年度まで19分野指定されておりましたが、これに議事内容のところにあります「溶射技術」を追加する審議をいただいたというものでございます。溶射は簡単にいいますと、溶けた金属をガスで吹きつける表面処理でございます。これで合計20分野になりました。
    これは部会の下に技術小委員会が2年前から設置されておりまして、法律の2条2項に基づいて、まず「溶射分野」を新たに指定し、法律の第3条1項に基づいて、その高度化指針を決めたというものでございます。高度化指針は簡単にいいますと、製造業で必要となる技術、5年後を見た目標をまず定めまして、そのために中小企業が確立すべき基盤技術、溶射技術を列挙し、その研究開発の計画をつくるために必要な知的財産権あるいは人材育成の取り扱いについて計画に盛り込んでくださいということが書いてあるものでございます。
    この結果、2月15日に告示が行われております。この分野追加1つだけが議題であったために書面審議とさせていただいております。
  • 岡村会長  ありがとうございました。最後に取引部会につきまして、担当の井辺取引課長から、よろしくお願いいたします。
  • 井辺取引課長  資料-13をご覧いただきたいと存じます。取引部会におきましては、東京経済大学名誉教授でございます宮下部会長の下、国等の機関の調達に関します、いわゆる官公需施策について御審議賜りました。
    具体的には、概要のところに書いてございますように、平成18年度の中小企業者の受注機会の増大のための措置、これの状況報告。
    それから、2つ目としまして「19年度の中小企業者に関する国等の契約の方針」(案)を御審議賜ったわけでございます。
    具体的に19年度の措置の拡充でございますけれども、大きく2つの措置を追加させていただくことになりました。
    1つは、中小企業によります地域産業資源、具体的には産地の技術でありますとか、農林水産品等の資源を活用した事業活動、これを促進するために、地域の産業資源を活用した物件などを調達可能な限り促進するというような措置を追加したわけでございます。
    2つ目でございますけれども、中小企業技術革新制度との連携ということで、中小企業技術革新制度において、採択された技術を評価する施策、それから、それを開発の成果を事業化促進する、この施策との連携ということで、技術力のある中小企業者の方からの調達を促進する措置、これを追加したわけでございます。
    こういった措置等によりまして、契約の目標としまして、金額の割合で申しますと、50.1%という目標を御審議賜ったところでございます。
    以上でございます。
  • 岡村会長  ありがとうございました。
    今、3つの部会から御報告がございました。何か御質問、御意見ございますでしょうか。よろしゅうございますか。
    それでは、最後に長官から一言ごあいさついただきます。
  • 福水中小企業庁長官  年度末のお忙しいところ、お集まりいただきまして、2時間ありがとうございました。
    冒頭にもありましたように、中小企業の景況感が悪化している現状でございます。今後、鉄鋼、小麦と色々なもので値上げという話が出てくるのではないかと非常に懸念しております。どういう状況になっているのか、常に注意深く見ていかなければならないと考えております。
    そういう意味で、今年度1年間は終わりましたが、来年度1年間、またどのようになっていくのか、非常に気持ちを引き締めて対応していきたいと思います。どうぞ委員各位におかれましても、日常の活動の中でお気づきの点等ございましたら、何なりと私どもの方に御提案いただき、必要に応じて、またこの審議会で御議論させていただきたいと思っております。引き続きよろしくお願いしたいと思います。
    本日はどうもありがとうございました。
  • 岡村会長  ありがとうございました。申し遅れましたけれども、各部会におかれましては、来年度も中小企業施策の企画立案のために活発に御審議いただくことを改めてお願い申し上げたいと思います。
    それでは、以上をもちまして、中小企業政策審議会・基本政策部会合同会議を閉会とさせていただきます。御協力ありがとうございました。

以上