1.日時:平成14年4月3日14:00~15:00
2.場所:経済産業省本館17階 第1共用会議室
3.議事録
○山口会長
それでは、ただいまから第3回中小企業政策審議会・第3回基本政策部会 合同会議を開会いたします。
本日は、御多忙のところ、委員の皆様方には多数ご出席をいただきまして、ありがとう ございます。また、大島経済産業副大臣におかれましては委員会の真っ最中でございまし て、中座をして御出席いただいておりますが、ありがとうございます。
まず、本日付で新委員の就任がございますので、御報告させていただきます。新たな委 員として、熊野英昭委員、長野幸彦委員、村本孜委員のお三方にご参加いただくことにな りました。どうぞよろしくお願いいたします。
なお、この1月15日に、本委員及び取引部会長として本審議会の活動に積極的に取り 組んでこられました橋本寿朗委員が急逝されました。謹んでご冥福をお祈りいたします。
それでは、本日の会議を始めるに当たり、大島経済産業副大臣にごあいさつをお願い申 し上げます。
○大島経済産業副大臣
ご紹介いただきました経済産業副大臣を拝命いたしております 参議院の大島慶久でございます。
今日は、第3回中小企業政策審議会及び第3回基本政策部会の合同会議ということなの ですけれども、公私ともご多用の委員の皆様方には、お集まりをいただきましてご協議い ただくことになりまして、大変ありがとうございます。高いところから恐縮でございます けれども、厚く御礼を申し上げたいと思います。
今、ご紹介をいただきましたように、今日は衆議院の経済産業委員会、法案の採決がご ざいますので、ごあいさつが終わると中座をいたします。本来であれば、せっかくお集ま りの皆様方のご意見をいろいろ拝聴させていただくのが本意でございますが、お許しを賜 りたいと存じます。
本日は、中小企業基本法に基づきまして、政府が国会に提出を予定いたしております平 成13年度の中小企業の動向に関する年次報告をご審議いただくと同時に、その内容を踏ま えながら、平成14年度において講じようとする中小企業施策についてご審議をいただきた いと存じております。
我が国の経済、大変な状況でございます。一部、下げ止まりというような報道もお聞き をいたしますけれども、依然として設備投資は大幅に減少いたしておりますし、失業率も 極めて高い数値で推移いたしている。電気・機械を始めとする製造業を中心に悪化いたし ているというのが実情であろうかと認識をいたしているところでございます。
そういう中ではございますけれども、中小企業がそういった苦境を克服していただき、 新しい事業への果敢な挑戦、新商品の開発、新しいビジネスモデルの構築などを通じて、 そういったことから一日も早く脱却してまいりたい。その意味でも、我が省といたしまし ては、中小企業対策の実施、これからももっと力を入れて進めてまいりたいと存じている ところでございます。
本日、ご審議いただきます平成13年度の中小企業の動向に関する年次報告におきまして は、誕生、発展、成長といったライフステージごとに中小企業が直面いたしております課 題を抽出いたしまして、その特徴を分析することにより打開を図っていきたい。また、金 融機関の実態別に分析すること等を通じまして、中小企業金融を取り巻く問題等の一層の 把握に努めてまいりたいと存ずるところでございます。また、平成14年度において講じよ うとする中小企業施策におきましても、中小企業金融の充実、あるいは創業の促進、経営 革新への支援、中小小売業対策、技術開発の促進とものづくりの基盤の強化等に向け、施 策を講じてまいることといたしております。
今日は、本当にお忙しい中をお集まりいただきました。限られた時間でございますが、 委員の皆様方のご忌憚のないご意見を拝聴しながら、この会を成功裏に終了させていただ きたいと心から念じている次第でございます。どうぞよろしくお願いいたします。ありが とうございました(拍手)。
○山口会長
大島副大臣、ありがとうございました。それでは、ここでご退席されます ので、本当にありがとうございました。 それでは、本日は、平成13年度中小企業の動向に関する年次報告(案)及び、先般、経 済産業大臣より中小企業基本法第11条の規定に基づき諮問を受けております平成14年度に おいて講じようとする中小企業施策(案)についてご審議いただくことになっております。
なお、同案は、同じく中小企業基本法第11条の規定に基づき、政府が国会に提出するこ ととなっております。審議に入ります前に、事務局から審議会の運営につきましてご説明 を申し上げます。
○加藤企画課長
審議会の運営につきましては、平成7年9月の閣議決定に基づきまし て原則公開ということになってございます。本審議会につきましても、昨年の本審議会で 定めていただきました中小企業政策審議会運営規程4条の規程に基づきまして原則公開と いたしまして、資料及び議事録を公表させていただきます。ただし、皆様にお配りしてい る資料、お手元に配布資料という1枚紙があると思いますが、その中の資料番号の4 から11につきましては中小企業白書に関係するものでございまして、これは今月下旬、あ るいはそれ以降を予定しております閣議決定を経て公表することになります。それまでの 間は委員限りの取り扱いとさせていただきますので、ご了承願います。
それでは、会長、よろしくお願いします。
○山口会長
それでは、まず、平成13年度中小企業の動向に関する年次報告(案)につ き、事務局からご説明をお願いいたします。
○安田調査室長
中小企業庁調査室長の安田でございます。 平成13年度中小企業の動向に関する年次報告についてご説明させいただきます。年次報 告、いわゆる白書の本体は、資料でいいますと6番、7番でございまして、大変厚いもの でございますので、本日はその中の本文をピックアップしまして、図等も簡略化しました 資料―5の2002年版中小企業白書(案)の概要によって説明させていただきたいと思いま す。
1ページ目をお開きください。白書でございますが、例年、2部構成になっておりまし て、1部は構成といたしまして景気の話をしております。2部は中小企業の比較的長い問 題ということで、通常、構造編と呼んでおります。今年は、構造編におきましては、中小 企業のライフステージごとの課題を取り上げるということをやっております。
1ページ目の後段、特色でございますが、まず5つ挙げておりまして、1部では中小企 業をめぐる現下の厳しい状況について、特にデフレとか空洞化などの影響についても分析 していくということをやっております。
2部についてですが、昨今、金融問題が非常に多く取り上げられますが、この金融につ いて業態別に中小企業に対する資金供給で果たす役割というのを分析していく。この業態 別というのは、例えば都銀とか地銀とか信金とか、そうしたものでございますが、それご との中小企業金融というのを分析していくということでございます。
それから、後ろの2つのポツですけれども、中小企業のライフステージごとでの課題の 分析ということでございまして、1つは創業。この創業については、今後5年間で創業を 倍増するということで、平沼プランというのを私どもは掲げているわけでございますが、 その背後にある 120万人に及ぶ創業希望者に対して光を当てまして、分析していくという ことをしております。それから、廃業、倒産ということで、従来、白書の中では取り上げ ていなかったのですけれども、経営に失敗して倒産した人たちの再起の状況についての調 査をしております。
最後に、まとめといたしまして、80年代、欧米で起こりました「まちの起業家」の多数 の輩出、多くの開業が生まれてきたと。そうした開業の一つ一つがイノベーション、雇用 に対して、少しずつではありますけれども、貢献していって、全体として経済全体が活性 化していったということで、そうした姿というのは日本でもこれからつくられていかなけ ればならないということを指摘しております。
1ページおめくりください。次のページは、中小企業の景気の状況について露した3枚 の表でございます。上の段の左側は業況判断DIでございます。右側はIIP、下の段は 資金繰りと。いずれについてみましても、新聞等で多く言われておりますけれども、非常 に厳しい状況というのが2002年の状況であったということでございます。
1ページおめくりいただきまして3ページ目に入りますと、中小企業の倒産動向につい て扱っております。平成13年で見ていきますと、史上3番目という高水準になりました。 特に老舗倒産の増加というこごとが1つの特徴としてありました。また、物価についても、 近年、下落を続けております。中小企業の販売価格というのは下落をしておりまして、さ らに最近では販売数量自体も下落しているということで、その2つが合わさりまして、中 小企業の収益というのが全体として悪化しているというのが3ページ目の下の図でござい ます。
続きまして、4ページ目では製造業の海外進出進展、いわゆる空洞化の問題について扱 っております。ここに並べています4枚の表は、非常によくなじみのあるものでございま すけれども、上の左側の図は海外生産比率の推移をあらわしたもので、海外生産というの が着実に進んでいる。右側は、海外現地法人の売上高の推移という表でございます。これ も着実に伸びている。それだけが背景というわけではないですけれども、国内についてみ ていきますと、事業所数が減少しております。15年間で約10万事業所が減少しているとい う状況。さらに、こうした現象がどういうところで特に起こっているかといいますと、大 田区とかそういった産業集積地域で非常に多くみられるということがあります。
次のページになりますけれども、そうしたことを背景に、私ども、今回、下請企業1万 社に対して調査をいたしまして、海外進出をした直後に、下請企業がどのような対応をと ったかということを調査しました。それが5ページの上の表ですけれども、やはり一番多 いのが新規取引先の開拓。あと、製品の低コスト化とか、高付加価値製品開発への取り組 みとか、研究開発活動への取り組みといった比較的前向きの対応、これは私ども、経営革 新型の対応と呼んでいますが、そういうものをとっているところがある反面、従業員の削 減とか、設備の縮小といったリストラ型の対応をとっているところもあるということにな っております。親が出ていった直後にこうした対応をやった企業が、その後、一体どうな っているかというのを直近時点での売上増という観点から見ていったのが5ページの下の 段の図です。ここから見てわかりますように、経営革新型の対応、例えばITの活用とか、 研究開発活動への取り組みとか、高付加価値製品開発への取り組みとか、そうしたことを やっているところが概して現下の売上増というようになっているわけでありまして、反面 でリストラ型の対応をとっているところというのは、売上増になかなか結びつかないとい うことになっております。いわば1回縮むと、その後、立ち直るのはなかなか難しいとい う状況になっていたということでございます。
以上が1部のポイントでございます。
続いて2部、いわゆる中小企業のライフステージごとの課題というところに入っていこ うと思います。
6ページをお開きください。中小企業の開業、現在、日本の創業というのは非常に少な いといわれています。創業希望者という観点で見ていきますと、この20年間、一貫して 1 00万人を超えております。しかしながら、創業というのがなかなかうまくいかないという こともありまして、創業実現率というのが長期的に低下しているということでございます。 果たして、この創業希望者とはどういう人なのかというのを調べたのが6ページの下の段 の3つの図でございまして、そこを見ていきますと、実際に創業した人に比べますと、若 い人、比較的学歴の高い人、男性が多いということになっております。
創業希望者はこういう状況であるわけですけれども、そういう人たちがなかなか創業で きないというのはどういうことなのだろうかということで、次の7ページをお開きいただ きますと、創業時の困難性についての分析をしております。上の段の創業時の困難性とい うグラフは、実際、創業した人たちに対して、創業したときにどのような苦労がありまし たかということを質問したものでございますけれども、まず一番大きいのが資金面での困 難性、それから、マーケティング面での困難性、さらには人材・経営能力面での困難性と か、制度・手続とか、さまざまな問題があるということがわかります。
この中で一番大きな困難性に取り上げられている資金面について、特に年代別で見てい ったのが7ページの下の左の図でございます。ここからわかりますように、自己資金不足 とか、創業資金の調達で苦労したといっている人たちというのは、やはり若い人の方が比 較的お年を召した人よりも多くなっているということでございます。創業時の資金調達先 ですが、こうした創業面での苦労の中でどういう資金の調達をしているかといいますと、 自己資金というのがやはり中心的と。そのほかに親、兄弟、親戚といった人たち、あるい は親企業とかもとの勤め先みたいなところも資金の調達の1つの源泉になっているという 意味で、顔の見えるネットワークというのも比較的重要なのではないかということを述べ ております。
次のページをお開きください。さて、こうした困難を乗り越えて開業すれば、まず安泰 というわけでは決してございません。開業1年目の退出率というのは、8ページの上の図 でみていきますとわかりますように非常に高いです。大体3割とか、そんなものです。そ れが次第に時間がたつにつれて安定していって、大体3年ぐらいたちますとほぼ並行にな っていく。そういう意味で、“石の上にも3年”というのでしょうか、そうした状況とい うのが出ているといえると思います。
ただ、こういう非常に厳しい中でも、割かしすんなりとスタートアップを遂げるような 企業もあります。その点を、開業2年以内に黒字になったと答えた企業の割合というとこ ろで見ていったのが下の図でございます。ここからわかりますように、20代、30代、40代、 創業年齢が比較的若い層において、最初にうまくいっている。もちろん、斯業経験がある といっている人の方が、ないといっている人に比べると割かしうまくいっているというこ とがいえると思います。
さて、以上が創業という個人の決断というところを中心に見ていったわけですけれども、 9ページからは、創業が積み上がって、マクロ経済全体としての開業率という数字になっ ていくといったときの分析でございます。
9ページの上の図は、非常におなじみの図でございまして、高度成長期と比較して、開 業率というのが落ちてきていますというような数字です。今回、白書の中では、開業率の 低下がなぜ起こったかというのを、例えば成長率とか失業率みたいなものと関係をつけて 分析をしていきました。その結果、わかったのは、やはり高度成長期から低成長期に移る という形での成長率の低下というのは、開業率低下の大きな要因になっていくわけですけ れども、それとともに事業者対雇用者収入比率というのが重要であろうということです。 事業者対雇用者収入比率というのは、下の右の図の一番下の注のところに定義を書いてご ざいますが、自営業主の収入を雇用者の収入、賃金で割ったものというものでございます。 この数字を見ていきますと、70年代以降、どうなっているか。下の段の左の図をごらんく ださい。ここに書いてありますように、次第に低下してきている。これはどういうことか と言いますと、事業者でいるよりは、賃金をもらって被雇用者でいることの方が、人生の 選択としてより有利な選択になっているというような形のことが長期的に生じているとい うことでございます。この数字を開業率の数字とあわせてプロットしていったのが、下の 段の右の数字です。ここからわかりますように、開業率の低下というのと、事業者対雇用 者収入比率の低下という相関が非常に高くなっているということでございます。
以上が創業、開業関係でございます。
10ページからは、企業の青年期、壮年期といいましょうか、そうした時期の企業につい て分析しております。 10ページの上の図は、横軸に企業の年齢、縦軸に企業の成長率をとっていったものでご ざいます。ここからわかりますように、企業というのは年齢がたつにつれて成長率を低下 させていく。いわば企業でも人間と同じように老化という現象が起こる。法人ですので、 本来、そういうことはないということではなく、現象としては老化ということが起こって いるようでございます。
10ページの下の図は、そうした企業であっても、経営革新、いわゆるイノベーションの 取り組みをすることによって成長率を上げていくことができるというものでございます。 今度は横軸に企業規模をとっておりまして、縦軸に成長率をとっておりますけれども、経 営革新を取り組んでいるところと取り組んでいないところと、それぞれ成長率をみていき ますと、取り組みありの方が取り組みなしに比べると高くなっているということで、いわ ば経営革新というのは若返りの薬としての作用があるということでございます。
次のページをお開きください。11ページですが、経営革新の中で最も力を入れた活動内 容ということで、新商品開発みたいなものが非常に多いということであります。下段では、 経営革新と非常に関係のある研究開発活動について、見込み成功率50%未満の、いわば非 常にリスクの高い開発活動でも取り組む企業の割合はどれぐらいですかというのを規模ご とに整理していったものでございます。ここからわかりますように、ゼロ~20人、21~50 人の層というのは、それ以上の層に比べますと、割かしリスクの高いプロジェクトであっ ても取り組んでいく姿勢が見られるということでございます。これは、1つに決裁が簡単 というような理由があるのかもしれません。
次のページをお開きください。次のページでは、産学連携について取り上げております。 産学連携をみていきますと、12ページの上の図になりますが、規模が小さいところでは、 規模の大きいところに比べるとどうしても産学連携に関心がないというところが多い。逆 に、実際にやっているというのは規模の大きいところが多くなります。ただ、規模が大き くても小さくても、実際に取り組んだ企業は、取り組まない企業に比べますと、企業とし てのパフォーマンス、成長率でみたパフォーマンスは良くなっています。それが12ページ の下の図でございまして、どの層においても、取り組んでいないといっているところに比 べると、取り組んだと言っているところの方が成長率が高くなっております。
さて、このようにいろいろなことをやっていくということで、企業の老化を防いでいく ことができるわけですけれども、こうしたことは商店街でも変わりません。13ページをお 開きください。今回、全国 5,000商店街を対象とした実態調査をもとに、今までそこにあ った大店舗が退店した商店街の中で、比較的健闘している商店街というのはどういうとこ ろかということを分析しました。図の棒グラフは来街者数が多くなった、あるいは変わら ないという意味で、割かし大店の退店に影響を受けていない、そういう商店街を示してお ります。どういう商店街がそうかといいますと、閉店時間を遅くしたとか、休日閉店して いる店が少ないとか、店舗の誘致を積極的にしているとか、組合員同士の連携がかなりう まくいっているというようなところが比較的そういう状況にあるといえると思います。そ ういう意味で、商店街についても積極的な取り組みというのが必要とされることだと思い ます。
さて、次のページをお開きください。14ページからは企業のラストステージということ で、倒産、廃業、その教訓について分析しています。ここでご紹介いたしますのは破産し た経営者 200人に対する調査で、再起の状況を調べたものです。これは日本とアメリカと いうようにありますが、日本について見ていきますと、就業していない人が5割、就業し ている人が5割。この就業していないというのには、不定期労働みたいなものが入ってい るのかもしれません。就業している人5割の中をさらにみていきますと、経営者に復帰し ているのはわずか26%ですので、全体でいうと13%の人が経営者として復帰しているにす ぎない。
既に同じような調査をアメリカで1994年にやっておりまして、それを見ていきますと、 就業している人が88%、経営者に復帰しているのが53%。その結果、全体の47%の人が破 産後、もう一回、経営者に復帰しているということでございます。そもそも日本を見てい きますと、再起業への意思というのを確認しますと、できればもう一度起業したいかとい うと、はいというのがアメリカに比べるとかなり少なくなっているという状況であります。
次のページをお開きいただきますと、再起の状況をみていきますと、資金面とかビジネ ス上の信用の問題とか、さまざまな問題が実際にはあるということでありますが、そうし た中でも、実をいいますと2度目の開業というのを成し遂げる人たちがいます。そうした 人たちの状況を調べたのが15ページの下の2つのグラブでございまして、上のグラフは廃 業直後の資産状況がどうだったかということを見たものです。見ていきますと、現預金が ある程度残っていたというところが半分ぐらいなのですけれども、それでも過半数に至ら ない。ほとんど残らなかったというところが多くなっています。自宅についても、廃業後 も所有というのはどちらかというと少数派となっておりまして、非常に厳しい状況の中で 再起しているという人もかなりいるということでございます。
2度目の開業のパフォーマンスというのを調べたのが下のグラフでございまして、新規 開業に比べると黒字基調といっているところが多くなっている。新規開業では51.2%、2 度目の開業では59.9%となっておりまして、ある程度、失敗の教訓というのが学ばれてい るのではないかと考えられます。
以上が企業のライフサイクルごとの分析でございますけれども、16ページからは中小企 業金融の課題についての分析をしております。上の2つのグラフは非常によく言われてい るものでございまして、貸出残高が減っている。業態別に見ると、こういう形になってい るというものでございます。 下のグラフは、縦軸に中小企業の貸し出しの伸び率をとりまして、横軸に不良債権比率 をとりまして、不良債権比率と貸し出し伸び率の関係はどうなっているかというのを分析 していくというものでございます。実は、ここのフェーズの中に各金融機関の点を全部プ ロットしていきました。そして、最終的に関係を都市銀行、信用金庫、地方銀行という形 で抽出したのがこの3つの棒です。ここからみてわかりますように、都市銀行の場合には、 不良債権比率が上がりますと急速に中小企業向けの貸し出し伸び率が減っていく。それか ら、信用金庫、地銀というのはそうした傾向はあるわけですけれども、都市銀行に比べる とはるかに小さいということでありまして、これを縦軸に大企業向けの貸し出しをとって いきますと、実はこうした関係というのが余りはっきり出ていこない。統計のソフトを使 っていきますと、はっきりとした有意な結果が出てきませんという答えが出てくる形にな っておりまして、それらを合わせて考えてみますと、財務が悪くなった場合に、金融機関 はどうしても中小企業向けの貸し出しの伸びを調節するという対応をとっていく傾向があ るのではないかということでございます。
17ページをお開きください。次は、中小企業金融について中小企業の側からみていきま した。まず金利でございますけれども、上のグラフは横に従業員規模、縦に借入金利をと ったものでございますけれども、やはり規模が小さくなるにつれて金利が高くなるという 関係があります。ただ、小さい規模のところでも低い金利で借りることができているとこ ろもありまして、そういう意味ではかなりばらつきがあるということで、今回、このばら つきがどうして生じるのだろうかということで、企業の属性、規模とか年齢、財務、取引 金融機関の数とか、取引年数とか、さらにはメインバンクはどこかということをあわせて 考えていきまして、どういうところが金利を安く借りているかというのを調べてみました。 その結果、非常に説明力のある変数の1つとして出てきたのが下のグラフで紹介いたし ました自己資本比率です。自己資本比率を見ていきますと、ゼロ%未満、つまり債務超過 のところについては非常に高い金利になっておりますが、超優良50%超というところにな ってきますと低い金利で借りることができるようになっているということでございます。
次のページをお開きください。さて、今、メインバンクと言いましたが、規模ごとにど ういうところをメインバンクにしているか見ていきますと、これは十分予想のつくことで すけれども、上の図にありますように、従業員規模が小さいところの方が、割かし信金と か地銀に頼り、大きいところは都銀に頼るという形になっております。
こうしたメインバンクの違いというのが貸し渋りということとどう関係していくのかと いうのを見たのが下のグラフでございます。縦軸には従業員規模をとっております。横軸 には貸し渋りを受けた企業の割合をとっておりますが、やはり規模が小さくなるにつれて 貸し渋りを受ける割合は高くなっています。ただ、同じ規模で見ていきますと、地銀、信 金をメインにしているところに比べると、大手行をメインにしている方がどちらかという と貸し渋りを受けやすいということになっております。ちなみに金利についてみていきま すと、規模をそろえると大手をメインにしているところの方が安く借りられています。と いうことで、全部合わせますと、大手行というのは割かし安い金利で貸すけれども、貸し 出し拒絶というのも多い。地銀、信金というのはそれとはちょうど逆な形になっていると いうことかと考えられます。
その次の19ページでございますが、直接金融について分析しております。今回のアンケ ートでは、直接金融に関心があると言っている企業は2~3割でしたけれども、実際、公 開している企業というのは非常に少ないということになっております。公開したくないと いうところもあるわけですけれども、そのほかに、したいけれどもディスクローズの体制 を整えられないとか、株式公開の要件を満たしていないとか、そうしたことを言うところ がある。こうしたことから、中小企業庁でも従来型とは異なる金融というのをできるだけ 広げていこうということで、売掛債権担保融資について信用保証をつけるとか、金融機関 引受私募債みたいなことを中小企業の側でも考えてもらいたいということで、白書の中で は指摘をしております。また、少人数私募債みたいなことも考えてはどうかということを 白書の中で指摘をしております。
その次の20ページをお開きください。雇用については、これは、従来言われていること の若干おさらい的になりますが、非常に小さい企業の方が雇用創出に役に立っている。小 規模層が雇用を創出しているということでございます。1~5人層というのだけがプラス になっている。それから、91年から99年で見ていきますと、新設事業所というのが存続事 業所に比べますと雇用創出に対して非常に大きな意味をもつということでございます。
21ページは最後のまとめになりますが、「『まちの起業家』と経済活性化」と書かせてい ただきました。イギリスとかアメリカでは、80年代以降、サッチャー政権等の成立ととも に開業というのが非常に進みまして、まちの起業家というのが多数輩出された。いわゆる ローテクのベンチャーといわれるものかと思いますけれども、そうした企業一つ一つがイ ノベーションをささやかながらやっていった。雇用にささやかな貢献をしていきまして、 そうしたものが集まっていって、全体として経済の活性化につながっていった。日本につ いてもそうしたことが重要であろうということをいっております。ご紹介させていただい た図は、そういう開業の増加によってイギリス、ドイツとかが自営業者数が結果としてふ えている。日本とかフランスというのは、G7の中でもなかなかそういう形になっていな いというものでございます。
以上が私の説明でございます。 最後になりますけれども、白書の作成の途上で、委員の皆さんに非常にいろいろなアド バイス等をいただきました。ここで改めて御礼申し上げます。 以上でございます。
○山口会長
ありがとうございました。 続きまして、平成13年度において講じた中小企業施策(案)及び平成14年度において講 じようとする中小企業施策(案)について、事務局からご説明をお願いいたします。
○小川政策調整課長
それでは、13年度と14年度の施策について説明をさせていただき ます。本当は、お手元の資料―10、資料―11でございますけれども、ポイントにした紙が ございまして、資料―8、資料―9、それぞれ5枚程度のコピーでございますが、それに 沿って要点のみ説明をさせていただきす。
まず、資料―8、平成13年度において講じた中小企業施策(案)のポイントでございま す。 今、説明がありましたように、中小企業をめぐる金融経済情勢でございますけれども、 13年の年初から非常に悪化を続けて、13年度中、極めて厳しい状況が続いたわけでござい ます。そういう中で、やる気と能力のある中小企業までが破綻に追い込まれるような事態 を極力回避するということで、金融セーフティーネットの整備というのが13年度の第1番 の柱でございました。具体的には、昨年の秋の臨時国会で、従来の物的担保に依存した間 接金融中心の中小企業金融の枠組みを改革するということとあわせて中小企業の資金調達 円滑化ということで、従来、担保として中小企業にほとんど使われてきておりません売掛 債権を担保とした民間金融機関からの融資を拡大するということで、その呼び水として新 保証制度を創設いたしまして、昨年の12月17日から制度を開始しております。
(2)でございますけれども、いわゆるセーフティーネット保証・貸付制度、これは従来 からございますが、取引先企業や取引先金融機関の破綻という外的要因による連鎖的な破 綻を回避するために、信用保証協会による保証、あるいは政府系金融機関による融資を行 う制度でございます。昨年秋の補正予算で約 1,400億円の予算を計上いたしまして、制度 の拡充をして、今年1月から拡充した内容を実施しております。
(3)でございますけれども、いわゆるDIPファイナンス、民事再生法等の法的再建手 続途上の潜在力のある中小企業の再生に資するため、民間のDIPファイナンスの呼び水 ということで、商工中金、あるいは中小企業金融公庫で始めていただいております。
以上が金融セーフティーネットの整備でございまして、開けていただきまして2ページ 目でございますが、13年度の2番目の柱、IT革命への対応ということで、いわゆるIT 革命に中小企業が遅れることがないようにということで、13年4月にIT化推進計画を策 定いたしまして、それに基づく施策を講じたわけでございます。
(1)は、中小企業のITへの習熟の促進ということで、支援センター等によるセミナー や研修、もしくは大学校による遠隔研修、それから、ITコーディネーターといっており ますけれども、IT専門家の派遣といった措置を実施しております。
(2)ですけれども、ITによる経営革新の支援ということで、製造、流通一体のシステ ム、ソフトウェアの開発の支援でありますとか、熟練技術者の技術をマニュアル化、デジ タル化してデータベース化して利用可能にするというデジタル・マイスター・プロジェク トの推進、あるいはIT化の低利融資といったことで経営革新の推進を進めたわけでござ います。
(3)でございますが、ITを用いた情報提供の促進ということで、J―Net21と呼ん でおりますけれども、中小企業庁、あるいはその他各省の施策等をポータルサイトにした ものを整備して、ITで情報がとれるようにというような整備を致しております。
2ページ目の下の方、3番目でございますけれども、支援体制の整備ということで、い わゆる3類型の支援センターといっておりますけれども、 (1)の全国レベルの8ヵ所の中 小企業・ベンチャー総合支援センター、1ヵ所、従来からございましたが、すべての8ヵ 所にプロジェクトマネージャーを配置する。それから、3ページ目の方へまいりまして、 都道府県レベルの中小企業支援センターに民間専門家を新たに配置する。あるいは (3)で 250ヵ所ごとの地域の中小企業支援センターが、休日の相談対応も可能にするといったよ うな機能拡充を致しております。
4番目でございますけれども、創業の促進ということで、創業・ベンチャー国民フォー ラムの組織、活動によりまして意識喚起といいますか、国民的議論の喚起といったことを 進めております。 (2)でございますけれども、創業者向けの資金供給制度といたしまして、これもやはり 第1次補正予算で新しい創業者向けの融資制度を創設いたしております。また、民間から の創業者の融資を促進するということで、創業者向けの保証制度、新事業創出保証制度と いっておりますけれども、限度額を引き上げるといった拡充措置をしております。
5番目の柱ですけれども、経営革新の支援ということで4ページ目でございます。新し い措置といたしましては、 (2)の厚生労働省との連携で雇用の拡大という意味も込めまし て、経営革新支援法の承認企業が中高年者の方を含めて雇用を増加する場合には、雇用保 険から助成を行えるように、雇用対策臨時特例法という法律で新しく手当てをしたわけで ございます。 それから、5ページにまいりまして、新しい措置といたしまては (1)でございますが、 前の通常国会におきまして商工会法の一部を改正して、商工会がより効果的、効率的な活 動ができるように合併を円滑化できるような規定の整備をして、それに基づいて合併もい ろいろなところで進みつつあるわけでございます。 (2)の経営安定対策ということで、非常に厳しい状況下で、特に昨年秋から大型倒産と か、BSE問題とか、炭鉱の閉山がございましたけれども、そういった場合の影響を受け る関連中小企業についてセーフティーネット保証・貸付、もしくは倒産防止共済というこ とで、できる限りの対応をしてきたというようなことでございます。 非常に早足でございましたけれども、13年度に講じた施策のポイントは以上でございます。
続きまして、資料―9でございますけれども、14年度において講じようとする施策のポ イントでございます。 14年度の施策、第1番目でございますけれども、やはり金融対策の充実ということでご ざいまして、金融経済情勢は本年に入っても引き続き状況は厳しいということで、まず、 セーフティーネットの整備に引き続き万全を期すということが必要であると考えておりま すし、あわせて経営革新等も含めて、資金調達の多様化、多角化のために新しい資金供給 手段の拡大に努めるということも必要であると考えております。 (1)でございますが、先ほどもご紹介しましたセーフティーネット保証・貸付制度は13 年度の補正予算で充実をしたわけでございますけれども、今年に入っての非常に厳しい情 勢、中小企業の資金繰りも一層厳しくなって、前の金融不況時に近づくような状況という ことに対応いたしまして、「早急に取り組むべきデフレ対応策」の一環ということで、先 月の中旬に、この制度の要件を見直して、一層有効に活用できるようにという措置を講じ たところでございまして、14年度において着実な実施を進めることとしております。 (2)、これも先ほどご紹介いたしまた売掛債権担保融資保証制度でございますけれども、 12月に創設いたしましたが、何分、新しい制度ということで、これから強力にその普及を 進める必要があるということです。やはり早急に取り組むべきデフレ対応策の中で、この 制度が普及する際の制約の1つと考えられます、、国、地方公共団体や大企業向けの売掛 債権の譲渡禁止特約の解除を各省庁と協力して進めていくということが必要だと考えてお りまして、14年度においてこの制度の利用拡大を進めていきたいということでございます。 2ページ目でございますけれども、 (3)ですが、先ほど調査室長の話にも出てまいりま したが、中小企業の私募債発行を促進するということで、保証制度を一昨年の4月から行 っております。特定社債保証制度と申しておりますけれども、既に多くの実績が出ており まして、それを踏まえて、この4月の初めから制度の拡充を実施したところでございます。
2番目でございますが、創業の促進ということで、5年間で創業を倍増するといういわ ゆる平沼大臣のプランを実現するために、創業支援策をさらに充実するということでござ います。 (1)が創業資金調達の支援でございまして、?は13年度の補正予算で創設いたしました けれども、ビジネスプランの内容を審査して、無担保、第三者及び本人の保証なしで国民 生活金融公庫から融資を行うという新しい融資制度を創設しております。ことしの1月か ら実施して、既に 300件に近づこうかという実績が上がっておりますが、14年度、さらに 積極的に推進するということでございます。 2番目は出資の支援ということでございますけれども、中小企業総合事業団による投資 事業有限投資組合に対する出資の制度というものがございます。11年以来、既に13組合か ら 276社に出資しておりますけれども、一層の積極的活用を図るということでございます。 (2)に、資金調達に続きまして、人材育成支援の拡充ということで、商工会議所、商工 会のご協力を得まして、創業塾といった事業を各地でやっておりますけれども、これを13 年度は約2万人を対象にしておりましたが、14年度は約4万人を対象に実施したいという ことで倍増したいと考えております。 また、ベンチャープラザ、ベンチャーフェアといった事業も引き続き積極的に推進する ということでございます。
3ページ目ですが、経営革新への支援、新しい分野への挑戦を支援するということでご ざいます。まず (1)、これも人材育成支援ないしビジネスフェア等によるビジネスマッチ ングの支援でございますけれども、これもやはり対象を倍増するといったことで、大幅に 施策を充実したいと考えております。 (2)は、先ほどご紹介いたしました雇用対策臨時特 例法に基づく措置を14年度も引き続き積極的に実施する。あるいは、IT化の支援を進め るということでございます。
4番目が中小商業対策でございますけれども、ここでの新規策は (1)でございまして、 空き店舗を活用して商店街に保育所を設置することを支援しようと。待機児童対策と空き 店舗対策、施策目的を両方達成しようということで、厚生労働省と連携して進めることと いたしております。
4ページ目にまいりまして、5番目の技術開発の促進でございますけれども、特に14年 度は地域コンソーシアムといいますか、産官学の連携の中小企業と大学の共同研究の促進 を大幅に拡充して積極的に進めたいと考えているところでございます。 5ページ目、その他事項についても引き続き強力に施策を推進したいと考えている次第 でございます。 簡単ですが、以上でございます。
○山口会長
ありがとうございました。 それでは、ただいま事務局からご説明のありました点につきまして、ご質問、ご意見が ございましたら、遠慮なくおっしゃってください。どうぞ。
○南条委員
3点ほど質問と意見なのですけれども、まず白書の方ですが、従来よりも 非常に意欲的になさっていると思うのです。前半の分析と後半のいろいろな読み取りとい うのと分かれているわけですけれども、今、一番問題になっているのは、デフレがなかな かとまらない。それから、空洞化が進んでいる。こういうことに対して、中小企業で非常 にやる気のあるところは、これだけやってこうなっているというようにつながって読んで いいのかどうかということなのです。つながって読まないと、はっきりいって、せっかく やっても効果が……。つまり、こういう状況の中でも、これだけやればこうなるのだから、 そこからヒントをみつけておやりなさいよということになって初めて意味があると私は思 うのです。つながっているかどうかということの書き込みがちょっと不足しているのでは ないかということと、つなげるためには、分析とか調査の時期が、デフレ及び空洞化進行 の時期とぴたっと合っているかどうかということなのですけれども、恐らく合っていると 思うのですが、その辺についてどうお考えになるかが1点。
2点目は、従来どおり13年度において講じた施策、14年度にこれからやる施策というの で、これは昔からずっとそうなっているわけですけれども、ご案内のように、これから非 常に重要になってくるのは評価の問題。政策評価ということで、今までやってきた政策は どういう効果があるのか、どこに問題があるのか。したがって、どうすればいいかという ものの説明が非常に問われる時代になってきていると思うのです。そこからみると、それ がすっぽりないということでありますが、国会に対する説明、審議会に対する説明、国民 全体に対する説明ということで、中小企業施策についての評価をどのようにこれから構築 していこうと考えているのか。余り細かくは、ここでは時間がないので無理だと思います けれども、特に中小企業施策というのはやたらと多くて、はっきりいってどこまで役に立 っているかわからないものもいっぱいあるような感じがするわけです。したがって、有効 なものもいっぱいあると思うので、きちんと毎年度検証して、スクラップ・アンド・ビル ドをやって、効果のあるものをできるだけ集中させてやっていく、わかりやすい施策にし ていくということが非常に重要だと思うので、そのための評価がすごく大事になってきて いると思うのですが、それをこれからどのように位置づけてやっていかれるのかというこ とをお聞きしたい。
それと関連して、いささかきつい話かもしれませんけれども、たしか前々年度ぐらいま でやっていた、すごい巨額の貸し渋り対策の特別信用保証制度というものがありまして、 これについては随分いろいろな議論があったのです。金融機関がわざわざ借り手を連れて いって、はっきりいって、民間金融機関がこの信用保証制度を利用して逃げてしまうとい うようなことが随分あったのではないかと言われたりとか、いろいろなことがありました。 実際にこれは国民の税金も相当投入されて行われていたもので、これに対する分析、評価 がさっぱりないということは、国民に対しても非常にどうかと思います。確かに非常にい ろいろ難しい問題があるのはわかります。これを下手に分析すると、そんな効果があるな らもっとやれといわれて圧力がかかるということとか、いろいろなことがあると思うので すけれども、そこら辺の加工の仕方は、皆さん非常に有能な方なので、であるからして、 今の施策は大事だというような帰結をすればいいので、それは正確にやっていただかない と、あれだけ鳴り物入りでやった施策がすーっとわけのわからない形でなくなってしまう のは、国民としては困るわけでございます。したがって、これも評価の問題ですけれども、 今回の白書とか報告書には出てきませんが、時期を見て、ぜひともそれはお願いしたいと いうことでございます。 以上です。
○安田調査室長
それでは、一番最初の点でございます。デフレ、空洞化というのがつ ながっているのかということで、第1部と第2部なのですけれども、実は第1部と第2部 の間に、本体ではつなぎというのを作っておりまして、資料―6の20ページに当たるわけ ですが、海外の例なども引きまして、海外でもグローバリゼーションの波というのは当然 かぶってきた。そうした中で、きちんと対応しているところがあるのだと。むしろ中小企 業というのは、そういうときにでも対応できる力を十分に持っているというようなことに ついて、若干激励を込めて書かせていただいている次第でございまして、それをもって2 部の経営革新につなげていくということをしております。1部のところで、空洞化の部分 で経営革新型とあえて対応を呼ばせていただいていますのも、2部の経営革新というとこ ろに積極的にもっていきたいというつもりがございまして、その観点から、1部と2部を つなげていくということを意識的にやらせていただいた次第でございます。
○杉山中小企業庁長官
政策評価についてのご質問が南条さんからありましたが、一般 論でいいますと、まず政策評価をこれからどんどん高めていくのが不可欠であるというの はそのとおりだと思います。平成14年度から政策評価法というのが施行されまして、各省 庁、政策評価を事前事後、両方で行う。しかも、外部評価というものも取り入れるという ことになってきていますが、私どもは既に法律の施行の前から、経済産業省、中小企業庁 分も含めて、政策評価をトライアルとしてやっています。中小企業庁の施策についても、 13年度の施策を講ずる際に、例えば目標をどのようにするかといったような事後の評価に 資するようなことを掲げ、あるいは従来の施策の評価もしながら、13年度の施策をつくる というようなことをやってきています。14年度もしかりです。
こういった13年度、14年度の事前評価については、既にオープンになっていまして、経 済産業省のホームページでもごらんになれますし、それぞれの年度で数センチぐらいの分 厚い本なのですが、これは世の中に一般的に既に公表されています。また、これから外部 の学識経験者も入っていただいて、それらについて外部審査もやっていただくという段取 りになっています。もし必要なら、4~5センチの厚さの評価書をごらんになっていただ くことは可能だと思います。
それから、いわゆる特別保証について、どう評価しているのかというお話だったと思い ますが、この中小企業白書の2000年度版で特別保証についての評価を分析しております。 今、数字は余り覚えていませんが、平成10年、11年度の両年度で雇用を10万人ぐらい維持 する効果があったとか、負債の総額でいうと、たしか2兆円ぐらいあったと思いますが、 そのくらいの倒産が回避できたとか、会社の数で1万社ぐらいの倒産を回避することがで きたといったような評価、分析をしております。ですから、そういったことで、特別保証 の評価もそれなりの分析はしていると思っています。
なお、現下の経済状況の中で、特別保証制度を復活すべきだという議論も、中小企業の 方々、あるいは政治、特に国会の委員会等でいろいろございます。そういうものに対して どう対応するのかというのも、前回の特別保証制度の評価というのと不可分だと思ってい ますが、私どもは今のところでは、当時、非常に激しい施策を講じたのが、未曾有の金融 パニックともいうべき、きつい金融情勢というものを背景にして、臨時異例の措置として やったということ。それから、モラルハザードだとか、銀行の点もお話しされましたが、 そういう批判もあること。あるいは、中小企業の方々がこういうデフレの状況下の中で、 借金をどんどんふやすことよりも、むしろ借金を軽くするといった方向でのニーズが高い のではないかというようなこともありまして、現在のところでは採用をしていないという ことでございます。そのような点も、いわば前の特別保証制度を評価するということのあ らわれというか、反映というようなことで考えているわけです。
なお、いろいろな国会の審議の場では、特別保証制度を復活すべきだという声が与野党 ともになかなか強い状況にあるわけでございまして、そういう政治の声、あるいは政治主 導の行政を行うべしといわれている中で、特別保証制度の前回の評価も踏まえながら対応 していくことが必要だと思っています。
○山口会長
南条さん、よろしゅうございますか。
○南条委員 はい。
○山口会長
それでは、そのほかに。どうぞ。
○見学委員
ご質問に近いのですけれども、白書の概要の6ページ、創業希望者と実際 に創業した方との差異を分析されていますが、若年層や高学歴や男性の創業希望者の割合 が実際に創業をした人に比べて多いというのは、よくわかりませんけれども、いうならば、 こういう人たちは創業実現率が悪いということを意味していることでもあるのだろうと思 いますので、夢を追う人が若年層であり、自己過信している高学歴であり、男性だという ことなのかと思います。したがって、この人たちが創業実現率を上げるためにはどうした らいいのかということを言いたいのか、こういう夢を追うことはいいことだといって、大 いに夢を持ちなさいということを言おうとしているのか、分析の方をみていないので、よ くわからないのが1点です。
それから、8ページ、実際の開業年次別の事業所の経過年数別退出率というのが上の表 にありますけれども、これは資料の注を若干拡充してもらえばいいのかもしれないのです が、初年度で3割以上退出してしまう。13年目でも10%弱が退出している。これは足し算 をしていくと 100を超えてしまうような感じになるので、多分、残存者の率なのだろうと 思います。普通に考えると、生き残っている割合は一体どのぐらいなのだろうというのが、 どっちかというとわかりやすいのですけれども、注にきちんと書いてくだされば、何%残 存者が翌年も生きていますよというような注が書いてあればわかりやすいのかと思ってい ます。
それから、下の表も、2年間で黒字になったところが20歳代以下だと66%。これは信じ がたいすばらしい数字なので、合計のところをカウントしても、相当な率である。どうも 中小企業は赤字が圧倒的に多いというのが常識なので、2年間でみんな黒字ですよという とびっくりしてしまうのですが、これはいうなれば、国金の融資先という形での創業者に 対して、絞りに絞ってというと失礼ですけれども、いいところに貸したものがこういう結 果になっているという意味なのか。つまり、融資対象者の結果なのかどうか。その辺も注 書きなどで書いていただければと。 以上3点です。
○安田調査室長
まず2点目のところから、一番簡単な問題。ご指摘のとおりでありま して、残った人のうちのどれぐらいということです。だから、最初の年に 100いて、それ が30減って70になった。70に減ったうちの例えば2割が減ったと。そこで、それをさらに 引いたところのうちの何割かが減ってという形になっていくというので、全員いなくなっ てしまうということではございません。
その下の新規開業の状況ですけれども、これは、2年以内に黒字になっているのはこう いうところだということになっているわけですが、確かに国民金融公庫の資料を使ったと いうことで、資金面では、スタートアップをするときに少し楽であったという可能性はあ るかと思います。国金から借りることができましたということですから。
あと、ここでいいますと、最初の年にだめでやめてしまう人たちがかなりいる。2年目 に、見切りをつけなくてまだやっているという人たちになっているわけなので、ゼロベー スのところで、出発した人全体が分母になっているわけではないということになるわけで す。調査をした時点でのということになってくるわけです。そういう意味では、データの 制約というのが一定の範囲であるということになるかもしれませんが、その範囲の中で、 成功している人――生き残り、かつ黒字になっているという意味ですが――はどういう人 かとみていくと、若い人が多いということになってくるという趣旨でございます。
それから、創業希望者というのが、若年、高学歴、男性というのが多い。ただ、これは 逆にいいますと、夢を追いかけているみたいな感じの人なのかもしれませんが、創業する ためには2つの必要性がありまして、1つは、意思がなければ創業するわけがないだろう ということで、意思が必要です。意思はあるけれども、なかなかお金がありませんという 形で創業できないという物理的要因があるということで、とりあえずここのところでは、 意思のある人たちを見ていくということで、もちろんこの人たちの意思というのが、非常 にほわっとした意思なのか、それとも非常に強い意思なのかということは、調査の中だけ では完全に把握することはできませんが、一定のそういう志向がある人たちをまず選んで みませんと、どれぐらいできるかというところの瀬踏みができないということで、この数 字を紹介させていただき、かつ、その内容について性格を紹介させていただいたというこ とでございます。 以上でございます。
○山口会長 よろしゅうございますか。
○見学委員 はい。
○山口会長 そのほかにございませんか。どうぞ。
○都村委員
14年度の施策等について要望がありますので、お願いしたいと思います。 私自身も中小企業でやっておりますものでございますけれども、私どもの商工会といたし ましても、各地区で本年度やられました中小企業経営革新支援法、そういったものの認定 を製造業を中心に取るように勧めています。そして、特に経営革新支援法とか、創造法と いうのですか、あんなものとかをぜひ取るようにいっているのですけれども、金融等で借 り入れということがまず第1に出てくるのですが、そういうことでなくて、この法律に基 づいた認定をとれば、自分自身も企業の従業員と一緒に支援法をとったのだという意欲を もってやれるという意味もありまして、ぜひ皆さん方でとりなさいというようなことで勧 めています。
ただ、この認定が、中小企業で特に20人とかそのあたりの製造業の方でいきますと、な かなか資料作成まで時間の許すことがございませんものですから、できるだけ申請等あら ゆるものについて簡単にしていただきたい。こういうことを要望したいと思います。
また、同じような形で、厚生労働省の方でもエキスパート人材育成とか、いろいろなも のがあるのですけれども、中小企業にとっては、申請が非常にしにくいぐらい、微に入り 細に入るような感じになっておりますので、その点については、ぜひひとつ簡素化を目指 していただきたいというような感じをもっておりますので、お願いしたいと思います。
○西村経営支援部長
経営革新支援法の本来の意味は、融資をもらうためにやるという のではなくて、今まさに委員おっしゃいましたように、これによって経営革新し、自分か ら目覚めていって新しいところへ出ていくのだというところに意味があるわけでございま す。それにいろいろな助成もついてくるわけでございます。
今ご指摘の、確かに申請の数字とか、そういうものが中小企業は大変であるということ がございましたので、今年度やっと、簡単に数字を入れましたら申請書ができるソフトを 開発いたしまして、これを支援センター等々に全部配りまして、皆さんのお役に立てるよ うにしたいと思います。これで大分客観的にいろいろな業務、申請書の作成が楽になるの ではないかと考えておりますし、また、各地の支援センターにおきましても、中小企業診 断士等も含めまして、この支援が簡単にいきますように努力いたしますとともに、さらに 簡素化に努めてまいりたいと思っております。
○山口会長 都村さん、よろしゅうございますか。
○都村委員 はい。
○山口会長 そのほかにございますか。どうぞ。
○紺谷委員
私は、最大最良というか、最善の中小企業施策は景気回復であると勝手に 思慮しているところでございますけれども、そういう面で、中小企業庁というのは、他省 庁とどのぐらいの話し合いをなさっていただけたのかどうかということをまずお聞かせ願 いたいと思うのです。特に金融庁です。金融の問題というのが非常に大きいわけでござい まして、ここにいろいろお書きくださって、ご苦労いただきましたけれども、常識的な結 果かなと。中小企業は中小の金融機関の相手になっているとか、中小企業は金利が高いと か、データで確認できたということはいいことだったのかもしれませんし、白書全体に一 生懸命応援しようというような気持ちが出ておりまして、そういうところは大変ありがた いことだと思っておりますけれども、今一番中小企業が苦しんでいるのは何かと申します と、やはり金融なのです。
ご承知のように、昨年は不良債権処理を一生懸命進めた結果、逆に増えるということに なってしまったわけです。信用金庫の方たちにお聞きいたしましても、組合の方たちにお 聞きいたしましても、あるいは銀行の方たちにお聞きいたしましても、特別検査というの が、ものすごい貸し渋りというか、貸しはがしを強要するような形になっているというこ となのです。私、勝手に思っているのですけれども、金融庁の検査官の方たちは、交通安 全週間のお巡りさんと一緒だな、ともかく点数稼ぎではないかと。ある信用金庫の理事長 さんにお聞きしましたところ、お土産を用意しておくのだとおっしゃっているわけです。 素人でもわかるような、これはランク下げた方がいいなというようなものをわざとみえる ように置いておいてというわけではないのですけれども、それでランクを下げてやったと いうようなお土産を持っていっていただくということまでやっているというお話をちらっ とお聞きしたことがあるのです。 そういう状況は何なのかなと。民に任せようとおっしゃっている小泉さんが、どうして 民間の金融機関が自分の判断で残している不良債権をあえて処理しろとおっしゃるのか、 私は全くわからないのです。以前にもここでお話しさせていただきましたけれども、不良 債権問題というのは、2年も3年も前に峠を越してしまっているわけです。今もっている 不良債権というのは、残した方が銀行にとっても得というようなものだと思うのです。で すから、ゼネコン、スーパーだって、大き過ぎてつぶせない。そのとおりだろうと思いま す。特に中小企業なのですけれども、中小企業は体が小さい分だけ、赤ちゃんがすぐ脱水 症状を起こすように、こんなに長い不況には普通は耐えられないのです。それを一生懸命 頑張ってきているわけでありまして、この間も小泉さんは、大分前ですけれども、政府は やることはやった、あとは民間の努力であると、企業の努力が足りないかのようなご発言 が内閣でも立て続いているわけなのですが、それは事実と違うのではないかと私は思うの です。景気対策を当てにして口をあけて待っているようなだらしのない中小企業は、たく さんの中にはごく一部おいでかもしれませんけれども、大抵の中小企業は個人保証までし ておりますから、必死でやっているわけです。出てくるか出てこないかわからないような 景気対策を当てにして、努力をしないでいるようなところはほとんどないと思ってもよろ しいと思うのです。
これも前にお話しさせていただいたことなのですけれども、今みたいな異常経済、デフ レ経済、縮小均衡、その上に金融恐慌の懸念まであった。98年には確実にありましたけれ ども、今年の初めも結構際どい状況だったと思います。株価対策で株価が1万 1,000円を 超えまして、これでやれやれということだったのですが、 9,000円台も前半までおっこち ましたときには、相当ひやっと内心青くなった人たちも、よくおわかりの方の中にはおい でだったと思うのです。今は多分大丈夫です。
それから、柳沢さんがおっしゃっているように、ほとんどの銀行の経営が大丈夫だとい うことも確かです。ですけれども、一部外資が風説の流布まで使って銀行株を売り浴びせ てきた。一方で、不良債権の問題を大げさに言い立てて、要注意先債権が不良債権だとい うようなことをおっしゃって、 150兆あるではないかとか何だとかという議論が、ここ1、 2年ずっと続いてきたわけでありまして、つまり銀行株を下落させるというような株式市 場での動きというのは、不良債権が原因で銀行の支援を行っているということを言い立て て、不良債権の処理を促進するための手段なのです。そんなことは、市場関係者の中でわ かる人にはわかっているということでありまして、今回、空売り規制が非常に効いたわけ ですけれども、規制強化が効いたわけではないのです。どんなにざるの目を細かくしたっ て、しょせん水は漏れるのです。一番効いたのは、非常に悪いことをしてきた外資を十数 社も摘発したということでありまして、空売りを利用して、金融不安をあおり、不良債権 処理を迫ってきたということにストップをかけられたのです。だから、あんなに急速に株 価が上がったわけでありまして、アメリカ経済頼みの日本では、アメリカの株価が上がれ ば上がる、下がれば下がるという状況が続いていたにもかかわらず、空売り規制以降は、 アメリカの株価が下がったって知ったことではないという感じで、日本の株価がばんばん 上がっていって、ものすごい売買量であるということも皆さんご存じだったと思うのです。
そういう非常に効いた施策のおかげで今は安定しております。3月決算も乗り越えまし た。ですけれども、相変わらず不良債権処理を進めよというようなアメリカからの圧力が あるわけでございまして、小泉さんがテロ事件の直後、アメリカに行ったときも、ブッシ ュさんがまず第1番におっしゃったのが不良債権処理である。この間、ブッシュさんが日 本におみえになったときも、会談の中では出なかったけれども、事前に書簡が来て、不良 債権の処理を進めよということです。これは要するにどういうことかといったら、日本の 企業をつぶして、僕たちに安く売ってくださいよということだろうと私は勝手に思ってい るのです。何かイエローペーパーみたいな言い方で申しわけないのですけれども、事実は そうだと思うのです。そういう中で、中小企業及び日本の企業をどうやって守るかという ことがとても大事だと思っているのです。実は、外資はこうだといわれています。大企業 をつぶして手に入れても、日本の大企業は自分たちの手に余る。むしろ、中堅、中小の中 で優良なところを手に入れて、転売なり何なりを図った方がいいのではないかというよう に外資は戦略を転換したとも聞いております。
ですから、今、日本の中小企業の7割以上が赤字であろうと思われるわけですが、そう いうデータが確か出ていたと思うのですけれども、赤字の企業がみんなサボっているのか、 無能なのかといったら、決してそうではないわけです。こんな異常な事態で、中小企業が 赤字の中でも社長はお給料を受け取らないで、せっせと一生懸命、借金を返しているので す。金利も払っているのです。それが要注意先債権ということでありまして、それをラン ク下げろだとか何だとかいわれましたら、信用金庫、信用組合というのは、自衛のために 貸しはがしをせざるを得ないのです。そういう状況をどうお考えかということを、杉山長 官を初めとして中小企業庁の皆さんにお聞きしたいのです。この件に関してどういう対応 を金融庁と話し合ってくださったかということなのです。
今、非常に苦しんでいる赤字企業がバブルに踊った企業であるとか、非常に無能であっ たりとか、サボって景気対策を当てにしていたりというような企業というのはほとんどな いのです。必死に頑張って、それでも苦しくてたまらないのです。ふだんだったら60点が 合格点だけれども、今は80点の状況だという話は前にもさせていただきましたけれども、 今みたいな状況で中小企業を選別することは、きちんと日本を支えてくれるはずの底辺の 中小企業を、70点、80点、79点とか75点とかとれるような企業まで含めて、どんどんつぶ すということなのです。とてももったいなくはないですか。だから、要注意先債権の中身 というのは一体どうなっているのかとか、信用金庫、信用組合、第二地銀のような中小企 業を主として相手にしてくださっているような金融機関の皆さんの話をじっくり聞いて、 その現状をお調べいただいて、中小企業庁としては何をすべきかというようなことをお考 えいただきたいと思うのです。それが一番大事なことだと思います。
今、非常に金融で苦しんでいるのです。創業も開業も大事だと思いますけれども、そん なものは、ほうっておいたって経済の環境が良くなったら自然に出てきます。経済の環境 が悪いのに、やれといったって、どんな支援センターをこしらえたって、出てこないもの は出てこないと私は思うのです。経済の環境を良くするのが大事なのです。先ごろの日銀 短観をみますと、大企業でさえ資金繰りが苦しくなってきているわけです。何でか。金融 庁のおかげです。この間までそんなことなかったのです。ずっと資金繰りは改善されてい るというようにどの業態もいってきていたのです。それが大企業まで資金繰りが厳しくな ったというネガティブな回答になってきたわけです。この現状をどうお考えか。
今、不良債権の処理をそのように急いで進めなければいけない理由って何なのですか。 とても変な状態が起きていると思うのです。不良債権の処理は、今、進めるべきではない です。かつて、確かに不良債権隠しがあったということはありますけれども、今や不良債 権を公表し、処理を前向きに進めると公表すれば、銀行の株価は上がるという状態なので す。もっと前から、95年の大和銀行の赤字決算から、昨年のUFJの赤字決算のときから、 実はずっと、不良債権がありますと公表して不良債権処理をやった方が銀行の株価だって 上げる時代なのです。銀行が不良債権を隠しているというのは、ずっと以前の思い込みで ありまして、その中でさまざまな施策がとられている。それを利用して、外資系がいいか げんなレポートを出したりとか、自分たちは空売りで大もうけする。空売りで大もうけし ただけではなくて、実は不良債権でもう一回もうけようとしているのだということは中小 企業庁の皆さんはきっとご存じだと思うのです。そういうことにどういう手だてをとって いただいているのかということをぜひお話ししてください。
最後に、これは付け足しなのですけれども、先ほど杉山長官のお話をお聞きして、特別 保証制度を前向きに評価なさったのか。つまり、ポジティブに評価なさったのか、ネガテ ィブなのかということがちょっとよくわかりませんでしたので、どっちなのかということ をお聞かせいただきたいと思います。おっしゃるとおりに、現状では必要ないというよう には思っております。ですけれども、98年には、これのおかげで非常に大きなプラスの効 果があったと私は思っておりまして、どんな制度にだって、必ずネガティブな側面はあり ます。ですから、マイナスの面を言い立てて、これが政治家の圧力だというような評価の 仕方というのは、少し事実と違うのかなというように思っております。確かにこれを悪用 した銀行はいました。だけど、その比率というのは、全体からみたらそんなに大きくない のです。無用な倒産を避けられた企業に対するプラスの効果の方がずっと大きかったと私 は思っております。 どうも長々と失礼いたしました。
○山口会長
ありがとうございました。今、一般的に中小企業以外も含めて、貸し渋り 問題、不良債権問題のご意見がありましたので、特に中小企業の立場としてどうするかと いう問題と、最後のご質問について。
○杉山中小企業庁長官
最初に、特別保証の問題でございますけれども、先ほど言いま したように、相当な雇用の維持だとか、倒産の回避だとか、具体的に記憶にある数字を申 し上げましたが、そういう意味で、当時の日本が経験したことのないような状況の中でと った政策として、そういう効果があったという意味で、私はポジティブに評価をしている つもりです。ただ、今現在、再度あれを導入するかどうかという点についてみれば、先ほ ど申し上げたような感じをもっているということだと思います。
それから、非常に広範なお話で、私が答えられるところも少ないのですけれども、むし ろ、この委員の中に金融の専門の代表の方もおられますから、そういう方のご意見を伺っ た方がいいのかもしれませんが、3つぐらい申し上げたいと思います。
1つは、やはり非常に資金繰りが厳しいと。我々の調査では、平成10年の資金繰りの厳 しさにほぼ匹敵するぐらいの中小企業の資金繰りの厳しさです。これは、極めて厳しいを もっと超えているぐらいの話だと思います。そういう中で、担当課長から話をしましたよ うに、セーフティーネット保証だとか、セーフティーネット貸付といったようなことで、 非常に厳しい金融経済情勢の中で、やる気と潜在力のある中小企業までが破綻に追い込ま れるということは、絶対に防止しなければいけないというのが、私どもの今の中小企業政 策の1つの大きな柱としています。したがって、補正予算を含めて、さまざまな格好で予 算をとり、あるいは法律を改正し、皆さん方にもいろいろお願いをしながら、そういった 意味でのセーフティーネット貸付、あるいは保証というものについて、格段の万全の対応 をとるというのが1つだと思っています。
もう1つは、紺谷委員が最初におっしゃったように、さはさりながら、やはり基本はマ クロ経済といいますか、景気を良くすることが中小企業のために一番というのはそのとお りだと思っていまして、2月27日に政府で、デフレ対策か対応策かわからないのですが、 そういう政策をまとめました。その中に中小企業金融対策というのも入っているのですが、 さまざまなところでさまざまな議論をしました。こんなことを言っていいのかどうかわか りませんが、中小企業の金融対策というのは、いわばデフレの結果として、あるいはデフ レの影響として、資金繰り等に困っている中小企業の方々をどうサポートするかという施 策であって、デフレを退治する政策ではないのではないか。したがって、デフレを退治す る、そういうデフレ対応策ではなくて、デフレ対策そのものが重要ではないかというよう な議論も随分しましたが、これは私どもがどうこうできる話でもないわけで、政府全体と して、デフレを退治するための政策というものを基本的に取り組んでいくということが重 要だと思っていまして、ある意味では、中小企業の金融対策というのは、デフレの結果と して困難に直面されている中小企業の方々をサポートする施策であると私は思っています。
それから、おまえら金融庁とどうやっているのかという話でございましたが、中小企業 庁と金融庁とは、長官、局長レベルから、担当レベルまで、さまざまなレベルで極めて緊 密な議論をしています。もちろん金融庁のポリシーと私どものポリシーがすべて同じとい うわけではありません。しかし、さまざまな機会をつかまえて、私ども中小企業の資金繰 りの厳しさというものが、金融庁の行政、あるいは行政の運用から影響を受けているとい うようなことは、さまざまなレベルでさまざまなときに申し上げています。具体的に私ど も、1月、2月に次長以下を地域に派遣しまして、地域の金融機関の方々ともいろいろ議 論させていただきました。その中で、金融検査のあり方についてのご意見も承りました。 そんな点も含めて、いろいろなレベルで金融庁の事務方と話をしておりまして、金融庁は 金融庁のポリシーがありますから、全部同じになるわけではありませんが、例えば実際の 検査をする際の検査のマニュアルを具体的にどう展開するかといったようなところについ て、中小企業の特性というものを配慮した上での検査をしていただくための具体性をきち んとしてもらうという点については、特に強く申し上げてきております。そういう点は、 例えば今回、デフレ対策の中で金融庁がやっていただけるというようなことだと思ってい ますし、どういう具体的な案が出るのか、我々ともよく意思疎通をしながらやっていこう というような話になっています。それは一例ですけれども、そういった格好で、金融庁の いろいろなポリシー、あるいは施策の執行というのが、中小企業のさまざまな金融面での ところに影響を与えているのだというようなことは、相当濃密な議論を私どもは金融庁と していると思っています。
○山口会長 紺谷さん、ご質問の幅が広かったのですが、それでよろしゅうございます か。ちょっと時間が迫っていますので……。
○紺谷委員 また後で。
○山口会長 それでは、堤委員、どうぞ。
○堤委員
途中で割って入ったような感じで申しわけありませんが、紺谷委員の発言は、 今の日本の状況を非常に明確にあらわしていると思います。私たちも今、貸し渋りに対抗 している状況でありますが、貸し渋り、貸しはがし、最近は囲い込みという、実際のお金 を貸す場はめちゃくちゃだと思います。ただ、私はそれを全部銀行のせいにするべきでは ないと思いますけれども、その背景を紺谷委員はよく説明していただいたと思うのです。 というのは、銀行にとっても、実は私のところもそうなのですが、不良債権を処理すれど 処理すれど、日本語には、やってもやっても進まないというのに賽の河原という言葉があ りますが、私のところも賽の河原以下でして、片づけても片づけてもわいてきてしまうの です。ですから、簡単にいいますと、不況下で不良債権処理をするということがどんなに 大変なことか。
総理がよく構造改革なき経済発展、あるいは景気回復はないとおっしゃるのですが、も し不良債権のことがそのメインであるとすれば、幾ら不良債権処理をやっても、不良債権 の残高は増えてしまうのです。これは、何度も申し上げますが、賽の河原以下でございま して、これは日本の今の経済政策のポイントだと私は思いますが、非常にバランス感覚が 必要だと思います。要するに、構造改革だけ、あるいは構造改革を非常に大きくやって、 景気対策は小さくやる。それで、うまく構造改革が進んでいるかというと逆でございまし て、私たちの見ている目からいいますと、景気回復のない構造改革はないのではないかと いう、全く逆説になってしまうのですが、恐らく長官はお立場もあって明快に言えないと ころもあると思いますので、私はぜひ申し上げたいと思います。
それから、紺谷委員のご発言の中で、今さら創業をやってもというのがありますが、私 は、今の空洞化に対してものすごく強い懸念をもっています。それは、今、1日 100件ず つ工場がつぶれているのです。減っているのです。この状況は、日本にとって非常に大事 な中小企業がつぶれていくという意味では、ものすごい危機感をもっておりまして、それ は、単に中小企業政策だけでなくて、早く減っていくことがおかしいのか、一向に増えな いのがおかしいのか。新しい事業というのもありますが、これは中小企業政策を越えてい ると思いますが、外国からの投資環境からみても、非常に劣悪で、ハイコストで、企業に とって住みにくい国をつくっているわけでありますから、そういう中での創業、あるいは 経営革新というのは、非常に重要なことだと私は思っております。むしろ、空洞化問題に ついては、中小企業政策だけで見ずに、もっと大きな視野で政策を打っていくということ が必要なのではないか。これは今の回答よりはやや蛇足になっておりますが、よろしくお 願いしたいと思います。
○山口会長 紺谷さん、まだご質問したいことがあるかと思いますが……。
○紺谷委員 どうぞ、ほかの方に。
○山口会長 先ほど手を挙げました……どうぞ。
○伊丹委員
今、堤さんからお話のありました、創業、あるいは空洞化への対応策とし ての企業の維持ということの重要性を私も強く強調し、なおかつ、そのための対策を今回 の平成14年度に講ずべき施策の案といわれているものよりも、はるかに拡充した、さまざ まな対策をお考えいただく必要があるのではないかと思います。今回の中小企業白書、非 常にいいと思いますのは、中小企業の創業から誕生、そして退出に至るまでのプロセスを 克明に分析され、なおかつ一番最後に、「まちの起業家」というキーワードで、いわばハ イテクベンチャーにばかり目が行き過ぎていたこれまでのベンチャー対策から、普通のベ ンチャー、普通の創業を大規模に支援するにはどうしたらいいかというように、多少視点 の転換が起きているように私は思います。非常に重要なポイントだと思います。
ハイテクベンチャーというのは、何か格好がいいのですが、雇用を維持し、アメリカで もイギリスでも、経済全体の活性化につながったのは、実は私の言葉ですと、食い詰めベ ンチャーだと思います。さまざまな理由でリストラに遭ったり、あるいは前にやっておら れた事業の具合が悪くなって、転業なさるか、再創業なさるか。そういう追い詰められた 方たちがどん底で頑張って創業なさったものが生き残る確率が実ははるかに高い。その方 たちは決してハイテクの研究開発志向型の企業ではないケースが多い。そういう人たちを 一体どうやって大規模に支援できるのかというところに政策の大きな力点を置かないと、 これだけ開業率が下がってきて、おかしい経済の状態になっているこの方向は変えられな いのではないかと私は思います。極めて大規模な対策が必要なのではないか。しかも、そ の対策は、創業時に必要な資金調達の問題に手当てをするというレベルではとても済まな いように思います。
創業時に感じられる困難というので、リストが幾つもございました。確かに資金調達の 問題は、わずかながらの差でトップの項目にはなっておりますが、販路の確保が難しいと か、人材の確保が難しいというような、経営上の、実際に仕事を遂行する上での困難さが、 ほとんど同じ重要性で困難として挙がっている。そこのところの対策をどうやってきっち り国として支援ができるかということにあらゆる知恵を使う必要があるように私は思いま す。
そのために、ぜひとも経済産業省の中で、他の部局との関連もあって、強調していただ きたいと思いますのは、先ほど空洞化の問題で、毎日 100件工場がつぶれているという話 とも関連があるのですが、産業集積を懸命に維持し続けるための基盤援助というようなこ とにもっと大きな力を注ぐべきではないか。実は、産業集積が確固たるものとしてあると いうことの最大の意義は、創業を容易にすることなのです。販路がある、周りに人材がい る、そういう地域の状況を確保してあげることが、実は創業が増えることの回り道のよう だけれども、非常に大切な対策だと。したがって、産業集積の活性化法というのもあって、 そちらの政策の取り組みもあるわけですから、そちらの政策の枠組みも使いながら、産業 集積の維持をし、食い詰めベンチャーなどという言葉は、ちょっと不穏当な言葉かもわか りませんので、それは使っていただかなくていいのですが、まちの起業家という言葉でい いのですが、まちの起業家を2倍、3倍に増やすという大規模な政策をぜひお願いしたい と思います。
○山口会長
まだまだ質問がおありのようでございますが、あと部会報告がちょっとご ざいますので、一応これで、この審議、ご意見につきましては打ち切りたいと思います。 ご協力お願いいたします。
それでは、平成13年度中小企業の動向に関する年次報告(案)及び平成14年度において 講じようとする中小企業施策(案)につきましては、細かな字句等、詳細にわたる部分は、 会長である私にご一任いただくこととしてご了承いただきたいと存じますが、いかがでご ざいましょうか。
(「異議なし」の声あり)
ご異議ないということでございますので、ご了承いただいたものといたします。ありが とうございました。
本日開催いたしました中小企業政策審議会及び基本政策部会の合同会議でありますが、 ご存じのとおり、このほかにも本審議会のもとには各分科会及びそれに属する部会がござ います。ここで、平成13年度の1年間に開催されました各部会の活動状況について、事務 局からご報告いただきたいと存じます。
まず企業制度部会、担当の北川財務課長、よろしくお願いいたします。
○北川財務課長
財務課長の北川でございます。よろしくお願いします。 それでは、資料―12をごらんになっていただきたいと存じます。企業制度部会は、民商 法、あるいは税制、会計など、企業をめぐるさまざまな制度について、小川部会長のもと 審議をいたしております。昨年も、その3点につきまして審議をしてきたところでござい ます。
まず初めに商法改正でございます。これは、本日ご出席の前田先生が法制審議会会社法 部会の部会長として、ここ2年ほどずっとご審議をいただいたものであります。これに対 応いたしまして、企業制度部会といたしましても、商法全体の見直しの中で、中小企業と してどういう考え方でいけばいいのかということを議論してきたわけでございます。特に、 所有と経営が一致している、あるいは株主・債権者が少ないという特徴から、どういった ものがいいのかということでございます。基本的には、定款自治をどれほど実現していけ るのかということでございました。
昨年、3回ほど企業制度部会を行っておりますが、その内容はちょっと省略いたしまし て、次の2ぺージに進んでいただきたいと存じます。改正の結果でございますけれども、 会社の機関に関する見直し、株式制度に関する見直し、次のぺージにございますが、会社 の計算・開示に関する見直しということがございます。それぞれにつきまして、中小企業 経営という観点から経営の自由度を確保する、あるいはディスクロージャーも進めるとい いうことで、私ども企業制度部会の考えていた方向で議論がまとまっていったのではない かと考えているわけでございます。
次の4ぺージに進んでいただきたいと思います。これは課税についてでございます。こ れは、法人、個人、あるいは組合とさまざまな事業体がございますが、こういった中でど ういった税制が適当かということを議論してきました。その後、特に幾つか雇用の問題も ございますので、研究会を設けまして、事業承継、第二創業という観点から、特に相続税 、 あるいは留保金課税というものにつきましてご検討いただき、これは平成14年度税制改正 におきまして、それぞれ一定の改善をみたということでございます。
最後に5ぺージにまいります。これは会計でございます。先ほど申し上げた商法の中で、 中小企業もディスクロージャーを進めようということでございまして、具体的に中身はど うするのかという議論でございます。これは、税法、商法、あるいは証券取引もさまざま な制度がございます。その中で、中小企業がディスクロージャーを実効的にやっていく方 法、あるいは中身の議論につきまして、企業制度部会で審議した上で研究会を設けまして、 小川部会長自ら研究会の座長になっていただきまして、現在、検討を進めているところで ございます。内容は別紙につけてございます。 以上でございます。
○山口会長 ありがとうございました。 次に経営安定部会、担当の山根経営安定対策室長、お願いいたします。
○山根経営安定対策室長
経営安定対策室長の山根でございます。 資料―13をごらんください。経営安定部会におきましては、上野部会長のもと、小規模 企業共済制度における付加金の率についてご議論をいただきました。小規模企業共済制度 は、いわば経営者のための退職金制度でございますけれども、退職金としての共済金、こ れは基本的には掛金に応じまして法律で決められた額が設定されているわけでございます が、それのほかに、運用収入等で剰余金が生じた場合には、その年に在籍された方々に付 加共済金という形で共済金を割り増ししてお支払いするという制度になっております。そ のための割り増し率を決定するに際しまして、これは小規模企業共済法の中で、割り増し 率を幾らにするべきかというのを事前に中政審でご議論をいただいて、それをもとに決定 するという手続が規定されております。
そのため、資料―13の1のところにございますけれども、本年2月に諮問がございまし て、3月5日に経営安定部会でその答申案をご議論いただいた上で決議していただいたと いうことになっております。それをもとに答申を作成した後、3月27日でございますけれ ども、告示を出しております。
その内容でございますけれども、2ぺージ目の参考というところをごらんいただきます と、付加金を支給する原資がどの程度あるかという試算をいたしますが、14年度の運用収 入等の見込み、共済金の支払い額の見込み、あと、責任準備金の増加額の見込みといった ものをトータルいたしまして、さらに13年度末の剰余金の見込みを加えましたところ、こ れは13年度の剰余金を引き継ぐような形でマイナスの値が出たということになっておりま して、付加金の原資はゼロという計算結果になったわけでございます。したがいまして、 付加金の率もゼロという結論を得まして、ご答申いただきました。 以上でございます。
○山口会長 ありがとうございました。 次に経営支援部会、担当の近藤経営支援課長、よろしくお願いいたします。
○近藤経営支援課長
近藤でございます。 資料―14でございます。経営支援部会につきましては、小川部会長のもと、昨年度2つ の審議をいただきました。いずれも法律に基づく付議でございまして、1つ目が、上にご ざいます中小企業経営革新支援法第10条に基づく業種指定ということでございまして、資 料はあと2、3に詳細がございますが、簡単に申し上げますと、経済的な大きな変化で、 大きなあおりを食らっている業種についての緊急対策を講ずる制度でございまして、一種 のセーフティーネット的制度でございます。今回は、酒類卸売業につきまして、いろいろ な免許制度の変化に伴って、大きく市場環境が変わっているということで、業界全体での 共通的な対策を組むということでご審議いただき、その結果、政令改正により業種指定を いたしました。
もう1つは、下にございます中小企業支援計画でございまして、これは毎年、国、県、 中小企業総合事業団の行います中小企業支援事業につきまして、全体を計画的に、効率的 に進めるために、年度ごとに法律に基づき計画を策定するものでございまして、本年度の 14年度分につきまして2月にご審議いただき、先月末で告示をいたしました。 以上でございます。
○山口会長 ありがとうございました。 次に取引部会、担当の小高取引課長より説明してください。
○小高取引課長
小高でございます。 資料―15をごらんいただきたいと思います。取引部会、部会長は橋本寿朗委員でござい ましたが、冒頭、会長からご報告がありましたように、去る1月15日にご逝去されました。 謹んでご冥福をお祈りいたします。
取引部会は、昨年6月、いわゆる官公需法に基づきます閣議決定案、平成13年度中小企 業者に関する国等の契約の方針について調査、審議をしていただき、了承をしていただい たところであります。閣議決定案の中身につきましては、そこに箇条書きに書いてござい ます。13年度の目標、中小企業者向け、約5兆 2,820億円、トータルの官公需契約比率に 対しまして中小企業者向け官公需契約は45.1%ということでございます。新規措置につき ましては2つございまして、新規開業者に対して、各省庁に対して特段の配慮をお願いし たいということと、中小企業庁を通じて発信されるメールマガジンを活用しまして、発注 情報を中小企業者の方々へ直接提供するということでございます。7月10日に閣議決定さ れました。 以上でございます。
○山口会長 ありがとうございました。 最後に商業部会、担当の黒岩商業課長、お願いいたします。
○黒岩商業課長
黒岩でございます。よろしくお願いいたします。 資料―16をごらんください。商業部会は、石原部会長のもと、中小小売業、卸売業、サ ービス業の振興についてご審議をいただいております。昨年度につきましては、3月27日 に第1回の部会を開催させていただきまして、最近の中小小売商業、中小卸売業の現状、 政策の状況等につきましてご報告をし、ご審議をいただきました。
それから、中小企業流通業務効率化法は、中小の物流関係の業務が非常に厳しい状況に 置かれているということから、中小企業が共同物流を推進し、例えば共同で物流センター を設置したりすることに対して支援を行っている法律でございます。この支援の対象とな る共同物流センターの設備要件について、若干の緩和につきましてお諮りし、部会の了承 を得ております。今後、答申の手続を経て、4月中を目途に正式に告示を行う予定となっ ております。 以上でございます。
○山口会長
ありがとうございました。 以上をもちまして、予定の部会報告を終わりますが、部会報告を非常に要領よくやって いただきましたので、10分ほど時間が余りました。つきましては、先ほどご了承いただい て決定いたしておりますので、それは一応それとさせていただいて、ご意見の残っておら れる方で、もしございましたら、残った時間でお聞きしたいと思います。手を挙げていら した方が……井上さん。
○井上委員
先ほどから、この白書にしても、今年度の施策についても、非常に十分に 盛り込まれておるわけですけれども、あと、エンジェル税制の問題をできれば加えていた だきたいという感じがしております。というのは、この施策の中で最後に税制の留保金課 税の問題が出ておりますので、そこに加えていただければと思っております。
それから、まず一番問題なのは、中小企業対策費、前年度が 1,947億という数字であっ たわけですけれども、今年度、約 100億ほど削られている。今、中小企業の現況、いろい ろと皆さん方からお話がありましたけれども、対策費がまた削られるということに非常に 問題があるのではないか。むしろ倍増、3倍増ぐらいになるのが当たり前のところが、一 体中小企業のことをどのように考えているのかということだと思っております。先般、産 学連携の技術開発促進で 177億の補正がなされたわけですけれども、その応募件数は 2,7 27件、実際に採用されたのは 386件、7倍なわけです。特に東京都は大体9倍という数字 が出ておりまして、今はともかく新しいものに取り組んで、新事業の展開をしようという ところに、この程度では話にならないのではないかと思います。何とかその辺をもう少し 中小企業庁として頑張っていただいて、大きな予算を確保していただくということがまず 第1であって、ともかく、この施策ということは満足なわけでして、その裏につく金をひ とつ確保していただきたいということをお願いいたします。
○山口会長 どうぞ。
○村本委員
さっきから金融の話が大分問題になり、私もちょっと金融をやっておりま すから、1つ2つコメントしておきたいのです。
1つは、中小企業向けの融資残高がどんどん減少しているという事態をどうみるかとい うことでございまして、単純なインフレターゲット論を論ずるつもりはないのですが、や はりマネーサプライが足りないというのは相当問題だろう。したがって、その分析の中で はっきり書かれていることは、リレーションシップレンディングという言葉を使うのです けれども、地元に密着をして、地元のことをよく知っている金融機関が中小企業金融では メインプレーヤーであるというのが分析の中にあるわけです。そういうプレーヤーに対し てどういうインセンティブを与えるかということがわからないと、結局、過去1年で、信 金、信組の合併ないし破綻というのを入れると、40~50、もっとありますか、大変数が多 い。そうすると、合併すると、合併したところの金融機関の貸し出し対応が明らかに変わ りますから、金融機関の合併がどういう影響をもたらすかということも考えておかないと、 相当まずい問題になるのではないか。そういう地域の金融機関に対するインセンティブの 問題をどう考えるかというのは非常に重要ではないか。
それから、最近の事例でいうと、地域の金融機関でも、要注意債権のようなものを正常 債権にするような努力をしているところは相当あるわけですから、そういうインセンティ ブをどうやって出すかということを考えていく必要があるのではないかと思っております。 単純なインフレターゲット論を論ずるつもりはないのですけれども、その辺は、やはり十 分配慮していくべきではないかということだけを申し上げておきたい。どうもありがとう ございました。
○山口会長 中村委員、どうぞ。
○中村委員
私、街の法律事務所をしておりますので、やはり倒産の問題が大変身近に ございます。この白書の第2部で、廃業、倒産とその教訓ということで、14、15ぺージに 書いていただいているのですが、何か小学生のような感じしか受けないのです。アメリカ に比べてどうも大したことないとか、それはアメリカのように、もう少しやり直すという 気持ちがないのだよぐらいにしか読めないのです。日本の中小企業の場合は、ほとんど個 人企業に毛が生えたようなものが多くて、融資の場合は、ほとんどが個人保証。連帯保証 は代表者がしなければならないわけですから、会社が破産すれば、本人自身も、自己破産 でなくても破産でございますから、そういうわけでは、破産者の場合は、10年は起業はで きないわけです。そういった法制度の違いまでアメリカときちんと比べて、掘り下げて書 いていただかないと不満が残るし、民事再生法ができたことによって、少し希望ができて きたよということまで踏み込んで書いていただかないと、これだけでは、ただ何かムード があるだけ。日本はアメリカに比べて低いよという、本当にそれだけのことにしかすぎな いようにみえます。
廃業の方も、15ぺージで預貯金とか自宅がある程度残った。そうしますと、相当ゆとり があって廃業している方のことを指しているのか。何か実態と余りにもそぐわない。四十 何%の人が自宅も預貯金も残して廃業しているとはとても思えないので、この調査につき まして、もう少し何か資料をいただければと思っております。 以上です。
○山口会長 それでは、そのほか。どうぞ。
○浦田委員
多くの方がおっしゃられたことの繰り返しになるような気がしたので、あ えて手を下げたのですけれども、開業をすることによって、経済にどういう影響を及ぼす か。つまり、例えば、開業とか廃業がマクロ経済の状況によって説明できるというストー リーになっているかと思うのです。では、開業を活性化したことによって、これはマクロ ではなかなか影響はとらえられないかもしれませんけれども、例えば産業別にみて、ある いは先ほど地域の話がありましたが、地域別にみて、開業が活発に行われたことによって、 実際、具体的にどのような影響が出てきたのだろうかといった因果関係を逆にみるような 分析をしていただけたらよかったかなと思います。
もう1点、今、政策とここでの調査の関係について、前の方もご発言なさったのですけ れども、調査の結果の中には、政策をつくるに当たって、非常に有意義な情報をもたらし ているものがかなりあると思うのです。具体的には、例えば、創業1年目が非常に大変だ、 そこを乗り越えれば、ある程度安定的な状態に移ると。こういった調査結果は、創業支援 をするのであれば、ある程度期間を区切ってやるということが効率的だというインプリケ ーションをもつと思うのです。これは自分で確認していないので、確認してからいえばい いことなのですけれども、そのようなことが調査の結果と白書の中の文章の中に言及され ているかどうかということが1つ気になりました。
あと1つ、それとも関係するのですけれども、政策を適用する場合には、やはり資源が 限られているわけですから、かなり的を絞った政策にならざるを得ないと思うのです。そ のときに、例えば、創業してうまくやっている人は、年代でいうとどのぐらい、女性の方 が男性よりも可能性が高いとか、そういったディスクリプティブな分析はあるのですけれ ども、たしか後半の方で数量的な分析もなさっていると思うのですが、要はそれを掛け合 わせたような、つまり属性をもう少し詳しくみる。例えば、女性であって若い人が一番成 功する可能性が強いということがもしわかれば、そこに重点的に支援をするということが 非常に効果的な政策になり得ると結論できると思うのです。ですから、そのような属性を いろいろ掛け合わせて、ピンポイント的な政策を考えるということもできるのかと思いま した。ですから、ここで行われている調査、いろいろ使えると思うのですけれども、もっ と政策に結びつくような形で調査結果を使われていかれるといいのかなと思いました。 以上です。
○山口会長 ありがとうございました。 本当に時間がなくなって申しわけないのですが、紺谷さん、どうぞ締めくくりをお願い いたします。
○紺谷委員
先ほど創業支援は必要ないと申し上げたつもりは全然なくて、穴のあいた バケツに水を入れてもという意味で、マクロ政策が重要ということを強調したかっただけ です。今、資金需要がないということをおっしゃる方たちがいるのですけれども、それは 間違いでありまして、資金需要が出ないことは事実なのですが、なぜみんなが借金を返す のかというと、余りにも将来の見通しが暗くて、借金を返すのが一番最適な行動だからで す。借金を返すのが、資金運用の道として一番高利回りだからなのです。そのことを忘れ てはいけないのです。そういう意味では、それこそ構造改革で、明るい将来展望を示して ほしいと思うのです。不良債権処理の理由として政府がおっしゃっていることは、ことご とく間違っていると思っていまして、人、物、金が余っているのに、何でそれらを使って、 努力している企業をつぶして、人、物、金をなお余らせようとするのかということを申し 上げたいと思います。
それから、マニュアルというのは個別なのです。先ほど、伊丹委員がとても重要なこと をおっしゃってくださいまして、集積の効果とおっしゃっていました。信用金庫、信用組 合の方たちが、たとえここは赤字でも商店街の中核企業になっているからといっても、全 体としての役割ということを検査マニュアルは全然配慮しないのです。そういう問題もあ ろうかと思っているのです。
今、中小企業はどのぐらい大変かといいますと、デフレ経済、縮小均衡ということは、 何もしなかったら取り分が減るということなのです。だから、取り分を減らさないために みんな必死なのです。奪い合い状態なのです。奪い合い状態だと、どうしても体力勝負。 大企業、お金をもっているところ、資本力のあるところが強くなるということでありまし て、負けた中小企業が何もサボっていたわけでも、無能だったわけでもないのです。ユニ クロでどれだけ多くの繊維会社がつぶれたか。船場とか、東京も浅草とか、そういうとこ ろがあります。それから、マックの半額バーガーと吉野家の安い牛丼で、たくさんの外食 店がつぶれているわけです。そういうところは、ぞうきんが絞れなかったのです。乾き切 っていたのです。努力しなかったわけではなくて、努力の余地が体力的に残されていなか ったということでありまして、こういう縮小均衡を招いたのは、政府の政策の失敗であり まして、そういう状態を考えたら、今、中小企業を一生懸命守らなかったら、どうにもな らないです。中小企業をこれ以上つぶさないでほしいというのが私の切なる願いでありま す。
最後に1つだけ。他省庁との関係でいえば、ポスタルサービスも何とかしてほしいと思 っているのです。郵政省の関連会社が7%も手数料をとってふるさと便をやっているので す。つまり、自分たちの持ち込んだパンフレットなどではだめなのです。だけど、各地方 でいろいろな若い創業者がこういう製品をこしらえた。全国で売ってほしい、ふるさと便 に載せたいとしても、郵政省の子会社が7%手数料をとって、自分たちがつくったパンフ レットでないと使わせないという状況になっております。今、金利が0.0001だとか何だと かいっている時代に、7%の手数料を稼ぐというのは、ぜひ郵政省にいってやめてもらっ てほしいのです。私もさんざん申し上げているのですけれども、なかなか改まらないので す。そういうことも、ぜひおやりいただければと。今度、ぜひ他省庁の問題というのを洗 い出して報告していただけないでしょうか。よろしくお願いします。 どうもありがとうございました。失礼しました。
○山口会長
ありがとうございました。 以上をもちまして、第3回中小企業政策審議会・第3回基本政策部会合同会議を閉会と いたします。長時間、ご協力ありがとうございました。
――了――
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