中小企業政策審議会経営支援部会地域中小企業政策小委員会(第3回) 議事要旨
日時:平成18年11月22日(水曜)15時~17時30分
会場:経済産業省本館17階西7第1特別会議室
滝本経営支援課長より、資料3、資料4、資料5-3に沿って説明の後、議事要旨は以下の通り。
- 資料5-3の「はじめに」や1.(2)に書かれている少子高齢化と人口減少の問題は大都市圏以外の地域が対象とされているが、大都市圏はどのようにとらえらえるか。こうした問題を考えるタイムスパンは、何年ぐらいととらえているか。少子化という点では、東京都においても深刻であり、2030年までの国立社会保障・人口問題研究所の推計値で見ると、生産年齢人口比率はまだ比較的高いが、高齢化が急速に進む。逆に沖縄県は平均年齢が最も若く、高齢化が遅くなる。
- 事務局:人口の問題は、地域によって様々で一般的な事柄として書いている。スパンとしては、10年から20年間のぐらいのイメージで書いている。改めて説明させて頂きたい。
- ビジネスプランの策定段階や実施段階の支援内容については異論がない。支援体制のスキームに関しては、都道府県が特定地域資源を指定し、それに沿ったものだけを支援するとも読めるがこれでよいのか。都道府県の指定から漏れてしまう地域資源があるのではないか。幅広く地域資源を拾上げられる仕組みがなければ、10年後に評価した場合、「特定の地域資源を指定したため、プログラムがうまくいかなかった」ということにならないか。
- 地域資源を上手く吸い上げられるシステムを作ることが重要である。これまでは中小企業基盤整備機構等が窓口となってきたが、全県を睨んで、地域に賦存する小さな資源を汲み上げるためのシステム作りが重要である。
- 1点目は、各産地組合が地域活性化に果たしてきた役割を評価して、資料5-3の17ページにある「地域資源を核とした自立的な地域産業形成」を担う一主体として、「産地組合」も組み入れられないか。産地によっては、5年間を見越して事業効果があがった例もあり、自ら考え行動する気運が高まった。2点目は、国際競争力強化や販路拡大を行おうとすると、輸出事業にも取組む必要があるが、これまでは、海外への出展費用が補助金の対象ではなかった。新しいスキームに海外出展費用を盛り込んで頂きたい。
- 資料5-3の17、18ページにて、事業実施のための必要資金に関する支援策として、低金利融資等が書かれているが、地域中小企業には後継者問題が関連して上手く資金調達できないという問題がある。中小企業は個人保証をしなければいけないが、個人保証をできる後継者がいないので、せっかく良い企業でも廃業に至るということがある。国の施策では、「中小企業は個人保証をしなくてもよい」との文言の挿入を検討頂きたい。
- 委員長:事業が承継されないと蓄積された技術などが雲散霧消してしまう。地域資源を蓄積するという意味でも事業の承継に関する考え方を盛り込みたい。
- 地域資源を如何に汲み取るか、そのためのシステムに関しては、「地域人」をどれだけ活用していくかが重要である。まちづくりにしても、NPO等の小グループが多数存在しており、こういう活動を承知している機関との連携が重要となる。また、「女性の活用」の観点も検討頂けないか。例えば、女性による地域資源を活用した起業を明確に支援対象として盛り込めないか。その理由は、地域の消費に関しては、女性のほうが詳しいためである。地域人、女性、起業をキーワードとして盛り込めないか。また、もう1点として、個人保証の問題を含め、地域の中小企業はそもそもリスクテイクなど考えたこともないしやったこともない。セイフティネットをどのように張り巡らすかが重要である。最低限のセイフティネットがあれば、リスクテイクしてチャレンジする励みになる。
- この施策は素晴らしいが、進め方に問題があれば成果は出てこないと考える。資料3の「中小企業地域資源活用プログラム」のスキームで、都道府県が地域資源を一旦指定すると変更できないのでは問題がある。地域資源の更新ができるスキームにしていただきたい。資料5-3の16ページに書かれている地域中小企業による「ビジネスプラン」づくりにおける支援のなかで「相談できる身近な窓口」と書かれているが、これは非常に重要である。どこが窓口になって身近な相談をするかということがこの事業の成否にかかわる。九州では、九州経済局と九州農政局の連携がうまくいっているが、これ以外の団体を誰がコーディネートするか。省庁間や各機関団体を連携する必要性を指摘するのは容易いが、実施するのは難しい。誰が全体コーディネートするのかという問題は重要であり、関係機関をコーディネートしてこれまでにない取組みとする必要がある。
- 委員長:答申には、資料5-3の20ページの「おわりに」に書かれている「指定された地域資源を更新し続けなければならない」という文言が今の意見に対応している。これはまさに地域資源に固執しないということである。更新するか否かの判断はマーケットの対話により行う必要がある。
- 事務局:誤解があったかもしれないが、地域資源の指定は都道府県が行うのではなく、都道府県の案を参考にして国が指定するということである。案は地域毎によく練って頂いて、それらが都道府県で束ねられて、各経済局が指定するということになる。地域資源の指定や更新は柔軟に行うべきである。
- 地域資源という素材・原石を発掘しスクリーニングするための仕組みを作れないか。従来の発想を逆転させて、「地域の側が素材としての地域資源をアピールし、それを中央やクリエイターや大学等が買う」というオーディションのような制度ができないか。せっかく地域資源というキーワードができたので、市民レベルにもこの概念を認識・定着させ、地域の側が地域資源を再び見直し、再発見を促すような取組みができないか。一例を挙げれば、イベントを支援するという形でできないか。近年、昔ながらの郷土料理や昔の町並みを再現したり、郷土の歴史を劇にしたりするといった市民による様々な取組みを1つのイベントに束ねてアピールする地域が増えている。こういうものを経済産業省として支援できないか。類似制度として、通産省によりジャパンエキスポ制度が実施された。中小企業という枠組みからは外れるかもしれないが、地域社会や地域市民をも巻き込んで、地域資源という概念を定着させることができないか。
- 委員長:答申には、地域資源を文化、風土などを含む広い概念として位置づけることで、ただいまの提案に応えられる。
- 人の問題が重要である。ハンズオンで困るのは、地域資源を産業化、企業化し、企業成長を図るためには出口戦略やマーケティングを考える必要があるが、地域にはそれを担うクリエイターなりマーケッターがいない。中央にいるクリエイターのノウハウを地域に持ってくるための仕掛け作りを行う必要がある。せっかくやるからに実効性を確保すべき。地域の一番の悩みは人の問題。
- 地域の課題を解決するためにはクリエイターというよりも、各現場の問題の本質を理解できる人が必要であるが、地域にはいない。こういう人材を育てられる体制や仕組みを考えて頂けないか。また、資料5-3の20ページに関係省庁との連携強化とあるが、この中に環境省も加えてほしい。その背景は、食品メーカーは高い廃棄物処理コストに直面しているためである。問題は小売との力関係を背景として、食品メーカーなどの供給元に廃棄物処理が押し付けられていることに起因する。
- 委員長:答申を超える問題であるが、これを行うには連携に関わる関係省庁の幅はかなり広がる可能性がある。地域資源活用型の事業展開に関わるコーディネーターが地域にいないというのは、何とも皮肉なことである。ご指摘の通り、中央、現場を問わず、物事の本質を考える人が必要である。
- 地方にはマーケッターがいない。中央のマーケッターを活用しようとしても莫大なコストがかかるため、小規模の事業体では利用不可能である。こうしたマーケッターや販売戦略を考える人は、地域には非常に少ない。少なすぎるから借りてこなければいけない。地域も販路拡大の重要性は認識している。求めているのは一緒に築地市場に行ってくれるような人を引っ張って来ることが可能なコーディネーターである。
- 地方にいるマーケッター、コーディネーター、プロデューサーは、東京の仕事をしている人が多く、地方のものが少ない。中小機構のアドバイザーはエリアごとに存在するが、オールジャパンで活躍できる方に立候補して頂いて、誰が良いのか判断していかなければいけない。こういう人材を作り上げていくのも、一つの方向ではないか。こういう人材は会社を経営していることが多く、全てを頼むということは無理だろうが、案件を決めてお願いするという方式なら可能ではないか。
- 地域資源活用は地域を特徴化するという方向性をもつ。地域資源を活用する中小企業は地域に立地する中小企業のごく一部に過ぎない。今回の支援対象は地域中小企業全体ではなく一部であるということの認識を示すべきではないか。国による認定に漏れた場合でも、補助金などの形ではなくとも何らかの形で拾い上げていくことが重要ではないか。
- 委員長:地域資源の概念を広めに定義することで、この種の心配を避けることができる。
- 地域の強みを生かした活動を支援する際には、自助努力を大切にすべきである。中小企業や地方は弱者だからという理由で支援するという姿勢はよくない。北海道で上手くいっている事例は、自分たちで情報発信し、頭を使い、地元の利害調整等をしている。北海道のニセコ、よさこいソーラン、砂川市のスウィートロードは、自然発生的に生まれた状況や活動を政策が後押しをした事例である。自然発生的に生まれた取組みに加速度をつけるような支援が必要ではないか。また、支援する際には、地域の中小企業が契約の概念を理解していないため、不利な契約を結び付加価値が地域に落ちないという現状を踏まえ、契約概念を伝える必要がある。
- 委員長:ご指摘の第1点目は非常に本質を突いている。というのは、地域資源は、最初からあるというわけではないということである。
- 1点目は、地域資源100%でモノを作るのは難しいため、100%地域資源でないと支援対象として認定しないというのであれば厳しいということである。2点目は単年度事業ではなく2~3年の複数年度事業として実施しないと、やっつけ仕事になってしまう。
- 委員長:1点目のご指摘は地域資源をモノや素材に限定するときに出てくる問題である。素材は地域外からも調達する必要もあろうが、事業をする能力やモノをつくる技術をも地域資源としてとらえるのが本報告書の思想であると思う。
- 報告書案に「政策転換の要」とあるが、政策転換したことを一般国民にも分かる形で説明すべきではないか。日本人の知恵の結集である地方の物産が世界で通用するかもしれないということを、日本国民が自ら考えるべきあることを盛り込めないか。島根県雲南市「鉄の歴史村」((財)鉄の歴史村地域振興事業団)を作った藤原氏により提案された「ローカル ロハス ムーブメント」という言葉を、今回の政策の標語として活用してはどうか。イタリアは地域活性化がうまいが、日本に足りないのは哲学者である。なぜ地域の活性化が必要かという哲学が必要である。誰か一人哲学者や語り部を決めて頂くとマスコミが集中して取材すると思う。
- 本制度を5年間かけて行うイベントに見立てると、ストーリー性をもったシナリオを作る必要がある。「オープニング→二段ロケット→フィナーレ」という時間の流れを予めプログラムしておく必要がある。例えば、オープニングでは、制度の志と夢を全国に示し、2、3年経過するとパイロットプロジェクトの成果を全国に示し、5年後には施策の成果を示すというような、リズム感が重要である。
- 焼酎の「いいちこ」という誰もが知っていて、市場シェアが高い商品を供給している企業には、味がよいという技術力やセンスの良いキャンペーンポスターを作るというクリエイティブ力がある。さらに営業力もあるため、中小企業でもあのレベルまで成長できる。ヒット商品は現場が分かっている人ではないと作れない。先の議論にあった相談窓口を、誰がどこでやるかということが重要である。JAPAN CREATIONとあるが、CにはCreationだけでなく、7つのCがあるのではないか。すなわち「Creation」、「Collaboration」、「Challenge」、「Chance」、「Communication」、「Commerce」、「Coordination」である。こういったキャンペーンポスターを一流のクリエイターに作ってはもらい、「どうぞ立ち上がれ」と訴えてはどうか。支援対象を選択する際には、志が高い人をノミネートして審査する必要がある。日本のファンド、事業者、マーケッターのコラボレーション、コミュニケーションが重要ではないか。
- 補助金には使いにくさの問題、融資には保証の問題がある。補助金に馴染みにくい経費に投資し、何年かで返還してもらう投資制度を作れないか。これにより支援措置の幅が出てくるのではないか。
- 能登半島の珠洲焼は室町時代以前には日本の半分以上で流通するくらい有名であったが、それ以降の何百年もの長い間は埋もれていた。近年、郷土史家が珠洲焼の歴史を発見し、珠洲焼の再興を行った。このようなことは現地に行かなければ分からないし、その他の地域でも珠洲焼の存在は知られていない。珠洲焼のような地域資源の展開を図るためには広域連携を行い、様々な地域でマーケットの場所を求めることが重要ではないか。例えば、2009年度に国際空港ターミナルが完成する予定の羽田空港のある大田区と組んで売り込みをすることもできる。このような考えをもたせるには、地域資源指定に関する権限を都道府県に集約させるのはやめたほうがよい。都道府県レベルでは何が地域資源か分からない。地域同士が発信した情報を基にした事業化を支援するような広域連携のスキームにしてはどうか。
- 地域の中小企業には感性やそれを行動に移すスキルやノウハウが心許ない。うまくいっている事例では、中央で異業種を経験した息子が地方に帰りうまくやっていたり、哲学を持っている人が中心となっていたりする。これを自然発生として投げ出してしまってよいのか。自然発生では上手く行かないケースが多いため、現在の状況になっているのではないか。問題解決のためには地道な学習活動や人材育成などを行い、地域の人材を育成することが重要である。専門家に関しては、中央の専門家が落下傘で地方にやってくるという形では、専門家が去った2、3年後には取組みが廃れてしまい効率が悪い。トップランクの専門家の意見を聞きながら、中間層の専門家を育成する二層・三層の仕組みが必要。これは単年度事業では難しいので複数年度事業として実施するべきである。
- 今回の支援策の狙いは地域のよい部分に光をあて引き上げて、それを周囲の人たちがみて模倣するような流れを作ることにあると思う。そのためには、明るい未来のイメージづくり、テーマづくりが重要である。
- 自助努力がない中小企業は駄目だが、背中を少し押してくれるくらいの補助金は必要である。広域連携も考えて欲しい。東北では6県で連携していこうという動きがあり、お互いに補完しながら東北全体で強くしていく取組みが必要である。北海道と北東北が連携することもあり、支援対象を都道府県単位で区切らないでいただきたい。
- 極端に言えば、政策の支援対象は「前を向いてもがいている人を救いあげる」と割り切ってもよいと思う。「あいつらだけずるい」とみんなから思われるようになったら成功だ、と思われるくらいでちょうどよいのではないか。
- 委員長:イノベーションは誰かが走って、それを模倣する過程で生まれるものである。突出することを誰かが邪魔しないことが重要である。
- 地域資源をどのように特定するかがポイントである。地域資源を最初から指定しなくてもよいのではないかと思う。しかし政策的な効果を考えると、何でも地域資源であるというのでは効果がでない。政策対象の範囲と政策効果の間にはトレードオフの関係がある。イノベーションを誘発するような地域資源を発掘するための仕組みを如何に作るかが重要である。
- 地域資源については、地域の人が真剣に考え出す必要がある。各地の支援機関の職員がどこまで本委員会の想いを共有できるか。こういった支援機関の職員への啓蒙啓発活動が必要ではないか。
- 委員長:今日の意見は多様であるが、ある意味ではまとまっていると思う。1つには、この政策は、各地でこれからビジネスを通じて地域活性化しようとしている人たちに対して応援のメッセージを送るという哲学を示すものである。またこの政策は各地域には各地域のよさがあり、それを作り出し、積み増していこうということではないか、というものでもある。印象的だったお話は、地域資源は最初からあるわけではなく、最初は単なる石ころでも市場と対話することで商品やサービス、ビジネスに仕立て上げ、やり様によってはどんどん広がって成功する可能性があるというストーリーであった。本小委員会の議論の対象は、大都市圏を排除しているのではなく、大都市圏と地方の対立関係という図式ではない。各地域の中に掘り起こせる地域資源はいくらでもあるし、それを磨いて蓄積するものがいくらでも見つかるという発想である。このようなことをみんなで思ってやってもらうためには、委員ご指摘のイベント的な取組みを政策機関でプレイアップすることが必要であり、考え方をみんなに浸透させるためにはキャッチフレーズを作ることが必要である。哲学をきっちりと示して語ることが必要である。中小企業政策の手段自体は昔からほとんど変化ないが、時代時代で中小企業政策の考え方を示し、個々のプロジェクトを地道に応援するとともに、時間を区切って時々の政策の哲学や旗印を示すシグナルの2つの側面がある。各委員の考え方をできるだけ盛り込んで最終的なとりまとめを行い、経営支援部会に報告したい。
-以上-