トップページ 審議会・研究会 審議会(平成25年6月30日以前分) 中小企業政策審議会基本政策部会 中小企業政策審議会基本政策部会(第1回) 議事録

中小企業政策審議会基本政策部会(第1回) 議事録

平成13年1月29日

                                                       中小企業庁調査室

1.日時:平成13年1月29日(月) 14:00~15:30

2.場所:経済産業省本館17階国際会議室

3.出席者:石原委員、井上委員、上野委員、木下委員、清成委員(部会長)、鯉江委員、河野委員、進藤委員、堤委員、都村委員、橋本委員、平野委員、前田委員、宮下委員、神戸代理(玉利委員)、菅野代理(佐伯委員)、絵内代理(高原委員)
  省内出席者:中小企業庁長官、次長、事業環境部長、調査室長等

4.議事録:

○事務局(藤調査室長)  定刻より少し早いのですが、各委員、お集まりになりました のでただいまから第1回中小企業政策審議会基本政策部会を開催したいと思います。
  まず初めに資料の確認をさせていただきます。 「配布資料」として、「資料1」が議事 次第、「資料2」が中小企業政策審議会の体制、「資料3」が中小企業政策審議会基本政 策部会委員名簿、「資料4」はA4横長の中小企業をめぐる現状、「資料5」が2001年版 中小企業白書「主要検討課題」でございます。皆さんの方ですべての資料がおそろいでご ざいましょうか。――
  それでは、本日の議事につきまして御説明をさせていただきたいと存じます。
お手元の「資料1」を御覧ください。本日は中小企業白書のスケルトンを中心に御議論 いただくわけでございますが、御承知のとおり、今般の中央省庁等の改革に伴いまして国 の審議会の整理・合理化が行われまして、本審議会につきましても再編を行うことになりました。
  「資料2」を御覧ください。中小企業政策審議会のもとに2つの分科会、それから8つ の部会を設置いたしましたところでございます。その中でも、基本政策部会は、中小企業 政策審議会のすぐ次に出ておりまして中小企業政策の基本理念や政策体系、その他重要事 項や、中小企業白書を始めといたします実態調査等について御審議いただくための部会で ございます。また、各部会の審議結果の集約をしていただく部会でもございます。 この度、中小企業政策審議会令第6条に基づきまして、中小企業政策審議会会長から、 基本政策部会の委員の皆様を指名させていただいたところでございます。 それでは、席次表に従いまして基本政策部会の委員を私から御紹介させていただきます。 アイウエオ順に従いまして、まず、石原・大阪市立大学商学部教授、井上・東京商工会 議所常議員、木下・中小企業総合事業団理事長、清成法政大学総長、鯉江・全国商店街振 興組合連合会副理事長、河野・株式会社リクルート代表取締役社長、児玉・商工組合中央 金庫理事長、進藤・株式会社メガチップス取締役会長でございます。 代理の方は後で御紹介いたします。 続きまして堤・中小企業金融公庫総裁、都村・全国商工会連合会理事、橋本法政大学経 営学部教授、平野・安田火災海上保険株式会社代表取締役社長、前田学習院大学法学部教 授、宮下東京経済大学経営学部教授でございます。 続きまして代理の方でございますが、佐伯委員代理の菅野・全国中小企業団体中央会専 務理事、玉利委員代理の神戸・全国卸商業団地協同組合連合会専務理事。最後になりまし たが高原委員代理の絵内・ユニ・チャーム株式会社秘書室長でございます。 委員の皆様におかれましては、御多忙のところ、御出席いただきしまして誠にありがと うございます。本日は、代理の方々を含めまして25名中17名の委員の皆様に御出席をいた だきしまして、定足数を満たしております。 ここで、本部会の公開につきまして御説明させていただきます。中小企業政策審議会運 営規定第4条によりまして、会議、議事録を公開いたします。議事要旨につきましては部 会終了後速やかに、議事録につきましては皆様にお諮りした後、公表いたしますので、あ らかじめ御承知おきください。 続きまして、中小企業政策審議会令第6条第3項の規定に基づきまして部会長の互選を お諮りいただきたいと存じます。どなたか御推薦はございませんでしょうか。 ○木下委員 旧中小企業政策審議会基本政策小委員会において主査として取りまとめに 当たってこられました清成委員に引き続きお願いしたらいかがでございますでしょうか。 (「異議なし」の声あり) ○事務局 異論ございませんようでございますので、清成委員に部会長をお願いいたし たいと存じます。 清成委員、恐縮でございますが部会長の席へお越しいただければと思います。 (清成部会長着席) それでは、清成部会長に議事進行に入っていただきます。 ○清成部会長 まず、中小企業政策審議会令第6条第5項において、部会長代理につき ましては部会長の指名によるというようになっております。それで、木下委員に部会長代 理に御就任いただきたいと存じます。大変御多忙中、恐縮でございますけれども、ひとつ よろしくお願いいたします。 さて、今日は、2001年版の中小企業白書の主要検討課題について御審議いただくという ことになっておりますけれども、審議に入ります前に中村中小企業庁長官からごあいさつ をいただきたいと思います。 長官、どうぞ。 ○中村中小企業庁長官 中小企業庁長官の中村でございます。よろしくお願いいたしま す。 本日は、省庁再編に伴います中小企業政策審議会基本政策部会の第1回ということで、 中小企業白書の御検討をいただくわけでございます。白書につきましては、例年4月下旬 に閣議決定いたしまして国会へ提出しているもので、我々の政策の基本的な認識にかかわ る部分でございまして、私どもとして大変重要視しているものでございます。 とりわけ、最近の非常に大きな構造変化の中で、中小企業がその波にさらされていると いうように私どもも認識いたしております。本日の主要検討課題の中でも、どのような構 造変化に中小企業がさらされているかということをできるだけ分析いたしました上で、現 在、中小企業は日本で509万社あるわけでございますけれどもこれらの方々が経営革新に よってこの構造変化をどのように乗り切っていただくかということを検討してまいりたい と考えております。これが日本経済にとっても非常に重要なことであると認識しておりま す。 私ども、一昨年、中小企業基本法を改正いたしましたけれども、中小企業は日本経済の 活力の源である、このような認識でございますが、そのために今後どのようなことを各中 小企業の方がやればいいのかということを、ぜひ具体的に示していきたいなと思っており ます。 そういう観点から、委員の皆様方の忌憚のない御意見をちょうだいいたしまして、より よい白書に仕上げたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。 本日はお忙しいところ、ありがとうございました。 ○清成部会長 どうもありがとうございました。 それでは審議に入りたいと思います。 まず最初に、「資料4」「資料5」につきまして事務局から説明いただきしまして、そ の上で、委員の皆様方から忌憚のない御意見をいただきたいというように考えます。 それでは藤調査室長、よろしく。 ○事務局 それでは「資料4」「資料5」で御説明をさせていただきます。 まず、A4縦長の「資料5」を中心に、「資料4」は「データ集」として適宜使わせて いただければと思っております。 まず、「資料5」の1ページ「第1部・最近の中小企業の動向」でございます。中小企 業の景況は緩やかに改善してまいりましたが、ここのところ、改善傾向の減速感が強まっ ておりまして、業種別、企業別のばらつきがみられると。 今回の景気回復の特徴は、ITを中心とした製造業が順調に回復している一方で、その 他の業種の回復が遅いということでございます。 「資料4」――「データ集」の1ページ、我々がやっております中小企業景況調査によ る「業況判断DIの推移」を見ていただきますと、一般機械、電気機械、精密機械と言わ れるものが、いわゆるITによって潤っている製造業の代表的なものでございますが、一 般機械、電気機械は既にゼロを越えて7.9とか5.7という非常に高い水準でございますが、 製造業全体は-22.5でございます。 「資料5」の1ページの下の全体の業況を見ていただきますと、サービス業から小売業 は景況的には少し悪化という形になっているわけでございます。 「資料5」の2ページは倒産の状況で、平成12年は中小企業の倒産件数は約1万8,500 件ということで、前年比22%の増でございます。具体的な数字といたしましては、平成1 1年が約1万5,400件、平成10年が約1万9,000件でございます。その内訳は、「データ集 」2ページの「業種別倒産件数の増減」という形で11年、12年の業種別に倒産件数を見て いるわけでございますが、白い枠が建設業、その上の斜線の枠が卸・小売業で、業種別に は建設業、卸・小売り業の倒産が増えてきているという状況でございます。 「データ集」3ページの「倒産企業の業歴別構成比」は、平成8年~12年の企業のビン テージによります倒産の構成比を見たわけでございますが、一番下の白枠が30年以上の企 業、その上の斜線の枠が20年~30年未満の企業でございまして、20年以上の企業の倒産の 割合が平成8年の段階では32.6%だったのが、平成12年は43.7%に増加しております。 企業全体の中での20年以上の業歴の企業の占める構成比が約44.8%ということでござい ますから、平成8年の段階では全体の構成比に占めるいわゆる老舗企業の倒産が少なかっ たわけでございますが、平成12年になりましてじりじり増加してまいりまして、全体の企 業数と倒産企業数の数字がほぼ同じような形になってきたというのが、この表でございま す。 「資料5」2ページ下の(設備投資)は、製造業ではIT関連向け設備投資が増加して おります関係で、平成12年度は4年ぶりに多分増加するのではないかという見込みでござ います。平成12年の修正計画ベースでは13.5%の増になるという中小企業金融公庫の調査 もございますが、足元が少し微妙な状況になってきているということでございます。 商業・サービス業につきましては依然減少傾向というか前年度割れが続いている状況で ございます。 続きまして「資料5」3ページ、(雇用)の状況につきまして御説明させていただきま す。雇用につきましていわゆる中小企業の雇用過剰感というものを平成4年から見ていま す。一番上が大企業、続きまして中堅、中小でございますが、雇用の過剰感というものは レベル的には大企業に比べまして少ないわけでございますが、まだまだ雇用の過剰感が残 っているということでございます。 「データ集」の7ページのいわゆる「労働分配率の推移」で、企業全体の業績に占めま す人件費の負担を見ていただきますと、平成11年度は大企業は66.3%、それに対しまして 中小企業が82.9%で、中小企業の方がもともと労働分配率が高いわけでございますがその 格差がやや広がりつつあるという状況でございます。 雇用につきましては「資料5」では具体的なコメントはしておりませんが、自営業者の 高齢化とか数の減少という問題が起こっております。 「データ集」8ページの「自営業主(非農林業)の年齢別構成比」では、50歳以上の自 営業主の方々の昭和56年平均が36.5%、平成2年平均が47.6%、平成11年平均60.9%と、 その高齢化が進んでいるということでございます。同じく「データ集」9ページの「自営 業者数の推移」では、昭和63年の704万人をピークにいたしまして、平成11年には602万人 でございます。同じく「データ集」10ページの「自営業者の業種別内訳」では、製造業が 、平成元年の149万人から89万人へと60万人の減少、それから小売業が132万人から101万 へと31万人減少しているわけでございます。 「資料5」の3ページに戻りまして、(資金調達)では金融機関の中小企業向け貸出残 高は、最近、戻してはおりますものの、平成10年以降減少傾向にございます。あわせて、 「データ集」11ページの「中小企業の資金調達構造の推移」では、一番右端のストック( 債務残高)が平成元年から12年に向けまして320兆円から516兆円に増加しております。そ の比率は真ん中の白い枠のところでございますが、長期借入金が23%から29%へと増加し ております。 それから、「データ集」の12ページは「中小企業の資金繰りDI、借入難易度DIの推 移」でございますが、一番上の短期資金借入難易度DI、その次の長期資金借入難易度D Iを見ていただきますと、平成10年をボトムに少しずつ戻ってまいりましたが、12年に入 りましてやや横ばい感が見られるということでございます。 「データ集」13ページは本文にございますので省略をさせていただきまして、14ページ は、やや見にくい図でございますが「中小企業向け貸出残高及び伸び率の推移」の平成1 2年第2・四半期、第3四半期がこのように戻してきた原因といたしましては、都市銀行 と地方銀行が伸ばしているということです。都市銀行の伸び率は平成12年の7~9月は9 %程度、地方銀行は7%の増、政府系金融機関は4~6月は少し減りましたが7~9月に は2%の増、信用金庫は伸び率が平成11年末から前年同月比マイナスになっているわけで ございます。 「資料5」の「第2部」は、このような現状を踏まえまして我々としまして、中小企業 の方々に対するメッセージはどのようなものがあるのかということでございます。 「第1章 中小企業の経営革新への挑戦」でございますが、1.中小企業が抱える経営 課題とその対応ということで、(総論)では、「同じ業種・同じ規模でも中小企業間に大 きなばらつきが見られるようになった」ということで、「データ集」18ページに昭和61年 、平成2年、平成6年、平成9年の3つの棒グラフの一番左が小規模事業所、真ん中が中 小事業所、一番右が大規模事業所ということで、それぞれその売上高利益率のばらつき( 標準偏差)が拡大して、特に小規模事業所におきましてはそのばらつきが大きいと。これ がこの図の示すところでございます。 「資料5」に戻っていただきしまして、このように同じ規模、同じ業種の間でもばらつ きが見られるということで、一昨年の中小企業基本法の改正によりまして政策理念も「独 立した中小企業の多様で活力ある成長発展」という形に転換させていただきました。しか し、中小企業は以下のような経営課題に直面しているということでございます。 先ほどから資金の話も少し御説明してまいりましたが、中小企業の資金調達の現状は依 然として「間接金融中心」でございまして「資金返済に必要な期間が長期化するという傾 向」が続いてございます。 「データ集」15ページに戻っていただきしまして「キャッシュフローでみた有利子債務 の返済余力(期間)」では、分母がキャッシュフロー、分子は有利子債務のストックベー スの数字でございまして、中小企業は平成11年では19年という数字でございます。中堅企 業は9.6年、大企業は6.9年ということで、この図で見ますと企業自らが生み出すキャッシ ュフローから見た有利子債務が、中小企業にはやや重くのしかかっているのではないかと いう感じがしているわけでございます。 一方、中小企業の方々がやみくもな投資をしているかというとそうではございません。 16ページは中小企業の四半期ごとの設備投資額とキャッシュフローを見たものでございま すが、平成11年の1~3月、4~6月あたりから中小企業の方々はキャッシュフローの範 囲内でしか設備投資をしていないということで、平成元年からを見ましても非常に抑制的 な形での設備投資をされておられるということが見てとれるわけでございます。 そのような中で、現在、間接金融中心、しかも資金返済が長期化する中で、今後、多く の中小企業にとりましての資金調達の問題をどのように考えていくのか。借入につきまし ては以前にも増してファイナンシャルディシプリンが必要でございますし、アメリカのや り方をそのまま受ければいいかどうか、非常に難しい問題がございますが、財務内容の情 報開示を行いながら自己資本の充実が必要ではないかという問題意識がございます。 続きまして、「資料5」4ページ「?また、製品等のコストダウンを行っているにもか かわらず、売上の縮小や取引先の減少傾向に歯止めがかかっていない状況」につきまして は、「データ集」17ページ「中小企業の売上高と経常利益の推移」の売上高、経常利益の 88年度末を100にした指数では、平成12年の4~6月の売上高は132、経常利益は99でござ いまして、最近の動きは、売上高は減ってはおりますものの、12年に入りまして経常利益 は急回復してきているというような状況でございまして、売上重視から収益重視というよ うに少しずつ変わっているのではないかということでございます。特に12年に入りまして から、経常利益の悪要因はいわゆるリストラということで、人件費を抑制する形で経常利 益を回復してきているという動きがございます。 「データ集」の19ページは、いわゆる製造業におきます「下請中小企業比率の推移」で ございます。非常にロングレンジでとらえておりますが、56年、62年、平成10年という形 で下請中小企業比率が減少してきているということでございます。 ここで言います下請中小企業の定義につきましては、下の「注」のところで「自社より も資本金又は従業員数の多い他の法人又は個人から、製品、部品等の製造又は加工を受託 している中小企業」ということでございまして、その比率が、昭和56年の65.5%をピーク に、昭和62年の6年間に約10ポイント下がりまして、昭和62年から平成12年の約11年間で 8ポイント下がってきているということでございます。 また「資料5」4ページに戻っていただきしまして、このような非常に厳しい変化でご ざいますが、「?IT革命の進展と相まって企業間関係そのものが大きく変容している中 でこのピンチをチャンスに転じさせる努力をする必要があるのではないか」ということで ございます。 先ほど労働分配率の上昇のグラフを見ていただきましたが、「資料5」5ページの?で は、「さらに、労働分配率が上昇し続け、企業内の過剰雇用に手をつけられない一方、特 にIT人材といった専門職技術者については不足の状況がある」と。いわゆるデジタルデ バイドという問題がございまして、「データ集」20ページの「情報化システムを活用して いく上での課題」はアンケート調査でございますが、約半数の企業の方々が情報機器を扱 える人材の不足を訴えておられます。 21ページの「非正規従業者比率」は、本旨からややずれるかもしれませんがいわゆる人 材の流動化現象ということで平成8年から平成12年でどう移ったかということを、小規模 企業、中規模企業、大規模企業で見ているわけでございますが、いずれの規模におきまし てもいわゆる非正規従業者の比率がこの4年間で3~5ポイント増加しているということ でございます。 「資料5」5ページに戻っていただきしまして、こうした状況を打開するためには「各 々の経営者が前例にとらわれない思い切った発想、決断で、他社とは一味違った対応を行 うのが不可欠ではないだろうか」と。 本白書におきましては、さまざまな境遇に置かれ危機感をもっていらっしゃる中小企業 経営者に対しまして、解決の糸口の一助になるような参考事例をできる限り多面的に発掘 ・紹介できればと思っておりまして、(各論)では、業種別には、製造業、流通業、建設 業、サービス業、運輸業等の中で、横並び意識を脱却しまして差別化ということを試みて いる事例をできる限りおもしろい切り口で見ていければと思っております。 商店街につきましては、活力が低下している商店街が多いと言われている中にありまし て、高齢者対応などの差別化や、タウンマネージャーの方々のリーダーシップの発揮等に よりまして活性化を試みている事例を発掘・紹介したいと思っております。 産業集積につきましては、「データ集」22~24ページに、いわゆる集積と言われる地域 のパフォーマンスというものを全国平均、日立地区、東大阪市、大田区の、平成3年~1 0年までを見ているわけでございます。 22ページの「事業所数の推移」23ページの「従業者数の推移」24ページの「製造品の出 荷額等の推移」でございますが、産地と呼ばれている地域につきましてはいずれも全国平 均を下回っているわけでございます。その中で特に大田区が一番低い数字になっているわ けでございますが、これにつきましては工場移転というものがかなり活発に行われている ということの裏腹でもございまして、この数字をもって大田区が一番パフォーマンスが悪 いとは必ずしも言えないとは思いますが、このようなデータがございます。 「資料5」5ページに戻っていただきしまして、集積におきましては、従来型産業集積 が苦戦を強いられていると言われている中におきまして、明確な経営理念を有するリーダ ー企業を中心に新しいネットワークができている動きもございますので、そこらあたりを 見ていきたいと思っております。 海外事業展開につきましては、中小企業にとっては受け身とか試練という形ではなく、 積極的に新な市場を求めて出ていっているようなケースとか、海外の優れた経営資源を活 用して国内での競争力を強化しているような事例等を見てまいりたいと思っております。 「資料5」5ページでは経営革新一般を見てまいったわけでございますが、6ページで は、特に「IT時代における経営革新」ということで経営革新に当たりましてはITをい かに活用するかということでございます。 「データ集」26ページは、少し見にくいですが商工中金の「インターネットの導入状況 」という調査でございます。いわゆるインターネット導入済みという企業を平成11年2月 と平成12年8月で比較いたしますと、全産業はもちろん、すべての業種で顕著な形で導入 が進んでおります。 27ページは国民生活金融公庫の「コンピュータの導入状況」調査でございますが、ここ におきましても、インターネットとはやや違いますが「導入済み」「今後導入予定あり」 というところが、全業種平均でも6割に迫ろうというような状況に来ているということで ございまして、企業におきますいわゆるIT投資というのが盛んになってきてございます 。 「データ集」28ページの「インターネットの利用目的」のグラフにつきましては、「現 在実施中」「実施を検討中」ということで、「現在実施中」というところでは「一般的な 情報収集」と「取引先との電子メール等による情報交換」という2つでございますが、今 後「実施を検討中」というところにつきましては例えば「BtoC向けの自社製品・サービ ス等のホームページ上での販売」とか、「BtoB向けの自社製品・サービスのホームペー ジ上での販売等」ということで、少しずつビジネスに近い形での実施を検討しているとい う動きが見てとれるかと思います。 29・30・31ページに、ITにつきましての事例を提示させていただきたいと思います。 お時間の関係上、余り詳しく御説明できませんが、29・30ページがいわゆる成功と、この 形で行けばうまく行くのではないかというケース。31ページはいわゆる失敗の傾向でござ います。 29ページは、従業員9人の非常に小規模なニットウェアの企画・製造・販売を営むA社 で、Webサイトをうまく使いながらいろいろとマーケッティングをやっているというケー スでございます。 30ページは、靴下の卸売業を営むB社で、従業員数は84人ということで少し多いわけで ございますが、約1,500あった取引先をおよそ1割に絞ってFC化を進める等、業務の見 直しを大幅に行っているものでございます。 31ページは失敗の事例でございますが、4行目から「失敗の傾向として」ということで まとめさせていただきました。?既存の業務に合わせた形のITシステムの導入に固執し て業務革新が果たせないようなケース、?経営者などITシステムを導入しようとする人 が、社内全体にうまく説明できなくて社内の意識改革がなされないで中途半端に終わって しまうというケース。失敗例の?(文房具卸A社)は、従来の業務をそのままIT化しよ うとした結果、業務の効率化が余り図れなかったケースでございます。?(ベアリング部 品メーカーB社)は、ナレッジマネジメントではありませんが、社内全体にその意思がな かなか伝わらなかったというケース。 それに対しまして、30ページの先ほどの靴下卸業B社につきましては、詳しく御説明で きませんでしたけれどもしっかりと業務を見直した上でITを導入した、それから社員に 対する意識改革を求めたケースで、そこらあたりに違いが出てきているのではないかと思 っております。 そのような意味で、「資料5」の6ページに戻りまして2番目の項目では、業務効率化 だけではなくて、もう少し違った次元で明確な経営戦略をもちながらITを活用している 事例を、できるだけ多く見ていきたいと思っておるわけでございます。 さらに、中小企業のデジタルデバイド解消の観点からの政府の関連施策の現状と、その あり方も検討したいと思っております。 「資料5」7ページ、「第2章・創業を巡る現状と課題」でございますが、第1章は経 営革新、第2章は創業ということを取り上げてみたいと思います。 「1.創業の全般的動向」では、「近年、我が国の開業率は廃業率を下回っている」と いうことで、「データ集」32ページの事業所・企業統計の「開廃業率の推移」によります と、平成11年簡易調査では開業率が4.1%、廃業率が5.9%になっております。 廃業率について少しコメントさせていただきますと、平成8~11年の間に約32万の事業 所が減少したわけでございますが、その中で小売業が13万、製造業が約8万減少したとい うことで、非常な構造変革の中で痛みを伴うという形で小売り、製造業に倒産の件数がふ えておりまして、それが廃業率を高めているということでございます。 一方、「資料5」の7ページに戻りまして、電気通信とか情報サービスのような、いわ ゆる動きの激しいところにつきましては多産多死の状況が出てきております。 「2.社会の新たなニーズに応える中小企業」では、高齢化・環境問題への高まり等、 社会の変化を前向きに受け止めて、新たなビジネスチャンスにしているような事例を発掘 ・紹介してまいりたいと思っております。 「3.創業の活性化」では、?ビジネスシーズ発掘の推進と?ビジネスサポート体制の 充実ということでございますが、「データ集」36ページの「技術移転機関(TLO)の仕 組み」は説明を省略させていただきしまして、37ページの「我が国の承認TLOの技術移 転状況」で北海道以下、各大学におきましてTIOの技術移転が始まりつつある現状の中 におきまして、中小企業にとってのTLOの利用の現状と課題を整理してまいりたいと思 っております。 ?ビジネスサポート体制の充実では、「データ集」38ページの「我が国のインキュベー ター設置数の推移」の公的インキュベーター、民間インキュベータは、平成12年に入りま して民間インキュベーターの設置数が増加しておりますが、中身につきましてはIPO直 前のところのビジネスサポートが中心で、設立初期の段階のインキュベーション機能はま だもってないわけでございますが、このような動きが出てきているということでございま す。 最後になりましたが「資料5」8ページでは、事業承継の円滑化という問題を「第二創 業」と捉え、自営業者の高齢化、数の減少という中で経済全体の新陳代謝にとって円滑な 事業承継が非常に重要であるということから、経営資源の維持・再生に資する事業承継に ついての新しい動きをできるだけ発掘・紹介してまいりたいと思っております。 最後に「4.創業・経営革新支援策の評価」ということで、まだ時期尚早かもしれませ んがSBIR・3類型支援センターの現状と課題を評価してまいりたいということでござ います。 非常に駆け足になりましたが、このような問題意識のもとに中小企業白書をまとめてま いりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。以上です。 ○清成部会長 どうもありがとうございました。 それでは、ただいまの御説明につきまして、御意見、御質問等ございましたら、御自由 に御発言をいただきたいと思います。いかがでしょうか。 ○橋本委員 御説明をいただいて、その解釈にかかわる点で幾つか意見を申し上げると 同時に、差し出がましいのですけれども、中小企業白書の編集をこのように考えていただ いたらどうかなと、そちらの面でも意見を申し上げたいと思います。 最初に解釈の面なのですけれども、スタグネーションがずっと続いたということもある と思うのですが、平均値でみると、悲惨というか、どうしようもない状況になるのだと思 うのですが、しかし、見ようによってはいろいろな変化が読み取れるようにも思います。 先ほど、藤室長は、キャッシュフローでみると有利子負債の返済能力は20年に近く、絶 望的だというようにおっしゃっていましたが、他方で設備投資はキャッシュフローの内に はっきり入っていて、15ページの図を見てみると前年に比べてかなり大幅に落ちているわ けです。設備投資が落ち込んでいるとしたら問題だと思いますけれども、大企業と同じよ うに設備投資額がキャッシュフローの範囲に収まってきていて、そのキャッシュフローの 増加が実はそれに対して非常に大きく貢献しているようですし、17ページの経常利益の変 化から言いますと、このキャッシュフローの増加の内の利益の増加の貢献が大きいのでは ないかというように読み取ることもできるわけです。 そういう面で言えばいい面もあるわけで、その辺もちゃんと見ていただいたらどうだろ うかということ。 もう1つは、収益率を見たときに、18ページの売上高利益率のばらつきがやや大きくな っているのは、この10年間のスタグネレーションの過程というのはかなり大きな変動とい いましょうか再編の時期なのだと思うのです。平均値をとってみたら悪いけれども、その 中で差が非常に大きく広がってきている、その広がってきていること自体は新たな展開へ の条件をつくっているのだと思いますので、そういった点にも御注目いただいた方がいい のかなという気がいたしました。 それに関連しまして、今、集積の検討をやっていますけれども、先ほど、藤室長がおっ しゃったのは、集積全体が落ち込んでいるというような印象なのですが、実際に調べてみ ると、特定集積などは数は少ないですけれどもかなり元気なところがありまして、ばらつ きが非常に大きくなっているというのが特徴だと思いますので、そういったばらつきをど う評価するかということをお考えいただきたい。 2つ目は、関連しまして、統計上の「その他」という項目に最近どうも変化があらわれ ているのではないだろうかと。特にサービス業で「その他」項目が相当増えていて、何を やっているかよくわからないところで、実はそこが大変変化をしているということもある と思いますので、もう少しお調べいただければと思いました。 3つ目は、記述を少しつけ加えていただけたらどうかと思う点です。あるいはもう御準 備あるのかもしれませんが、「資料5」の7ページの、海外と対比を行いながらビジネス サポート体制の充実について検討すると。これは大変いいと思うのですけれども、ビジネ スインキュベーターだけではなくて、日本のベンチャーキャピタルについても最近、変化 が大きいということも聞いていますので、少しお調べいただきたい。 他方、アメリカ自体も、今、資金過剰で、投資先を見つけ出すのに大変困難を極めてい るというようなこともあるようですから、少しお調べいただければと思います。 もう1つは、IT化を指摘されているわけですけれども、IT関連での新規事業はどう なっているのか。どう利用するかというよりも、IT分野でどういう事業が出てきている のかというようなことにつなげていただければと思います。以上が、解釈にかかわること です。 最後に、編集と言うとおこがましいのですが、私、たまたま、アメリカが10年間スタグ フレーションになっている1930年代について書かれた「1930年代の経済的教訓」という本 を読んでいましたら、すごく重要な変化が起こっていたにもかかわらず、みんなが――ビ ジネスコンフィデンスという言葉を使っているのですが――ビジネスコンフィデンスを失 っていまった、それが非常に大きなダメージを与えているのだというようなことが指摘さ れていまして、本当にそうかどうかというのはちゃんと検討すべき別の課題ではあるので すが、そういうこともあり得ると思います。そういう点から見ますと、元気な事例をもっ と思い切ってサクセスストーリーとしてまとめて、そのサクセスストーリーが存在すると いうことで、雰囲気というのか風土というのかそれを変える、あるいは刺激を与えるとい う点も重要のではないかというような気がいたしました。 中小企業庁としてはそこまでの冒険はできないかなという気もしますが、そういうアイ デアも御検討いただければと。以上です。 ○清成部会長 どうもありがとうございました。 平均値でみるとどうしても暗くなっていまうということがあるものですから、大変重要 な御趣旨だったと思うのです。逆に「データ集」18ページの「売上高利益率のばらつき( 標準偏差)の推移」は非常に有益な整理だと思うのですが、この場合の平均値がどうなっ ているのかですね。例えば小規模ほどばらつきが大きいのか、平均値をみると一体どうな のか。平均値でみると逆に小規模の方が多分高いのかもしれないですね。というのは、こ れは総資本利益率ではないものですから回転率の早い方が当然あれなのですが、しかし、 推移をみる上でそこがどうなのかということ。 それから、18ページは規模だけではなくて、業種を反映しているのかもしれない。法人 企業統計でやってみると元気のいい業種規模というのがあるのですね。だから、不況業種 の代表よりも好況業種の中小企業の方がパフォーマンスがいいということがあるのですね 。そういうのだとわりと簡単にできますので、法人企業統計等でしますと、より一層ユニ ークさが出てくるのではないかというように思います。 ほかに御意見、どうぞ。 ○堤委員 今おっしゃった30年代のアメリカというのと似ている状況で、世界で一番お 金のある、利益のある国で、何がないかというと、恐らくコンフィデンスなり、リスクを とるという起業家精神が大分薄れてきたのではないかと私は思っておりまして、この具体 的案件に沿って幾つか申し上げたい点があるのです。 1つは、「資料5」4ページの「間接金融依存で、自己資本を充実すべきである」とい うところは、現場の実感からすると少しレベルが高いかなという感じがします。今、要す るに長い不況の中で困ってやむを得ず運転資金を借りて息をついているという人たちにと ってみると、借り過ぎかというのももちろんありますが、利益は少し上がり始めてはおり ますけれども設備投資もまだやっていないという人たちに「自己資本を充実しろ」と言う のが本当にいいのかなと。これは現状との乖離の問題がまず1点です。 もう1つ私が感じますのは、間接金融依存という裏側には、直接金融に行こうじゃない かという考え方が常にあるのですが、中小企業にとってその命題が正しいのだろうかと。 最近、アメリカから帰ってきてシリコンバレーを分析して何を感じているかというと、 日本の預金をする人たち、要するに株式に投資をしない比率の高さです。それから、いわ ゆる機関投資家と言われる人たちも株式に投資をしない。アメリカの年金はナスダックと かいうリスクマネー、リスク市場へ平気で出ていく。そういうリスクをとる人たちがいっ ぱいいる中では直接金融へいらっしゃいと言うのは私たちは正しいと思うのですが、今の ように日本じゅう手がかじかんでいる中で、直接金融市場にお金が余り出てこない中で、 あっちへ行けと言うのは……。私が間接金融をやっているからという意味ではありません が、日本の今の環境の中で、学問的には直接金融へ向く方がいいということなのですが― ―もちろん、創業とかベンチャーキャピタルとかは自分の生涯の命題として私は一所懸命 やっておりますが、その中で、中小企業という分野に限りこの時代に限定して、これが今 の時代に本当に正しいのだろうかということをちょっと感じたわけであります。 2番目は、6ページの「IT時代における経営革新」は大変いい表題だと私はつくづく 感心しております。ITを導入しようとかしないとかいう話はもう終わって、具体的にそ れをどのように経営革新に使うのかという各論の時代に入ったと私は実は思っておりまし て、私のところでもやっておりますが、パソコンの導入比率とかホームページを開いた比 率とかいうのも非常に重要なのですが、そうではなくて、経営革新にどのように使ってい るか。それの成功例、失敗例が非常に出てきておりますから、IT時代のITを活用した 経営革新という言葉――IT導入についての事例とかは過去の白書で随分やりましたが、 経営革新と結びつけてやり始めているというのは非常にいいと思います。 それから、アメリカで中小企業がなぜ情報化がどんどん進んだかという理由で日本にな いものというと、中小企業の経営革新について、中小企業庁でもITコーディネーターと いうことをさんざん考えられていますが、IT技術を経営革新に使用する、その分野のコ ンサルタントなり、助ける人がいないということが、残念ながらそっちに行けない理由の 1つだと思うのです。 それから、さっき分析があった中で「そのとおり」と言いたかったのは、今度は入れる 側の方の問題で、業務を変更しないでソフトを買いたがる、変更したがる、というのが日 本の癖だそうでございます。アメリカの企業が日本に普通のソフトを売りに来て感ずると ころは、全部カスタマイゼーションというのでしょうか、業務は一切変更しないで自分の 業務に合わせたソフトをつくれと言って、わざわざ非常に高いものを買って、バージョン アップに遭うとそこでとまってしまうと。 アメリカの企業の場合には、ソフトを全く直さないということはないですが標準形に非 常に近いものを入れて、業務の方なりシステムの方を直していくという感じが非常にいた しました。 中小企業にソフトを貸したりするASPというスタイルがありますが、アメリカにあっ て、日本に栄えてないのは、日本人はそういう標準形をどうも余り使いたがらないという ところにもあるような気がいたしました。 今度はぜひ立派な白書にしていただきたいと思います。 ○清成部会長 どうもありがとうございました。 ほかにございましたら、どうぞ。 ○宮下委員 2001年の中小企業白書は、ある意味では当然のことですが21世紀最初の中 小企業白書ですね。中小企業白書というのは、いろいろな目的をもって使われるのでしょ うけれども、新世紀の最初の白書というのは何が一番大事なのか、目的を重点的に書き込 む必要があるのではなかろうかというように思うわけです。 この数年来の白書というのは、当然でしょうけれども、先ほどお話がございましたよう に事例を出して、その事例を参考にすれば生きられるぞということで、かなり前向きの白 書になっていますし、この章立ての第2部でも「挑戦しなさい」と。 最後には、事業継承の第二創業を提案しているのですが、私ども大学で若い連中の就職 相談等々に乗っていて、中小企業の新しい政策方向ではありませんけれども「これからは 中小企業の時代だから、後継者はできるだけ家の跡を継ぎなさい、頑張りなさい、意欲を もった革新的行動に対しては政府は支援しますよ」ということでお奨めするのですけれど も、家に帰って自営業のおやじさんと相談すると「おまえの好きな仕事をやれ」というの が、大体のところです。 ということは、後継者がいないというのは、若い連中のいろいろな価値観、考え方等々 もあるかもしれませんけれども、それ以上に、現在の経営者が息子に跡を継承させたくな いという考え方が非常に強いです。ということは、現在の経営者は言うまでもなく将来に 対してものすごく不安をもっていて、こんな不安のある自分の将来に息子まで巻き添えに したくない、そういう気持ちが強いです。 そういうことを考えますと、今現在の中小企業の経営者あるいは中小商業の経営者に、 挑戦すれば将来、中小企業にも夢があるのだ、開かれているのだという、そこを明確に出 してあげることが大事な気がしてならないのです。 このビジョン、考えのトーンは、IT等々に挑戦すれば将来がある、というように言っ ていますけれども、現在の消費・高齢化社会等々を考えると、例えば消費者と接点のある 商業にも非常に小さな専門店も必要なのだ、というような中小企業の必要な分野が開かれ ているのだ、ということを明示してあげる必要があると思うのです。そういうことを明示 した上で、その市場に対して獲得していくチャンスがある、挑戦しなさい、という形にし なければ、挑戦しなさいと言っても、現在の経営者はなかなか挑戦しないし、息子にバト ンタッチをしろと言っても、バトンタッチしようという気持ちはもたないです。 ですから、1つの提言なのですけれども、第1部は、厳しい現状、実態を示しているわ けですが、示しっ放しだとますます危機感が深まるのみです。そして第2部は、こういう 方向で挑戦すれば可能性があるよと言っているのですけれども、私は、この1部、2部の 間に中小企業の分野にも21世紀は非常に開かれている、そういう可能性というかビジョン と申しますか、そこを見せてあげる必要があるのではなかろうかなという感じするわけで す。 そうすれば、第2部で言っている挑戦の意欲も出てくるし、おやじさんは、息子さん、 娘さんに継承するという考え方も出てくるのではなかろうかなという感じがしてならない のです。全体の構成ではそんな感じがするのです。 特に21世紀の初頭におきます白書というのは、中小企業の将来に夢があり、チャンスが あるという、そこを示すことが大事なのではなかろうかなという感じがします。以上です 。 ○清成部会長 どうもありがとうございました。 先ほどの御説明は「データ集」の10ページの「自営業者の業種別内訳」がある程度示し ていると思うのです。小売、卸、製造業の3つの10年間の減少率が極めて大きいにもかか わらず、サービス業はプラスなのです。しかもサービス業の半分ぐらいは知的なサービス 業なのです。 10年間をみると自営業というのは確かにものすごく減っていて、昨年は600万を切って いるのにもかかわらず、サービス業の方は増えて、かつ、中身が変わってきているという ことがあるのです。 ですから、今、宮下委員がおっしゃったように一定の分野は確かに伸びているものがあ ると思うのです。それから、運輸・通信業も、これは絶対数が小さいですけれどもふえて います。 ですから、そういう、何か新しい芽を見つけ出すような工夫が少しあればと思いました 。 ○木下委員 幾つか申し上げたいのですが、まず1つは、今、部会長がおっしゃった自 営業者の統計のことなのですが、私も同じようなことを申し上げようと思ったのです。 この統計に関してですが、私も前から白書の委員会に毎年出させていただいていつも感 じていたのは、事業の数の統計はいろいろの種類があって、どれが本当の実態をあらわし ているのかよくわからない。総務省の事業所・企業統計では、長官が最初におっしゃった 500万という数字は個人事業主も含めての数字ですけれども、同じ総務省でとっている労 働力調査では600万と。これは一体どういう定義でそうなっているのかなと。 また、青色申告会というのがありますけれども、この前、青色申告会で50周年の大会を やったときに、青色申告及び白色の確定申告をしている業者は、法人と自営業者を合わせ て700万以上あると言われているのです。いろいろな数字があるので、この数字自身が、 日本のいわゆる中小企業者の数の実態をどうあらわしているのかなという点。 これは藤室長に前にも申し上げて、非常に難しいとは思うのですけれども、いろいろ検 討してみる必要があるのではないのかなという感じがしています。 アメリカでは、税の統計をベースにして2,300万の中小企業者があるとアメリカの中小 企業庁長官はいつも言っているのですが、その中での創業率がどのくらいかということに なってくるのではないのかなと。私は、廃業、創業の比率が低いのは日本の実情を反映し ているとは思うのですけれども、ヨーロッパやアメリカに比べて日本がそんなに桁違いに 小さいのは、本当かなという感じがちょっとしております。 2番目は、「データ集」14ページの「中小企業向け貸出残高」のところで御説明があっ たのですけれども、都市銀行と地方銀行の数字がふえているのはどういうものか、研究を 十分やる必要があるのではないかという感じがします。これは私も根拠があって言ってい るわけではありませんけれども、公的資金投入の結果、目標を義務づけられているために 数字が出てきているという面があり得るのではないか。したがって、都市銀行は今、中小 企業に大いに貸し出しを伸ばしているぞ、ということを胸を張って言えるのかなという感 じがちょっとあります。 3番目は、事業承継のお話がございました。確かに先ほどおっしゃったように、親自身 が子供に承継したくないというようなこともあるし、逆に承継したいけれども子がついて こないというようなこともあると思うのですが、M&Aについての御説明がありましたよ うに、日本の事業者も「自分の企業をあくまでも子に継がせなくては」という気持ちが前 より薄くなっているという意味においては、ややアメリカ的なものに近づいてきているの かなと。したがって、従業員でも本当にその事業を継いでやってくれるという人があるな らその人に譲っていく、というような風潮が出るなら、むしろプラスの面もあり得るので はないのかなというような感じがしております。 そういう点で、いろいろ調査していただいた結果がおもしろいことになればと、私とし ては思っている次第でございます。以上です。 ○石原委員 どこから見ても非常に暗い流通について申し上げます。冒頭に橋本委員が おっしゃったように、平均値をみるとどう見ても暗いです。開廃業率もどう考えても逆転 しそうにない。この傾向はこれからまだまだ続くと思うのです。だけれども、前から申し 上げておるのですが、そのこと自身本当に問題だと言うのか、ということは少し考えてお かなければいかんのではないかと思うのです。 例えば開廃業率の問題にしましても、店舗が大規模化するだけでもこのデータ、この数 字は出るのです。 もっと構造的に言うと、日本の小売業というのはもともとが過小過多――小さすぎる、 多すぎると言われてきたわけで、しかも、人口が減少し、地方では過疎化が進む中で、か つての小さすぎる、多すぎる小売業の数でとらえてこれからも店舗数を維持していける、 と言う方がおかしいわけです。 ですから、すねた言い方をするかもしれませんけれども、こういう数字であらわれてく る面というのは、ある意味で構造的に過小過多を解消している、ノーマルになっていると いうことであるかもしれないのです。 したがって、そこだけで議論をしないというのが1つの手ではないかというように思っ ているのです。 小売業としては、一部の大きな企業とか集積は別にしましてほとんどの場合それぞれの 地域密着型の小売業ですから、地域の活力を越えられないのです。人口が減っていて雇用 機会が減っている地域で小売業だけ頑張れと言っても、それがいいとか悪いとかの価値判 断は抜きにしましてそれはほとんど無理だろうというぐらいに思っています。 その意味で小売業の世界というのは、今までのようなどちらかというと「みんな同じ方 向を目指して頑張ろう」と言うよりも、いろいろな姿を見せ始めるのではないかと思うの です。過疎と言うと言い過ぎですけれども、農村部のようなところの商業と、都市部の商 業というのは明らかに姿が違うということをイメージしておいていいのではないかという ように、まずは思っています。 それで、先ほど宮下委員から「それでも明るく夢をもたそうではないか」というのは全 くおっしゃるとおりで、できれば「夢があるよ」ということを書いていただきたいなと思 うのですが、そういう可能性がありながら、それをつかめていないというのもまた事実な のです。 そこで、「資料5」5ページで、商店街等々について差別化が行われているところ、あ るいはタウンマネージャー等によってうまく立ち回っているところ、うまく成果を上げて いるところの事例をと、このこと自身は結構でございますが、どういう状況のもとで、ど ういうフォーマットでビジネスのあり方を変えていけているのか、ということをできるだ け丹念に調べて、そこを強調していただきたいと思うのです。 いいチャンスがありそうでありながら、それをつかめていない。つかもうと思うと何か を変えなければいかん、できればそういうイメージを出していただけたらなというように 思っています。 ○鯉江委員 小売の話が出ておりまして小売関係者から一言も言葉が出ないというので は存在感がございませんので、重複するかもわかりませんけれども一言所感を申し述べた いなと思っております。 今回の白書は、まず、結論だけ申し上げますと、介護の医療から、いわゆる通商に至る まで幅広い問題を取り上げていただきしまして、これが1つのデータとして正しく導く方 向へこれから大変参考になると思います。これはほぼ満点というか完璧だと思うのです。 ただ、失礼ながら「ほぼ」と申し上げたのは、数字だけではカバーしきれない面がある よということを申し上げたいのです。そのカバーしきれないものは何かというと、やはり メンタルなものです。例えば後継者の話が出ておりますので申し上げたいわけですけれど も、もうからんから、苦労させたくないからと。息子も、苦労したくないからと。高齢者 も若い人もともにそういった気持ちにならないということなのです。これは、ものづくり 、あるいは物売りに至るまで、すべてにわたって今、日本人のもつ非常に消極的な共通の 1つのマインドだと思うのです。これがある限り、数字やかけ声だけではカバーしきれな いなという実感をもっております。 例えば競争力と言いましても、国際的な競争力から、商店街のように身近なコミュニテ ィーの競争力、それから同じ小売でも大中小、あるいはチエーン店等々もございまして、 まさに多岐多様な中でのいろいろな選択肢の中からのいわゆる競争なのです。 このデータはほんまによく出ておりまして1つの基準になると思いますので、ぜひひと つこれをおまとめいただきたいとお願いいたします。 ただ、くどいようですけれども、このデータがものづくりから物売りに至るまで、基礎 的データとして有効に活用されるためには、「これ」という活性化する決め手はないにし たって、何か希望をもたせるような文言を入れていただければありがたいなと。 最後にお尋ねなのですけれども、こういった中小企業に対するデータというのは、大国 といえども恐らくそうはないと思うのです。例えばアメリカにあるかもわからない、フラ ンスにあるかもわからない。しかし、中国にあるかどうかということになりますと、どう かなと。そういうこともありますのでお尋ねでございますけれども、こういう、中小企業 に関するデータというのは、先進諸国でどことどこがおやりになっておるか、ちょっとお 尋ねいたしたいなと考えます。 ○清成部会長 先ほど木下委員からも御質問がございまして、何点か質問が出ています ので、この辺で……。 ○事務局 まず、木下委員からの御指摘はそのとおりでございまして、同じ統計でも、 例えば名寄せをしたとかしないとか、技術的な問題から始まって、カバレッジの問題もご ざいますので、そこら辺のところはできるだけ総合的に、これがすべてだという形になら ないように、いろいろな数字を出していって、「なかなか決め手はないけれども大体こん な感じではないだろうか」という形で出していければと思っております。 鯉江委員からいただいたデータ集というのは、例えば具体的にどこのところを含めてお っしゃっていただいているのでしょうか。今回の白書は今御指摘いただいたように、アメ リカであってもフランスであってもこれだけ細かいデータはないわけで、むしろ事例を中 心に見ていくしかないのかなと思っています。そこは、データが非常に制約される中で、 先ほど石原委員からありましたように、ただ単に表面的にうまくいっているというのでは なくて、どういうところで努力して、どこがうまくいったのだろうかというところまで掘 り下げて、少しでも前向きに出していければと思っております。 ○鯉江委員 ないだろうということは実は知っているのです。このデータ、中小企業白 書というものは世界に冠たるものだと、実は思っておるわけで、その確認のためにお尋ね したわけです。 ○進藤委員 既に議論されているかもしれませんけれども、初めてなので1つだけ提案 したいことがあるのです。 それは、中規模企業と小規模企業がある中で、小規模の企業は全く性格の違う企業が存 在しているわけです。1つはベンチャーというもので、これは最初から直接金融で成長し ていき、ゴールは社会の会社と。したがいまして小企業から中企業へ、それから大企業へ の可能性を秘めたものと。もう1つは本当の小企業で、これは非常に家族的経営をして存 続を目的としている。ですから、性格が2つあるのではないかなと。 そういった中で、前者のベンチャーにつきましては、私の経験からしますと、80年代と 90年代とでは全く変わっていると。昨今そのベンチャーがたくさん輩出してき始めたのは 、ある意味ではいろいろな政策が効果を奏したり、社会的な認知が高まったということで はないかなというように思うのです。 したがいまして、1つのマクロなデータの集計をさらにもう一段ブレイクしまして、明 るい情報と。あるいは暗い中でも、こういう問題があるからというように見えてくるよう なこともあるのではないかなということで、小規模の企業を2つに分けて見てみるのも1 つの方法ではないかなというように思います。 ○井上委員 キャッシュフローで見た返済余力は確かに非常に悪い状況にあるというこ とは事実でして、今、IT関連は別としまして、特に重厚長大の製造業の下請的な企業と いうのは非常に悪いのではないかなと。例えばトヨタにしても、あれだけ利益が出ておっ ても、その一次下請をこの前訪問したら、2004年までに30%のコストダウンを要求してい るのです。10%ずつのめちゃくちゃな数字の要求が出ている。そうすると、一次から二次 に下がってくるともっと大変な状況になる。日産が20%やって結果が得られたからという ことでトヨタがやり出しているわけでしょう。日立などにしても、大体年10%ぐらいコス トダウンしなければついてこなくてもいいよ、というように大手が下請業者に対してコス トダウンの強い要求をしておる。 そのような現状から「この場をしのぐために何とか運転資金を」というようなことで、 設備に投資もできない現状というのがはっきり出ているのだろうというように思います。 そういった点で、従来の下請から脱して新しい業種転換をしていかなければいけない。 それにどうやってバックアップするのかということだというように思うのです。 いろいろな新しいテーマというのはいろいろなところに転がっていることは確かに事実 だと思うので、その辺への誘導というか指導というものも大事なのではないかなというよ うにも思います。 それから、先ほどのITの関連でソフトのことですけれども、私ども、十何年前、最初 にオフコンを入れて、これは大変高いし、大変だなということから、自社でユニックスの システムで構築したのですけれども、そのソフトといいますか構築するのに大変な費用が かかり、中小企業ではえらい金をかけちゃったなというように思っていますけれども、今 はパソコンに対するパッケージソフトというのは非常にたくさん出ておるわけで、逆にた くさん出過ぎて、どうやって使っていいか、どれをセレクトしていいかわからないという 、逆の現象が起きているのではないかなというように思います。そういった点で、そのコ ーディネーターというのをぜひとも考えていくことが必要だろというように思います。 あと、日本は賃金が非常に高くなってしまっている、その賃金をダウンさせるというこ とも考えていかなければいけないのではないかなと。そうすると、外国人労働者について も早い機会に将来をいろいろと考えないと――日本には20万も30万も不法滞在者がいると いう状況なわけですので、そういうものを正規な雇用にもっていけるようなシステム作り というのを、この辺でそろそろ考えないといけないのではないのかなということも感じま す。 銀行も非常に厳しい現状で、キャッシュフローをチェックしながら貸付をやっていくと いうことになると、中小企業はこれからますます大変な時代になることは間違ないわけで すので、それを早く脱皮できるような援助といいますか、そういうことをぜひともしても らいたいなというように思います。以上です。 ○児玉委員 今まで御発言があったことと重複いたしますので簡単にさせていただきた いと思いますが、この白書でいろいろなデータを整理する場合に、さっきから平均値と実 際の状況との乖離という話が出ておりまして、私どももいろいろな景況観測を現場でやっ ておりますと、本当にそういう感じが非常に強いのです。 これは言葉を変えますと勝ち組と負け組の差なのですね。だけれども、これをそういう 表現で取り扱うのは非常に難しいわけで、ばらつき、ばらつきと言っておるのだけれども 、そこをどう扱うかというのはちょっと工夫が要るのではないかと思うのです。 ただ、そうは言いながらも、平均値では物事の実態は全く見えてこないのもまた真実だ と思いますものですから、さっきの標準偏差をもう少し加工して、ばらつきの実態がよく わかるような工夫をしてもらえないかなということが1点です。 それから、「データ集」の3ページに「倒産企業の業歴別の構成比」で、最近は長い業 歴の部門の倒産がふえているというのが出ておりますけれども、我々はここ4年間ぐらい でベンチャービジネスに1,600件近くお金を出しておりまして、それで見ておりますと、 いうなれば第2の創業、第3の創業、第4の創業というような形で、新規の企業ばかりで はなくて業歴の長い企業がどんどん形を変えていく創業というのが実は結構行われている のです。 ですから、業歴の長いものの倒産の構成比がふえていると言ったって、一方で、長い業 歴のものの母集団というのがあるわけだから、その母集団との対比でみて、長いものにつ いて倒産件数が非常に上がっているのかどうかと。 それから、短期のものの倒産比率というのは当然高いわけなので、それと比べてみた場 合に、長いものについて格別そういったことを言わなければならないほどの意義があるの か。むしろ、長いものの中で第2、第3、第4という、いろいろな形での創業が行われて いるという点をもう少し見ておいた方がいいのではないかと。逆に言うと何もしないで漫 然としている人がだめなのは当たり前のことなのですけれども、そこのところがもう少し 見れないかなという気がいたしました。 それから、貸出の話につきましては、昨年の暮れぐらいから中小企業の人たちが、3月 の年度末に向けてかなり心配をするという傾向が出てきております。一方では、金融庁の お話が先ほどちょっと出ておりましたけれども、公的資金を注入されている銀行は、指示 もありまして中小企業向けの貸出を増やすという計画書を金融庁に出して、それがそのと おりにいくかいかないかということを金融庁でチェックをされる。こういう形になってお りますので、我々の見ておりますところ、死物狂いで貸しているわけですが、それが結局 、大変なミスマッチになっておりまして、もうこれ以上借りる必要はないという中小企業 のところに一所懸命貸しにいっているのです。したがって、とにかく何が何でも年度末、 借りてくれというような話になって「借りてくれ、借りてくれ」と言いますものですから 条件は非常識な条件にどんどんなっていっています。他方では、本当に欲しくてしようが ないような人のところには行かないということになっているわけなのです。 したがって、都市銀行で増えた増えたと言ってみても、もう一皮めくって中のミスマッ チの具合というのをよく見ておかないと、これまた実態はあらわれないのではないか、と いう感じがするものですから、ここあたりは、もし、できたら、もうちょっと掘り下げて 見ていただけないかなという気がいたします。 最後は事業承継のところで、私は今「第2、第3、第4の創業」という言葉を使ってし まったのですけれども、そういう継続的な事業の中での変革について、これまでも要する に「創業」という言葉が使われて来ていたような気がするのです。 したがって、事業承継を転機に、そこから何か新しいものにジャンプしていくというも のについては、できたら手垢のついてない、もう少し別な言葉がうまく使えるものであれ ばそういうものを工夫していただいた方が、混乱、混同もなく、かつ、新鮮な感じがして いいのではないかなという気がいたしますので、御報告いただければと思います。 ○神戸・玉利委員代理 廃業というところには、合併――2社の合併だったら1社にな り、3社の合併もありますけれども、合併というのはこういうところでは考えられるもの はあるのでしょうか。 というのは、手前どものところでは合併というのが結構あるのです。それは吸収合併も もちろん、対等合併もあります。それから、多分バブルのころに分社したのがまた元へ戻 るのもあると思います。それで事業所数は全部変動しているのです。 私のところで厚生年金基金をちょっとやっているのですが、従業員はそのまま移行して くれるものですから確保はできるのです。「ああ、首にならなくて済んだ」というような 感じでもつ場合があるのです。 ここの中でそういう合併みたいなものはどんな扱いになっているのか、ちょっと見えな かったのです。また、政策的に合併を促進するようなものもあるかもわかりませんが、そ の辺がちょっとひっかかったということです。 ○清成部会長 この統計に関して? ○神戸・玉利委員代理 これからの白書の中で、例えば方向でももっていければ……。 例えば薬などの場合は例にならないと思います。今、第1次合併とか、第2次合併と言 って、1,000億になるまで問屋さんをどんどん合併させています。そういうのは入らない かもわかりませんが、卸の場合、もっと小さな地方問屋というものの合併で……。 ○清成部会長 事業所・企業統計をベースにしている限り、事業所ベースの議論であれ ば、その事業所がなくならないとすればそれは残るわけで、だから廃業にはカウントされ ないです。 ○神戸・玉利委員代理 ただし、数が減っているから…… ○清成部会長 いやいや、企業の数は減っても事業所の数は減らないという場合が当然 考えられるわけですね。 ○神戸・玉利委員代理 というのは、事業所として3つ独立していますから、それが1 つになってしまうということは…… ○清成部会長 ですから、どこかの事業所を廃止すれば、それは廃業にカウントされま す。企業が合併しても事業所が残れば、それは……。 ○神戸・玉利委員代理 そういうのもありますと。その辺がどんなカウントといいます か見方をされているかというのがちょっとわからなかったものですから……。 ○清成部会長 実態を反映するのはなかなか難しいですね。 ○神戸・玉利委員代理 難しいかもわかりませんからちょっとお聞きするわけです。 ○事務局 今、部会長の御説明どおりでございまして、統計の限界がありますので…… 。 ○都村委員 商工会からまいったものですけれども、いろいろなところで「中小企業」 の言葉が出てくる前に必ず「中小企業を取り巻く環境は極めて厳しいものがあります」と いうような言葉が出てくるわけで、何か中小企業の枕詞のように感じるぐらいなのですけ れども、それを、21世紀からの新しい白書ですから、先ほどから出ているように夢のよう な言葉をひとつ入れていただきたいなと思うのが、私ども中小企業者の願いでございます 。 もう1つは、先ほど小規模企業の方の分け方ということでお話がございましたけれども 、中小企業全体としての分け方として、私はこういう考えをもっておるのです。 1つは、ある地域社会でやっている中小企業の売上なら売上が全部その地域社会にかか わっている例えば地元の建設業、小売商業等といったものと、もう1つ、そこから全国へ 発信している企業、世界へ発信している企業がありまして、今、地方自治体は全部、地場 産業とかに力を入れている。これは、その県なり町なりの首長ですから自分のところにあ る産業に力を入れていくのは当然のことですが、そうではない、そこから全国に発信して いるところ、世界に発信している企業というものを本当に支援していくのは国の方ではな いかなと私は思います。 それから、ITという方面から言いますと、今、地場でやっている人がいかにインター ネットを使って全国へはばたいていくか、そのような格好のものをつくり上げていくのが 1つの方向ではないかなと。 このように思いますので、そういう分け方というのも1つの考え方ではないかなと思っ ておるのです。以上でございます。 ○平野委員 初めての参加でございますので、若干の感想を含めて申し上げたいと思い ます。 私ども保険会社と中小企業との関係というのは、私どもの取引先であったり、保険販売 を委託しております代理店さんであったり、また、投融資先であったり、多面的な面で非 常に密接におつき合い、お取り引きをさせていただいております。 また、当社はベンチャーキャピタルを持っておりましてベンチャー企業の経営者の方々 と直接おつき合い、お取り引きをさせていただいている、こういう関係にあるわけでござ います。 こういう中で日常の我々の企業活動を通じて中小企業の重要性というものは非常に実感 をしておるわけでございます。したがいまして、今般の検討課題の中で新しい中小企業像 は我が国のダイナミズムの源泉というように位置づけておるし、またさらに、創業を活発 にして経済を元気にするという点に焦点を当てて、力点を置いておられるということで、 これは私ども大賛成であり、経営革新、創業に向けてその自助努力をサポートしていくと いうことは極めて重要だなということを再認識した次第であります。 今後も、中小企業の活動を、保険を軸に広い面で積極的に支援していければ、というよ うに感じた次第であります。以上でございます。 ○佐伯委員代理(菅野) 感じている点を若干申し上げます。 中小企業が、ITその他のいろいろな新しい動きの中でチャレンジしなくてはいけない ということは全くそのとおりでございますので、そういう成功事例みたいなものをプレイ アップしていただくというのは非常に重要なことだと思います。 ただ、その際に、私ども日ごろ仕事をして感じておりますのは、例えば下請関係とか、 メーカーさんと流通、卸・小売との関係等で、今はドライに当面の合理性ということで取 引関係をセレクトしていくという流れが非常に重視される、そういう議論がちょっと強く 出過ぎているところがあると思うのです。 一時代前をちょっと振り返ってみますと、例えば80年代の終わりから、日米構造協議と かそういうところで日本側がアメリカに対してどういうことを言っていたかということを 考えてみますと、例えば自動車工業ですと、日本は下請との関係でデザインインというこ とで、親企業といわゆる下請の部品工業との間でいろいろな品質情報等について相互交流 のやりとりがある中で下請部品工業のレベルアップも図られていって裾野の広い産業が育 成されていると。そういう、部品工業の技術力がアップして生産性が長期的に向上すると いうことで自動車産業全体として競争力が強化されているのです、というような話を随分 していたと思うのです。 そういうところのコミュニケーション関係というのが今、議論のそ上にあまり載ってこ ないで、当面、インターネット調達で、安いところというような短期的な話だけになり過 ぎている。当面の調達ということだけ考えれば、安いところから調達すればいいだろうけ れども、振り子が振れ過ぎているという面があるのではないかと思うのです。 そういう観点も当然必要だと思います。中小企業の方でもそういう厳しい環境の中でチ ャレンジをする必要があるけれども、技術フロー――TLOみたいな大学とか、そういう ところとのいろいろな相互協力関係という観点で、産業の中だけでも裾野の広い中小企業 群を中長期的に活性化してもらうという有機的な関係というのを、この中で触れていただ くことも必要なのではないかなという気がいたします。 あと、金融の関係で、橋本先生その他、何名かの方からお話がありましたけれども、今 、中小企業はキャッシュフローの中での設備投資ということになってきているし、キャッ シュフローのところも利益が増えてきているということで少し増えてきていると。そのこ と自身は非常に好ましいことだと思うのですけれども、逆に金融機関サイドから言うと、 いろいろな意味で金融監督庁の検査マニュアルその他がありますのでわりと厳しくなって いて、リスクマネー的なところに積極的に出すような環境になり得ているのかどうか。事 業者も貸付する方もみんな萎縮してしまっているというきらいがちょっとあるのかもしれ ない、というような気がするのです。 それで、都銀が伸びているという結果が出ていますが、それも多分、金融監督庁との間 の資本注入のときの条件如何という問題もあり昨年度が落ち込んでいて、信用金庫などは 昨年度が増えた反動として逆に今年度伸びが落ちてているというところもありますので、 その辺もちょっと触れておいていただくことが必要かなという気がいたします。 もう1つは、白書の取りまとめも最終整理の局面に入りつつあるのでこれは難しいのか なという気もしますけれども、逆に言うと、日本の国民全体――金融も事業者も、もうち ょっとリスクを侵してチャレンジをするという意識をもつ必要があると。 白書ですからどこまで言えるのかわからないのですけれども、例えば韓国などは、2年 前、あれだけの金融不況でどん底に置かれながら、一昨年の後半から昨年ぐらいまではも のすごいベンチャーブームでチャレンジをしていて、ここにきて昨年の暮れからの反動が ちょっと出ているという別の副作用もあるわけですけれども、ほかのアジアの国ですら、 いろいろな意味でチャレンジをしている。だから、日本全体としてもうちょっとそういう チャレンジ精神が今、求められているのではないかというようなことを、中で少し問題喚 起をしていただくと。 それゆえに、行政の方でも多分、創業促進とかを制度ツールとして一所懸命やっていた だいていると思いますので、ほかの国の例なども引きながら、うまく雰囲気醸成をしてい ただければいいのではないかなという気がいたします。 全体的に雰囲気が厳しい環境のもとですから、成功事例などを大いに盛り込んでPRを していただくというのが非常に重要なことではないかなと思いますので、よろしくお願い 申し上げます。 ○清成部会長 大分いろいろな方から御意見をいただいたのですが、今日初めての方も いらっしゃいます。河野委員、何かございましたら……。 ○河野委員 この白書というのは、本当の利用者、読者は誰なのだろうかという感想を もって聞いていたのですけれども、そういう意味で今回から大変たくさんの詳細な事例を 集められたということであれば、本になるのは大変いいことだと思うのです。この変化の 激しい時代のスピード感からしますと、それ以前もそれ以後も更新しながら、この形その もの、フォーマットそのものがまさにネット利用の中で皆さんの中に共有されていくとい うことは既に織り込み済みの話というように理解してよろしいのでしょうか。そのことを ちょっと質問したかったのです。 ○事務局 ネット利用は積極的に考えたいと思っております。 ○清成部会長 予定された時間にもなっております。ほかに御意見ございませんでした ら、本日、ちょうだいしました御意見を踏まえまして事務方で白書にまとめていただくと いうことにいたしまして、この2001年版中小企業白書の主要検討課題についての審議はこ れで終了いたしたいと思います。 それから、本部会終了後に公表いたします議事要旨の内容につきましては、私に御一任 いただきたいというように思います。 それでは、第1回の中小企業政策審議会基本政策部会を閉会いたします。きょうは大変 どうもありがとうございました。 ――了―― 【問い合わせ先】 中小企業庁調査室 担当:宮部