出席委員:在原委員、江頭委員、日野代理(江崎委員)、唐津委員、倉島委員、見学委員、栗原代理(篠原委員)、田中委員、堀委員、前田委員、美安委員、村上委員、品川委員、引馬委員
冒頭、事務局より「中小企業の会計に関する研究会報告書」について説明。その後の議論の概要は以下のとおり。
○中小企業経営者自身が、会計は税だけのためにあるのではない、中小企業経営者自身が会社の状況を把握するために重要なものということを自覚することが重要。
税制上、損金と認められないものは費用計上しないといったことが実務上多かったようだが、将来、支出しなければいけないものは潜在的に債務としてあることは厳然たる事実であって、そういうことをきちんと把握しなければいけない。
○ディスクロージャーの受け取り手、特に金融機関等については、単に赤字決算になっていれば取引を打ち切りといった単純な認識は改めるべき。
○中小企業も、ディスクロージャーをすることによって評価が高まるという状況が出てくれば、自主的に会計の公開に取り組むようになるのではないか。こうした点についても政策的に誘導していく必要がある。
○企業会計の会計をきちんと原則に従ってさせるのは良いことであるが、それをさせていくためにはある程度動機づけが必要。例えば、中小企業をM&Aの対象としたときに、会計がきちんとしていないといけないというようなことが動機付けになるのではないか。
○いろいろ実態をみてみると、M&Aについては、少しずつ出てきているというのが正直なところ。東京、大阪などの商工会議所ではそれなりの相談窓口を設けたり、一部、M&Aの紹介を専門とする会社も出てきているが、 200万という中小会社の数を考えると、まだそんなに多くない。いわゆる「のれん」の評価などが問題になることが多いようだ。
○減価償却について、税務署は一律の税法の規定でしか見ようとしない。しかし、実際の設備使い道はそれぞれ異なっている。最近はパソコンというのは特別な取り扱いが出来、あれは非常にやりやすくなったが、それ以外の設備その他についての償却となると、税務署は見てくれない。実際の税制上の運用の改善も必要なのではないか。
○今後は、PLとかBSで事業計画を立てるとか、そういう将来の会計データを計画するのが望ましい。キャッシュフロー計算書についてもそういう材料として考えると、より現実的になる感じがする。
○今の指摘は大変重要で、この報告書のもともとの議論の出発点の1つとして、計算書類に基づいて経営状況を経営者が認識して、それをもとに経営計画を立てて、それで周りの例えば債権者とか取引先の理解を得るということがあった。
○会計について、いつまでもうそをついても、相手方、貸し手の方はきちっと中を調べているわけだから、それが長く続くわけはない。中小企業にとっても、そうした情報開示の重要性を十分にPRしていくということは必要である。
○減価償却の問題1つにしても、商法の規定で均等額以上の償却をしなければならないといっても、どうしても償却をしたがらない。これはこの研究会の場でも問題になったが、税法上の繰越欠損金が5年間しか控除できない。とにかく5年間赤字が続いて、これ以上赤字を出してもしょうがないとなると、黒字にせざるを得ない。これは金融機関から融資を受ける受けないの問題よりも、税法上有利性を確保するためには、償却をしないで、とにかく黒字にしておいて、5年前のものをとにかく消して、また赤字にしてやらざるを得ない。これは中小企業の生活の知恵としてやらざるを得ない問題があって、その間に入る税理士は当然その辺の操作をしてしまう。繰越欠損金が諸外国並みに10年とか無期限とかと認めてくれればもっとやりやすくなる
○ 商法改正により計算書類のインターネット公開可能となった。これまでは取引先が、「官報に公告したのか」といっても、「そんなコストのかかることはできるわけないじゃないですか」と、それで済んでいたと考えれるが、これからインターネットによる公告というコストのかからない方法が出てきたので、むしろ取引先、金融機関等がうるさくなるということは、あるかもしれない。
○ 中小企業者向けの税金の本などをみる、「絶対に利益は出すな」と書いてある。会社の利益を出すと法人税がかかり、法人税の税率を個人所得税で払おうと思うと、相当の所得がないとあそこまで実効税率はいかない。利益が出るようであれば、役員報酬にして払ってしまった方が税金は安くなる。中小企業には払ったことにして、実際は会社から金を持ち出すわけではないので、役員による会社に対する貸し付けというものが非常にたくさんあるというのが実態。今回のこの研究会の報告書に、役員と会社との間の取引については、注記事項の中に入っているのはそういう意味がある。
○ この報告書の提案の具体的な指針づくりとして、税理士会連合会と会計士協会が別々に作業を始められたということであるが、全く違うものをつくられてしまうのはまずいのではないか。調整がちゃんと行われることが必要ではないか。商法の施行令の中にどのくらい中小会社の計算規定が入るのかどうかわかりませんが、減損会計あるいは企業結合会計とか、リース会計も最近見直しが始まったが、大会社向けに会計基準がどんどん変わっていくので、それを絶えずフォローアップしていかなければいけないと考えられる。
○ 公認会計士協会、税理士会連合会がそれぞれ会計基準づくりを始めたといっても、1つのところはいずれも商法の解釈の中で基準をつくらざるを得ないので、そこには当然そこに収れんすることになると思う。ただ、公認会計士協会と税理士会での職域の違いがあって、公認会計士協会の方は、とりあえず商法の特例法の大会社に該当する分については公開会社でなくても監査が必要なので、そちらの領域になるということではないか。それ以外が税理士会ということになるのではないか。