日時:平成30年1月11日(木)10:00~11:10
場所:経済産業省本館17階第1~3共用会議室
出席者
川村委員(座長)、翁委員、菊地委員、多胡委員、中原委員、家森委員、安藤委員、遠藤委員、可部委員
議事概要
冒頭、座長よりこれまでの議論を踏まえた検討会としての提言案が示され、内容を説明。その後、各委員が順にコメントを行った。委員からの主なご意見は以下のとおり。
【委員】
- 提言案には論点を上手く盛り込んでいただいた。修文ということではなく、私が込めたいメッセージについて述べたい。
- 今後、商工中金が活躍していく上では、地域金融機関との協業・連携が鍵となり、それが新たなビジネスモデルのコアであると考えている。また、金融庁におかれては、地域金融機関が商工中金との連携を受け止める体制をしっかり作っていただきたい。
- 事業規模について、当初は縮小を明記することに抵抗感があったが、前回の検討会において商工中金の遺憾な現状を聞き、厳しめの表現にせざるを得ないという印象を持った。融資だけでなく、民間金融機関が対応できている外国為替送金や投信販売についても、商工中金が対応する必要はないかもしれない。一方、融資残高の減少ということが、貸し剥しや貸し渋りをするかのように受け止められてはいけない。商工中金は民間金融機関が対応できない領域に対応するということであり、決して中小企業者の資金繰りが厳しくなるものではなく、トータルで見れば中小企業への支援の幅が広がるということをしっかり広報してもらいたい。
- 危機時の対応について、信用保証制度が充実されたことを明記したことで、中小企業者の不安感を和らげられると思う。ただし、今年4月からスタートする危機関連保証がどのように運用されていくかはわからない。中小企業庁におかれては、信用保証協会を指導して、信用保証制度の環境整備の充実に努めてもらいたい。
- 単純な民営化ではなく、ビジネスモデル転換型の民営化ができるのであれば、中小企業者にとって最も望ましい。また、商工中金の職員にとっても地域から頼りにされるということになる。こうした考え方についてはしっかり説明していってもらいたい。他方、4年後にビジネスモデルの転換ができていない場合、それは民営化をしなくて済むのではなく、商工中金に社会的な意義がなく、存在そのものの問題になるということである。
【委員】
- 提言案の大枠については、現時点で取り得る唯一の選択肢であると思われ、賛成する。今後、これらを具体化する過程で言葉に落とし込んでいくべき点について述べたい。
- 提言案では、新執行部や職員の立場からみた、民間企業としての成長戦略が具体化されていない。そもそも成長戦略は商工中金自身が決定していくべきものであるため、本検討会の提言として記述する必要はないと思うが、民間企業の成長戦略は量的拡大と質的向上の両方が求められる中、商工中金については通常のプロパー融資を縮小し量的拡大をしないため、新執行部は量的拡大なしの成長戦略を策定することになる。果たして量的拡大なしの経営方針を職員に納得させることが出来るか大変難しい作業である。
- 完全民営化については、それで全てが解決するとは思わない。商工中金が民営化した場合にはその瞬間から地銀とバッティングするわけであり、それまでの4年間は民間の補完に徹すべきであるという方針との転換点をどう乗り越えるかは、商工中金の職員とそれを見守る第三者委員会にとって、非常に難しい仕事になる。
【座長】
- ミドルリスク層への融資がブルーオーシャンであるとすれば、なぜ民間金融機関がその領域に取り組まないのかというこれまでの委員の指摘は重要。他方、民間金融機関は、不良債権問題等を受けて健全性を第一にする中で、ハイリスク・ハイリターンやミドルリスク・ミドルリターンの領域に取り組まなくなってしまったのではないか。
- 商工中金がメインに取り組んでいくべきこうした領域は、楽をして収益が上がる分野ではないが、中小企業に必要な金融サービスである。金融庁も民間金融機関が取り組むべき領域であるとしていることを踏まえると、商工中金が突破口を開き、リーディングカンパニーとして民間金融機関と協業しながら取り組む方向しかないだろう。
- 完全民営化については、それありきで議論は行わなかったが、結果として一定の期間をおいて民営化するということがマジョリティであったと思う。政府系という選択肢もあり得るが、その場合には現在の商工中金と全く異なるかたちになってしまうため、取引先の中小企業を困らせてはいけないということではないか。
【委員】
- このビジネスモデル以外に選択肢はなく、あとはいかに実践に移すかがポイントである。
- 第1回の検討会において、商工中金が取り組むべきビジネスモデルについて、私は各論的にミドルリスク層への融資や事業再生という言葉で括った。しかし、本来であれば、10月25日に発出された業務改善命令にある「民業補完の趣旨を踏まえた持続可能なビジネスモデル」ということを念頭に、「日本型金融排除が起きている現実の下で、新生商工中金がミドルリスク層への融資や事業再生といった原点に回帰して取り組む」と表現すれば良かったと忸怩たる思いがある。そうした言い方であれば、中小企業や商工中金の職員に必要以上の心配をかけることもなかった。
- 今般、改革の骨格ができ、行動規範のような現場が動くための仕組みや第三者委員会による牽制が働く仕組みが今後できることになったほか、新社長の人物像や社外取締役の比率を高めることも明記した。一方で、商工中金の現場には、これまでの上意下達の体質から、「現在の常勤の役員や本部の意識が変わらなければ、現場が強いられる対象が危機対応融資からミドルリスク融資に替わるだけではないか」という強い不信の声がある。こうした声を踏まえると、常勤の役員や本部に解体的な出直しを行うという意識が本当にあるのか心配である。本部役員の適材適所の観点からメンバーを一新するくらいのテコ入れをしなければ、新社長の苦労が非常に大きくなると思う。
- 商工中金が目指すべきビジネスモデルに取り組んでいる地銀が幾つかあるが、現場の意識を変えるまでに10年くらいかかっている。商工中金に与えられた期間は僅か4年しかない。単に商品がミドルリスク層への融資に替わっただけであるという意識では提言案は実現できないため、常勤の役員・本部にはしっかり覚悟を持って取り組んでもらいたい。
【委員】
- ご指摘のとおり、商工中金の利用者である中小企業ありきということが前提であり、その旨提言案にも反映させていただいた。
- ガバナンスの強化については、人事が全てではないかと考えている。したがって、今後4年間は、人事・評価について第三者委員会が細かく意見を言うほか、中小企業庁や金融庁もしっかり監督していくことになる。
- その上で、常勤の役職員の人事については、結果的に同じ人になるかもしれないが、商工中金においては当然に抜本的な見直しが行われると考えている。
【委員】
- 商工中金からこれまでどおりの資金調達ができるのかということを心配している中小企業は多い。提言案は中小企業にとってメリットがあるものだということを色々な面で知らしめてもらいたい。
- 4年後に完全民営化という方向とのことであるが、商工中金に対する出資は、政府よりも協同組合とそのメンバーの方が多い。4年後には、こうした民間の出資者の意見もきめ細かく聞き、民間の出資者にとって望ましいものとなるようにしてもらいたい。
【委員】
- 株主権を尊重することは当然であると思う。ただ、商工中金のバランスシートは複雑で、株式の部分のほか、危機対応準備金や特別準備金もある。こうした準備金をどのように捉えていくかは、政府が今後検討していくことになるのではないか。
- 中小企業にとって商工中金がこれまでよりも機能を弱めてしまうのではないかという懸念については先ほども議論があった。優良な企業への単純な融資は完全に飽和状態になっており、そこは心配ない。商工中金は、事業性評価や先端的な金融サービスを提供することで、中小企業のニーズに応えられていない分野に先頭に立って取組み、金融排除をなくしていくということであると思う。
【委員】
- 商工中金のビジネスモデルの大転換は中小企業のために行うものということが重要である。中小企業は人口減少やIT化といった様々な環境変化にさらされて持続可能なビジネスモデルを築くことが求められているほか、事業承継に直面していることも多い。商工中金は、補助金的なものに依存するのではなく、そうした中小企業の企業価値を向上させることをサポートするような金融機関に生まれ変わってほしい。
- 商工中金のビジネスモデルは、半官半民であることに限界があり、中間解はなく、選択肢はビジネスモデルを大転換する結果としての完全民営化か、完全政府系化の2つしかないが、手遅れにならないうちに完全民営化していくことを選んだと理解している。
- 今回完全民営化を選択し、商工中金にビジネスモデル転換を厳しく求めていく以上、政府も信用保証をどのように使いやすくしていくかを含めて、危機対応の課題や問題点の改善について検討し、万全の体制を構築してもらいたい。商工中金の危機対応業務の必要性については今後4年間で機能を検証するとのことであるが、実際には危機が起こらない可能性もあり、いつ危機が起こっても十分対応できるように政府が人事を尽くして検討していく、という意味で検討・検証するとしたと理解している。
- ビジネスモデルの大転換を行うにあたり、新社長がリーダーシップを発揮しやすい企業体にしていくことが重要。不祥事を起こした土壌を刷新して、職員が気持ちよくビジネスモデルの大転換に取り組めるよう配慮し、役職員一体となって取り組んでもらいたい。
- 最後に感想を述べたい。これまでの議論で現在の政策金融と民間金融が抱える課題が浮き彫りになったと思う。こうしたことへの対応は本検討会の範疇を超えるものであるが、環境が変化した中でそれぞれのあるべき姿を幅広く検討していく必要があるとの問題意識を持った。
【委員】
- 先ほど申し上げたように、最初から完全民営化という議論をしたわけではないが、結果として中途半端であるのは最も良くないということに至った。また、ビジネスモデルやガバナンスが大きく変わる中では、経営の強いリーダーシップの下で現場がやる気を起こすことが重要であるというのもそのとおり。
- また、政府系金融機関全体については本検討会のミッションではないが、大変重要な視点であるため、政府において今後議論してもらいたい。
【金融庁】
- 金融庁としても、商工中金が今後取り組んでいくビジネスモデルは、地域金融機関の対応が必ずしも十分ではない分野であり、商工中金が先兵となって取組み、地域金融機関と協業していくことは、地域の中小企業や地域経済にとって非常に有益であると考えている。
- 地域金融機関との協業・連携に関しては、地域金融機関がそれを受け入れる体制を作っているかどうかしっかりみていきたい。
- 商工中金の監督・検査を行っていくにあたっては、常勤の役員や本部の動きについてヒアリングをしながら、どのように変化しているのかを確認していきたい。
- 今事務年度の金融行政方針に書いてあるとおり、公的金融の在り方、特に民間金融機関との協業の在り方について、今後どういう方向に進むべきなのか、関係者と議論していきたい。
【財務省】
- 政策金融の在り方については、民間金融機関と意見交換を行う枠組みがあるため、その中でしっかり対応してまいりたい。
【中小企業庁】
- 中小企業の立場、あるいは地域金融の実態から、どのような機能が必要とされているのかという視点でご議論いただき、感謝する。この新しいビジネスモデルは、商工中金が今後機能を発揮していくための唯一の道であると考えている。
- 中小企業庁としては、今後の制度設計にしっかり対応していくとともに、自らの監督能力を高めていくことが必要であると考えている。
- また、今年4月からスタートする危機関連保証については、制度の周知にしっかり取り組んでまいりたい。議論の中にあったように、危機時には民間金融機関の率先した対応がより重要になってきている。このため、金融庁とも力を合わせて、民間金融機関のご理解を得ながら進めてまいりたいが、委員の皆様におかれてもそのようなご議論をいただければ幸いである。
提言案については、各委員に了承され、座長に一任されることとなった。
以上
<お問い合わせ先>
中小企業庁事業環境部金融課 電話:03-3501-2876 |