日時:平成29年12月20日(水)13:00~15:00
場所:経済産業省別館9階948共用会議室
出席者
川村委員(座長)、翁委員、菊地委員、多胡委員、冨山委員、中原委員、安藤委員、遠藤委員、可部委員代理
議事概要
冒頭、座長より、商工中金の経営上の機微データ等を扱いつつ自由な意見交換を行うため会議を非公開とし、議事概要は作成するが逐語の議事録は作成しない旨を説明。次に、商工中金より前回の冨山委員への質問に対する回答と、中小企業庁及び金融庁より資料に基づいた説明があった。その後、委員による討議があり、概要は以下のとおり。
ビジネスモデル、完全民営化等について
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基本的には完全民営化に向かって、民間金融機関が“lazy”または“disable”な部分に重点的に取り組むことが方向性ではないか。
ミドルリスクへの対応は二種類ある。一方は事業性評価とそれに関するコンサルティングやアドバイスなど、伝統的な商業銀行の機能であるものの民間金融機関が“lazy”である分野で、もう一方はメザニンファイナンスや高度なM&Aといった、民間金融機関が“lazy”なのではなく“disable”な分野。
- 商工中金の真の問題は、ビジネスモデルの危機と官民がはっきりしない会社のかたちの歪みにある。特に、民営化の方向性が堅持され株式会社としての自律的経営を確立する必要性に迫られる一方で、人口減少の下で地域金融の過剰供給構造が進展し、ビジネスモデルの脆弱性がより顕著になっている。過剰供給構造にある地域金融において、量的な意味で政府系金融機関の民業補完性はない。
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現実的に考えるべきは、民営化軸で市場競争を指向しても、非民営化軸で政策金融を指向しても、近い将来に立ち行かなくなる高い蓋然性にどう対峙するかということ。
とりうる選択肢は、(1)大改革によってミドルリスクバンクとして特化する差別化戦略、(2)完全政策金融機関化(相当程度の業務の見直しと縮小が不可避)、(3)廃止の3つだが、(1)を選択する場合、ある程度の時間を使って徐々にコア業務を半官半民的プロパー融資からミドルリスク融資にシフトし、また、フルバンキングの固定費や3,800人の職員数など大幅な構造改革をしていくことが必要。
- 現行法では、完全民営化に向けて、危機対応、中小企業金融の円滑化という目的に与える影響、組合員とその構成員に限定された株主資格の3つのハードルがあり、直ちに民営化することは不可能であるため、民営化への移行期間は5年間と考えてはどうか。
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目指すべきビジネスモデル転換は強いリーダーシップで鮮烈な改革を断行しない限り実現できず、ある意味ナローパスである。集中的な構造改革期間を3年、長くとも5年以内として、その間に新ビジネスモデルの収益事業としての確立、必要な人員リストラや事業・機能の取捨選択、支店の統廃合システム改革をやり切る必要。
改革期間の後にそれが成功し、民間金融機関でミドルリスク業務が進展していれば、完全民営化の実行に移るべき。他方、民間金融機関の対応が進展しておらず、商工中金のビジネスモデル転換が不可能であると判断される場合には、完全政策金融機関化か廃止しかない。 -
ミドルリスク先への取組については「ナローパス」ではなく実は「ワイド」である。商工中金も危機対応融資に依存することで“lazy”になってしまったが、かつては、商業銀行の本来業務である事業性を評価した融資による業務支援と、地域金融機関と協調して行うハイレベルな再生支援を行っていた。
こうした分野の取組を民間金融機関が十分にできているならばよいが、そうではないのだから誰かがやらなければいけない。この分野に商工中金にしっかりと取り組んでもらい、その結果をデータ面も含めて検証していくことが重要。金融機能強化法でも同様の考えの下で民間金融機関に対して公的資金が注入されており、その後の金融機関の取組を審査している。
- 政府出資がある間は、正常先へのプロパー融資はできるだけ減らしていくべきではないか。
- 半官半民状態では正常先へのプロパー融資を行うべきでない一方で、完全民営化すれば自由に行ってよいという議論には違和感がある。
- 組合系の中小企業へのプロパー融資は、その土台がしっかりしているので、今後もしっかり対応していかなければならない。
- 民業補完論は完全民営化とはっきりと言わないことによって出てくるものであり、完全民営化を目指すということであれば、現状のバランスシートを小さくする必要はまったくなく、正常先へのプロパー融資もこれまでどおりしっかりやればいい。逆に、完全民営化軸をより鮮明にしない限り、正常先へのプロパー融資の事業活動は著しく制限されざるを得ない。
- 完全民営化の定義が政府保有株式の1,016億円を処分するということであれば、それを実行して商工中金の格付けが落ちた場合、債券発行による資金調達コストが上昇してまともに融資を行うことができなくなるのではないか。
- 完全民営化した場合、取引先の中小企業にはどのようなメリットがあるのか。
- そもそも半官半民状態からの完全民営化はコントロールが可能なものなのか。株式を引き受ける先がいるのかという問題もある。
ビジネスモデルを支えるガバナンスについて
- 改革の断行にあたっては、取締役会を強化し、真にリーダーシップのある経営人材をトップに据え、改革の進捗をしっかりモニタリングする必要。
- 民営化に向かうプロセスの過程、すなわち政府出資が継続している期間においては、郵政民営化委員会のように、逐次のモニタリングとコンプライアンスやガバナンスをチェックして、改革の進捗と民業とのイコールフッティングの監督、民営化の実質的な判断業務を担う強力なガバナンス組織としての第三者委員会が必要。
- プロパー融資と危機対応融資については、しっかりと勘定分離をして、プロパー融資でしっかりした人事評価をできるような仕組みにすべき。
危機対応業務について
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危機時においては、潤沢な流動性を迅速に対応することが必要。代理貸付などの制度を改正し、より民間金融機関が対応することが可能となるまでの間は、限定的に商工中金が危機対応業務を実施せざるを得ない。
その際、利子補給は廃止し、危機の認定は天変地異やテロ、大規模な経済金融危機で予見し難かったものに限定し、ダラダラと継続せずに期間は原則1年(適正なプロセスに基づく手続きによって最長でもプラス1年)とするなど、可能な限り絞る必要がある。 - 危機時の対応については、ここまでやったら民間金融機関の対応が十分ワークするはずという証明はなかなか難しく、過去の危機時には100%保証を行っても民間金融機関の融資は減少したというファクトもある。危機関連保証が本年の法改正によって措置されたが、そうした施策の効果の検証については、次の危機を待つことがよいのか、それともより良い検証の方法があるか。
- 政府としても、民間金融機関が指定金融機関に手を挙げないというだけではなくて、手を挙げやすくするための工夫や、日本公庫のセーフティネット貸付の拡大や代理貸付、信用保証を含めて、商工中金の危機対応義務をはずせるか、制度整備を検討し、しっかり対応してもらいたい。
- 危機時において、民間金融機関に日本公庫の代理貸付で対応させるのであれば、今日説明があったような平時の仕組みではなく、100%保証される新たなものでなければならない。
以上
<お問い合わせ先>
中小企業庁事業環境部金融課 電話:03-3501-2876 |